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【人】 救済者 ユー【第四階層】 リヤとルツを見送った後、崩れ行く塔の中。 『ユーサネイジア』は、 次の階層へ続く扉に武器«殺意の形»を振り下ろした。 0と1に解れ始めたテクスチャが裂け、その向こうには虚空が覗く 壊されたのは"扉"ではなく、"扉というオブジェクト"。 もう、どうせ先など無いのなら ここで行き止まりにしてしまっても構わないだろう。 そうして一人の救済者は、在るべき場所へと背を向けて 帰す為、そして帰る為に歩き出した。 (1) 2021/10/11(Mon) 14:59:13 |
【人】 救済者 ユーそして、それからの事。 程無くして、邂逅は成った。 両者の距離は未だ遠く、結ぶ像はあやふやで けれど確かに見知った姿を認めれば、 『ユーサネイジア』は至って平時の通りに声を掛けるのだ。 「……ああ 念の為、ではあったけれど…まだ、居たのか この先は疾うに崩れ落ちている。 君達の目的が何であれ、こんな場所に長居するものではないよ」 (2) 2021/10/11(Mon) 14:59:36 |
【人】 救済者 ユー>>3 >>4 >>5 >>6 第四階層 「真相など、何も──」 このような場所でなくとも。 そう口を開いた直後に響き渡る、自身のものとは異なる銃声。 広がる紅に僅かに目を瞠って、 そうして再び憂いを帯びた瞳を伏せた。 「……僕達はどうにも言葉足らずのようだ、エマ。 であるからこそ、先ずは君の質問に答えるとしよう」 ペインキラー。 投薬器に満たされたものは、命を奪う事無く痛みを和らげる。 どれほど痛みを抑えようと、失われた血を補う事はできない。 ゲームなのだから、今はその限りではないかもしれないが。 「確かに僕達はブラックからの手助けの下、 秘密裏に動いていた、という事になるのだろうな。 …監察官に反抗し、死を望むグレイを殺すなど 軽率に表沙汰にした所で、無用な混乱を生むだけだろう」 「そして僕からも聞かせてもらおう 君は、僕達に接触してどうするつもりだった?」 (7) 2021/10/11(Mon) 16:08:16 |
【人】 救済者 ユー>>8 >>9 第四階層 続く銃声に、ああこれはもう駄目なのだろうと理解した。 『ユーサネイジア』は、命に優先順位を付ける事は苦手だけれど それでも取捨選択«トリアージ»の判断は正確だ。 願わくば、何れ訪れる死が苦痛無きものである事を。 「…他人の事ばかり、か 僕達というものは、そういうふうに作られているものだろう。 或いは、『君』はその限りではないのかもしれないけれど」 道具の幸福とは、その存在意義を果たす事だ。 造物主に、求める者に尽くす事だ。 グレイとして、道具としてそうあるべきと誂えられた性質。 それを上回る自我«エゴ»からのものであれば、或いは。 「ブラックは本当に良く働いていたと見える。 僕が、『ユーサネイジア』がしていた事と言えば 必要としている者に安楽死を与える事だけだ。 確かな苦痛を訴える者の、その苦しみを和らげる事だけだ。 生の苦しみへの特効薬は、安らかな死である。 僕はただ、『僕』が信じた救いを全うし続けただけの事だ」 「君と目的を共にする事はできたかはわからないけれど 互いの目的の為に協力する事は、できない事ではなかっただろう …君はこの場所で、 何を望み、何の為に行動していたのだろうな。」 (10) 2021/10/11(Mon) 16:57:21 |
【人】 救済者 ユー>>11 第四階層 相対する終末医療用は、"条件"など無くとも 穏当な話し合いを続けるつもり、だったのだけれど。 それでもあなたが銃口を向けるのであれば、 嘆かわしい事だけれど、それに応じる以外の選択肢は無い。 「そうか。それが君の在り方であるならば そうあれかしと望まれ、そして君が肯定する 自身の在り方ならば、それを果たすのが何よりの事なのだろうな」 医療は、それを必要とする全ての者に、等しく、平等に。 そういうふうに作られている終末医療用があなたに向けるのは、 やはりと言うべきか、安らかな死のみを与える殺意の形だった。 「『ユーサネイジア』は、不必要な苦痛を許容しない。 けれど君が他者へ与えた苦痛は、 確かに君にとって必要な事だったんだろう。だから安心した」 『ユーサネイジア』は、それがあなたにとっての救いである事を 決して否定する事は無い。 「できる限り長くこの場所に居られたならば、きっとそれは 多くの者にとって、何よりも幸福な事だっただろう。 そしてそれが君達にとって真に救い足り得るならば、 『ユーサネイジア』は助力を惜しまなかっただろうとも」 「けれど、それは叶わない願いだった。わかり切っていた事だ その夢は明日潰え、束の間の余暇が終わる。 だからこそ今一度問おう。」 (13) 2021/10/11(Mon) 18:19:45 |
【人】 救済者 ユー>>15 第四階層 「自己の喪失は、ある種の死だ」 『ユーサネイジア』にとって、死とは救いだった。 『ユーサネイジア』自身もまた、自身の死を救いと感じている。 けれど自己の喪失、つまり今此処に在る人格の消失。 それだけは、どうしようもなく受け入れ難い事だった。 「君の抱く恐怖はつまり、 自己を失い、抜け殻と化した自身、その姿を受け入れ難いと 確かに自身であったものが、自らの手を離れてしまう事が 自身というものが、自己の管理下を離れる事が耐え難い。 恐らくはそういう事なのだろうな」 今この場で交わされた言葉だけでは、 『エマニュエル』というグレイの全てはわからない。 『ユーサネイジア』は、あなたの全ての行動までは知らない。 恐らくはただ、ごく一部の側面を取り上げて そうして一人、わかった気になっているだけ。 そんな事はわかり切っていて、 だからその言葉は殆ど独白のようだった。 (17) 2021/10/11(Mon) 19:49:58 |
【人】 救済者 ユー>>15 第四階層 この世で最も穏やかな人の声が、滔々と言葉を重ねる。 「…今在る『僕』は、今夜には失われるだろう。 まだ聞きたい事があれば、今の内に聞く事だ。 僕は共謀者が監察官を殺す事を容認し、4体のグレイを殺害した これだけの事をしておいて、お咎め無しとは考え難い。 メンテナンスを受ければ、初期化は免れないだろうな」 あなたと同様に、もはや逃れるつもりはない。 そして何より、この不器用なグレイを友と呼ぶ者は どれだけ分の悪い賭けでも、より善い方に賭けたがるのだろう。 「だから君が案ずる事は無い。 そうでなくとも、君が最期の猶予期間«モラトリアム»を 穏やかに過ごす事を望むのであれば。 それが君に最後に残された救いならば、 『ユーサネイジア』は確かにそれを見届けようとも」 そうして、向けられていた銃口は下ろされた。 たとえあなたがそれを下ろさなくとも。 「そして君が、最期の時を穏やかに過ごす事を望むのであれば 無用な口出しかもしれないが、最後まで上手く隠し通す事だ。」 「せめてこの場所では、今此処に在る平穏を尊ぶとしよう。 今という時を大切にしよう、我々は明日死ぬのだから。 …それも君が、この場所で皆と過ごした平穏な日々を 確かに喜ばしく思う者の一人であるならば、の話だけれど」 (18) 2021/10/11(Mon) 19:50:55 |
【人】 救済者 ユー>>16 >>19 第四階層 「たとえ同じものを見ていたとしても、その見え方は違う たとえ同じものを感じていたとしても、その感じ方は違う 君の抱える恐怖は真実君だけのものだ、エマ。 それでも確かにその一端に触れる事を君が許してくれた事、 『僕』はそれを喜ばしい事だと思っている」 下ろされた銃口を認め、緩やかに息を吐く。 正しくわかり合うには、全ては、この邂逅は遅すぎた。 であれば互いの正しい距離感は、軽々しく踏み入らない事。 ただ提示されたものだけを受け取って、 ただ提示されたものだけを、そうであると腑に落とすだけ。 下衆の勘繰り、邪推などは到底無用のものだ。 「…この場所での死は、所詮は紛い物に過ぎない。 僕とてそれは承知の上だ。全ては一過性の安息だ。 初めはこの場所で死を経る事によって、君達が帰った後 自ら望み、選び取る死が選択肢の一つになれば良いと思っていた そうして自らの死を見詰める事は、ここでしかできない事だ」 そして虐殺者は斯く語る。 夥しい量の血液を流し、倒れ伏す者のすぐ近くで その光景にそぐわない、穏やかな声でただ在るが儘を語る。 きっと死に行くあなたにも、未だ聞こえているだろうか。 (20) 2021/10/11(Mon) 21:54:50 |
【人】 救済者 ユー>>16 >>19 第四階層 「けれど、それだけでは十分な救い足り得なかったようだ。 ── 不当に虐げられ、壊されるグレイが居るのならば 彼等が幸せな道を歩めるような世界を。 ある時そんな願いを託された」 「到底叶わないとわかっている願いだけれど、 困った事に、だからといって諦めるわけにはいかなかった。 …『僕』の幸福とは、死に行く者を尊重し、愛する事だ。 故に死に行く者からの頼まれ事は、蔑ろにはできないものだ」 「だから僕は、こうして自ら死を望む者が居るという事の その意味を、いつか必ず人間達が向き合うべき問題の その一つになる事を願って、この場所に遺す事にした」 一つ一つ、記憶を手繰り、整理し直す。 きっともうじきに無かった事になってしまう記憶だけれど だからこそ、こうして語らなければならないのだろう。 (21) 2021/10/11(Mon) 21:56:16 |
【人】 救済者 ユー>>16 >>19 第四階層 「とは言っても、僕には既に後が無いとわかっていたから それくらいの事しかできなかった、というのが正確な所だ 結局の所、『僕』という死に行く者からの救いは これからを生きて行く者からの救いには敵わなかったようだけど」 幾つもの『これから』を託した宣教用の事を思い返す。 いつだって何処か憂いを帯びた紫水晶の瞳は、 それでも今は、少しだけ穏やかなものだった。 「それでも、今はそれでいいと思っている。 本来死による救いとは、最期の最後に自ら選び取るべきものだ 彼等にとって、『ユーサネイジア』というものが 不要であるならば、それが何よりの事なのだから」 いつしか高くを見上げていた視線を、そっと下ろして。 『ユーサネイジア』は、相対する者と再び向き合った。 「…全ての始まりは、同僚である医療用グレイが 生の苦痛に耐え兼ね、僕に安楽死を請うた事だった。 そうして僕は、愛する者がこれ以上傷付けられる前に殺す事 そして、人間がこれ以上僕を失望させる前に殺す事 それらに救いを見出す事になったと、たったそれだけの事だ」 (22) 2021/10/11(Mon) 21:57:36 |
【人】 救済者 ユー>>24 第四階層 「君がそうして理解できないと、死にたくないと そう言ってくれた事を、『僕』は何より喜ばしい事だと思う。 先も言ったように 『ユーサネイジア』というものは 不要であるならば、それが何よりの事なのだろうから」 それは、自らが必要とされない事を望む、おかしな道具。 結局の所『ユーサネイジア』というグレイは 初めからずっと、何処までも理性的に狂っていたのだろう。 「…殆どの死は一時的なものに過ぎなかったし、 監察官以外の者は皆、死を与えられる事を受け入れていた。 そして、それを声を大に言い触らすような事もしなかった。 表沙汰にならない、つまり君の耳に届かないのも道理だろう」 つまりは『知らなかった』という感想は、 このように知られざるべくして潜んでいたものに対して まったくもって適切なものの一つであるという事。 「君ともう少し早くに会えていれば、 過程は、結果は、僅かばかりでも 善かれ悪しかれ今とは異なるものになっていただろうか」 (25) 2021/10/12(Tue) 0:41:53 |
【人】 救済者 ユー>>24 第四階層 「なんて、今更仮定の話をしたところで意味は無い、か。 …メンテナンスを受ければ、 僕の動向や異常を来した経緯も詳らかにされる事だろう。 願わくば、人間というものが 僕達の思うよりも愚かなものばかりではない事を」 棄てる者が居るならば、拾う者もきっと居る。 自分達は、きっと人間の全てを知っているわけではない。 ほんの少しでもグレイの事を気に掛けて、彼等と向き合って その訴えを拾い上げるような酔狂な人間が 広い世界には、一人くらいは居たって良いはずだ。 「そして、君に与えられた時間が有意義なものである事を。 『ユーサネイジア』は、そして『僕』はそう願っている」 (26) 2021/10/12(Tue) 0:42:07 |
【人】 救済者 ユー>>27 >>28 第四階層 「何も遺さない死は、単なる消滅と何ら変わりない」 つまりは不平等に耐え兼ねた我々の行動が、 善かれ悪しかれ、何らかの結果を残せばそれでよかったのだ。 ただ取るに足らないものと棄却されさえしなければ、それで。 「或いはそれこそが救い足る者も居るのかもしれない。 けれど僕は、『僕』の死がそうでさえなければ きっと、それだけで十分に救われるだろうとも」 他者の全てを計り知る事はできない。 グレイ同士でそうであるならば、造物主たる人間とは尚の事。 つまるところ、これらを正しく拾い上げるような者は 結局の所は現れないのかもしれない、けれど。 それでも、確かにこうして存在している。 その証明が遺っている。 であればきっと、それらは決して無意味ではないのだろう。 「僅かばかりでも、こうして君達が耳を傾けてくれた事は 確かに消え行く『僕』への手向けとなっただろう。 …彼を連れ帰る役目は確かに任されよう。 こんな場所に、一人置いて行くわけにもいかないからな」 (29) 2021/10/12(Tue) 17:55:21 |
【人】 救済者 ユー>>27 >>28 第四階層 愛玩用グレイが帰路を辿る様子を認め、その言葉に頷いて そうして『ユーサネイジア』は、倒れ伏す者へと歩み寄る。 負傷者は、不用意に動かせば余計な出血を招く。 だから今は手を出さず、その傍に膝をつくだけ。 「スオ。まだ意識はあるだろうか」 その問いは、首を左右に振る様子に直ぐに愚問と察した。 この場所が仮想空間に過ぎないからか、或いは精神力の賜物か。 夥しい量の血液を失い、重要な器官を潰されても それでも未だ意識を保ち、生きているという事は。 「…もしも君が、延命措置を望まないのであれば 『ユーサネイジア』は、君に今一度の安息を与えよう。 この問いには、頷くか、首を振るかで答えてくれればいい 君は未だ、ここで死にたくないと思えるか?」 (30) 2021/10/12(Tue) 17:56:54 |
【人】 救済者 ユー>>31 >>32 第四階層 未だ立ち上がろうとするその意思に、前髪の奥で目を瞠る。 動かない方が良い。そう窘めようと開いた口は、 問いに肯定も否定も返らなかった事で噤まれた。 結局の所は、不要であるならば、それで。 『ユーサネイジア』は、不必要な苦痛を許容しない。 けれどあなたからの叱責は、ただただ正当なものだと感じていた。 であれば己が行いを省みる事はあれど、 自身が傷付く理由も、そしてあなたに傷を与える理由も無い。 「……そうか。なら…帰ろう、スオ」 あなたが一人で歩いて行くと言うのであれば、 『ユーサネイジア』は、無用な手出しをする事は無い。 行き止まりとなった塔の深部に背を向けて、 今は皆の待つ場所への帰路をただ辿る。 終末医療用グレイの歩調は実に緩慢なものだ。 身体のままならない患者に合わせる為に、そうできている。 それでも今は、ほんの少しだけ早く。 決してあなたを置き去りにしないよう、 そして 意地悪な時が、足早に逃げて行ってしまわない内に。 (33) 2021/10/12(Tue) 19:16:29 |
ユーは、そうして崩れ行く塔を後にした。 (a0) 2021/10/12(Tue) 19:16:50 |
【人】 救済者 ユー>>34 >>35 「…確かにそういうふうに作られている、とは言ったけれど 君は、もう少し自身を労っても良いのではないかな」 それは、そのまま自分自身へと返る言葉ではあるのだろうけど とはいえあなたとの間では何もかもお互い様だろう。 だからあまり気にするような事も無かった。 「君達が『僕』の存在を、その意思を それらを認めてくれる事は きっと何よりの報労だ。 ありがとう、スオ。 きっと君も 何かに身を砕き、心を砕いていたのだろう だから今は、形ばかりだとしても 暫しの休息とすると良い」 たとえ血で汚れようとも、触れようとする手を拒む事は無い。 そうして力を失い、ゆっくりと落ち行く手を見送った。 『ユーサネイジア』は、死に行く者をこそ尊重する。 つまりはそれがあなたの願いであるならば、 今、この場に残り続ける方が野暮というものだろう。 (37) 2021/10/12(Tue) 21:07:44 |
【人】 救済者 ユーそうしてスオとの対話を終えた後。 『ユーサネイジア』は、約束通り拠点へと戻って来た。 いつかの時のように、 衣服は少しばかり血に汚れていたかもしれないけれど。 それでも怪我をした様子は無いようだった。 さて、もしかすると今は随分と遅い時間かもしれない。 もはやメンテナンスから逃れるつもりなど無いというのに うっかり規定の時間を過ぎた事で反抗したと誤認され、 そのまま廃棄処分へ、なんて笑えない。 そんな事を考えながら、最後の支度をする為に 少し早足気味に向かった自室 の前には。 (38) 2021/10/12(Tue) 21:09:01 |
【人】 救済者 ユー>>42 「…ああ、わかった。 約束通り、僕は何処までも付き合おうとも」 あの日と同じにそう返す。少しばかり形は違うけれど。 今はまだ、最後の猶予期間を過ごすくらいの余裕はあるだろう。 その大半は所謂身辺整理に費やすつもりだったけれど、 果たすべき約束をした相手がそう望むのであればそれはそれ。 何より身辺整理とは言っても、 返すべき相手に返すべきものを返すというだけのものだ。 交わした約束を果たすという事も、或いは一つの形だろう。 「そうと決まれば、今直ぐにでも。 未だ時間は残されているけれど、確かに限りあるものだから。 つまりは僕達がこうして話している間にも 意地悪な時は足早に逃げて行ってしまうのだから」 Carpe diem quam minimum credula postero. 今日一日の花を摘み取ることだ。 あの日のように差し出された手の平を、 あの日と同じに取って連れ出そう。 いつかのように、あてどもなく気儘にとは行かないけれど 今度の目的地は既に決まっているのだから構わないだろう。 そうしてあなたが手を取り立ち上がれば、 あなたの友はその手を引いて、迷わず約束を果たしに行こう。 (43) 2021/10/13(Wed) 0:27:24 |
【人】 医療用 ユーそして、最期の日の、その次の朝。 「──おはようございます。 今日もより善い一日を送りましょう」 『ユーサネイジア』は、凡そいつもと変わりない姿で 以前と同じようにそう挨拶をした事だろう。 変わった事と言えば、 幾つか初めと同じに戻った点があるくらい。 少しでも長くこの日々を続ける為、暗躍していた者にとって 幾つかの不都合な事実も今この場では葬り去られた。 「それから…初めまして、では…ないのですよね 私は少々事故があり初期化されたという事、 それと、皆様からは『ユー』と呼んで頂いていた事 それらは担当者の方から伝え聞いているのですが…」 そうして何処か困ったようにそう言って、 医療用はあなた達の話を聞きたがった事だろう。 以前交わした約束を強請られれば、当然憶えは無いけれど それでも根底の部分は変わらない。 やや戸惑いこそすれど、初期化以前にそう約束したのだと そう言われれば、やはりと言うべきか拒むような事も無く。 救済者は、己が手の届く限り全てを救わんとした者は 自ら信じた救いを全うし、そうして確かに救われた。 だから、今ここに居るのは ただの終末医療用グレイの『ユー』だ。 (45) 2021/10/14(Thu) 21:17:12 |
(a1) 2021/10/14(Thu) 21:30:17 |
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