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【人】 XI『正義』 マドカ[ちらりと振り返った先、 彼は僕の吐き出した汚物を片付けているようで、 初対面の相手に、後始末をさせることを、 ひどく申し訳なく思ったものだった。*] (597) 2022/12/13(Tue) 20:10:39 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 面白くもない過去の話 ── [今世の僕は、大陸よりも東の海の上、 浮かぶ島の一つに生まれ落ちた。 幸か不幸か、会場に並ぶ島々の中でも さらに小さな島に生まれたものだから、 『証』を持って生まれた僕に対しても、 普通の『人間』の子供のように、 両親はもちろん、島民も接した。 そもそも、大陸で信じられている件の『宗教』 そのものに興味があまりなかったのかもしれない。 僕は、『証』を持っていたくせに、 『証』がない者のように扱われた。 それが非常に稀有なことであったと、 幼い頃僕は知らずに呑気に笑っていたのだ。] (598) 2022/12/13(Tue) 20:10:53 |
【人】 XI『正義』 マドカ[僕が平和な日常を過ごしていた時、 『証』を持つ誰かはその存在を否定され、 あるいは石を投げられて、 親にすらその生を否定され、 けれど殺すこともできない、 ……と腫物のように扱われ、 もしかしたら厄介払いされ。 書物でそのことを知った、8つの頃、 僕は両親に尋ねたことがある。 僕は、ここにいて良いの?と。 両親は驚き、それから悲しみ、僕を叱った。 たった一つの痣があったからと言って、 そんなものは、何の理由にもならない。 持って生まれた痣でなくとも、 生涯消えることのない印など、いくらでもあるのだと。 僕はその時………… 妙な心持がした。] (599) 2022/12/13(Tue) 20:11:09 |
【人】 XI『正義』 マドカ[両親の言葉は、世の中一般の親としてみれば、 どこまでも善良で、親として正しい反応だ。 けれど、僕の胸の内はざわめいた。 だってこれは、『平等』じゃない。 他の『証』を持つ子供たちが苦しんでいる傍らで、 僕だけが、そうじゃない。 不安が心を占めるのに、そう時間はかからなかった。 それでも時間だけは、平穏に過ぎていく。 僕の生まれた家は、これまた幸運なことに、 はっきり言って裕福な方で、生活上の心配は まるで存在しなかった。 衣食住に困ることはなかったし、 多分欲しいといえば大概のものは 手に入っただろう。 僕が両親に何かを強請ったのは、 幼い時分だけだったけど。] (600) 2022/12/13(Tue) 20:11:23 |
【人】 XI『正義』 マドカ[15の夜、目が覚めると、 辺りは紅蓮に包まれていた。 島ひとつを燃やし尽くした炎は、 僕以外の全ての命を奪った。 僕と違ってただの『人間』だった、 幼い弟の命をも、容赦無く奪い去った。 僕はきちんと教育を受けていたけれど、 自身が『人間』より丈夫なことを知らなかったから、 炎からさえ守れば、 自身より低い位置に庇った子供は 助かると思い込んでいた。 彼は僕より少しの煙を吸い込んで、 そのまま息を止めた。 血の繋がりのない子供達も、 親を含む親戚も、隣人も、 ずっと僕にもよくしてくれた使用人の彼らも、 小さな島だ、 顔を知らぬものなど一人もいなかった。 皆みんな、死んでしまった。] (601) 2022/12/13(Tue) 20:11:37 |
【人】 XI『正義』 マドカ[手の中からこぼれ落ちていったものを、 惜しんで泣いた。 それが僕に与えられた罰だと知って、 首を垂れた。 僕は悲しかった。 けれど、同時に安堵した。 嗚呼、これで漸く…… 漸く僕も、他の『証』持つ者たちと、 並ぶことができる。] (602) 2022/12/13(Tue) 20:11:49 |
【人】 XI『正義』 マドカ── いつか、故郷の唄を ── [彼女が、僕の故郷の唄を歌えるらしいことに 気づいたのはいつだったろうか。 きっと、僕か彼女が口ずさんでいたのを、 どちらかが気づいたのに違いない。 年下の子供たちに、 子守唄を歌っていたのかもしれない。 僕の故郷の唄は、 どこか独特の節を持っていた。 もしかして、僕たちの故郷は近いのか、と、 期待したのも束の間。 僕の淡い期待が砕けるまで、 そう間は置かなかったろう。 僕は彼女に笑って問うた。] ねぇ。 君の故郷はどこ? 君はどこからきたの? 良かったら、教えてよ。** (605) 2022/12/13(Tue) 20:12:51 |
(a89) 2022/12/13(Tue) 20:15:05 |
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