人狼物語 三日月国


260 【身内】Secret

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[外気に晒された下着は濡れシミもなければその下の形が
はっきり見える訳でもないのに、羞恥で思わず目を閉じた。
意識的に閉じてしまえば二度と目が開かなくなる気がしたが、
初めて味わう屈辱的な状況に、もう耐えていられなかった。

ルミは甘ったるく言葉を紡ぐ。

別れた彼女が同僚だったことまで知っているとは。

どこでどうやって知ったかは知らないが]


 ス、ススストー、k、


[ストーカーは彼女自身だったのだろう。
わかったところでもうどうしようもないが。

ただ祈るしかできない。
上手く動かせない身体が、これから行われるだろう
ストーカー女の愛撫に反応しないことを。*]

 

  ……あ、お兄さん、吐きそう?
  気分悪いかな。大丈夫……じゃないよね。

  大丈夫、殺したりしないから。
  …………そんなことしないよ。


[ 流石の自分にも、殺人には躊躇いがある。
  夜の街では当たり前のように殺傷沙汰が起きているが、
  刃を他人に向けるほど壊れてはいないつもりだ。
  ──薬を飲ませるのはどうなんだと言われてしまえば、
  言い返す余地もないけれども。

  時計の針は逆向きに回らない。
  砂時計の落ちた砂は元には戻らない。

  犯した罪も愚行も、消えやしないのに。 ]

 

 

[ 一般的な話に興味はない。
  そんな物差しで関係性の普遍を決められたくないから。

  世間がなんだというのだろう。
  だから仕方ないことだとでも解かれるのだろうか。
  くだらない、くだらない、くだらない。

  歳を重ねたから? 話も遊び方も合わなくなったから?
  それじゃあ××はどうすれば良かったの。
  片方の都合で、もう片方をないがしろにするのが、
  ────それが一般的な世界なのか。


  まるで女の両親さながらではないか。 ]

 

 

[ これは確かに、紛うことのない、恋だ。

  楽しくて声を上げて笑ったのも。
  美味しいものを分け合う幸せを知ったのも。
  彼と同じ名前の生き物を覚えたのも。
  明日が来るのが、初めて待ち遠しいと感じたのも。

  あの日々が恋じゃなかったというのなら、
  わたしは二度と本当の恋なんて知らなくていい。 ]

 

 

[ 言葉を交わす暇さえあったなら、
  今何かが違ってくれていたのだろうか。

  早々に話を切り上げてバイバイなんて、もう御免だ。
  それならなにもかも封じてしまって
  ────加害者と被害者になるしかないのに。 ]


  もう! ひどい!
  ストーカー……むぅ、言われてみればそうかもね。

  だって、お兄さんのこと、なんでも知りたいから
  ────大好きだから。


[ とはいえこれが犯罪だとは自分でも分かっている。
  これは線引きだ。

  わたしは加害者。
  貴方はストーカーに好かれた可哀想な被害者で、
  ────……。 ]

 

 



   ……こうする以外に、
   どうすればお兄さんの世界に戻れたっていうの……


 

 

[ 呟いて、目を閉じたお兄さんの顔を見つめる。
  無理に開けさせることなんてしなかった。

  それでいいと言ったのは自分なのに、
  どうしようもなく胸が痛くて、唇を噛む。
  でもここまで来れば戻れない。

  優しい、牙のない肉食獣が、哀れな檻の中。 ]


  ────……嫌だよね。
  だってこういうことは、好きな人とするんでしょう?
  お兄さんは、わたしのこと、嫌いだもんね?


[ 呟いて、彼の芯へ布越しに触れる。
  果たしてこんな状況下で反応するかも怪しいけれど
  丁寧に、痛みなど与えないように、
  やわく握って手で擦った。 ]

 

 

  お兄さん、相変わらず優しいね。
  無防備で。
  悪い人の存在を人に説くのに、自分は無警戒で。

  ────昔からずっと、優しいもんね、お兄さんは。


  ごめんね。逆手に取るようなことしちゃって。
  ……いくら謝っても無駄か。
  うん、……頭のおかしいストーカーだと思っててよ。


[ 昔を懐かしむたびに、愛しさで手先が鈍るから。
  わたしは布越しにカリ、と先端を甘く引っ掻いた。
  そのままするりと下着を下げる。

  悠長にしている時間もあまりない。
  人体を害さないように、微量しか使えていないのだ。
  じきに口の縺れが収まることから始まって、
  四肢も動くようになってしまうはず。

  そうなる前に、この執愛の蜘蛛の糸で彼を搦めて
  ──目的を成さねばならないから。** ]

 

[殺さない、なんてのは、ニュースで知る殺人犯の
「殺すつもりはなかった」と同じ意味だろう。

歌舞伎町で出回るような、身体の自由を奪う薬が
臓器にも作用したら人体は簡単に生命活動を止める。
心臓や脳のバックアップは存在しないのだから。

泣くことも震えることも罵倒することも出来ない。
だが意識を手放すことも出来ない。

とんだ地獄だ。]

[持っている物差しが違えば、
同じ事象を測っても異なる結果が出る。

ルミにとって一般論が響かないこと同様に、
男には一般論がよく理解出来た。

当時やさしくしたのが自分だったから恋したと
聞けば、それはインプリンティングではないかと
答えたくなる。

だが自分もよく知る恋に堕ちる理由だって、
最初は「やさしくしてくれた」とか
「一緒にいて楽しかったから」とかなのだ。
インプリンティングだから恋ではないと
断じることは出来ない。

口が利けたとして、彼女の恋心を否定しなかっただろう。]

[ストーカー呼ばわりで怒らせても、
今度は許しを乞わなかった。
訂正をする気はない。

その「好き」は、自分が思っているものとは違う。]



 ――――……



[声が出なかった。]

[目が開けられないというのは自己催眠かもしれないが
実際に瞼は強く閉じられてしまった。

衣擦れの音や陰茎に触れられる感触で恐怖が煽られる。
何度か擦られたがそこは芯を持たないままだ。]


 ル、ミ…………


[首を横に振って否定したかったのは何か
自分でもわからなくなっていた。

先端に爪が食い込むと痛みを感じる。
動けないのに痛覚は通っているのか。理不尽だ。

それとも薬は本当に効果が人体に害とならないように
濃度は抑えられていて、下肢に感覚が戻り始めているのか。]



 ルミ、


[そのまま続けて、行為が可能な形を作ったとして、
ルミはそこに跨るのだろうか。
もしかすると、それが命に繋がるかもしれないのに。

望まれないで生まれてしまう命がどうなるのか
ルミが一番よく知っているのに、
自分と繋がることだけを目的としているから、
そのリスクは考えていないのか

何れにせよ、本懐を遂げられてしまうのだろうとは思う。
頭ではどんなに拒否していても、身体は少しずつ
生理的反応を見せてしまっている。**]

 

[ 恋にもっと理由は必要なのだろうか。
  ただあの時わたしに優しくしてくれたから、
  だから彼を好きになったでは足りないのか。

  インプリンティングと言われればその通りで、
  けれど女は確かに己の意思で恋をしている。
  毒林檎からキスで目を覚ましてくれたから?
  或いはガラスの靴を届けてくれたから?

  お姫様たちの恋だって、
  始まりは皆思ったよりも大仰では無いのに  ]


 

 

[ 相手を傷付けないのが愛ならば
  自分にはやっぱり人を愛する資格が無いのだ。

  彼は今度は許してと甘えなかった。
  過去すら容易く掘り起こすあの惨さはなく、
  代わりに別の痛みが横たわっている。 ]


  

 

  ………綺麗な思い出として忘れられるくらいなら
  私みたいに、痛いってこと、覚えててよ


  ふふ、名前ばっかり呼んでどうしたの?
  ルミだよ。

  …………嬉しいな
  久しぶりに名前、いっぱい呼んでくれた。


[ 働き始めてからは源氏名でしか呼ばれず、
  ルミという名前で呼ぶ存在もいなかった。
  ひつじが良かった、と憧れた少女はそこにおらず
  いるのはボタンを掛け違えた亡霊だけ。

  ──ああ、こんなことなら
  正しく愛する方法を知っておけばよかった。
  傷付け方なら、いくらだって分かるのに。 ]

  

 

  …………………雷恩お兄さん


[ ライ、は他の人も呼んでいるから嫌だった。
  けれど雷恩と呼ばれるのを厭われてしまえば
  我儘だけで通せる呼び名でも無かった。

  別れた理由なんてどんなものでも知っている
  ──そうなるように仕向けたんだから。

  呼び方なんて小さいことに拘るのが不満だと
  そう言っていたのは何番目の女だったか。
  わたしはただ、呼び出した場所で
  ブランドバッグを差し出してお願いしただけ。 ]

  

 


  私の、お兄さん、  



[ ────彼と別れてください、って。 ]


  

 

[ 噛み締めるように名前を呟いた。
  会話で意識を向けさせるためでも何でもない。
  ただ、自分が呼びたいから、そう呼んだ。

  再会した時は、幼い頃と違って
  名前呼び自体を面と向かっては厭われず
  表面上は許されたようにも聞こえたけれど
  ──自分ですらそれが本当に許されるなら

  今までの、彼に近しい人たちは、? ]


  

 

[ 私にとっての“らいおん”の響きは彼だけ。
  そこに肉食獣の影なんてひとつもない。

  彼だけ見つめて、彼だけを望んで、
  なにもかも煮詰めた砂糖色の声。

  まるでわたしはおとぎ話の魔女みたいだ。
  甘く美味しく作り上げたバッドエンドへの道。
  無警戒な存在に毒林檎を齧らせて、
  最後には裁かれてしまう悪いひと。 ]

  

 

[ 望まれない命は不幸だ。
  今ですら正しく彼を愛せない自分ひとりで何が出来る。

  命で縛り付ける気なんてない。
  わたしのはわたしだけのもの。
  ──アフターピル、って便利でしょう?
  ベッド横のデスクに幾つか予備を置いてある。

  わたしは少しづつ兆し始めた熱に触れて、
  嬉しさを隠しもせず顔を綻ばせた。 ]


  好き、──大好きだよ、お兄さん


[ 愛を囁かれても萎えちゃうだけかもね。
  どうせ今夜限りの魔法の夜なら
  喉すら焼けるような蜜も許してよ。

  りんご飴、わたしとなら食べ切れるでしょう? ]

  

 

  これでもう、わたしを忘れないよね
  これでもう、綺麗な思い出として消えないよね

  ────なにかある度に痛む傷になって
  忘れたくても忘れられないくらい、
  痛くて熱い存在になれるよね?


[ 本当にわたしが羊だったら、
  本当に貴方が獅子だったら。

  食べて貰って貴方の血肉になって
  そしたら、好きな人の一部として生きていけて
  ──なんてろくでもないたられば話。 ]

  

 

[ 彼の熱芯をやさしく、柔く包み込む。
  これは愛を交わす行為ではなくて、
  わたしの一方通行で、彼を苦しめるだけ。

  過度な愛撫も快楽も必要無い。
  あくまで生理的反応で仕方なかった、って
  彼が言い切れるように────なんて

  加害者がせめてと与えるものなんか、
  害を与えた時点で無意味か。 ]


  ……お兄さん、目、閉じててね


[ 挿れる、だけなら不都合ないようになるまで
  熱を甘く柔く触れて、擦って、刺激を与えれば
  わたしは彼の反応も見ずに己の下着をそっとズラした ]

  

 

  ────ッ、


[ ろくに慣らしてもいない中へ熱を入れれば
  さすがに痛みが訪い、すこし眉を顰めた。

  それでも人体とは不思議なもので
  防衛本能で分泌される愛液が刺激を緩和し、
  膣肉も広がって、熱を難なく飲み込んでいく。

  ───これがわたしの、望んだ形。
  欲しくて欲しくて仕方なかった熱も
  やっと手に入れた彼の傷も。 ]

  

 

[ 叶っていくのに。叶っているのに。
  どうしてこんなに虚しいばかりなのだろう。
  ────どうして。

  わたしは、 ]


  ………………っふ、あは、は

  お兄さん、……だいすき
  ……あいしてるんだよ、本当に……


[ 目から流れたものはただの汗で、
  きっと目を閉じていれば彼は気付かない。

  誤魔化すように笑って、身体を動かした。
  中に彼の熱を吐き出させるためだけに、
  それだけを目的にした虚しい動きで。** ]

  

[白雪姫は毒林檎から救ってくれた王子に惚れた。
殺害を命じられても、自らが罰を受けるかもしれないのに
見逃してくれた狩人でもなく、
森の中で出会った自分の何倍も大きな姫に
衣食住を提供してくれた小人たちでもなく。

恋とはそういうものなのだろう。

ルミの人生で、自分と過ごした時間よりも
長く見知った顔もあったかもしれないが
恋をしたのは自分だった。

それ自体には何の罪もないが、
そこから王子は白雪姫の手を取ったのに対し
自分はルミの手を握ったままでいられなかったから
物語は誤った方向に進んでしまったのだ。]

[過去には自分がたくさん呼んでやると言った名前を
この10数年で口にしたことはあっただろうか。
自分の名前程人名として珍しい訳でもないが
親しくした中に同じ名前の女性はいなかった。

別の人間を「ルミ」と呼ぶことを
無意識に忌避していたのかもしれないが、
そんなことは目の前の「ルミ」の気持ちの慰めにも
ならないだろう。]


 ……っ、


[ああ彼女は痛かったのか。

他に誰も彼女の痛みを手当てする人間はいなかったから
自分にとって「思い出」とカテゴライズされた日々は
彼女にとってはまだ鮮明な「今」なのかもしれない。]


 …………………うん


[きっと後にも先にもその呼称を許すのは彼女にだけだ。
甥が喋るようになっても「おじさん」と呼ばせる心算だから。

「お兄さん」が後ろにつくなら名前も平気な気がした。

実際には、ルミにとって初めて触れた「らいおん」が
自分の名前だったから許せただけかもしれないが。]