人狼物語 三日月国

70 【第36回TRPG村】百鬼夜行綺譚


【人】 京職 一葉

「────ッ、もう私では到底お相手になりませぬな……っ」

キン、と弾かれた刀が後方へ弾け飛んでいく。
両腕が未だ痺れているのは、彼の今の膂力を示すには充分すぎる程のもので。

「立派な若獅子に成られて、私は嬉しうございますよ」

出会った時は子猫のようでしたのにと笑えば、昔の事をと拗ねた風な顔になるだろうか。

家族を失い百継様の養子となった少年は、百継様の傍ら、共に百鬼夜行に対抗すべく爪と牙を研ぎ始めた。それが決まった道筋であったかのように。

師と呼ばれる程の行いではないが、当時の彼に護身術や刀の扱いの基礎を教えた事もある。

前当主を始め、相当の人々が妖共の餌食となった惨事で閑散としていた屋敷の中、訪れる度に手合わせにと乞われ続けた時期もあった。

私の胸ほどにしか無かった背丈は、今は並び立つ──若干見上げねばならない感覚があるのは気の所為だ、気の所為──程。

「────精悍になられましたな」

僭越ながら、百継様の背を守るのは私でありたいという思いを抱いている事は否定しない。
だが百継様の御前、かかる火の粉を払うのはきっとこの男であるのだろう。

一葉は少しも変わってない風に見えると、褒め言葉か慰めかは判らない言葉には、あとは老いる一方でございますよと軽口で返したのだった。*

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(24) Valkyrie 2021/04/21(Wed) 7:29:54