【人】 星集め サダル―狂った錬金術師― ミロンが後を尾けられていたのだろうか。 >>186美しい魔族に馬乗りになられ刀の切先を突きつけられている。 その、狂った錬金術師は、その幼さを隠せない姿でぱちりと目を瞬かせた。 「断る。私に何の利もない。 殺したいなら殺せば良い。」 この肉体に未練は無いから。 この家の地下に、錬金術師の肉体のスペアが保存されている。 それを喪って本当に死んだとしても。 錬金術師はもう、構わないのだろう。 今は惰性でホムンクルスを生み出していた。 だって。サーシャはあまりにもサダルとは違った。 サーシャはサダルにはなれなかったのだから。 (195) 2021/12/16(Thu) 21:51:41 |
【人】 星集め サダル「でも。死ぬのなら、口付けで死にたい。」 そんなリクエストを許される身ではないけれど。 「…ホムンクルスが君に害を与えたのなら謝罪しよう。 それとも、正義感に駆られたのかな? あるいは贖罪。 それとも…まあ。 終わらせてくれ。」 侵入者の頬に手を伸ばし。 微笑みを浮かべる錬金術師。 「狂った恋心を。」* (196) 2021/12/16(Thu) 21:52:13 |
【人】 星集め サダルつまり。理解はしても納得が出来ず。 ゼロの可能性から一でも引き出そうと。 方向性を変え。アプローチを変え。目的すら見失いかけて。それでもやはり手を止める事ができなかった。 それでも、やっぱり。 手を止めることなど。できずに。 言葉を紡ぎ終えて、一拍。 体の内側で爆ぜるものがある。 心臓を貫き抱きしめる彼女も貫き。 体が震える。痙攣して。口から、体から、血を流し。 震える指先で彼女の頭を撫でた。 名前も知らない、でもサーシャを知る女性を。 (218) 2021/12/16(Thu) 22:55:58 |
【人】 星集め サダル「…一緒に死んで、くれ、るの…?」 それか、この程度では死なないのか。 こんな狂った錬金術師と死ぬなんて、そんな事はあり得ないだろう。 だから、離して良いのにと笑って。 指先をパタリと体の横に落とした。* (219) 2021/12/16(Thu) 22:56:12 |
【人】 星集め サダル―マスターと: sideベリル ―マスターと出会ってから、何年も、何年も過ぎて。 エオスから二日もあればたどり着くことのできる北の森で、ベリルはマスターと二人で暮らしていた。 今までの華々しいマスターの活躍とは違う、穏やかな日々。 木漏れ日のような、ひだまりのような、温かな時間が流れていく。 晴れの日も。雨の日も。春も、夏も、秋も、冬も。 魔剣を封印してからは静かに。穏やかに。 出会った日と比べて、ほぼ変化のない自分。 それに比べてマスターは歳を重ねて、人らしく老いていく。 髪が白くなっていたかもしれない。 皺も刻まれてきたかもしれない。 でも彼は、ベリルにとって変わらず大切なマスターだ。 (232) 2021/12/16(Thu) 23:48:45 |
【人】 星集め サダル―ギルドの職員― 一度、向日葵にギルド職員を案内して別れたが、私は少しだけ心残りがあった。 ルイージさんが死んだ。 それはどこでだったんだろう。 一度家に戻ったものの、子供たちが落ち着いたのをみて、向日葵の扉が開くかどうか気にしながら過ごして。 向日葵の扉が開いたらすぐにかけつける。 「あ、の、すいません。 ルイージさんはいったいどこで。 …お墓とかは、あるんですか?」 そんなふうに問いかけて。 その先、聞くことはできただろうか。** (254) 2021/12/17(Fri) 9:37:31 |
【人】 星集め サダル―『人形屋』その後― マスターを喪った後の人形屋は、もちろん売り物が無くなり店としての機能を失いつつあった。 今のサダル・ミロンは。そして元のサダル・ミロンであるサーシャは。それを寂しいと思いながらも受け入れる道を選んでいた。 契約済みのものはそれぞれ契約した相手の元へ。 まだ、未契約だった個体は眠らせてあげよう。 そして、店に残されたさまざまな素材は商業ギルドや冒険者ギルドに引き取ってもらった。 そうして裏街から一つの店が消えたのである。 (255) 2021/12/17(Fri) 12:28:19 |
【人】 星集め サダルそして、それらの取引で得た資金を使い、私は表通りに店を構えることにした。 『星集め サダル』という屋号の、アミュレットの店だ。 星のように淡く光る欠片。 それを連ねたり、並べたり、下げたりして。 このアミュレットは祝祭の時に特によく売れる。 このアミュレットは願い事を叶える手助けをしてくれるらしいと、若い少女たちに人気だ。 また、本当に叶えたい願いを知ることができる。 そんなふうにも言い伝えられているし、実際に軽い守護と導きの魔法がかけられている。 (256) 2021/12/17(Fri) 12:28:38 |
【人】 星集め サダル「ミロン、今日の店番をお願いね。」 今の店主は、二人。 姉のサーシャ・サダルと妹のミロン・サダル。 二人が若いままなのはこのお守りのおかげでは? と、密かに噂する子達はホムンクルスのことをきっとあまり知らない世代。 サーシャと、その二人の子供と、ミロン。 四人の姿を表通りに見ることができるようになるだろう。** (257) 2021/12/17(Fri) 12:28:53 |
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