人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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視点:人


【人】 黒眼鏡

──真昼のこと。
海沿いの開けた道に面して建てられた、トラックがまるまる入ってしまいそうなスチール・ガレージを改装して作られた店舗。
それなりに古びていて潮による錆も無視できないが、そこは短パンとサンダル姿で表をぶらぶら出歩けるくらいには気ままなの城だった。

──ごり、ごり、ごり。


Mazzettoマツェット】という味気のない店名。
今その店頭に、看板は置かれていない。
入り口の脇にたてかけられたその看板には、そこの主に似合わない小さな花がセロテープで張り付けてあった。


──ごり、ごり、ごり。



店内は照明が落とされて、黎明に照らされた海の底のようにじっとりと薄暗い。
そんな中で黒い眼鏡をかけた怪しげな男が、カウンターの奥でコーヒーミルを回している。
男はむっつりと口をへの字に曲げて、額からぽたりと汗を垂らしながら重たいハンドルに力を込めた。

──ごり。


硬く、重い。金属質な音が部屋の奥底まで響き渡り、波に運ばれた石のようにカウンターの裏を埋めてしまいそうになるころ、

「兄貴?」


──店の扉をがちゃり、と開く音がした。

#AlisonCampanello
(40) 2023/09/27(Wed) 20:30:53

【人】 黒眼鏡

>>41

ガイオがスツールを軋ませて腰を下ろす。
アレッサンドロは何か思い出すように視線をあげながら、
ポットに入っていた珈琲をカップに注ぎ、カウンターの上にかちゃり、と置いた。
手をタオルで拭って、自分の分のカップも取ってガイオの隣の席に座る。

「そうそう…ってふざっけんなあんたが押し付けたんだろ!
 だが実際飼ってみるとかわいくてな、
 ただでさえ家を空けちまったんだ。
 早く帰ってやらねえと」

「ガイオ」

ん? と顔を向けたガイオに、
アレッサンドロが体を重ねるようにもたれかかって、

――
ぐ。


#AlisonCampanello
(42) 2023/09/27(Wed) 20:36:07

【人】 黒眼鏡

>>42

「兄  貴、…
は? …ぇ、

「ガイオ。犬の世話は、俺からお前の部下に頼んどく。
 引き取り先も探すよ」
「……ぁ、……っ、……」


ぼた、ぼた。

綺麗に磨かれた床に、赤い雫がぼたぼたと落ちる。
体ごとぶつかるように突き込まれたナイフの先端は狭い肋骨の間をすり抜けて、
ちょうどガイオの肝臓に達していた。
太い血管がいくつも同時に切断され、ごぼり、と大量の血が傷跡から零れ落ちる。
ナイフを握ったままのアレッサンドロの手が一瞬で赤に染まって、受け皿にもなりきれず、零れた血液はばちゃばちゃと床をまだらに汚していった。
──そのまま。固く握りしめられたナイフの柄が、ぐるんと捻り捻じ込まれる。
ぶぢぶぢと、さらにいくつもの血管が引きちぎられる音が響いた。

#AlisonCampanello
(43) 2023/09/27(Wed) 20:38:48

【人】 黒眼鏡

>>43

「……あに、……ぃ、
 なん、……で、」


「お前、10年前に観光客ひとりひっかけただろ」

「………、……」


それ・・だ。お前ほんと、引き運悪いよな」

「………」



「悪い」


ぽん、ぽん。
まるで幼子をあやすように、血に染まった手がガイオの背中を叩く。
出血性ショックで既に気を失ったその体は、男の手に支えられながらゆっくりと傾ぎ、倒れる。
それを抱き留めて、まるで気遣うように優しく床に横たえると、

「バカラの続き、できなくて残念だ」

アレッサンドロはいつもの、酒の席で別れる時にかける調子のまま、そう声をかけた。

#AlisonCampanello
(44) 2023/09/27(Wed) 20:39:48

【人】 黒眼鏡

>>44

ぼた、ぼた。
返り血がカウンターの上に数滴飛ぶのも構わず、アレッサンドロは立ち上がった。
血に染まったスウェットを脱ぎ捨てて、扉の隙間から差し込む潮風をも追い越すような早足で、店の廊下を歩いていく。
まだらに赤く染まったトランクスをひっつかんで引き下ろし、サンダルを放り捨て、裸足で全裸のまま私室の扉を蹴り開けた。
みしり、と音がして蝶番が歪み、中途半端に傾いた扉。
それを振り返ることもなく、乱雑にかけられた黒いシャツをとスーツをひっつかむ。

下着、肌着、シャツ、スーツ。
次々と脚と腕を通していって、ボタンが捻じ込まれるように止まる。
その一挙手一投足が鳴り響く開演のベルのように耳に響いて、
アレッサンドロの全身を流れる血流がどくどくと脈打った。
その高ぶりを鎮めるように一度、ぱちんと頬を叩いて。


「うし」

──すっかり準備を終えてから、壁際に据え付けられた鏡を見る。
ふーー、と吹きだした息は、まるで火が舌なめずりをしたかのよう。
ぎらぎらと燃え盛る堅炭の瞳がひび割れて、ごう、と熱が渦を巻く。
自分でその顔を見て、ふ、と笑い。

「確かに、こりゃ。
 人相が悪い」

#AlisonCampanello
(45) 2023/09/27(Wed) 20:40:45
黒眼鏡は、ポケットに突っ込まれていたサングラスをぴんと指先で弾き、つるを伸ばす。#AlisonCampanello
(a10) 2023/09/27(Wed) 20:41:18

【人】 黒眼鏡

>>45

拳銃に弾倉マガジンを装填する時のようにもったいぶって、かちゃり、と顔にひっかけて。



  
「──久しぶりの喧嘩だ。
   楽しくなってきたよなあ、おい」




に、と口許が、牙をむくように暴力をにじませて笑う。
その様相は馬鹿みたいに荒々しく、
気さくで飄々としたカポ・レジームの面影はもうどこにも残っていない。

──アレッサンドロ・ルカーニア。


それはかつて十四にしてスラム街の一角を暴力で纏め上げ、
その喧嘩の腕と狂暴性だけでファミリーへと拾い上げられた
喧嘩屋の小僧・・・・・・の顔だった。

#AlisonCampanello
(46) 2023/09/27(Wed) 20:42:25

【人】 黒眼鏡

>>46

そいつは格好をつけて黒眼鏡をかけると、またずかずかと店の方へ脚を進め、
折りたたまれた看板を片手で持ち上げる。
CHIUSO閉店】の面を向けて店先に放り出す。

潮風がごう、と吹く。
風に流された雲が太陽を覆い隠して、
三日月島の名物である太陽に照らされた海面はほどほどにしか光っていない。

それでもかまわない、と男は、革靴に包まれた脚をがつんと前にだした。
くるくると指先で回す、革細工のキーリング。
かちゃりかちゃりと音を手てて、愛車――フィアット500の鍵が音を立てる。

そんな音では、足りはしない。
そんな音では、贖えない。

10年を費やした弔いが、今日この時に結実する。
そんな風に喧嘩をしたことがないから、男にとってそれは最初で最後の、
──最初で最後の、

ことだった。

「負ける事考えて喧嘩するやつが、いるもんかい」


だから、彼は勝つつもりだ。
だから、彼は笑っている。

#AlisonCampanello
(47) 2023/09/27(Wed) 20:45:26

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>47

潮風がごう、と吹く。
地を照らさぬ太陽の代わり、差別主義者・・・・・の神の代わりに、
俺がやる。
アレッサンドロ・ルカーニアはそういう風に生きて来て、
だから最後までそういう風にやるつもりだった。


「──さあて。」



──さあて、鳴らそう。
アリソンに捧ぐ鐘Alison campanelloを。


#AlisonCampanello
(48) 2023/09/27(Wed) 20:47:29
黒眼鏡は、行方を晦ませた。 #AlisonCampanello
(a13) 2023/09/28(Thu) 11:39:29

 


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