54 【半再演RP】異世界温泉物語【R18】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
―とある少年のXX―
[学校指定のランドセルなんてものは、
たしか、年齢が二桁に届いた頃にはもう、
背負うのをやめて、部屋の飾りにしてしまっていた気がする。
珍しく仕事を早退したらしい父に連れられて、
病棟の廊下を歩く。どこかの病室から、泣き声が響いていた。
難産だった、と聞いたのは、このときだったか、
それとも父方の祖母からだったか、はっきりしない。
ただ、母子ともに危険な状態、というワードだけが、
鮮明に記憶に残っている。
死にかけて、命を懸けて、こどもを産んだ。
生も死も、頭では理解している年齢だった。
だから、こどもなりに、大変だったんだな、と慮る。
ベッドの上の母は、点滴の管を繋いだまま、
やさしく、赤子に語りかけていた。]
「迅、ほら、妹ちゃんよ」
[招かれるまま、母の腕の中の子を見下ろす。
ドキュメンタリーかドラマかで見た生まれたての赤ちゃんは、
しわしわでまっかっかだったけど、
母に抱かれた妹は、家族と同じ肌の色をしていた。
言われるままに母の腹に触れたり、声をかけたりしたけど。
そこからこれが出てきたのだ、と言われても、
すぐにはピンと来なくて、じっと見下ろす。
両親に促されて、そっと指を伸ばしてみる。
筆箱の中の消しゴムと大差ないくらい小さなてのひらに、
きゅ、と指先を握り込まれて、慌てて引っ込める。
微笑ましげに笑い合う両親とは裏腹に――
そのちいささが、おそろしい、と思った。]
[妹と母が家に帰って来てからも、
この頃は、積極的に世話をするなんて考えはなかった。
触れたら壊れてしまいそうで、
人形じゃなくてニンゲンなんだから、それは即ち死で、
かあさんが目を離している間に、そっと顔を覗き込む。
息をしている。動いている。……生きている。
それだけを、確かめるように眺める毎日だった。
母の薄くなった腹と赤ん坊を見比べては、
あの中にどうやって入っていたのだろう、と不思議に思って、
余計にこわくなった。
ニンゲンの身体の中にニンゲンが居る。
生命の神秘、と今なら一括りにしてしまうそれが、
小学校卒業を目前に控えた身分では、
どうにも得体のしれない何かという印象が拭えなくて。
ひとりで座るようになる頃には、
自分の膝の下までしかないこの子を、
うっかり蹴ろうものなら死なせてしまうのだと、
その事実がひたすらにおそろしかった。]
[赤ちゃん言葉で話しかける父や母を、
どこか冷めた目で見ていたし、
自分から妹になど、ろくに声をかけた記憶もない。
ちょっとしたことですぐ泣く赤ん坊という生き物が、
鬱陶しいとまではいわずとも、
自分の世界に組み込むまでもない存在だったことは確かだ。
部屋にこもって、ヘッドフォンをMDプレイヤーに繋ぐ。
音楽をかければ、一人の世界は簡単に出来上がった。
そうやって一切を遮断して自分を切り離していたように思う]
[その意識が変わったのはいつだっただろう。
自分ひとりで歩き始めた妹は、
父でも母でもなく、よく兄を追いかけるようになった。
なんでもないカーペットの段差で転んで、
まあるく驚きを示した目と、視線が合う。
この頃にもなれば、ああ、泣くな、と
此方も赤ん坊の相手に慣れてきている頃だった。
腹が減っては泣き、眠くても泣き、何もなくても泣く。
――けれど予想に反して、すっくと立ち上がった妹は、
必死で泣くのをこらえながら、ひしと足にしがみついてきた。
泣いている間に、兄が泣き声を避けて二階にあがることを
学習したのか、はたまた偶然だったのか。
思春期と反抗期とで気が立っている兄に、
そうとは知らずにしがみついて、
にぱ、と笑ったのだ。
目に、大粒の涙を浮かべたままで。]
[転んでも抱き起こしもせず、
近寄りもせず、ただじっと見ていただけの兄が、
そこに居てくれたことが嬉しいのだと言わんばかりに。]
マリ、……真里花、
えらいね。
泣かなかったね。
[そっと、頭を撫でた。
はじめて自分から抱え上げた妹は、ずっしりと重く、
――とても、あたたかかったことを、覚えている。]
―― 少女の小さな世界 ――
[ 物心ついたときには、家には兄が居た。
父、母、兄、妹のよくある家族。
父母が忙しくしているから、
兄が甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
それもよくある話。 ]
にいちゃ まりか なかなかったよ
えらい?
[ どこに行くにも、カルガモの親子よろしく
兄のあとをついて回った。
年頃の兄からすれば、うっとおしかった事だろうに。
私の知る兄はいつも、優しい顔をしていた。
転ぶよ、と注意されていたにもかかわらず
蝶々を追いかけて転んだ日も
迷子になってしまった時も
――泣かないから見つけられなかったとは
ある程度成長してから聞いた笑い話だが
怖い夢を見た時も。
――どう見ても泣いていたとしても、
口癖のようにそう言っていた。 ]
[ 大きな兄の手がすきだった。
どこにいても見つけてくれる兄がすきだった。
絵を描いて、粘土を捏ねて、踊って。
それを見せて、報告したら
上手だねって褒めてくれる兄がすきだった。
兄さえいれば、この先もずっとずっと
幸せなんだって、思っていた――。
しかしそんな幼い幸せは、あの日派手な音を立てて
脆く崩れ去っていった。 ]
りこん?おとうさんとおかあさん
バイバイするの?
[ 真里花はお母さんと一緒に行こうね。
そう言った母に、不思議顔のまま、頷いた。 ]
おとうさんお仕事で遠くに行くの?
はやく帰ってきてね
[ 未就学児に"離婚"の真意までは伝わりようがなく。 ]
まりか お兄ちゃんとはっぴょうかいの
練習するやくそくしてるからまたあとでね
[ あの日、物言いたげに顔を顰めた父の思いに
気づいたのは小学校を卒業する頃だった。
妹が、あの時の私と同じような年頃に
なった頃。
手紙はときどき返事が来る。
誕生日には電話も来るし、電話もする。
そうして少しずつ、いつでもそばにいてくれた兄が
会うことはできない兄に変わっていくのを
渋々、受け入れた。受け入れるしか、なかった。 ]
『遠足は水族館に行くんだって
お兄ちゃんはどこに行った?』
『ねぇあのね ――……なんでもない
そろそろ寝ないと おやすみお兄ちゃん』
[ 電話の先で兄は私の話をちゃんと聞いてくれたし
父母の愛情を感じないではないけれど、
生まれたばかりの妹には、甲斐甲斐しく面倒を見てくれる
兄は居ない。
その代わりに、あまり手のかからない姉がいたものだから。
父母は真里花の事を「手のかからないおりこうなお姉ちゃん」
だと囃し立てて、甘ったれを封殺した。無意識で。
気持ちの上では兄がしてくれたように、
妹の世話を焼きたいと思ったけれど。
小学校に通い始め、環境も大きく変わり
それに一生懸命だった私は、そこまでは手が回らなかった。 ]
お兄ちゃん まりか 泣かないよ
……えらい?
[ 電話を切ったあと。
やっぱり私は口癖のようにそう言ってしまう。
勿論返事は返ってこないし
偉いね、と撫でてくれる手も現れない。
リビングでは寝ていた妹が起きた事を
知らせるように大きな声で泣いている。
慌てる父母の足音は聞こえない。
……お母さんは最近妹の夜泣きがひどいからと
寝不足だったっけ。 ]
どうしたの ミルク?おむつ?
[ おぼつかない手付きで、幼い妹を抱き上げる。
妹は私の顔を見ても、泣き止むことはなかった。
きっと安心できなかったのだろう、半泣きで
顔を歪めて自分を見ている
おりこうで手のかからないお姉ちゃんでは――。* ]
| (a4) 2020/12/29(Tue) 23:16:57 |
| ふゎ……なんていうか。 すごく、雰囲気のいいところ、ですね。 [ よいしょ、と部屋の一隅に二人の荷物を置いてから、華さんの隣で窓越しの景色を眺めた >>11。 雪化粧に彩られた温泉街の様子。 流れる川と、白く雪を被った山並み。そこここの宿から立ち上る湯気の様子が、温泉街の情緒を醸し出していた。] うん。いい風景です。 本当に、華さんと来れてよかった。 [ 横合いの彼女を、そう見上げてから。 継がれた言葉 >>12に声を出さず、笑う。] (45) 2020/12/29(Tue) 23:35:35 |
| ……ん。ん。
[ こほん、と小さく咳ばらいみたいにして。 声を整えて、華さんについていく。 僕もコートを脱いで、セーターとジーンズ姿。 寝転がる彼女の様子に少し、緊張がほぐれるのを感じる。 だからだろうか、その次の言葉はすっと出て来てくれた。]
順番に入ります? それとも、一緒に入っちゃいますか。
[ その言葉を投げてから僕の視線はキャリーバッグへ向かう。 中から取り出す紙箱は、姉さん謹製のパウンドケーキが収められたもの。お湯を沸かさないとな、と少し考えて室内を見回すと、ちょうど華さんの笑顔が目に入った。 気をおかない様子の、寛いだ笑み。なんかやりたいこと、って言われて一番思ったのは、その笑顔を見てることだったんだけど。]
(46) 2020/12/29(Tue) 23:35:47 |
| ― 客室 ― [ ケーキを収めた紙箱を手にしたまま、少しの間僕は動きを止めていた。一年前にはこんな風に、彼女の笑顔をみる機会があるなんて想像していなかった。 ずっと憧れて、密かに恋心を抱いていた、年上のお姉さん。 そう、去年の >>0:122>>0:123。 ちょうどこんな雪の降ってた日だった。 その日、僕は華さんに告白したんだ。] ……そう、ですねー。 [ 一瞬の回想は華さんの声で >>14途切れて、 いま現在の事柄に僕は思考を振り向ける。] うーん、どうかなあ? それなら最初、お風呂を使ってからでも良いのかなって。 まあ、とりあえずお茶淹れる準備、してきますね。 せっかく作ったケーキなのに、食べてもらえなかったって佳純姉さんにバレでもしたら、僕すっごい怒られちゃいますから。 [ 一方で、華さんは雪の積もった外へと出ていく様子。 暫くしてお茶の用意を整えた頃には、丸盆にちょこんと載った可愛らしい雪うさぎが室内に現れていたのだった。*] (50) 2020/12/29(Tue) 23:49:21 |
| ― 客室 ― [ 真白な体に赤い目と緑の耳。その姿を目にして破顔した。] あは。可愛いうさぎですね。 南天の木、あったんですか。 [ 尋ねつつ、外を覗くようにすいと身を傾けて。それから、丸皿に切り分けたパウンドケーキを差し出して、湯呑に緑茶を注いでいった。] これ、どうぞ。佳純姉さんからです。 旅行に行くって聞いて、羨ましがってました。ふふ。 [ 高校を出たあと、パティシエになりたいって専門学校に進んだ佳純姉さん。もちろん、華さんのことは――僕と同じく――大好きで、是非にって持たされていたんだ。 その道に入ってまだ日は浅いけど、試食を何度も命じられたおかげで腕前はよく知っている。ドライフルーツとナッツのパウンドケーキは一番のお得意だ。含ませる洋酒の割合もちょうど良い加減。最初の頃にはほろよい加減になっちゃったりもしたものだけれど。] ――そう、雪うさぎ。 三人で作ったりもしましたね。 これがお父さん、こっちがお母さんで、こっちは子供たちって。 [ 子供の頃の懐かしく楽しい記憶。 もっと作ろうよ、ってせがんだことを思い返しつつ、ケーキとお茶を口に運んだことだろう。]* (51) 2020/12/30(Wed) 0:06:47 |
| (a6) 2020/12/30(Wed) 0:09:52 |
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