人狼物語 三日月国

70 【第36回TRPG村】百鬼夜行綺譚


【人】 京職 一葉

>>31 >>32
誘蛾様返し


油断、していた。
才に溢るるとはいえ、容貌は少女で。声はかそけき鈴の音のよう。

「────…………ぇ、」

傍らを歩く誘蛾様がひたりと足を留め、こちらを見上げ、「何者」かと問うて来た。
ざあ、と体温を奪う一陣の風が吹き、大通り特有の喧噪が瞬間、遠のいてゆく。

  ────しまった。


肌がざわりと粟立つ気がした。

時は正に"逢魔が時"。

昼と夜とが混ざり合い、妖のものが最も人の世に近付きやすい頃合い。取り繕っていた諸々が剥がれ綻びかけているのを、私は肌で感じていた。

その顔を覆う飾り絹の向こうかじいとこちらを見つめる少女から、私は、目を逸らせることも他愛ない話で誤魔化すことも出来ず、
(35) Valkyrie 2021/04/23(Fri) 17:29:57