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【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 黒眼鏡時間としては夜のうちのいずれか。 貴方が帰ってきた頃か、そうでないなら明日の仕事のために店舗から出てきた頃だろう。 ひょっとしたら日が暮れてしまったならもうテナントへは戻らないのかもしれないが、 それだったら連絡の一つでも寄越すわけでもないまま、夜更けまで待って帰るだけ。 もし貴方がその様子を見かけたなら。 店先で誰ぞ待ち合わせでもしているみたいに、サイズの小さい銘柄の葉巻を吹かす姿があった。 高い夏の空が段々と低くなって遠くの星が霞んであるのを眺めながら、 べつだん居ると報せを飛ばしもしないのに、勝手に人を待っている。 繁華街だったならば目立つ姿も、こっちまで来たなら然程ではないだろう。 どれくらい待っていたかは定かではない。 咥えた葉巻は大振りのものではなく、ショートタイムスモーキングにも向いているタイプだ。 どうあれ、見つけられたならば偶然だと言うみたいな億劫な視線を投げかけて、 葉巻を支えた指をひらりと小さく揺らすのだ。 #Mazzetto (-544) 2023/09/11(Mon) 8:04:04 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 黒眼鏡「俺が来るって言ったら、呼び出しになっちまうだろう」 息だけで笑うような声はかつてよりも真意の捉えがたいものとなった。 張り込みにしては目立ちすぎるし、相手から姿も見えすぎる。 流れていく煙からサングラスの奥へと視線を移して、 当たり前に数歩後からついていくように革靴は並ぶ。 「けれども案外呼び出しをするのだって、これが最後かもしれないな。 最近あちこち、お偉方は内緒話に勤しんでいるらしい」 この国では珍しい貴方の背丈を、もうひとつ超える長駆が付き添う。 とても立場を思えば褒められた行動ではないようなことをする男の横顔は、 どことなく張り艶を失って疲労がこびりついたような面持ちをしていた。 #Mazzetto (-551) 2023/09/11(Mon) 14:47:00 |
【秘】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ → 黒眼鏡「ちゃんと距離感ぐらい弁えているさ。街もこの様子だったら殊更だ。 いち役職持ちが立場も忘れて遊び歩いていいわけがない、だろう?」 さも、自分はわかっていると言いたげに戯けた調子が声に乗る。 葉巻のトーストの香りが染み付いた指先が誰の前でもそうであると知る人間は少ない。 振り払われればいつでも退散出来るような距離を置いて、 互いの指が硬質な金属のグリップを握れば音でわかるくらいの距離を詰めて。 「一杯いただいていこうか。 ちょうど手土産を持て余していたもんでね」 対して、男はいつでも自然体なふうであるように振る舞う。 次ぐ言葉がわかりきっているみたいな顔をして言葉を置く様子を、 ひっくり返すギャンビットを持つ者がどれだけいるのだろう。 見た目には少し気軽なふうの紙袋の中には、ビニエがひとつふたつ包まれている。 バニラクリームの匂いは、冷めた今はそれほど香り高いわけではない。 #Mazzetto (-559) 2023/09/11(Mon) 17:12:18 |
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