人狼物語 三日月国


14 【完全身内村】不思議の国のアリス

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視点:


【人】 お菓子の国のプリンセス ベニエ

  だってあんた、お菓子になりたくないでしょう?

  手袋越しだって、みんな、あたしを怖がるもの。

  こちらが手を差し出した途端、
  びくりと手を引っ込められるのはもう懲り懲りなの。

ちろりと睨め付けてやったけど、男からは穏やかな微笑みが返ってくるだけ。

どうやら他意無く本気でエスコートするつもりだったらしいこの男に、あたしは深く深く溜息を吐いた。

お人好しのこのひょろ長い男に、だから少しくらいはあたしの話をしてやってもいい。興が乗れば、あたしのたった一つの願い事も口にする事もあるかもしれない。

「これは、秘密よ」

誰にも言っては駄目なのよ。
彼を見上げ、屈むようにせがんだら、あたしは耳元で囁くように告げるだろう。

あたしのたった一つの願い事。*
(65) Valkyrie 2019/09/14(Sat) 22:15:12

【人】 お菓子の国のプリンセス ベニエ

>>45 カグラへの返し


異国娘──名前を覚えた。カグラって言うんですって──といくらか仲良くなれたから、あたしは自分の城に招待したの。

ショートブレッドにスコンにクッキー、季節はずれのクリスマスプディングまで支度して。紅茶はたっぷり、セイロン、アッサム、ダージリンにキームン、お好みぜんぶを飲めるように。

カグラはすごいわすごいわ、って喜んでくれた。

あたしにとっては、当たり前の日常。
左手を使って手に入れた金貨がなんでも運んできてくれる日常。

  ────羨ましいのは、あたしの方だわ。

  そうして"自由"にふるまえるあんたが、羨ましい。

胸にもやんと広がる思いには蓋をして。
そうしてたくさんおしゃべりしたの。
(66) Valkyrie 2019/09/14(Sat) 22:16:02

【人】 お菓子の国のプリンセス ベニエ

「────欲しいもの?」

それは無いの。あたしにも無いのよ。
要らないものがあるだけなの。

すぐさま言葉にしたかったけど、喉の奥につっかえて、なかなか声に出てくれない。

カグラの瞳はキラキラしてる。
言葉もぽんぽん、金平糖みたいに輝いて、転がって。

あたしの願いは、空を見上げて「叶えたいの!」と叫べるようなものじゃない。
王宮の中でなんか、ぜったいぜったい、口にはできない願い事。

────でも。

"親友"って、言ってくれた。
彼女は、初めて出来た、あたしのお友達。

「あのね…………うん、帰り道で、話すわね」

夕陽が長く影を落とす林の中で。

あたしは小さく告げるのよ。

秘密の秘密の、願い事。*
(67) Valkyrie 2019/09/14(Sat) 22:17:13