【人】 跼蹐 カナイ──会議室の扉が、そっと後ろ手に閉められた。 消耗こそすれ神経が昂ぶったような感覚が持続し続けているのは いよいよおかしくなりつつあるのか最初からおかしかったのか。 一度深く息を吐いて、注意深く気配を探る。 自身に現れた力が特定の個人を探す事に長けたものではなくとも、 不安定に揺れる気配があれば、すぐに気付く事はできる。 それが多少遠くであっても、大まかな方向程度は。 『おねがいします』。 たったそれだけの文章でも、 何が起きたのかということを察するには十分だった。 だから闇雲に探す必要は無いのだと知っていた。 『ただ二つお願いがあるのです。 聞いてもらえるのです?』 『はい、構わないのです。 1つは、この能力が制御できなくなったら その時は僕を止めて欲しいのです。 叶様や他の人に害をなしたい訳ではないので』 (0) 2022/06/06(Mon) 22:47:34 |