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【人】 愛智 哲弥[ 誕生日に何が欲しいかと、 母に聞かれても、首を傾げるしかできなかった。 一緒に遊ぼうと言われても、 肯きはするけど、楽しそうに笑えなかった。 訝し気に見る両親の顔。 気味が悪いものを見るような同級生たちの顔。 小さな頃の記憶が一瞬だけ蘇る。] (36) 2023/02/19(Sun) 12:42:17 |
【人】 愛智 哲弥[ 人の気持ちが分からなくて、 自分の気持ちも分からなかった。 そんな人間だと、君に知られたくなかったから この話は、したことはなかったよ。 "君"に出逢って、 初めて人を好きになる気持ちを知った。 悲しいも、寂しいも、 羨ましい、妬ましい。 そんな感情すら、 "君"を想うことで初めて知った。 それは、"君たち"のおかげなんだ。] (37) 2023/02/19(Sun) 12:42:18 |
【人】 愛智 哲弥[ こんな俺で、本当に良いのか。 不安がないわけではない。 ―― それに。 なんで、好きな子を殺さなければいけないのか こんなことをするために、 俺は"君"を好きになったんじゃないのに。 ―― だけど。 俺は、選ぶことを決めた。 選ばなければ、"君たち"がいなくなってしまうなら、 俺にしか、君を殺せないのなら。] (41) 2023/02/19(Sun) 12:42:26 |
【人】 愛智 哲弥[ 近づく距離に、こんな時でさえ、 ほんの少し鼓動は早くなる。 君の感謝の言葉に、胸の奥がずきり、と痛む。 声が震えてしまったけれど、ちゃんと笑えた。 こんな時ばかりは、見様見真似してきたこと 良かったのかもしれないと思う。] …… え、待って [ 迎えに行くと、離れる君に、 思わず手を伸ばしたけれど、 それを止める術なんて、 俺にはないから――― スマホを握って、呟いた名前に 頬を伝った涙に、言葉を紡げず。] (42) 2023/02/19(Sun) 12:42:28 |
【人】 愛智 哲弥うん、…… まかせて [ ――― いってらっしゃい。 予想はしていたから、 瞳を閉じて、倒れていく君に腕を伸ばす。 抱きとめて、もう一度ベンチに座らせれば、 身体を支えるように隣に座り、 鞄からハンカチを取り出して、 濡れている頬をそっと拭う。] (43) 2023/02/19(Sun) 12:42:31 |
【人】 愛智 哲弥…… ごめんね [ 君のことなのに、 彼女と俺で決めてしまった。 ぽつり、と涙の代わりに呟いて、 憎々しいほど、良く晴れた空を見上げた。] (44) 2023/02/19(Sun) 12:42:32 |
【人】 愛智 哲弥[ ちらりと、君と反対側のベンチの上を見る。 船の中で、半分残ったたこ焼きは、 もうすっかり冷めてしまって。 一つ、ひょいと持ち上げて、口に放り込んだ。] (45) 2023/02/19(Sun) 12:42:35 |
【人】 愛智 哲弥[ 冷めたたこ焼きをごくり、と飲み込んで、 唇についたソースを拭っていれば、 隣で人が動く気配がした。 すい、と視線を向けると、 驚いて、慌てた様子に、 ―― あぁ、君の方だと、わかる ] (54) 2023/02/19(Sun) 17:03:42 |
【人】 愛智 哲弥おはよう桧垣さん 大丈夫だよ [ 教室で交わす挨拶のように、 目覚めた君に、優し気な笑みを向けて、 謝る言葉に、首を横に振った。] (55) 2023/02/19(Sun) 17:03:44 |
【人】 愛智 哲弥………… そっか、 [ 頬を流れる涙に指を伸ばす。 指先から伝わるぬくもりに、俺もまた笑って。 じん、と鼻の奥が熱くなる。 笑った拍子に目尻の先から落ちそうなものは、 自分の指先ですぐに払った。 ] (58) 2023/02/19(Sun) 17:03:58 |
【人】 愛智 哲弥[ 君が頷いてくれるなら、 俺は鞄の中から、小さな包みを取り出すし、 ダメ、と言われたら、 少し困った顔をしてから、 じゃあ、これだけと同じように包みと取り出す。] (60) 2023/02/19(Sun) 17:04:04 |
【人】 愛智 哲弥俺ね、君が…… 好き 、なんだ初めて出逢った日から、 会う度に 好き になっていったおはようって笑ってくれる君が、 得意料理が一緒って嬉しそうにした君が、 一人暮らしでも、寂しくないっていった君が、 (61) 2023/02/19(Sun) 17:04:07 |
【人】 愛智 哲弥[ 外枠に数枚の一葉。 ―― 始まり、初恋 一つ内側に二葉。 ―― 素敵な出会い さらに内側に三葉。 ―― 愛、希望、信頼 真ん中に四葉。 ―― 愛情、幸福 俺のものになって (63) 2023/02/19(Sun) 17:04:12 |
【人】 愛智 哲弥俺は、君が 好き だよ[ 四葉の中央に、 きらりと桃色の小さな丸い硝子が並んで、 桃の花のような形に控えめに咲いていた。**] (64) 2023/02/19(Sun) 17:04:19 |
【人】 愛智 哲弥[ もう一度、告白をした。 一度目は、好いているのならと言われて、 二度目は、好いていることを伝えたくて。 君の傍にいたいと思うのは、 約束をしたという理由だけではない。 俺がそうしたいって、願っているから。] …… っ、 [ 君から、 好きだ と、返してもらえて、嬉しくて、 小さくそっと息を飲む。] (75) 2023/02/19(Sun) 21:35:46 |
【人】 愛智 哲弥[ うーん、と、 少し前の記憶を遡る。 思い返して、また小さく笑った。] 実は…… 傍にいて欲しいって言われたけど、 返事は…… 貰えなかったんだよね [ ほんの少し、寂しそうに瞳を伏せる。 これは言葉にしない方がいいのでは、と そう思いながらも。 俺は君に隠し事をしたくないんだ。 だからそう、感じたことを、伝えようか。] (77) 2023/02/19(Sun) 21:35:50 |
【人】 愛智 哲弥君のことが大切で、一緒に生きていけないから 俺に託したいって、言われた 俺はね、好きな子に、好きな子を託された なんだか、変な感じだけど……ね あの子の気持ちは、 直接、聞いたわけではないから 俺には分からないけど…… 一度目は、返事をくれなかった 今の君と、違って [ なんでだろうね。と寂しそうに笑ったのは、 そこに俺への気持ちがないことを悟っているから] (78) 2023/02/19(Sun) 21:35:52 |
【人】 愛智 哲弥…… でもね、 それでも、俺の気持ちは変わらないよ 君という、一人の人のことが…… 好きだから [ すっと立ち上がると、 躊躇いがちに、手を差し出す。 今日の始まり、お祭りを楽しむために、 歩き出したのと同じように。] (79) 2023/02/19(Sun) 21:35:53 |
【人】 愛智 哲弥これでいい、って断言できなくてごめん でも、俺は…… 傍にいたいよ これから先もずっと [ ほんの少し緊張を含んだ声で、 不安そうに覗き込んだ。**] (80) 2023/02/19(Sun) 21:35:55 |
【人】 愛智 哲弥うん、傍にいるよ ―――― 約束する [ 紡がれた言葉は、先ほど言われたこと同じ。 だけど、あえてそれを言うことはしない。 差し出した手に重なるぬくもり。 緊張で冷えていた指先が、じわりと温かくなる。 夏の暑さにも負けないくらい。 身体の奥から熱が増す。 嬉しくて、ほっとして。] (90) 2023/02/19(Sun) 23:11:03 |
【人】 愛智 哲弥お祭りの続き…… 行こうか あ、その前に、それ…… [ ベンチに残ったたこ焼きを指さして、 もったいないから食べちゃおうと笑った。] (91) 2023/02/19(Sun) 23:11:05 |
【人】 愛智 哲弥[ 俺が三つ食べて、彼女が一つ食べて、 残ったのは、二つ。 もう一度、隣に座りなおせば] 最後の二つ、半分こしようか [ 今度は、俺の方から言い出してみる。 俺の方が多く食べてるって? 残りの数を分けているってことで許して欲しい。 一つ持ち上げて、口に放り込めば、 すっかり冷めてしまったけれど ] (92) 2023/02/19(Sun) 23:11:07 |
【人】 愛智 哲弥この後、何処に行こうか 俺ね、色々行きたいって思ってたんだ ヨーヨー釣りとか、かたぬきとか、 射的とか…… あと、食べ物も他にもね [ 指折り数えて並べ立てると、 なんだか、はしゃぎすぎかなと、 少し恥ずかしくなって、 照れ隠しに、くすりと笑って―― ] (94) 2023/02/19(Sun) 23:11:10 |
【人】 愛智 哲弥[ 手を繋いで笑う君が、 ありがとうと言った声が、 なぜだか、同じ声が重なって聞こえた気がした。 それはきっと、気のせいではないよね。] (100) 2023/02/20(Mon) 17:58:32 |
【人】 愛智 哲弥[ 冷えてしまったたこ焼き。 君が眠ってしまったときは、美味しくなかった。 だけど、同じものを食べているはずなのに 今は、美味しく感じていて、 君も同じように思ってくれたのが嬉しかった。] (101) 2023/02/20(Mon) 17:58:33 |
【人】 愛智 哲弥[ あとで、と言ったけれど、 すぐに開けたいと言われれば、 照れくさそうに、一つ頷き返した。 気に入ってくれたらいいけれど、 何を渡したら喜んでくれるか分からなくて、 色々調べて、君に似合うと思ったものを選んだ。 花言葉も一緒に調べたのは、 なんとなく、自分の気持ちを 上手く言葉にできない気がしたから] そうなんだ じゃあ、それにして本当に良かった [ ピンクが好きと、 撫でられた桃の花は、少しだけ嬉しそうに きらり、と煌めく。 知っているかな。 ]桃の花は、弥生の季節に咲き始めるって。 (102) 2023/02/20(Mon) 17:58:37 |
【人】 愛智 哲弥え…… うん、つけてみて [ つけてもいいか、と聞かれれば、 そんなに喜んで貰えて、嬉しくて、 はにかみながら、頷いて。 彼女の髪に飾られる様子を見守っていた。] (103) 2023/02/20(Mon) 17:58:38 |
【人】 愛智 哲弥あ、えっと…… 似合ってるよ うん、想像してたより、ずっと [ はっ、と気づいて、 言おうと思った言葉の方を言い直した。 顔がまた、薄っすらと赤くなってしまったから 照れているのは、一目瞭然だったと思う。] (104) 2023/02/20(Mon) 17:58:42 |
【人】 愛智 哲弥ちょっと捨ててくるね [ 食べ終わった入れ物などを袋にいれて、 お祭り用に用意された、少し離れた場所にある くずかごを指さしてから、歩いて少しだけ離れる。 見える範囲の場所だから、大丈夫だよね。 ふと、もう一人の君が、倒れる直前。 彼女のスマホに何かが届いた様子だったこと それは覚えているのだけど。 それは俺から言うことじゃない。 何が届いているかは見ていないから分からないし、 見る気もなかったから、画面は暗いまま。 彼女の鞄の中にしまってある。**] (105) 2023/02/20(Mon) 17:58:43 |
【人】 愛智 哲弥[ 桃の花が咲いたように 同じように頬を色付かせて、 そういうお揃いというのは、悪くない。 ふふ、と照れ半分、嬉しさ半分で 小さく笑みを零すと、軽い足取りで歩き出した。 少し離れた場所にかしゃん、と 軽い金属音を響かせて包んだものを投げ込む。 振り返ってみれば、彼女と話す結城君の姿が見える。] (170) 2023/02/22(Wed) 19:00:56 |
【人】 愛智 哲弥[ 彼が去る足音に、再び目を開けば、] …… 桧垣さん [ そっと名前を呼ぶ。 いつも通りの音の並びを、 いつもより温度の高い響きで。] (174) 2023/02/22(Wed) 19:01:06 |
【人】 愛智 哲弥話…… できた? [ 顔を覗き込みながら、問いかけて 彼女の表情をじぃとみる。 ちゃんとできた様子を感じ取れれば、 うん、と一つ頷き返して、 また、手を差し出す。] 行こうか [ 手を重ねて、ぬくもりを重ねて、 失った夏の暑さを感じながら、 祭りの喧騒へと歩き出そうと、足を踏みだす] (175) 2023/02/22(Wed) 19:01:08 |
【人】 愛智 哲弥やよいちゃん、って呼んでもいい? [ 振り返って、微笑んで、 託した彼女と同じ音で、君を呼んだ。 許してくれるなら、 また一つ、夢が叶ったと、 待ち合わせの時と同じように 至極、 幸せ そうに微笑んだ。**] (177) 2023/02/22(Wed) 19:01:11 |
【人】 愛智 哲弥[ 春に出逢って、初めて 恋 を知った。君を想うと、胸を打つ鼓動が早くなる。 君のことを、自然と目で追ってしまう。 君の傍を通ると、周囲の温度が 数度上がった錯覚をする。 春の陽気が、夏の日差しに感じるほどに 君という存在が俺に影響を与えてくる。] (192) 2023/02/22(Wed) 21:43:05 |
【人】 愛智 哲弥[ 化学的にあり得ない。 論理的に証明もできない。 それでも、確かに生まれた感情は、 一葉、二葉、君が注いだ笑顔で芽吹き、 三葉、四葉、君が育てた愛情で花開く。 嬉しさも、悲しみも、 楽しさも、苦しみも、 愛しさも、妬ましさも、 君たち、ふたりが引き出してくれたもの。] (193) 2023/02/22(Wed) 21:43:07 |
【人】 愛智 哲弥[ ―― そして、 初めて迎えた夏の祭りのこと。 俺は、大きな選択をした。 大切な人を、好きな人を失わないために、 選んだ未来に後悔がないわけじゃない。 それでも、隣で手を繋いで歩いてくれる。 愛しい君がいてくれるから、前を向けた。 ] (194) 2023/02/22(Wed) 21:43:09 |
【人】 愛智 哲弥[ あれから少し変わったこと。 君を"やよいちゃん"と、 特別な呼び名で呼ぶようになった。 最初は慣れなくて、 呼ぶたびに頬が熱くなってしまったけど、 愛しそうに呼ぶ音は、夏の暑さに負けない温度で。 君も"哲弥くん"と、 特別な呼び名で呼んでくれるようになって、 愛しい響きに、春の温かさを感じた。] (195) 2023/02/22(Wed) 21:43:11 |
【人】 愛智 哲弥[ ―― それから、 ふたりで食べる食事の楽しさと嬉しさを知って、 父と一緒に夕飯を食べるようになった。 妹のようにはできないけど、 たまにぽつり、ぽつり、と淡々と、 それでも時々、嬉しそうに話しをすると、 父も、ほんの少し嬉しそうに頷いてくれて、 家族らしいやり取りができるようになったんだ。] (196) 2023/02/22(Wed) 21:43:13 |
【人】 愛智 哲弥[ 茜色に染まる秋の景色を、 寄り添い歩くと心の中も色付いて。 白色に染まる冬の景色を、 手を握って温もりを分け合って。 桃色に染まる春の景色で、 始まりの出逢いに思いを寄せて。 青色に染まる夏の景色に、 失ったものと約束を胸に刻んで。 ] (198) 2023/02/22(Wed) 21:43:16 |
【人】 愛智 哲弥[ ―― そして、 幾度目かの季節が巡ったあとのこと ] 俺とこれからもずっと、 傍にいてくれませんか? [ 開いた箱の中の指輪には、 二つの宝石が、 水色 と桃色 に輝いていた。**] (201) 2023/02/22(Wed) 21:43:27 |
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