人狼物語 三日月国

70 【第36回TRPG村】百鬼夜行綺譚


【人】 封じ手 鬼一 百継

>>3:34 誘蛾 絆取得
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月に向かって弦をはじき歌う誘蛾を見ていた。

――ただ 請うは そう
  この世の すがた
  これこそ 真実 あな 美しや


歓びと快楽の涙がぽろぽろと珠に成ってあふれるように、誘蛾の調べは、こぼれ、止まらぬ。
その姿を見ていると、儂は、どうしても、ひとりの女性を思い出さずにはいられぬ。


――ねえさま。

徽子ではない、鬼一の血を同じくする姉のことだ。

9年前の百鬼夜行。
それまで、鬼一の一族は、定期的に訪れる百鬼夜行で封じ手としての力を振るい、犠牲を最低限に抑えてきた。
そう聞いていたから、5歳の儂は安心していた。今回も大丈夫だと。

それが突然、父、母、姉を連れていかれたものだから、通例よりどれだけ強力な"百鬼夜行"が行われたのかと、それは如何なる理由故かと、不思議でならんかった。
真実を知れば、なんてことはない。
徽子はすべて知っていた。

姉が百鬼夜行の狂おしい饗宴に魅せられ、屈し、与したのだ。
身内の……ごく親しい身内の裏切りによって、父と母は喪われた。

記憶の中の姉はいつも溌剌としていて男勝りで、その瞳は知性で輝いていた。
堕ちたなど、信じられん。だが事実だ。
つまり、百鬼夜行には、そんな姉を惹きつける"何か"があるのだ。
(5) TSO 2021/04/24(Sat) 0:47:27