人狼物語 三日月国


254 【R18G】星海のフチラータ【身内】

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―――約束、したからね。

 

ユウィは、そういえば賭けの担保もいつか取り返さなくてはなるまい。どれだけ先になるかは分からないが。
(a0) 2024/04/07(Sun) 16:12:10

 

無事に解決してしまったなぁ。
 

 

自由になれなかったな。
 

 

残念。
 

 

人間らしく扱ってくれなくていいのに。
 

 

でも、
 

 

本当にそうなってしまっても、嫌なのだろうな。
 

――さて。
もう使うことはないと思っていたこの回線。
まだ使える、3人だけの秘密の会話。

「ねぇ、思ったんだけど」

唐突に切り出す上司が一人。

「俺とベルだけじゃあんまり使ってる意味はないから、これからもずっとキミを交えて3人で話していたいと思うんだけど、どう?」

「それって……」

きっと、私が私でなくなるAIになってしまう時まで寄り添ってくれる気なんだろうな、と理解をして。
けれどそれを口に出してしまえば、この優しい上司は胸を痛めてしまうだろうから。


「お二人の惚気をたっくさん聞かせてもらえるって
 いうことですかっ!?」

努めて明るい声で、そんな返事を通信に乗せた。

「ここは内緒の話ができるから、上に遠慮なく言えるでしょ」

「ごめん。正式に結果を大きく変えることができなくて」
「でも……俺はそれなりに色々なことを知ることが出来る立場だから」

だからあなたのデータの所在は知ってると暗に含ませる。
それをどうこうする気もないし、協力する気すらあると。
現に、貴方に処罰は苦しまず、身体に影響を大きく与えないものを計画しており、その後の身体は個人的に伝手と取引をして、密かにコールドスリープさせる予定で進めている。
本人の身体が残っている事は、蘇生の助けになるものだから。


「はは、惚気を聞きたければ何時間でも話せてしまうけど、それはキミが胸焼けしてしまわない?」

だけどそれを、口にすることはない。

ガタンッ、ドンガラガシャン!!


とんでもない音が聞こえた。
多分動揺してコケた音。

「レオンさんだって、”上”なんですよぅ?
 話しやすいから忘れそうになりますけどぉ」

「……謝らないでください。
 マンジョウさんとレオンさんの気持ちは……
 よく分かってますから。それに……」
「……。」

通信の向こうで無言で頷く顔は微笑と苦笑の間。
知られていたとしても、問題は何もなくって。ただ、その事でもまた負担をかけてしまうことの申し訳なさだけが、気になるだけ。

――今はその密かな計画を知る由はなく、それを知った時は……またあなたたちへの感謝と敬愛を深めることになるのだろう。


「もちろん、問題ありません!コイバナ。大好きなのでっ!
 って、ベルヴァさん?大丈夫ですかぁ?」

「だい、じょうぶだ……」

声が若干遠いのは起き上がりながらだから。
大分動揺したのか声が震えている。

そりゃあ惚気話を此処で延々とされたら
自分の心が死ぬ。無理。恥ずかしい。

「通信は別に、使うのは反対しない。
惚気はちょっと、勘弁してくれ…
恥ずかしい……

「はは、ベルが恥ずかしいみたいだからあんまり惚気は話せないなぁ」

「……。
 まぁ、誰がどう考えようと、リーナも俺の身内かぞくだから。俺が甘いのは当然」

裏切りを知ってなお、その考えが変わらなかったのは。
他でもない貴方であったからだと、そう思う。

レオンは交渉において、人を見る目には長けている。
敵の間者だと知っても、そこには理由があることも、落ち着いて話せばどうにかなると思っていたことも、自分たちを決してあの場で傷つけなかっただろうことも予測していた。

それはこの船でのやり取りがあったからであり、手を伸ばせば敵との間で苦しませずにすむのではないかと、そう考えていた……から。


「だから、待ってて。
 きっと、
大丈夫だから

「ダメですかぁ?ざぁんねん♪」

残念がってはいるもののくすくすと笑って。
また、ベルヴァさんの可愛いところがひとつ見れました。

「もう……本当に甘いんですからぁ。
 それに開き直っちゃってますしぃ……。
 お返し考えるの大変なので、ほどほどにしてくださいねぇ?」

既に返せない恩ばかりなのに。
返せる時間もそれほど多くは無いのに。

ほんのすこしだけ、欲が出て。
けれど、本来ならこの優しさも
『カテリーナ』に与えられるもの。
だから、”私”は……。
私も生きたい、なんて。願えません。


「はぁい、『いいこ』にして。
 待ってまぁす」

わるいこ、はもう少しでいなくなりますから。

「ふふ、俺が動かなくても色々やってくれそうなのが何人もいるから」

「だから俺がやるのは一つだけ。
 キミを守るよ、ずっとね」

キミの身体を、破損一つ無いまま。
ずっと眠らせて待とう。
いつか、キミのまま蘇生させてあげられる日まで。


「いいこ、ねぇ。
 俺はわるいこでも構わないんだけどさ」
「ベルにも言ったけど、俺には甘えても、わがままを言ったっていい」

「だって……全部ひっくるめたものが、キミ自身だろう?」

男は何も知らない。けれど、2つのデータがあることくらいは知っている。

「……もぉ……本当に、みなさん甘いんですからぁ」

やっぱり苦笑が漏れてしまいます。
そんな船だから私が今の私で居られるのも、
事実なのですけれど。

「はぁい、お願いします。
 きっと、守ってくださいね」

『カテリーナ』を。
呆れたフリをして。切なる願いを預ける。

まさかその裏で眠り姫にされているだなんて、
思ってもいないのだけれども。
もし、”いつか”が訪れたら……その時は。
たくさんの涙と感謝の言葉があなたに贈られるでしょう


「……。」
「わるいこ、にさせちゃダメですよぉ。
 ちゃんと『いいこ』でいないと、
 今度はもっと怒られちゃいますよぅ」

その優しさに瞳が潤むのを感じて。
無理やり拭って、そう答えます。

でも、もしも。
もしも、”私”も居ることができる未来。
そんな奇跡が起きるのなら、その時は……甘えさせて貰いたいです。

――――――

結局、秘匿通信は復旧することなく、その役目を終えました。
そもそも聞いている人も、もういないはずですが。

――――――ザッ

それでも、つい。
いつも通り・・・・・立ち上げて……

『アンジェリーナより連絡します』
『予定通りに取引を終えて帰投いたします』

『……。』
星は輝いて生きていますか?』
『あなたの傍にブルースター花言葉:幸福な愛は咲いていますか?』
『もしそうなら、嬉しく思います』
『もしそうでないなら、』
『お茶と、クッキー。
 それにオレンジ・マーマレードをご用意して、』
『夜にお待ちしましょう』

『……。』
『以上です。』

若さを保つための方法も、命をつなぐ方法もある時代。
寿命なんて言葉はなくなった、なんていう人も居る世の中だ。
いくらでも、その時を待つことは出来よう。

不幸で命を落とし、蘇生ができなくなったとしても。
意思を繋ぐ相手もいる。
だからそれを信じさせるだけの自信はあった。


「わかってないね。
 いい子も悪い子もキミであることに変わりない。
 俺にとってはどっちでも良いんだ。悪い事をしても、それを咎める力も褒める力も俺にはあるんだからね」

勿論、アウレアを差し置いてということもあるけれど、それでも目をかけている子だ。
このまま全部を散らせる気は毛頭ない。


「だから、安心して眠れ。何、悪いようにはしないさ」

Buona notteおやすみ、いい夜を CaterinaAnfelina

「じゃあ、」
ありえないもしも、が許されて、

「私が悪い事をしそうになった時は、叱ってくださいね!」
今度はこんなことになる前に。
あなたの言葉ならきっと、私たちに届くでしょうから。

私の為したことの罪は消えませんし、
出会えた理由は良いものではありませんでした。
でも、あなたと。あなたたちと出会えたことは……
幸運だったと、思います。


「……はい」
「起きたら、またたくさんお話してくださいね!」

静かな肯定と、朗らかに望みを返して。
いつかの通信を終えるのでしょう。

Arrivederci felici giorniさようなら 愛しき日々

 

「さて、ご機嫌はいかが、眠り姫」

心臓は確かに止められたその身体は冷たく凍るカプセルの中だ。
いつか蘇生が成せるその日まで、川を渡る事を許されずにいる貴方はどんな夢を見ているだろうか。


 

くだんな。
 

 

要らんのに。
 

 




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