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【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>22 黒眼鏡 「そりゃ大変、上司の教育が悪かったみたいだなあ?」 乗り込んでくるや否やのご挨拶には軽口で。 叩かれた肩はすぐに竦められた。 「ろくでもない事仕出かす気しかしねえ前フリだな。 はいよ、しょうがねえな。一つ貸しな」 車を再び発進させれば、あなたの店まで最短距離で。 その後はちゃあんと指示通りに動くだろう。 (24) 2023/09/26(Tue) 22:52:05 |
ダヴィードは、落ち着く間もないまま車に詰め込まれた。無抵抗だった。 (a2) 2023/09/26(Tue) 22:55:06 |
【人】 Il Ritorno di Ulisse ペネロペ>>25 黒眼鏡 「は? 嫌だね。 地獄の果てまで行っても取り立ててやるわ」 裏社会の人間など皆平等に地獄行き。そう思っている。 だから地獄まで行けば取り立てられる。簡単なお話だ。 「はいはい、言われるまでもねえよ。 心配すんな、手前の犬くらいきっちり躾けてやらあ」 どん、とそう厚くもない胸を叩いて。 そんじゃあな、そう言ってドアは閉じられる。 きっと別れはずいぶんとあっさりとしたものだった。 (26) 2023/09/26(Tue) 23:06:58 |
【人】 corposant ロメオ>>23 フィオレ 『おう、撃ててんだろ。 ならいい、あんたは種を埋め込んだ訳だ』 『車ならもう用意してる。マップ送るからそこに行きな。 お疲れさん。あんたは経験をした。 冷たい水用意して待ってんぜ〜』 通信の切れる音、その直後に貴方の端末に通知が入る。 そこにあったマップ情報に、これが用意した車があるのだろう。 「アーハハ。そらキツイわ」 別の路地の影、ポニーテールにキャップ姿。 自分も行くか、と歩き出した。 あなたが車に着くころには、 運転席に足を組んで座っている事だろう。 (27) 2023/09/26(Tue) 23:14:35 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ──天気予報は当たった。 晴天の元、数日ぶりに見た陽光は眩しい。 一応迎えが来るらしい、とは看守からの言伝。 家に戻った後のことを考えると些か気が重いような、そうでもないような。 とりあえずは待つしかないかと行き交う人々を眺めていた、時間。 見慣れた長身は視界の端に掠めればすぐに分かるもので、「ぁ」と声を発した。 自然足がそちらへと寄っていく、聞きたいことがあるんだ。 貴方の罪状は知っていて、それが到底許されないものだと理解していて、尚。 怒り、よりも悲しかった。されど罪を裁くのは己ではないから。 ──夕暮れの公園、二人並んで食べたパン。 ──声を上げて笑った表情、全てが落ち着いたらの先の話。 だから、手の届かぬ遠くに行ってしまう前に。 ヴィトーさん、いつもみたいに名を呼んで、その先を、 ──パン。 距離は開いていた。まだ数メートル先。 それでも見えた。胸から。落ちる。血が。 ……なんで? 背後に居るのは誰。目深に被ったキャップ。 でも見間違えるはずがない。横顔は。 ……なんで? (29) 2023/09/26(Tue) 23:26:22 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ「………………なん、で」 止まる足。 立ち尽くす間に二つの人影は遠ざかっていく。 パレードが横切っていく。 全ては足音の元に掻き消されてなかったことみたいに。 心臓がうるさい。 熱は下がったはずなのに頭がぐらついた。 なんで。 ──それしか言わないな、って、誰かが言った声が蘇る。 でも、なあ、だって。 それしか言えないだろ、こんなの。 (30) 2023/09/26(Tue) 23:27:20 |
【人】 corposant ロメオ>>31 フィオレ 「おかえり〜。休みな〜」 人通りも少なく建物の影、表の賑わいは少し遠い。 ひっそりと停車している黒い乗用車は新しいものだった。 後部座席にはこれまた新品の白いクッションが置いてあるから、使うのだって自由だろう。 「慣れない事をするのは疲れるよな。色々」 はい、とペットボトルを渡す。 「で」 「どうだった?」 (32) 2023/09/26(Tue) 23:59:40 |
【人】 新芽 テオドロ未来の事はいつか考えなくてはならないと知っていたが、 もう少し、泥のように眠っていたかった。 代わる代わる牢の前に現れる奴がいて、 ろくに襤褸に埋もれさせても貰えなかった気がする。 ああそう、だから己も腐らずに芽吹くべきなんだろう。 「───辞職願は保留、か」 事実とはそれでも各々の正義の前に曲解されるもので。 己の行動は、署長代理の所業を疑った勇気ある者のそれとして処理された。 後処理の為に駆り出す駒として、これ以上人員を減らしたくなかったというのが正直なところだろう。 漸く帰ってきた署長の目は。嫌になるほど正しい$Fをしていた。自分もまた、心の奥で嫌味を一つ二つ飛ばしながら酷く安堵したことを覚えている。 「くそったれのナルチーゾ。 しわがれた爺になって夜道に怯えてろボケ野郎」 その矛先は、渦中の元代理様に向かっていって。 結局のところ、俺は警察に向いていたんだろうか。 それを教えてくれる人はきっといない。 向き合って、優しい言葉をかけてくれる奴だけがいる。 (34) 2023/09/27(Wed) 5:57:05 |
テオドロは、事が片付いたら、それでもやはり警察を辞めるつもりでいる。 (a3) 2023/09/27(Wed) 5:57:22 |
テオドロは、でも、それでも今はまだ警察であることには違いない。 (a4) 2023/09/27(Wed) 5:57:58 |
テオドロは、だから─── (a5) 2023/09/27(Wed) 5:58:06 |
【人】 新芽 テオドロギプスと包帯にまみれた手指を引き摺るように。 それでも曲がることのない背筋が、 漫然と人混みをかき分けて歩いていた。 迎えに来るような人間に覚えはない。 人々の顔を一切見遣ることはなく、ただ足を進めていく。 当てもない、というのは少々正確ではなく。 心配をかけさせないために、この顔なんかを見たい奴らのために、暫し寄り道でもしてそれからどこに行くかを決めるつもりだった。順序が逆な気がするがまあいい。 そこまでなら、まあよかった。 ───パン、 その音に、警鐘であるはずの声に、つい顔を向けてしまった。 何の冗談だと思う。否、それが冗談でないということは、 きっと人一倍知っていることだった。誰よりも、なんてのは恐れ多くて思ったりできなかったが。 故にホワイダニットを一瞬で理解する。凄腕の探偵でさえここまで早く答えを出せることもそうそうないだろう。 「…………」 ただ、自分は警察だ。 だから、知らないことにした。 見なかったことにした、聞かなかったことにした。 全部は痛む身体と喧騒の中に紛れてしまったことにした。 (35) 2023/09/27(Wed) 6:18:35 |
【人】 新芽 テオドロ法の下にある正義ではなく、 自分の中にある正義を迷いなく行使する。 分かっている。どれだけの理由を積んだとしても、 どれだけの感情を考慮したとしても、それが許されることではないのは。 いいことじゃないか、あいつを逮捕するチャンスがすぐに巡ってきたと囁くこの心の声は、自分を守るための棘で、決して本気じゃないもの。これもまた聞こえなかったふりをして、好きに言わせておいた。 「……まだ皿まで食ってないからな」 後悔しろ。俺をまだ飼い続けると決めた奴らめ。 いつか咲くだろう花はこんな一個人の横暴よりももっと根深く、奥底まで侵すのをその目で見ていろ。 警察には警察の規律があり、 マフィアにはマフィアの掟がある。 易々と破れば必ず身を滅ぼす、絶対不変の。 自分に残される最後の仕事は──その間を取り持つことだ。 もう二度と、全てを巻き込んだ諍いが起きないように。 それはきっと、 (36) 2023/09/27(Wed) 6:27:38 |
【置】 新芽 テオドロ──間違いなく、ひとつの毒だ。 ゆっくりと、弾みをつけて理を呑み込んでいくだろう。 (L0) 2023/09/27(Wed) 6:29:00 公開: 2023/09/27(Wed) 6:30:00 |
テオドロは、棘は人を無暗に傷つけるが、これならばあるいは。 (a6) 2023/09/27(Wed) 6:30:11 |
テオドロは、「変じて薬となる───というのはどこの国の言葉だったか」と笑った。 (a7) 2023/09/27(Wed) 6:30:43 |
リヴィオは、この『未来の話』が君と俺の希望になるよう願った。 (a8) 2023/09/27(Wed) 17:19:27 |
リヴィオは、"いつも通り"だ。 (a9) 2023/09/27(Wed) 17:53:21 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ>>30 ニーノ 暗い知らせと取締法が収束しかけ明るい賑わいを見せる頃。 空は晴れ渡り、火花が空に咲き―― まだ知人達が数人拘留されている時間、外に用があった男は出歩いていた。 そうしてふ、と一台の車が目に入る。 その車の運転手など見えない、ナンバーに覚えもない。 それでも、都合の良い『あいつ』の車だと気付いた瞬間、 ルチアーノはパレードの通りに向かって走っていた。 パン。 音がやけに大きく聞こえた気がした。 どんな状況であるか男は確認できないまま辺りを見渡す、そして漸く見つけた知り合いは。 賑やかな喧騒の前に立ち尽くす、彼らが大事にする小さな弟分だった。 「ニーノ!」 その呆然としている姿に声をかける、貴方はこの嫌な予感の当事者であったのか。 それとも、ただの、目撃者であったのか。 (37) 2023/09/27(Wed) 18:18:59 |
【人】 corposant ロメオ>>33 フィオレ 「そんなもんだよ。殺しって晴れ晴れしたもんじゃない」 横に積んだ小さなクーラーバックから紙パックのジュースを取り出し、ストローを差す。 端末で部下に次の指示を出しつつ片手間に飲むための物だ。 オレンジの爽やかな酸味はこの場に不釣り合いだった。 「……マジ? 笑ったの? なんで?」 「そらすっきりしねえわ。最後まで嫌だねえ……」 こっちは復讐に来たってのになあ。 珊瑚色の爪がこめかみをカリカリと掻く。 「でもあんたは撃ったよ。それで何か変わればいい」 (38) 2023/09/27(Wed) 18:36:09 |
【人】 オネエ ヴィットーレ……解放の通達は突然に。 牢に捕まった立場も年齢も性別も違う何人もの"冤罪人"達は、 蜘蛛の子を散らすようにその場を離れていった。 ヴィットーレの怪我は随分酷くて、一人では動けそうも 無かったから、きっと誰かに支えられ、病院まで行ったことだろう。 ……そうして、病院に着くや否や治療を受け。 丸一日と少しの後、手術室から病室へと移される。 両手は爪が疎らに剥がされ、利き腕だった右手はさらに 指先の粉砕骨折や、ガラスでできた粗い裂傷。 肉ごとぐちゃぐちゃに潰されていたそれらは、今は ぐるぐると巻かれたギプスによって覆い隠されている。 神経まで細かに千切るその負傷は、 とても後遺症無し、で済むようなレベルではないだろう。 ヴィットーレは右手の痺れを感じながら、ベッドで座っていた。 (39) 2023/09/27(Wed) 20:26:29 |
【人】 黒眼鏡──真昼のこと。 海沿いの開けた道に面して建てられた、トラックがまるまる入ってしまいそうなスチール・ガレージを改装して作られた店舗。 それなりに古びていて潮による錆も無視できないが、そこは短パンとサンダル姿で表をぶらぶら出歩けるくらいには気ままな彼の城だった。 ──ごり、ごり、ごり。 【Mazzetto】という味気のない店名。 今その店頭に、看板は置かれていない。 入り口の脇にたてかけられたその看板には、そこの主に似合わない小さな花がセロテープで張り付けてあった。 ──ごり、ごり、ごり。 店内は照明が落とされて、黎明に照らされた海の底のようにじっとりと薄暗い。 そんな中で黒い眼鏡をかけた怪しげな男が、カウンターの奥でコーヒーミルを回している。 男はむっつりと口をへの字に曲げて、額からぽたりと汗を垂らしながら重たいハンドルに力を込めた。 ──ごり。 硬く、重い。金属質な音が部屋の奥底まで響き渡り、波に運ばれた石のようにカウンターの裏を埋めてしまいそうになるころ、 「兄貴?」 ──店の扉をがちゃり、と開く音がした。 (40) 2023/09/27(Wed) 20:30:53 |
【人】 黒眼鏡>>40 路面と海面が反射する太陽の光を背負って、 一瞬影となったその男が店内に足を踏み入れる。 「黒眼鏡の兄貴、よかった、ちゃあんと釈放されてるじゃねぇか!」 ガイオと呼ばれるそのマフィアは、観光案内所の役付き者だ──表向きは。 実際にはノッテ・ファミリーの一員として、観光客を相手にスリや詐欺、置き引き、恐喝などを働く、外貨獲得部門を取り仕切っている。 「おう、ガイオ。 お前も出てこれたのか」 「部下たちもな、兄貴も早いじゃねえか。 あんなネタが出たんだ、もう少し絞られるかと思ってたぜ。運がいいな」 気安く笑いながら、意外と丁寧に掃除されている床を踏みカウンターに肘をつく。 アレッサンドロもまたコーヒーミルから手を話し、かちゃかちゃとコップを用意しながら立ち上がった。 「ソウ、裏切者のアレッサンドロです。 いいのか、こんなとこに来て。俺の処分はうやむやになってるだけだぞ」 「とぼけんなよ、『プラン』だろ? 何言ってんのかと思ったら、こういうことだったとは。 最初はびっくりしたが、すぐに失効したし、今なら取り返すのはなんとかなる。 …そんでもってこの機会に恩を返したら、高ぇ利息を取れるんじゃないかと思ってね」 ははは。アレッサンドロがにやりと笑って、ガイオの肩をぱんと叩く。 「抜け目のねえやつだな。ま、わざわざ呼ぶ手間が省けたよ」 「あんたにしごかれたからな。今度またうちに来てくれよ、フィーコも寂しがってる」 「ああ、あの犬」 (41) 2023/09/27(Wed) 20:32:59 |
【人】 黒眼鏡>>42 「兄 貴、… は? …ぇ、 」「ガイオ。犬の世話は、俺からお前の部下に頼んどく。 引き取り先も探すよ」 「……ぁ、……っ、……」 ぼた、ぼた。 綺麗に磨かれた床に、赤い雫がぼたぼたと落ちる。 体ごとぶつかるように突き込まれたナイフの先端は狭い肋骨の間をすり抜けて、 ちょうどガイオの肝臓に達していた。 太い血管がいくつも同時に切断され、ごぼり、と大量の血が傷跡から零れ落ちる。 ナイフを握ったままのアレッサンドロの手が一瞬で赤に染まって、受け皿にもなりきれず、零れた血液はばちゃばちゃと床をまだらに汚していった。 ──そのまま。固く握りしめられたナイフの柄が、ぐるんと捻り捻じ込まれる。 ぶぢぶぢと、さらにいくつもの血管が引きちぎられる音が響いた。 (43) 2023/09/27(Wed) 20:38:48 |
【人】 黒眼鏡>>44 ぼた、ぼた。 返り血がカウンターの上に数滴飛ぶのも構わず、アレッサンドロは立ち上がった。 血に染まったスウェットを脱ぎ捨てて、扉の隙間から差し込む潮風をも追い越すような早足で、店の廊下を歩いていく。 まだらに赤く染まったトランクスをひっつかんで引き下ろし、サンダルを放り捨て、裸足で全裸のまま私室の扉を蹴り開けた。 みしり、と音がして蝶番が歪み、中途半端に傾いた扉。 それを振り返ることもなく、乱雑にかけられた黒いシャツをとスーツをひっつかむ。 下着、肌着、シャツ、スーツ。 次々と脚と腕を通していって、ボタンが捻じ込まれるように止まる。 その一挙手一投足が鳴り響く開演のベルのように耳に響いて、 アレッサンドロの全身を流れる血流がどくどくと脈打った。 その高ぶりを鎮めるように一度、ぱちんと頬を叩いて。 「うし」 ──すっかり準備を終えてから、壁際に据え付けられた鏡を見る。 ふーー、と吹きだした息は、まるで火が舌なめずりをしたかのよう。 ぎらぎらと燃え盛る堅炭の瞳がひび割れて、ごう、と熱が渦を巻く。 自分でその顔を見て、ふ、と笑い。 「確かに、こりゃ。 人相が悪い」 (45) 2023/09/27(Wed) 20:40:45 |
黒眼鏡は、ポケットに突っ込まれていたサングラスをぴんと指先で弾き、つるを伸ばす。 (a10) 2023/09/27(Wed) 20:41:18 |
【人】 黒眼鏡>>46 そいつは格好をつけて黒眼鏡をかけると、またずかずかと店の方へ脚を進め、 折りたたまれた看板を片手で持ち上げる。 【CHIUSO】の面を向けて店先に放り出す。 潮風がごう、と吹く。 風に流された雲が太陽を覆い隠して、 三日月島の名物である太陽に照らされた海面はほどほどにしか光っていない。 それでもかまわない、と男は、革靴に包まれた脚をがつんと前にだした。 くるくると指先で回す、革細工のキーリング。 かちゃりかちゃりと音を手てて、愛車――フィアット500の鍵が音を立てる。 そんな音では、足りはしない。 そんな音では、贖えない。 10年を費やした弔いが、今日この時に結実する。 そんな風に喧嘩をしたことがないから、男にとってそれは最初で最後の、 ──最初で最後の、 ことだった。 「負ける事考えて喧嘩するやつが、いるもんかい」 だから、彼は勝つつもりだ。 だから、彼は笑っている。 (47) 2023/09/27(Wed) 20:45:26 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>47 潮風がごう、と吹く。 地を照らさぬ太陽の代わり、差別主義者の神の代わりに、 俺がやる。 アレッサンドロ・ルカーニアはそういう風に生きて来て、 だから最後までそういう風にやるつもりだった。 「──さあて。」 ──さあて、鳴らそう。 アリソンに捧ぐ鐘を。 (48) 2023/09/27(Wed) 20:47:29 |
カンターミネは、情報チームに連絡した。もうすぐ帰る予定だ、と。 (a11) 2023/09/27(Wed) 21:06:16 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ>>37 ルチアーノ 呼ばれる声で白昼夢から醒めるように。 ハッと貴方へ向けられた顔は憔悴しきったように酷く青褪めていた。 「ルチアーノ、さん」 それでも目の前の人が誰かは分かる、理解できる。 鉄格子越しではない再会に伝えたいことは他にもあったはずだ。 けれどどうしたって今、震えた唇が紡ぐのは。 「…………ねえさんが、ヴィトーさんを、撃った」 先の現実をなぞらえる言葉だった。 そうしてはっきりと形にしてようやく喉奥まで飲み込めた気がして、くしゃりと顔が歪む。 泣きたくはなかったのに涙が溢れてしまいそうで。 「……撃った、んだ」 なんではもう声にしなかった。 理由なんてわかっているから。 でも、わかっても、……わかっただけ、だった。 「…………ふたりとも、だいすきなのに…………」 (49) 2023/09/27(Wed) 23:14:33 |
リヴィオは、痛みには慣れている。本当に恐ろしいのは──。 (a12) 2023/09/28(Thu) 0:08:50 |
【人】 路地の花 フィオレ>>38 ロメオ 「……」 そうなのかもね、なんて言葉を口にしようとして。 結局は開いた口からは何も発さずに、クッションに頬を埋めている。 いやな気持ち悪さだけが、ぐるぐると頭の中を回っていた。 「分かんないわよ……」 「……もしかしたら、……ううん、」 何でもない、とやはり言葉を飲み込んだ。 私が間違えているのかも。とか。本当は、もっと確かめるべきことがあったのじゃないかとか。 全部、全部。今更だ。 「これで、子供たちの未来が救われればいい…」 「もう、誰もいなくならなければいい」 ロメオ、とあなたの名前を呼んで。 後部座席で両手を広げている。寂しい時の、合図だった。 (50) 2023/09/28(Thu) 2:27:52 |
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