人狼物語 三日月国

87 【身内】時数えの田舎村【R18G】


【見】 天狼の子 夜長

【祭りの終わり】百千鳥 

「昔がよかった、こうだったらよかった。
 それは持ち続けていていい、モモチの持ち物だ」

 またいつかの約束をするのは嫌でなかった。むしろしたいことだったが、そうするよりも先に、言いたいことがあった。

「……なんだろう。砂が、経験や思い出の砂時計があって。
 白い砂が、落ちたら色が付くんです。

 生きていて、色砂が積もって、増えていって。

 その増えたもののことを考えることが増えるのは、当たり前だと
 俺は思う。良くない思い出一個だけをよけておくのも難しい。
 砂が落ちて積もる場所は、ひとつだけだから」

 雪子から聞く思い出話は、いい思い出だけではなかった。悪い思い出の全部が話されたわけでもないと夜長は思っている。それでも夜長は村が好きで、村に行きたかった。

「色砂はモモチの物だが、
 忘れたり、考えないようにしまってもいい。
 考えるとつらかったり、くるしかったりするから。
 時間を刻まない、時計みたいになっても良くて」

 鬼走から譲られた懐中時計も、もしかしたらつらいやくるしいが理由で止まってるのかもしれない。そんなことを考えたことがある。
 家族が欠けて、かなしくて、それでも変わらず時を刻み続けて。それはすごく無理をしている状態で。みんなが揃っていた時には、同じ様に落ちても"みんながいるから"平気だったかもしれない。でも、落ちた時にはたくさんくるしかったから。

 何もなく動き始めるとしたら、色んな奇跡が重なった時だろう。
(@5) 2021/08/21(Sat) 1:03:37