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マユミは、カナイを待っています。きっと、約束をした場所の傍で。 (c0) 2022/06/06(Mon) 22:50:37 |
【墓】 神の居ぬ間に弓を引こう マユミ>>0 叶 叶は容易く、その気配を見つける事が出来るでしょう。 場合によっては、あなたを呼んでいるようにすら。 静かに、しかし体中を軋ませて、待っているのです。 そして、いくつかの角を曲がった先に、それは居ました。 みし、ぱき。骨で形作られた片翼と手足が軋みます。 その中心で俯いていた顔が微かに上がり、 そして安堵の顔を見せました。 タブレットは足元に落ちていて、 骨の足の長さのせいで半ば浮いている少女に それを拾う事は出来ないのでしょう。 だから、視線をあちらこちらに送るだけ。 和装が溶けてしまったせいで露わになった上半身。 両肩から肘までは、檸檬色と葡萄色の結晶に覆われています。 そして胸元をぎちぎちに締めているサラシの上部から、 鎖骨の上辺りまでを血の色をした結晶が守っているようです。 だから、口をはくはくと動かすだけ。 「よかった」 だから、涙を流すだけ。 「きてくれた」 (+0) 2022/06/06(Mon) 23:03:28 |
【墓】 神の居ぬ間に弓を引こう マユミ>>0 >>+0 叶 そして、そして――それだけです。 少女は静かに待っています。 ただ、骨と結晶が軋む音が徐々に大きくなっていくでしょう。 今は、抑えているだけで。 少女の大部分は、考えているのです。 『変わりたい』 と。その為に……あなたのすべてをたべてしまいたい、と。 『あなたになりたい』 、と。少女は、あなたを待っています。 約束を果たしてくれるのを、待っています。 (+1) 2022/06/06(Mon) 23:09:02 |
【墓】 神の居ぬ間に弓を引こう マユミ>>1 >>2 >>3 叶 みし、ぱき、ばき。 骨の身体は、両の前足がゆっくりと、地面に向かっていきます。 四足歩行の構えをとろうとしているのでしょう。 震えながら、至極緩やかな動きで。 肉の身体は、たったひとつ。 ためらいと、かなしみと、あなたへの期待と喜びを込めて。 静かに、微笑んで。頷いてみせました。 「ころして」 確かにそう口が動いて――骨の前足が、地面に着きました。 ばき、べき。少女は、弓を引きました。 その向こうが神か、運命か、あなたかはわかりませんが。 次は、あなたの番です。 (+2) 2022/06/06(Mon) 23:44:40 |
マユミは、その大きな骨の手足と翼の根元を、結晶で補強しているようでした。 (c1) 2022/06/06(Mon) 23:44:49 |
【墓】 神の居ぬ間に弓を引こう マユミ>>4 >>5 >>6 叶 あなたの独白。あなたの想起。 あなたの決意。あなたの――あなたとの、約束。 それらを聞き、想い、抱いて…… 放たれた矢のように、その四ツ足は床を蹴りました。 あなたの全てを磨り潰して、啜る為。 愛しい人の胸に飛び込むように、跳びました。 その瞬間、あなたの目にはしっかりと。 血色の結晶が映っていました。 そしてそれは、激しく爆ぜるのでしょう。 空気を震わせて。身体を砕いて。その少女を壊します。 ぱき、ばき、と音がして。 それが肉体からか、結晶からか、骨の手足からか。 判別は難しいのでしょう。ただひとつわかる事は、 あなたの前には、結晶も、骨の手足も。 剥がれ落ちた血塗れの少女が転がっているという事です。 (+3) 2022/06/07(Tue) 1:40:36 |
【墓】 神の居ぬ間に弓を引こう マユミ>>4 >>5 >>6 叶 少女は、実にあっさりと、死んでいました。 きっと殆ど痛まなかった事でしょう。 きっと苦しまなかった事でしょう。 幾分か軽くなった少女が、 軽くなった分だけ血を床に広げて動かなくなっています。 その顔は、苦しみも、恨みも、つらみも、持っていません。 ただ、微笑んでいました。 最後に微かに動いた唇は、筋肉になんらか、 電気信号が通っただけかもしれません。 それでも、それを信じるなら―― 『ありがとう』 。たしかに、そう言っていたのです。 唯一、後に残ったのはつけっぱなしのタブレット。 きっと、少女がそうなる直前まで手にしていたのでしょう。 幾つもの変わりたい願望や、呪詛めいた言葉が沢山。 テキストファイルにいくつもいくつも、連なっています。 ずっと蓄積したそれらの末尾、一番最後の空白。 沢山の改行はきっと、その感情から遠ざけたかった言葉です。 そこに―― (+4) 2022/06/07(Tue) 1:49:13 |
マユミは、カナイに向けて。『いきて』と、遺しました。 (c2) 2022/06/07(Tue) 1:49:48 |
【墓】 神の居ぬ間に弓を引こう マユミ>>7 >>8 >>9 >>10 叶 あなたの背か、胸か、腕か。 運び込む際に触れた場所に、少女の血が付着します。 それが血色の結晶になったりはしません。 ただぽたぽたと、水音だけを残して寝台に横たわります。 微かに開いていた唇は閉じられてなお微笑みの形で。 薄い透明な液が通った跡が残る目元は穏やかなまま。 死んだ人間はきっと、何も語らないから。 だから電気を消してしまえば、そこにはもう闇だけ。 日向のような明るさはすっかり、消えてしまいました。 それでも……もし、暗く塗り潰される想いの下に、 この少女の生命が残っていたのなら。 神というクソッタレ 運命 に向かって弓を引く、その誇らしげな顔が、 きっとあなたの隣に立っていたのでしょう。 だから、いつか陽がまた日が昇るのなら。 その時は、あなたと同じ日向に居させてくださいね。 それじゃあ、おやすみなさい、なのです。 (+5) 2022/06/07(Tue) 10:16:58 |
(c3) 2022/06/07(Tue) 10:27:38 |
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