人狼物語 三日月国


87 【身内】時数えの田舎村【R18G】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:

全て表示



【恋】 おかえり 御山洗

水の中に溶けていく感触はゆらゆらとして不安定で。
握りしめていなければそれが熱を持つ人間だとはわからないみたいだ。
体を構成するひとつひとつを辿って。指の節がしっかりしていること、
腕は細いけど楽器を扱うぶん案外しっかりとしていること、代わりに足の頼りないこと。
腹のなかにちゃんと臓器が入ってるのかあやしくて、触れると骨にあたること。
体の何もかもを腕の中に収めて掻き抱く。くすぐったそうに笑う声が耳に籠もる。
リフレインする響きだけで腹の内側がぞくぞくとして、耐えられないほど苦しい。
目隠しでパズルをしているみたいにあちこちに指を這わせて、まるで骨の継ぎ目を確かめるみたいだ。
名前を呼ばれる声は唄うように柔らかくて、ああ、でも、聴いたことのない声だ。
ならこれは望みなんだろうか。なら、きっと叶わないことなんだろう。
でも、こうして。手が届く。跳ねる声が、恥じるように笑う声が。
夢なんだろうか。欲望なんだろうか。ただ、俺が願っているだけなんだろうか。
そう紡いでほしいと、そう思っているだけなんだろうか。
熱っぽい目元も、束を外れて顔に落ちる髪の柔らかさも。はっきりとした白目も。
そんなものは知らない、見たことはない。そんな日は来ない。
そんな日は来ない。
そんな日は来ない。
わかっていても、望みが拍車を掛けてより鮮明になる。
触れられる感触も、熱っぽい吐息も。触れた時の湿潤も。
知らないものは全て俺が自分の中に作り出した偶像なのに。
そんなふうに優しく、微笑んでくれるのか。
どうか、許されたい。
許してもらえるんだろうか。
お前に、許されるんだろうか。
(?2) 2021/08/15(Sun) 1:09:04

【置】 おかえり 御山洗

がば、と体を起こす。汗だくの顎から伝った汗が布団にぱたと落ちた。
頭が痛む。汗のかきすぎだろうか。夏の暑さが皮膚を締め上げるようだ。
流れ落ちていく汗の感覚を意識が追って、時間を掛けて夢と現実が選り分けられていく。
深呼吸して喉を通る息の冷たさが、まるで水を流し込んだかのように思える。

「……」

張り付いたシャツを引き剥がして空気の通り道を作る。腹が冷えそうだ。
腕に触れ、肘の内側に触れ、皮膚と手の平の間の空気を追い出すようにぎゅうと握りしめた。
恐れている。怖がっている。何より自分が、いやになる。
自分がいる場所はここではない。もう、ここに自分の居場所なんてのはないのだ。
帰ってきてよかった。帰って来なければよかった。全部、そのまま忘れてしまえばよかった。
(L1) 2021/08/15(Sun) 1:15:43
公開: 2021/08/15(Sun) 1:15:00
御山洗は、怯えている。
(a0) 2021/08/15(Sun) 1:15:51

【独】 影法師 宵闇

やっぱ村人仲間もちぱいさんでは???(違ったらごめん)
ごめん、俺さきにいくな…………
(-32) 2021/08/15(Sun) 1:52:43

【墓】 現実に背を向けて 竹村茜

「夏祭りか…皆と行きたいな。
 かき氷食べて金魚掬って…ふふ、楽しみ〜♪」

にこにこ、これから待っている楽しみに思いを馳せて家に戻っていく。
女の子には、用意したいものが沢山あるのだ。
(+5) 2021/08/15(Sun) 2:26:58

【秘】 巡査長 清和 → 花守

響くエンジン音と共に背中に感じるのは、温かく確かな存在感。
ふたりを乗せたバイクは風を切り、遠くに見える街灯りに誘われていく。

誰も、お荷物だなんて思ったことはない。
他の誰よりも前を進んできた。ずっと背中を見せてきた。
自分がそうしたい、そうありたいと思ったからしてきた生き方。
だけど、そんな生き方も、いつまでも続けてはいられなかった。

それを痛感させられたのは、花守と『約束』を交わす、少し前の事。

「ふふ、そうかそうか……大人しくて無垢な少女、か。ふふ……」

面白いことを聞いた。と、おかしそうに笑う声が微かに聞こえてくる。
花守を知ってれば、とてもそんな風に称することはできないだろう。

そして、今まで自分がみんなに見せてきたものとはまさしく、
理想や妄想を押し付けられるような『清和瑠夏』の姿だと思った。


「つまり、縁ちゃんは自分のことを見てくれる人と一緒になりたいと。
 大変だな。そんなヤツ、探してもなかなか見つからないだろうに。
 お医者様なんて、特にいい顔してないといけないだろうしな」

将来を案じるような声色で、ぶつぶつと呟いて。

──街灯りは、まだ遥か遠く。
(-33) 2021/08/15(Sun) 2:32:22

【秘】 学生 涼風 → 髪置

/*
涼風PLの万華鏡です。お疲れ様ですanimalさん。本日のデイリーログインボーナスアニマルガチャをしにきました。

金魚animalさんとこうして呼ぶのも終わりが近づいてきています。寂しく感じますね。次は[[ fortune]]とかどうでしょうか。強そうでいいと思います。

animalさんがマジで頑張りますと言ってくれたので、ちょっと髪置くんに投げかけられそうなものを練りたいと思います。でも今はもう遅いのでどうかゆっくりお休みください。

でも駆け抜けると言ってもシリアスではなくギャグにすっ転ぶかもしれません。その時はその時ということで。どうぞよろしくお願いしますしろanimalたえanimalさん。以上万華鏡でした。
(-34) 2021/08/15(Sun) 2:35:30

【秘】 学生 涼風 → 髪置

/*
と思ったのですが避難警報は本当に心配なので、軽めにいこうと思います……どうかお気をつけてお過ごし下さい……。
(-35) 2021/08/15(Sun) 2:38:35

【人】 学生 涼風

【四日目 早朝】

 線香とい草の匂いに包まれた部屋に、ぱさりと乾いた音がする。
 纏っていた着物の下から現れたのは真白の肢体。肉付きは薄く、されど女のようなしなやかな曲線を描いている訳ではない。陶器製の人形めいたその体は、確かに男の形をしていた。

 母への手向けの舞を踊った後。着物を畳み、手早く洋服を身につけて。仏壇の前に正座する。

「……こうして母さんの実家できちんと話ができるとは思わなかった。
 そもそも、私はずっと勉強ばかりしていたから、拝む事さえきちんとしなかった親不孝者として怒られてしまうかな」

 語りかける写真には自分と同じ顔がある。けれど慈しむようなその微笑みは、自分と似て非なるもの。
 視界が狭くなっていた自分では、こんな笑い方できるわけがない。

「母さん。私は元気でやっているよ。少し話をしようか。あのね……」

……
……
……

(4) 2021/08/15(Sun) 3:07:18

【秘】 髪置 → 学生 涼風

/*
万華鏡さん、デイリー秘話ありがとうございます。
髪置PLの27鹿animalちゃんです。

頑張ると言ってもレスの確認頻度を増やして、
返信を後回しにしないくらいしかできませんが、
そっちがその気ならこっちはあの気でいくぜ!というやつです。

避難勧告的なやつはあくまで警告状態で実際にはそんなに被害ないので安心してください。(先月くらいは道路が10cmくらい水没してましたけど)

そして、頑張ると言っても無理しない程度の頑張りには抑えるつもりですので、そちらもご無理はなさらぬよう。

ロールの方向性はどちらでも楽しく受けられます。方針に悩んだ時は秘話でPL相談も承りますので遠慮無くどうぞ。
それでは、またのお便りをお待ちしております。
(-36) 2021/08/15(Sun) 3:08:15

【人】 学生 涼風

>>4

 滔々と語る言葉に相槌を打つ者などいない。けれど、少年は決して報告を止めるつもりなどなかった。
 失われていた家族との時間がたまらなく愛おしかった。例えそれが相手が既に死んでいたとしても、今ここにいる場所が夢幻のようなところであっても。

「……」

 身の回りに起きたことを少しずつ話して、途中ではたと気付く。
 道を選ぶのが嫌で、夢と向き合うのが嫌で、甘く優しい思いしかないこの場所にずっといたかった。

 でも。それでも。
 この永遠にいてしまったら、夏の思い出に浸り続けてしまったら。

 成長を喜んでくれた母に、今なお共に生きている父に、報告するものが無くなってしまう。

「それは…………寂しいな」
(5) 2021/08/15(Sun) 3:08:59

【独】 学生 涼風

髪置ーーーーしろたえさんーーーー好き❤
(-37) 2021/08/15(Sun) 3:10:26

【神】 巡査長 清和

>>3:G56 >>3:G58 宵闇 【2日目 ピアノ勝負時空】

言うや否や、あなたの許可が得られたかも曖昧なまま、
押しのけるようにして、少し強引にピアノの前に座る。

一回、二回、自分でも確かめるように鍵盤を優しく叩いて。

あの頃を懐かしむような手付きで、曲の始まりの部分だけを
何度か繰り返して弾いた。ピアニストにとっての準備運動だ。

「……よし」

10年のブランクを経たというのに、確かに感じる手応え。
満足気に小さく声を漏らして呟き、そっと目を閉じれば。

清和の指が優雅に、軽やかに鍵盤の上で踊り始める。

清和にとっても、宵闇にとっても懐かしい曲が奏でられる。
俺たちふたりの勝負といえば、この曲を置いて他にはない。

清和が一番弾けた、"あの頃のままの演奏"がそこにはあった。

最後まで演奏を終え、ふぅ。と一息吐けば、ゆっくりと振り向き、
後ろにいるであろう"ライバル"に不敵な笑みを浮かべて口を開く。

「……後攻、どうぞ? 俺に"ぎゃふん"と言わせてくれるかな?」
(G0) 2021/08/15(Sun) 3:16:52

【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

 
 歪だらけで矛盾だらけ。

 今居る『アタシ』はこの村を愛していたあの人の
 その面影を滅茶苦茶に継いで接いで作った張りぼてだ。
 自分も嘗てはそうだったけど、もうそんなふうには居られない
 そう言って捨ててしまったものを、もう一度拾い集めて。

 自分に自信が無いから取り繕う。
 自分はこの場所がそんなに好きではないのかもしれないと
 そんな不安を塗り潰す為に人の殻を借りる。
 借り物だらけで不格好、そんな一人ぼっちの王様だ。
 
(*3) 2021/08/15(Sun) 3:28:40

【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

 
 それの何が悪いというのだろう?

 人はいつか絶対に、誰もが見て納得するような
 きれいな形に収まらなければならないのだろうか?
 きれいな形になれない人は、決して存在してはならないのか?
 ああ都会では確かにそうだった、でもここではそうではない。

 どんなに不安定で不格好でも、今こうして
 ここに立つ事ができているのだからいいじゃないか。

 この場所で、こうして変わらずに在り続ければ
 きっと、何も憂鬱に思う必要なんて無いはずだ。

 それを正しくないと切り捨ててしまえるのは、
 歪で正しくないその支え無しでも立てるから。
 欠けた四角形、正しい形を失った自分達は─
 
(*4) 2021/08/15(Sun) 3:36:35

【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

「………あれ?」

 雑木林の中、ふっと現実に引き戻された、ような錯覚。

 失ったものなんて、無いはずだ。
 思い出の中そのままの村があって、
 成長こそすれど、その優しさは何も変わらない皆が居て。

 皆の中の、自分の知らない一面が顔を覗かせるのは
 彼らが何処か遠くへ行ってしまったようで怖かった。
 それでも変わらない一面もあって、だからそれで良かった。

 自分にだって、変わった所が無いとは言わない。
 けれど、歪な支えに頼らなければ立って居られないほど
 何にも代えがたいものを捨て去ってしまった覚えなんて無い。

 その上で今、


 自分の傍に無いものと言えば 
姉の存在
くらい で、
(*5) 2021/08/15(Sun) 3:38:38

【人】 髪置

4日目 朝

「今日も……遊びますか!」

今日は楽しい楽しい夏祭りの日!
そんな日に遊ばないなんてありえないことだ。
なんなら祭りの前に一遊びするまである。

髪置にとって祭りの日とはそういうものであり、
手加減などもっての外だった。
(6) 2021/08/15(Sun) 3:43:55

【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

 
そんなはずがないんだ

 
(*6) 2021/08/15(Sun) 3:48:35

【独】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

/*
ごめん髪置、挟んじゃった
(-38) 2021/08/15(Sun) 3:48:51

【置】 髪置

「祭りだからってはしゃぎ過ぎだろ」
「お祭りなんだからみんなに合わせようよ」
「髪置くん、私達と一緒にいても楽しくなさそうなんだもん」

そんな言葉をかき消していた囃子の音も、
もう聞こえなくなってしまった。
(L2) 2021/08/15(Sun) 3:49:43
公開: 2021/08/15(Sun) 6:30:00

【人】 学生 涼風

 四日目。早朝、母親と会話をした後の時間。

 今日はお祭りがあるらしい。百千鳥とは浴衣を着て一緒に行く約束をしてある。折角再会したのだから、自由行動の時間にでもなったらあとでふらりと髪置の家に行って声をかけにいくのもいいだろう。
 でもその前にやる事をやらないと。遊んだら没頭してしまうから、先に友人への葉書を完成させなければ。

「葉書、おばあちゃんに出してもらったはいいけれど。書きたいものが多すぎるな……」

 百千鳥の姉に伝える内容をしばらく考えてみたものの、なかなかまとまらない。
 帰省する前に取った連絡では何を話していただろう。遊ぶ事、百千鳥の面倒を見る事、夏祭りの事、将来の事……よく話題に挙げていたものを中心に書けば彼女も満足するだろうか。

(7) 2021/08/15(Sun) 4:11:45

【人】 学生 涼風

 ペンを持つ手が止まる。

「…………」

 そこだけ記憶が抜け落ちたかのように、或いは初めからなかったように。

 帰省する前に取った連絡の内容が思い出せない。

「……どうして」

 鞄の中からスマートフォンを取り出して恐る恐るあちこちを探る。
 普段よりも遥かに画面を叩く勢いが強いことにも気付かない。たんたんたんと音を鳴らし、いくつものアプリを起動する。立ち上がる前の準備時間さえももどかしかった。

「…………無い」

 無い、無い、無い。

 メールも、電話も、その他の記録にも。
 どこにも"都々良 呼子鳥"の痕跡が見当たらないのだ。
 そんな筈はない。だって、自分は確かに彼女と話を──。

「ほら、行くよ!いつまでもそんな所でぼーっとしてないの!」


 ほら、思い出せた。彼女の声が聞こえてくる。
 ああ、でも、どうして?

──どうして今のものではなく、昔の声しか思い出せないの?
(8) 2021/08/15(Sun) 4:15:32

【墓】 枠のなか 卯波

写真を見ている。

世界の果てみたくハッとするような澄んだ空気の中、
田舎の皆で集まって撮った、何より大切な集合写真。
様々な表情で、様々な姿勢で切り取られた四角形の。

『  』

慈姑婆ちゃんも、時任の さんも、呼子姉も、
この中にはみんないる。何一つ欠けていない。
誰もがあの頃の美しさのまま、そこに写って。

彼が、あの子が作ろうとしている枠の中とは、
決しても似ても似つかない。哀しそうに笑う。
今それをどうしようもなく愛してしまうのは、
やはり矛盾した心の、不自然な気持ちの動き。

「ずるいよ。俺にはないもの。
 俺だって、みんなをここに閉じ込めて、誰も前に進まない場所で、背中に追いつきたかった」

警察の兄さんたち。ひとつ年上の人たち。
目を離せば、随分遠くを行く彼らだって、
ここに止まれば等しく『田舎の人間』だ。

(+6) 2021/08/15(Sun) 5:29:32

【墓】 枠のなか 卯波


「俺は田舎が大好きで──でも、
 それと同じくらい、前に進む皆が好きだから。
 
 ここにみんなでずっと残っていたいし、
 ここから出て様々な道を行く皆を見たい。

 酷いよ、ほんとに。この先どうなっても、
 俺は叶わなかった願いに心を痛めることになる」

十年前の写真。
ここで撮った写真。

それと──十年経つ中で、
己の人生をいくつも切り取った、
晶兄の名を借りたカメラが映し出した写真。

息苦しかったり、嫌なことがあったりの日々から、
美しく、甘く、優しいものだけを切り出したもの。

ここにあるのは人生の歩みだ。
並べて、ただひたすらに並べたら、
一ノ瀬卯波という人間の楽しく思う部分が全部詰まっている。

ここから先はもっとみんなを撮りたいから。
夢に浸りたいと願う人にも、現実に帰りたいと願うにも。俺は逃げたりしない。
(+7) 2021/08/15(Sun) 5:43:34
卯波は、誰でもない、一ノ瀬卯波の人生を、誰よりも美しく思っている。
(c7) 2021/08/15(Sun) 5:46:19

【見】 天狼の子 夜長

>>3:146【三日目】百千鳥

 行ったことがないのなら、自分が案内出来るだろうか? 自身が大人の今の内なら、百千鳥に何かをできるだろうか?……といったことを考えたが、夜長が帰りのボートをひっくり返して鬼走と一緒に海水まみれになったのは記憶に新しい。この件に関しては考えただけで終わった。

「……ありがとう、モモチ。
 他の場所もまた、探してみようと思います」

 こっくり、頷いて。あなたをまっすぐに見ていた。

 この後あなたは、夜長をあの賑やかな中に引っ張って行ったかもしれないし、漁小屋の方の秘密基地に案内してあげたかもしれない。どんな時間を過ごしたにしろ、それは"あの夏の日の思い出"になるようなもので。

 それでもって、今日の最後の言葉は「また明日」だった。
 
(@0) 2021/08/15(Sun) 6:01:27
夜長は、百千鳥が眩しい。
(t0) 2021/08/15(Sun) 6:01:32

【独】 学生 涼風

髪置ァ !!!!!!!
(-39) 2021/08/15(Sun) 6:32:41

【独】 学生 涼風

絶対つつくからな

絶対つつくからな髪置

しろたえさん覚悟しろ

俺と涼風は髪置大好きなんだからな
(-40) 2021/08/15(Sun) 6:34:02

【置】 巡査部長 鬼走

【数年前 某――年 鬼走家】

鬼走の住居に雪子一家が遊びに来たとある日。
他人の家は物珍しい物なのか、表情は父親とまるで変らないものの子供特有の好奇心を覗かせる晴臣に好きに中を歩いていいと伝えていた時の事だ。

 「興味があるのか」

少年が足を止める時は何かを見つけたと言う事。
視線に目を移して「ああ。」と納得したように呟く。

「どうせ壊れている物だ。
それ以上壊す心配もないから好きに触っていい」

年齢の割に渋い選択とも思ったが、同年代の子供よりは遥かに大人びているのを見て来たのを思うと違和感はない。村の当時の年下達を思う度、「雪子の遺伝子もある筈なのにどうしてここまで」と言いたくなる程に彼は父親似だった。

「親父の仕事は時間を計るのが大事だった。だからお袋がよく計る為にして使っていたのを、2人が元気な時はよく見ていた」

視線の先には針の動かなくなった懐中時計。


病弱だった母が亡くなった直後は整理する時間も金も、心の余裕もなかった故に長らく置いておかれた数多の私物。最近になってようやく回収できた物。やや困惑する様子を見て手に乗せてやった。顔はそこまで変わらないものの嬉しそうな反応は存在している。ここがまだ父親と違う可愛げだろうか。

「持って帰るか?」
(L3) 2021/08/15(Sun) 8:53:48
公開: 2021/08/15(Sun) 9:00:00

【置】 巡査部長 鬼走

【数年前 某――年 鬼走家】

一般的な人間は、そんな形見に近い物を幾ら壊れているからと言って持って帰るかの問いに頷かない。それは幾ら大人びている晴臣と言う少年も同じだった。

そしてその反応も当然だと鬼走も理解はしている。だから、他に一人にしか語った事のない話を、少しずつ語り始めた。


 これは贈り物で父と母の「家族の物」であったこと。

 昔、母が入院し二人きりの時に落として壊してしまったこと。

 時計屋に持っていけば技術的に直せない訳ではないが高額で、
 当時は入院費などもあり直せないまま今日を迎えたこと。


他にも幾つか深く聞かれた上で、本当に問題ないのかと尋ねられた。勿論問題はない。あるなら提案はしない。それに事実、問題もないのも本当なのだ。だって自分にはもう、


 「──家族ができた」
(L4) 2021/08/15(Sun) 8:59:38
公開: 2021/08/15(Sun) 9:00:00

【置】 巡査部長 鬼走

【数年前 某――年 鬼走家】

 「だからもう大丈夫だ。
  そいつに渡すなら、新しい物を選ぶべきだろうから。」

いつか将来、『親ではない意味の家族』ができたなら。その時、欲しがったり渡したい奴がいたら渡すといいと。勿論自分で使ってくれても構わないし、飾りでもなんでも。あげた以上は好きに使ってくれていいと、箱に仕舞いながらその時計を手渡す。


 「お前が大きくなった頃。
  もっと簡単に直せるようになった未来に、」


  「もう一度動かしてやってくれ」



 これは某――年。数年前に、
   「夜長晴臣」に託した、二人しか知らない話。
(L5) 2021/08/15(Sun) 9:00:40
公開: 2021/08/15(Sun) 9:05:00