【墓】 白昼夢 ファリエ>>7 エミール 「……こっち」 交わした視線に数度瞬いて頷く。 普段の落ち着いた在り様が嘘のようなか細い声で、路地を抜けた先を指さす。 そこは郊外とはいえ都市部でありながら建物隙間に開けた空き地。元は建物があったのだろうか。辺りには大小の瓦礫が置き去りにされている。 辿り着いて天を仰げば、まるで空だけを切り抜いたような光景が目に映るだろう。 「ここなら滅多に誰も来ません。 いつも落ち着いて考え事がしたい時はここに来るんです」 多少喋れるようにはなったようだが、とても子供の前に立てるような状態ではないのは明白だった。 適当な瓦礫に腰を下ろして暫し黙っていた。 何かを離そうとする様子もなく、ただ喘ぐように呼吸を繰り返しているだけの沈黙。 (+4) 2024/02/06(Tue) 1:04:58 |