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【秘】 暗殺屋 レヴィア → 冷たい炸薬 ストレガきちんと手入れされたままの時計。 死んでからも大事にされる道具。 それになにを思うかなんて、 女以外に分かる者は誰もおらず。 「……………。」 貴女の方を見て、女は。 ほんの僅か、怪訝そうに眉を歪めて。 それから、また白猫の方へと視線を戻す。 耳についた黒リボンに、手を伸ばして。 「私、貴女の為に何かをしたことなんてないわ。」 「用事のために話して、ゴミを押し付けるためにあげただけよ。」 「馬鹿ね。」 やはり言葉はどこまでも淡々としていて。 ただ利用価値があったから接していただけだと。 それに礼を覚えるなんて、なんて愚かなのかと。 いつも通りの冷たい表情のまま。 ぬいぐるみを二つ、抱き上げて。 「じゃあ、これを貰っていくわ。」 「ぬいぐるみは、中に色々入れられるもの。」 「いいかしら。」 どうせ、何もかも爆ぜてしまうなら。 黒い方も貰って構わないでしょう、と、 胸の前で二匹を抱きかかえたまま問うた。 (-390) arenda 2022/08/23(Tue) 11:20:09 |
【秘】 暗殺屋 レヴィア → ”復讐の刃” テンゴ「哀れ?」 「私は幸せだわ。」 装弾数は3発、それを全部打ち切って、距離を取る。 ……が、捨て身の突撃をされれば、歩幅の分 距離はむしろ詰められる事となる。 ───速い。 しかし女も、殺しのプロだ。 薙ぎ払われる刀を、手に持った傘で受け止める。 普通の傘なら真っ二つだっただろうが……… これは軸を鋼鉄で作られた特性の傘。 故に傘ごと切り捨てられることはないものの、 やはり男と女の力の差では、対等な鍔迫り合いとはいかない。 圧される、腕が痺れる。 「っ!」 そのまま圧し切られるより前に、傘をばさりと開く。 貴方の視界が一瞬、真っ黒に染まり。 それからふっと、貴方とぶつかり合っていた力が無くなる。 女が視界を潰すと同時、また後ろに跳んだのだ。 ▼ (-391) arenda 2022/08/23(Tue) 11:32:15 |
【秘】 暗殺屋 レヴィア → ”復讐の刃” テンゴ幹部級の貴方に、女がまだ殺されずに済んでいる理由は。 一つは、有効射程の差。戦いにおいて、射程の差は絶対だ。 そしてもう一つは。 "最近体が鈍っていた"貴方と、"10年以上殺しだけを任務としてきた"女の。 ───ブランクの差、それだけだった。 華奢な体で、路地裏のパイプを伝って屋根に上る。 もしかしたらその登り切る過程で一度斬撃を貰ったかも 知れないが………女はプロ。 一時的に痛みを遮断して、動きへの支障をなくす。 屋根の上で、装弾を終える。 射程距離、高所、全てが揃った状態で。 また貴方の急所に向けて、音速の弾丸を3発、 躊躇いもなく放った。 (-395) arenda 2022/08/23(Tue) 11:40:28 |
【秘】 暗殺屋 レヴィア → 冷たい炸薬 ストレガ「そう。」 「興味がないわ。」 いつも通りの言葉を返す。 随分とお人好しな人だったようだ。 そういうのを皆にすれば、貴女は今頃 人気者だったわね、と、皮肉なような、思ったままなような、 そんな言葉を告げつつ。 「寝る時だけ貸してあげてもいいわ。」 逐一取りに来るなら、と。胸の中で撫でられる子に視線を落とす。 よほど大切にしていたのだろう、そうわかるような 優しい手つきに、言葉。 「道具より先に、持ち主が死ぬなんてあってはならない事だわ。」 「この子の持ち主は、ずっと貴方。私は預かるだけ。」 「覚えている事ね。」 そんな言葉だけ零して、女は、階下へとまた足を進める。 螺旋階段を下りれば、いつもの部屋。 「用件は済んだわ。お暇しようかしら。」 これ、捨てておいてくださる?と、飲みかけのボトルを机に置いて。 (-399) arenda 2022/08/23(Tue) 12:02:21 |
【秘】 暗殺屋 レヴィア → ”復讐の刃” テンゴ「それでも。」 「私は幸せだったわ。」 ずばっと、二の腕が切られる。 ぼたぼたと血が垂れる。 普通の人間なら痛みに呻き、パイプから手を滑らせ落ちる傷。 しかし女は、汗一つ流すこともなく登り切る。 ゴシックの服がワインレッドに染まっていく。 そうして、撃った弾は。 全盛期の貴方ならそうはいかなかったかもしれないが、 今の貴方の機能を奪うには、十分で。 ふぅ、と一つ細い息を吐いたのは、きっと誰にも聞こえない。 こつ、と、屋根から飛び降り、地面に降り立つ。 ハンカチを傷口に当てて、ようやく流れてきた汗が 額から頬へと一筋伝う。 貴方の一歩前まで、近寄る。 貴方にその気があれば、切り捨てられるかもしれない。 ▼ (-400) arenda 2022/08/23(Tue) 12:11:32 |
【秘】 暗殺屋 レヴィア → ”復讐の刃” テンゴ「私の仕事は」 「対象を死に至らしめる事。」 「死因も要因も、指示されてなんていないわ。」 自分の手で殺したい、なんて殺人鬼のような拘りはない。 殺したくなんてない 女はそこで見守るように、佇み続ける。 (-401) arenda 2022/08/23(Tue) 12:15:32 |
レヴィアは、一筋の汗を流した。 (a34) arenda 2022/08/23(Tue) 12:22:09 |
レヴィアは、ぼたぼたと血を流した。 (a35) arenda 2022/08/23(Tue) 12:22:28 |
レヴィアは、どこか出かけられた見送りの言葉に、「えぇ。」とだけ返して (a36) arenda 2022/08/23(Tue) 12:31:27 |
レヴィアは、その日の夜に、仕事に向かった。 (a37) arenda 2022/08/23(Tue) 12:31:49 |
レヴィアは、ゴシックの服をワインレッドに染めている。 (a38) arenda 2022/08/23(Tue) 12:32:12 |
【秘】 暗殺屋 レヴィア → ”復讐の刃” テンゴ氷と評されるその貌には、何の感情も籠らない。 女がなにを思うのかなど、きっと誰にも分らない。 何百人を殺し、同じファミリーの者を手にかけ。 涙の一つも流さない、冷たい死神。 人からの評価などそんなものだし、 女もそれを否定することなどなかったから。 「そう。」 「興味がないわ。」 投げ渡された飴を、血を流していない方の腕で受け取る。 これに毒でも入っているかもしれないわね、なんて。 呟きながら、しかし、捨てることはせず。 「私には標的の死を見届ける義務があるの。」 標的が必ず死んだ事を、きちんと確認する事。 それが"暗殺屋"の仕事だからと、夕闇の瞳は真っすぐ見据え。 そして。 ▼ (-406) arenda 2022/08/23(Tue) 12:56:08 |
【秘】 暗殺屋 レヴィア → ”復讐の刃” テンゴ「………馬鹿ね。」 その最期を、見届ける。 飛び散る紅も、苦悶の顔も。 全てを、全てを見届ける。 また一人、ノッテ・ファミリーを殺した。 貴方の意識が完全に闇に落ちる頃。 女は初めて、目を伏せて、睫毛を震わせた。 女は、貴方に近づいて。 いつかの遺体と同じ様に、その右目に。 パン、と一発、弾を打ち込んだ。 死を確実なものにするため、でもあるし。 自分がやったのだと、認識するためでも、ある。 誰かに誇示したいわけではない、ただ。 "自分が死に追いやった"のだと証明する、 罪の証 として。それを、残す。 女は、昼行灯の火を消した。 べっこう飴を一つ開けて、口に含んだ。 「……雨が降る前に、帰りましょうか。」 ハンカチを腕に縛って止血をして。 切り捨てられた傘を拾って、ばさりと欠けたそれを広げた。 呆れるほど晴天の、夜の日の事だった。 (-407) arenda 2022/08/23(Tue) 13:04:54 |
レヴィアは、雨が降る前に帰った。ワインレッドはほどなく止まる。 (a41) arenda 2022/08/23(Tue) 13:06:12 |
レヴィアは、店のカウンターに猫のぬいぐるみが二つ、新たに並んでいる。鎮魂歌が鳴り響く。 (a47) arenda 2022/08/23(Tue) 17:20:14 |
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