人狼物語 三日月国


258 【身内】冬融けて、春浅し

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[此方に寄せられ 体を辿っていく彼の指先 を暫くはその儘に任せていたが、やがて下腹部へと至れば──ぐ、と眉を寄せた。そうして僅かばかり身を引くようにして、それ以上の接触を押し留めただろう。
今触れられては我慢が出来ない。

一瞬掠めた相手の指にも、確かに張り詰め行く熱は伝わった筈で。耐える此方の意志が伝われば良い。]


 ……、


[己の手へ応えるよう従順に、開かれ行く脚に覚える口内の渇き。
潜らせた指先で体内を少しずつ解す中、表情を覗き込む此方の視線を遮るよう擡げられた腕が 彼の顔を覆い隠す。叶うなら直ぐにでもその下を知りたい衝動に駆られたが、しかし相手の心情を思えば性急に動く事は憚られた。]

[それでも、その隠し切れない口許が──己の指先に合わせて、時に引き結ばれ、時に耐え切れぬよう解ける様が艶めいて。 其処から溢れる呼気が甘く鼓膜を揺する。上擦った、多分に色香を含む掠れ声。
名を呼ばれれば 否応なく頭が茹だり、つい、指に力が籠る。相手が顕著に反応した起点たる痼りをぐうっと押し込んで、]


 なあ……顔、見せてくれ、


[彼の昂ぶりから離した手を、腕にそっと掛ける。無理に引き剥がす事を耐え───強請るように掛ける声に相手は応えてくれるだろうか。
三本目を飲み込ませて、より増えた質量を馴染ませた。それぞれに慎重を期して、急かぬ程度に柔く、しかし確かに壁を掻いて拓いて行く三本の指がやがて滑らかさを得て動きが良くなる頃。引き抜いた指で潤滑油と共に用意していた避妊具を掴んだ。]


 冬莉、


[合図のように名を呼ぶ。かちゃ、とベルトを外して下穿きを寛げ、取り出す己の雄は疾うに熱くそそり勃っていた。先刻と同じく端を噛んで包装を破り、潤滑ジェル付きの薄いゴムをその先端に押し当て、くるくると装着する。
相手の膝に再び手を掛け改めて双脚の狭間に押し入ると、張り詰めた雄の先端を確かめるよう双丘の狭間に擦り付けた。抗い難い欲を燻らせた儘、相手を見据える。]


 ……あんたの中に、入っていいか。
 


[──そうして、何らかの許しを得られたなら。]


 ………っ、


[ぐぷ、と指より熱い質量で。
その熟れつつある肉壁を掻き分けるようにゆっくりと、己の欲求を以て愛しい肢体を拓いていく。*]



 ………ぁ……… っ、


[深く押し込まれる指先に肩を震わせて目元を隠す腕のその先がきゅうと力を込めて握り締め、悦を逃さんと足が 僅かに内に寄ってしまいながら。 彼の手から解放された自身は 先端が下腹に付いてしまうほどに存在を主張していた。]


 ……… こんな姿、……見せて


[他ならない彼の 柔らかな強請りを断る心算は無い。無いのだが、数舜躊躇するのは 自分の見栄からだろう。否、それだけでは無かった。———頭に過ったのは この腕を退かしたその先の彼の表情が曇っていく様。]


 …………幻滅、しないでくれ。


[乱れた呼気のままで、小さく呟いた希う声はこれまでに抱いていた感傷をも含めたものだった。
 自身と、彼が言葉にする自身の姿との 隔たり。彼が情を向けてくれるからだろう、その美化された自身の像は嬉しくないわけではない。だが、この浅ましい様を見せて、幻滅したりされないだろうか。視界が晴れたその先も、変わらず隣に居場所を構えてくれるのだろうか。
 触れる指先のままに、緩やかに腕を退かしていく。人工灯の光が真っ直ぐに、退かした先から差し込んできて 思わずきゅうと目を閉ざした。火照った頬のままで慣らすようにしぱりと目を瞬かせ、徐々にピントが合わさり ぼやけた像が輪郭を帯びて形作っていく。彼の表情が僅かに鋭く、熱を帯びているように見えるのは 、自身の期待故だろうか。
 
せめて、会社で向けられる あの凍えた眼差しでなければいい。




 ……ん、………ぁ


[締まった腸壁を広げていく指先の違和感が薄れていき 顔を晒したまま 女のように秘部を濡らしていく頃合い。抜き取られた異物、出来上がってしまった余白を埋めんと内壁がうねるのが分かった。 放たれた自身の名に、意識を目の前の彼へと向けていく。
 つい先程、彼の欲も誘わんと 触れようとするも躱された熱が顔を出す。雄々しく聳え立つその屹立に、他ならない自身への欲情からの産物だとそう思えば、喜悦に心が震え、笑みを綻ばせながら彼を見上げた。彼のその備える姿は己も良く行う仕草、この先の行為を意味しては、彼の首裏へと腕を回していく。本来の用途でない場所へと擦り付けられる雄の熱に、ひくりと蜜部が漣立つのが分かる。]


 ……… おいで。

 俺も、…… それが欲しい。


[自然と漏れた囁きと共に、情欲を双眸に溶かしたまま 彼に乞うて。]



 ……、っ……ん………


[濡れた蜜口へと先が触れて、緩やかに圧し込まれていく。先程のものよりも太く熱い杭が 腸壁を拡げ 擦っていく圧迫に息が詰まり 鼻先から音を鳴らし呼気が抜けていく。みちみちと開拓されるその質量を受け止めるのに 、その首裏に回した腕の力が強めた。やがて、奥底へと辿り着き 進度を止まるのを目を眇めて。内側から———薄い膜に覆われているはずなのに、伝わる——どくどくと脈打つ熱欲が、まるで自身の身体の一つのように 余白を埋めて 存在を放つのを全身で感じる。]


 …… 繋がってる、な…………俺等、


[言葉にすれば血潮とともに細部まで行き届いていく喜色の心地に浮かされたまま、片腕を離し 薄い腹のその少しばかり盛り上がった個所へと指先を這わす。彼と繋がっているその証への愛おしさのまま、輪郭を辿るように触れていきつつ、深く息を衝いた。*]
 


 ……あんたの何に、幻滅すると。
 

[余りに予想外の言葉。
いっそこの場に不釣り合いな様相で瞬くも、零れ落ちた其れが心からの懸念である事をその声色に知る。それでも此方の強請りを受け入れるよう 彼の腕が外されて―――眼下に晒される上気した頬が艶めいて、蕩けた眼差しが愛しい。縋るような声へ目を細め、鼻先を擦り付けた。]


 あんたを“そんな”姿にしたのは俺で、
 “見せて”欲しいと願ったのも俺だ。


[この胸を占める愛惜が、どうすれば伝わるだろうか。
屹度彼へ向けた眼差しは如何しても欲に塗れていたが、それでも己にとって数少ない笑みを、相手への情で以て眦に溶かした。]


 可愛い。
 その顔を……あんたが俺を求めてくれる顔を、見たかった。
 ……あんたが愛しいから、そう思う。


 ─── 好きだ、冬莉。

 俺を受け入れてくれて、有難う。
  


[招かれる儘、ぐうっと腰を押し進める。
指で散々解した後ではあるが、当然に内壁は幾許かの抵抗を見せるだろう。首裏に掛かる手が力を増すのに相手の負担を知り、動きを止めて暫し馴染ませる。]


 ……は、……苦しく、ないか。冬莉、


[潤滑油で泥濘む中は、薄いゴム一枚を隔てても熱い。
熱く、蕩けるように己が雄を包み込む内壁が心地好く──何よりも、好いた相手が己を受け入れてくれているその事実が幸福で堪らない。もっと奥まで入りたい。大事にしたい。暴きたい。


───巡る様々な衝動の一切を、奥歯を噛み締めてやり過ごした。


腹を撫ぜる指先を見送って、また一つ熱い呼気が溢れる。
先刻そそり勃っていた彼の昂りは、内から圧される違和感に萎えてはいないだろうか。探るように互いの腹の狭間へ指を挿し入れ、其処で揺れる陰茎を掌で包んで扱く。
併せて、とちゅ、とちゅ。と、緩やかな律動で始める抽送。悦楽を促すよう張り出した雁首で痼りを押すように、或いはゆっくりと奥まで埋めるように。

噛み締める歯が興奮に浮く。嗚呼、これは───屹度、そう長くは保たない。*]


[視界が満たす彼の笑みは、——柔らかくも情を色濃く孕んだそれは空想でもなしに、紛れもなく目の前に其処に在った。


 ……… そうか。
 それなら、良かった。


[傍寄る彼に頬を摺り寄せて 胸中を占める安堵に身を置いた。彼の言葉一つで蝕んでいた不安が晴れるかのようで、その女々しさは行為の上でからか。他人の様々な目に晒されてきた身としては、目の前の彼が 他者の一人になるのを何よりも恐れていたのかもしれない。
 可愛い=Aと。紡ぐその言葉はまだ自身として捉えるには こそばゆいものがある。が、それが彼の愛だと思えば、喜悦に更に口元が解けていく。期待に応えられているのだと、緩みきってしまった年甲斐の無い顔を彼の前に差し出してしまうことに躊躇は、もう無かった。]



 俺も好きだよ、幸春。
 ………愛してる。
 

[お前さんの為ならば、如何も。自身の為に言葉を尽くしてくれる彼に、一層想いの丈を込めて。]



 ………、いや。

 すげえ、幸せで……… 駄目だな。
 頭が馬鹿になってるわ、それ以外……考えられなくて。


[彼の配慮へと、込み上げる多幸感をただ言葉にすることしか出来ずに 苦笑を浮かべる。こんな感覚は知らない。行為に悦楽よりも、増して覚えるものがあるなどと。堅く反り立つ屹立は、身に余る歓喜にひくりと先端を震わせていた。
 頭上で平生を装うものの、僅かに口元を結ぶ彼の姿に そうと頭をくしゃり撫でて その青みの掛かる黒髪に指先を梳かす。]


 ………我慢、すんな。
 お前の欲を、ぜんぶ、俺にくれないか。


[伴う痛みも、痺れも理解してはいるが、それよりも今は彼の情欲も、愛も———全てを、あらゆる感情ごと全て受け止めたかった。情事の前に吐露してくれた 同性愛における障壁らへの覚悟も、全て。彼の為なら、担うことができると真に思う。 ]
 



 ん、ぁ……… は、


[手のひらで包まれる中で、張り詰めた逸物が脈打つ。やがて、中を蠢く雄に手繰られるままに、昂ぶりを扱く指先とともに与えられる二重の悦に声が弾んでしまう。緩やかに慣らすような抜き差しに 快楽を知ってしまった凝りを圧され 喉仏が———自身の急所が撓り 彼の眼前に晒す形に。圧される度に飛び出る嬌声は、低くも 彼から植え付けられる悦に濡れて。]


 ゆきはる……っ、


[どろりと蕩けた瞳で 彼の手で作り変えられた身体は抽送に合わせるように、無意識に快楽を追っていき。 従順に拡げた両足を崩さぬまま、ゆらゆらと彼のものを味わうように腰が蠢いてしまう。*]
 


[互いの呼吸の他は静かな室内へ、ほつりと解け行く声音 に鼓膜ごと腹の底が揺さぶられる。
たった数日、だが、以前にはもう戻れない事を誰よりも己が解っている。

───出逢ったあの日は夢とさえ錯覚しそうな酩酊感が在った。余りにも自分に都合の良い話だと。だが今は確かな現の熱量に背を押され、愛しい男を組み敷いている。

差し出す想いへと、確かに返る応えがある事の幸福を思う。 同時に体は全く正直で、相手の腹を内から押し上げる質量がまた嵩を増した。]
 


 ……あんたが幸せなら、俺も嬉しい。


[紛れもない本心だった。膝裏へ手を添え、痛めぬ程度に更に脚を開かせる。腰を進めて埋まった距離の分、己の雄がまた相手の体内を割り開いて潜り込む。

抜ける寸前まで引き、縋る内壁を擦り上げるようにして──また奥へと嵌め込んで。締め付ける媚肉を味わう内に緩やかだった抽送も、次第に欲を抑え切れずに速度を増す。許しを得られたとあれば、尚更に。]


 っ……あまり、煽ってくれるな、


[甘く蕩けた表情と、応じて揺れる腰の色香。いよいよ我慢の限界となり、撫ぜられた髪の下で眉を歪めた。沸き上がる吐精の予感にせめて相手を置き去りにせぬよう、共に果てる事を促すべく濡れた陰茎を尚も摩る指は止めぬ儘。先走りでぐちぐちと、手中で震えるその先端や裏筋を指腹で扱きながら、───そうして、]



 冬莉…… ッ、


[美味そうに晒された急所へ歯を立てるのと同時、一際強く深く中を穿ち、互いを隔てる薄い膜の中へ白濁を吐き出した。]
 


 ───……、


[深く呼吸する、暫しの間。]


 …………大丈夫、か?


[重ねた胸板を起こし、出来るだけ刺激しないよう緩慢に腰を引いて退く。額へ張り付いた彼の前髪を梳くように撫ぜながら、眼下を眺めた。*]


[自身の内で嵩を増していくその圧迫さに、熱情を覚え 愛しさが込み上げる。他の誰でも無い自身を求めているのだと雄弁に伝わり、——自身が望んだ所以の虚像と現実が重なるような錯覚に、中の肉壁が彼自身へときゅうと締まり、 まるで片時も離さないとばかりに。]


 …… ふ、……… ならば
 ずっと、そばに……いてくれよ

  
[自身の幸福は最早、彼の隣にあることを指すのだと。誘われるままに 躊躇いも遠慮もなく彼の眼前で更に蜜部を明け透けにしては 雄への期待に浅ましくも臀部が僅かに浮いた。
 引き抜かれ、暴かれた分の空白が出来てしまい ひくひくと漣立ってしまう肉襞が 、一気に更に奥底へと突き上げられ———歓喜を上げる。 ]


 ひ、あ、……あぁ………!


[胎の奥底へと滑込むように粘液を掻き回され、逞しい背中に縋り付く。ベッドの軋む音に包まれながら、先端が雄膣を抉ると共に、激しく擦り付ける自身へと快楽が混ぜこぜになり、女々しくも上げる鳴りは音域を超えて。まるで、そう。奥底を貫く先端こそが、悦楽に至るもののように。視界が徐々に輪郭を無くし、光がぼやけ 潤んでいく。]
 



 あ、あぁ、……ゆきはる、……っ、ん


[徐々に動きが速まり、高みへと誘われる中で 理性と共にどろりと緩みきった唇は彼の名前を形作り。ゆらゆらと揺れていただけの腰付きも、明確な意図をもって 蠢いていく。 本能が、愛する人だけを、ただ欲していく。]


 ……っ、で—————っ!


[出る、と言葉にする間もなく 急所へとその柔肌に牙が食い込み 胎を一層突き刺すのと同時に、手の中で熱が勢い良く弾け飛び、彼を白く汚す。絶頂に達する中で、中でびくびくと子種を注ぎ込まれる感覚を薄い膜一枚隔てた先で覚え——— 喜悦が、滲んだ。]
 



 ぁ、……はぁ、………


[蜜部は 咥え込んだものを無くしてしまい はくりとその口を揺らし。未だ呼気が乱れる中で 愛しい声が身体を慮るのを聞こえた気がする。小さく頷きながら されど、未知の快楽に浸された頭は 未だ意識を正すことができないままに だらりとより色濃く赤が映えるべろを外気へと下ろして 彼の顔へと寄せて。]


 ……くちびる、………。

 
[キスがほしい、と後頭部へと手を置いて 、余韻のままに 彼の咥内へと侵して 貪り付いた。互いの液が交わり、一つになるような錯覚を欲しがって、———唇を離せば たらりと銀糸が口端に伝っていく。]
  


[感極まったような蕩けた声色。
平素と異なる高く掠れた吐息が、何処までも甘く脳髄を揺さぶった。其れが己の名を形取るとなれば尚更、衝動を止められる訳も無く。内を突き上げる律動に応える肢体が健気でさえ在った。

─── 一拍を置いて、導かれる儘に手の中で弾ける屹立の素直さに口の端が解ける。緩々とその残滓をも吐き出させるように扱き上げて、共に果てた名残を掌に擦り付けた。]


 …… ん、


[茫洋とした様子を目を細めて見守る内、後頭部へ掛かる力を知って身を寄せる。
恋人の可愛らしい強請りに応えない理由は無い。無防備に晒された舌を己の其れで掬い取り、重ねた唇を啄んで、啜った唾液を嚥下する。最後に小さな水音を立てて口を離すと、彼の口の端を伝う軌跡を舐め取った。]


 疲れただろう。
 休むか、──…?


[感想、だろうか。
至近の距離で小さく溢れた声に喉が揺れた。緩々と眦を弛ませる。
どうあれ、初めての身に無理を強いた自覚は在った。比較的綺麗な側の指の背で、頬を撫ぜて顔を覗き込み─── 一方で、]


[此方の意を悟るように 絡み取られた舌先に目を細め、深く媾う口付けに胸中が満たされていく。彼の寛容さに甘えながら、欲深さをさらけ出すことが出来るのは互いに情を通わせている、自覚があるからこそ。彼との情事、その繋がりを経て、彼との心的距離さえも間を縫って 近く感じるのだろう。]


 …………… そうだな、


[彼の心配りに対して、徐々に呼び戻される理性が顔を出して 相槌を一つ。曖昧に応える言い回しになってしまうのは、余韻からか、それとも。未だに赤みの差す頬へと触れる指の背に、猫のように寄って 甘えを見せながらも。]
 

【人】 靖国 冬莉


[薄く、目を開く。
 覚醒未満の思考のままで視界が広がれば 彼の寝沈む表情が輪郭を溶かしたまま、映し出される。腕の中の温もりに心地良い微睡みへと身を浸しながらも、カーテン越しに差す光が 夜が明けたことを示し——— ぱちり、と目を瞬かせた。

 意識が、現実に順応していく。思い起こされるのは昨日の夜のこと。
 あれから、自身はどうしたのだろう。彼は。起き上がろうとすれば、全身に軋むような鈍い痛みが走った。]
 
(0) 2024/05/04(Sat) 13:16:46

【人】 靖国 冬莉


[視線を持ち上げれば 、瞼を閉ざした彼が 微かに息を鳴らしている。凛とした切れ目に、鼻筋が通った端正な顔。———やはり、綺麗だとそう思う。頬を柔く手のひらで包み込んでは、その温もりを味わいながら 彼の腕の中で静かに横たわったまま。やがて、瞼が上がれば 、口元を緩めて 顔を近付けようか。]


 おはよう、幸春。


[一日の始まりを、彼が最初に目に入れるものが自身であるその喜びを噛み締めながら、穏やかに囁いた。*]
 
(1) 2024/05/04(Sat) 13:17:42

【人】 靖国 冬莉


[重たげに瞼を揺らす彼のその可愛らしい姿に一層口元が緩まってしまい、その沈黙が心地よい。包み込んでいた指先をそろりと頬をなぞるように撫でて 彼の言葉を待ち、—————やがて交じり合う眼差しへと愛しさを注ぎ込む。傍寄る鼻先に、自身もすり寄らせては、そろりと下へと降りて 優しい手つきで撫でるその指先に僅かにひくりと背を震わせるのは未だ響く彼を受け入れた証である甘い痛みからか。
 立ち上がらんと腰を上げる彼のその裾を、気が付けば 自身の手は掴んでいた。]


 ………あ、


[いや、と 無意識の行為を理解した口元は漣立ち、視線はベットシーツへと落ちてしまう。この温もりが離れていくことへの情感を、年甲斐もなく甘えるように明け透けに行動で示すのは昨日の情事の名残やもしれない。
 続く言葉に視線を持ち上げて、少しばかり思案し始める姿を眺めながら。]
 
(3) 2024/05/04(Sat) 19:39:24

【人】 靖国 冬莉



 ……お前さんが好きそうな惣菜は幾つか冷蔵庫に入ってる。作るならば食材は……すまん、無いな。腹が空いているのなら どれも好きに使ってくれ。

 だが、………今は。


[もう少しこのままで、と未だ輪郭が解けた視界の中で 彼へと向けて笑みを零す。情事の後、言葉を交わさないままに寝てしまったその空白を縫うように。
 もし、戻ってきてくれたのなら 腕を背へと回して此方へと寄せて今日は、予定はあるのか。≠ニ囁き 尋ねる。互いに重なった希少な休日、何時まで彼との時間が許されるのだろう。*]
 
(4) 2024/05/04(Sat) 19:39:44

【人】 靖国 冬莉



 そうか、……ありがとな。


[俺は大丈夫だと、髪に触れる指先に少しばかり首を傾けて 繋ぎ止められる指先をきゅうと握り締めた。
 表情筋を緩ませる彼の顔は 昨日から良く見かける気がする。その表情が特別なものだと知っている身としては、その度に心を揺さぶられてしまうのは此処だけの話。自身よりも他人を慮る何時もの彼の姿に、その眩さにすいと目を眇めた。本当にお前さんは心配りが上手だなぁ、と心中零した言葉は果たして口に出ていただろうか。
 
まさか、聞けば不安になるだろう彼自身の生活についても、何なら彼の思慮している配慮も、頭に無い中で。

 
(7) 2024/05/04(Sat) 22:04:56

【人】 靖国 冬莉



 いいや、違わないな。


[彼の応えに一層笑みを深めて、隣へと来る彼を腕の中へと包み込んで 柔く抱き留める。急用も無く、呼び出しも無い。擽ったげに目元に触れる柔さに身じろぎながらも、彼との時間を妨げるものが無いことに 安堵の息を漏らした。 ]
 
(8) 2024/05/04(Sat) 22:05:07

【人】 靖国 冬莉


[彼の言葉に続いて首を軽く振っては、いいや、何でもないよ。≠ニ小さく呟き、繋がれた指先からすいと彼を引き寄せる。出来れば、彼の心配りが向かう先がこれからも自身であることを、願いながら。
 回された腕の中で くすりと笑みを零しつつ、彼とともに怠惰に身を置ける幸せを抱きながら そうと目を閉ざす。二人だけの空間でのピロートーク、————想定していないかった鈍い痛覚と共に このひと時を味わえることの喜びをもう少しだけ、味わっていたかった。]
(10) 2024/05/05(Sun) 13:10:10
 




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