人狼物語 三日月国


267 冬暁、待宵の月を結ぶ

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[ 咥えきれなかった部分は手で包み込んで
  刺激を与えながら、口の中での奉仕は続ける。

  反応からさっきよりずっと余裕がないのが伝わって。
  このまま続けたらどうなるかわかってたし、
  止められることもなかったから
  伺いを立てるとか、そんなこともしないまま。 ]


 



[ 当たり前の事だけど初めてのことで
  上手く飲み込めなかったから
  けほけほと咳き込んでしまったから
  少し、心配させちゃったかな。
  収まってから、濡れていた指先をぺろりと舐めて。]


 



   おいしくない、けど、
しあわせ。



[ クスクスと笑う。
  気持ち良かったみたいで嬉しい、って
  君の耳元で囁くと、ふと、視線を下ろす。
  まだ、大きいままの熱に気づいて。
  もう、これ以上は我慢できない。欲しい。

  蜜が滴る花弁が君にあたるように
  膝の上に乗ってふふっと微笑む。 ]


 




   
なにされたって、いいんだっけ。



  




   
このままだと好きにされちゃうよ?



  




    
それとも、好きにしたい?



  



[ 焦らすように腰を揺らして
  二人の熱がすり合わされると
  快感にびくっと身体が震える。 ]


  




   ―――――好きに選んでいいよ。


            暁は、特別だから。
 


 



[ 君の耳を食んで、
  お互いの息がかかるほどの距離で
  じっと見つめると、君の答えを待ったんだ。]*


 



 [ 咳き込む結月が心配になって
   思わず顔を覗き込もうとすると

   笑う声にゾクリと背筋が震える。
   指先を舐める何気ない仕草が
   こちらを獲物に狙うかのようで

   上に乗られてしまえば
   捕食を待つ獣のように
   抵抗することは出来なくなる。  ]





 [ 言葉は妖狐の呪いのように
   一言一句が喉の奥に絡みつく。

   蜜に濡れていけばもどかしくて
   焦らされているように
   絡め取られているみたいな、

   光景にも、感触にも、身体が反応を示す。

   耳元まで近づけば息が当たり
   その吐息が結月の我慢の限界を教えてくれた。 ]

   



 [ 好きに選んでいい。
   結月の言葉を頭の中で復唱すれば
   脳の奥まで痺れる。

   神話の神様みたいに
   魅了されて堕ちていく感覚は

   きっと今僕が感じている
   この危機感を孕んだ高揚に近いはずだ。 ]






 [ 絶え絶えに君に答える僕はもう
   これ以上、言葉を紡ぐ余裕がなく

   君の唇を塞ぐと、
   背に手を回して、甘美な地獄へ、誘った。  ]*





[ 好きに選んでいいって言ったのは
  どっちも欲しくて選べなかったから。

  でも、どっちも欲しかったのは
  私だけじゃなくて。

  大切な人が欲しくてたまらないのも
  欲張りなのも、同じ。 ]


  



[ 苦しさも君への想いも全部飲み込んで
  お互いの息を混ぜ合う。
  こんなに甘い劇薬、飲んでしまったら
  二度とこの味は忘れられない。


        
―――――忘れさせたくない。 ]


 



[ 息が苦しくなるまで深く口付けると
  腰を浮かせて、花園の入り口に熱をあてがって。

  薄い膜一枚隔てることもないまま
  深い繋がりを求めていく。 ]


  



   
―――――っ、んんぅっ!



[ 全部中に収めると中が収縮して、
  君の熱を強く締め付けてしまう。
  息がとまりそうなくらいの快楽にクラクラする。
  欲しかったもので満たされた悦びと快感で
  動きたいのに暫く動けなくて。

  深く息を吐いて、息を整えようとしても
  落ち着くどころか吐く息は荒くなる一方。

  君の背に手を回して、支えにすると
  奥まで当たるように腰を動かしていく。
  気持ち良くて波に呑まれてしまいそうなのを
  必死に我慢しながら唇を重ねた。 ]


 



[ 気持ちいいはずなのに、苦しい。
  身も心も深くつながっているのに。

  
  
どうして涙があふれてしまうのかな。 ]


 



[ 快感に蕩けた甘い顔……からは遠い。
  離れたくないのに、別れは決まってて

  今してることは全部自傷行為だって、
  わかってて誘ったはずなのに。 ]


  




   
だいすき、もっと、一緒にいたい……。



[ 譫言のように言いながら、
  それでも快楽を得ようとする動きは止められない。

  
気持ちいいのに、幸せなのに。

  
未来を考えてしまったら苦しくて仕方ない。 ]


 




[ 泣きながら微笑んで、
  再び動き始めてから、絶頂するまで
  そう時間はかからなくて。

  一緒にいきたい、って囁くと
  嬌声を部屋に響かせながら、達してしまうんだ。 ]


 



[ 離れたくない、って強請るように
  ぎゅうっと君に抱きついたまま
  暫くは快感の余韻に浸っていた。


        大切な人の温もりを感じながら
          涙を止めることも出来ずに。 ]


  




[ 役割だからじゃない。

  大好きな人だからこそ、伝える言葉。 ]**



    



 [ 行き過ぎた快楽は身を滅ぼす。
   そんな当たり前のことを
   今になって強く感じる。


   煮え滾るほどの興奮は
   僕の支配下を外れて
   結月に心臓を掴まれるように支配される。

   必死に刻もうとして動けない結月を支えて
   それでも続きを自分からは促さないのは

   これが結月にとって大切な時間
   お互いを刻むための時間だと知っているから。

   動いて、今すぐにでも乱したい、
   そんな男として当たり前の思想を
   吐くわけにはいかないと必死におさえつける。  ]






 [ 感情で始まり、感情で終わる誰かの青春。
   打算で始まり、打算で終わる僕らの青い春。

   紡がれた感情を置き去りに
   引き剥がされるのは極寒の前触れ

   もう二度と忘れられない甘い快感は
   手首を切る感覚にとても似ていて、

   零れた涙を拭う手を持ち合わせない僕は
   目を塞ぐように重なる唇を啄んでいく。   ]






 [ 心を焦がすような痛々しい波紋が
   身体中を駆け巡り鳩尾を穿つ。

   一緒にいたい、と
   血のにじむような願い。

   僕も同じと、吐きたくてしかたないのに
   結月と僕じゃ同じ言葉でも意味が違う。

   自分の罪の赦しを乞うような
   自分だけを癒す言葉なんて
   僕は吐き出すことはできなくて…………  ]






 [ 僕は君の言葉に何も答えず

         静かに、君の顔を胸に埋めさせた。 ]





 [ 泣きながら微笑む顔を
   まるで魂に刻み込むように

   心臓に君の涙を飲ませて、
   君の脈動に呼応するように

   お互いの胸に刺さるナイフを引き抜いて。
   結月の囁きに応えるように
   募る我欲を打ち付け、満たしていく。   ]






   っ…………はぁ…。



 [ 互いの汗も蜜も混ざり合い
   肩で息をする結月を支えながら
   吐き出した精に引きずられるように
   脱力感が吐息となって溢れ出る。

   君に僕の顔が見られないように
   なるべく距離を近づけて。


   結月の髪を撫でながら
   手離したくないという気持ちに従うまま
   痛いほど、強く、抱きしめる。      ]



【人】 宮崎暁



 [ 春が眠る冬の空
   飛行機の中、独り、空を眺める。

   両親は僕に気を遣っているのか
   声をかけてきたりはしない。

   大きなキャリーバッグは思い出の宝箱で
   鞄につけていたストラップを指で撫でながら


   映る僕の窓は

               微かに滲んでいた。  ]


(1) 2024/07/01(Mon) 23:52:27