87 【身内】時数えの田舎村【R18G】
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田舎に永遠に残りたいと思う。それができたら素敵だと思う。
それが叶わないのだとしても。出来ることがある、とも思った。
御山洗
「……私がくっつきすぎるせいで、あの子が鬱陶しがっていたのね。
ちゃんと話したから、当てずっぽうじゃないわ。
もう大人だしそれぞれ自立をしないといけないのは確かじゃないですか。
だからね、仕方ないのよ」
漠然とした不安は田舎の思い出で薄れはするが埋めるものにはならなくて、ただ、今だけは何も怖くないような満たされた気持ちになっている。
また一瞬で、恐ろしいほどに消えてしまう。
思い出さなくてはいけないことが、話さなければいけないことがあるのに。
「弱音を吐いてごめんね。
しんどかったけど、今はなんだか、清々しい。
兄さんのおかげかも?」
まるで別人になったのように、迷子になっていた姉の様子は見えなくなり、凪いだ心にあなたのことばがふり続けた。
「……なかなおり、できるようにする」
言い聞かせるように緩く手のひらを握りしめて海の静かな波を見つめていた。
なんだか、あなたのまえでは偽りの姿を見せてばかりのような気がした。
青嵐
「今更気付いた?瞬兄のそういう、
細かいとこ気にしなかったり、
気楽に構えてるところは美徳だけど、
たま〜に苦言言われてるの、俺は知ってますから」
時任の姉さんがちょっとね〜と、
聞きようによっては思わせぶりなことを言う。
それでも見習うとこは見習うべきではあるが。
「あはは、そうだね。こんなに揃って会えるんだし、
会えないことはない。でもちょっと寂しいけど。
色んなとこ飛び回って、みんなに会いに行くって目標を立てたから本当に『会おうと思って会いに行く』ようにしますよ、俺は!」
無遠慮な手に頭を掻き撫でられ、
あ!折角髪結び直したのに!と文句ひとつ。
それでも心地よさそうに目を細めて。
「え、かけっこってそれは俺に勝ち目ないけど!
行くぞて、も〜〜、待ってってば〜〜〜」
そんなこんなでもう一人の先輩の下へ改めて向かうのだろう。
卯波だけの四角形を作り続ける。一つに固執するあなたには負けない。
| >>+33 夕凪 海辺 「……でも。思い出にばかり生きてはいられないから。子供のようにはいられないから。 子供のままの関係でいられたらよかったのにね。そうしたら、苦しくなくて済むのに」 → (117) 2021/08/14(Sat) 17:10:13 |
| (a54) 2021/08/14(Sat) 17:10:21 |
| >>+33 夕凪 海辺 ここに居たいと願う気持ちが安穏を齎すならば、きっと御山洗の言葉は届かないのだろう。 そうとは気づかずにふとこぼれた言葉をかき消すように首を横にふる。 「そっか。仲直りできるなら、それが一番いいと思う。 なにかひっかかってしまうことがあるのなら取り除ければ問題ないんだしさ。 おとなになった二人としての関係を、すり合わせられたならいいと思うよ」 前向きに見える貴方の言葉にそれで安心してしまった。 多分ちょうどその頃に、学生たちのあげた掛け水がぱっと御山洗を隠した。 顔から体まで濡れた御山洗が目を丸くした後、おかしなものを見たように吹き出す。 「子供のままだったら、いいかもなあ」 (118) 2021/08/14(Sat) 17:10:35 |
| (a55) 2021/08/14(Sat) 17:10:59 |
| 「昨日はしゃぎそびれたし、俺も遊んだほうが良いかな」
乾いた塩がぱさぱさとくっついている。川辺と同じようにはいかない。 スポーツ選手のように美しくとはいかないけど、鍛えた背中は大きかった。 夏のせいか少し日に焼けた肌は、もう10年前の子供のものではないけれど。 (119) 2021/08/14(Sat) 17:16:50 |
| >>120 宵闇 「……せっかくだしさ。もう濡れちゃったら、関係ないし」 昨日は水辺には入らなかったぶん、はめの外しに拍車がかかったのかもしれない。 臑の浸かるところまで入っていって、潮の匂いに満たされた空気をすんと吸う。 都会の海だったらこうはいかない。遊びに来ただけではあっても、感慨はひとしおだった。 「何やってるんだ、本当。 あしどけてあげなよ」 なまこが遊び道具になっているんだろうか、みんな。夕凪に振り回されていたのを思い出す。 ざぶざぶと海の中を難なく歩きながら寄っていって、踏まれているナマコの顔を見に行く。 (121) 2021/08/14(Sat) 17:42:19 |
受け取ったカメラを一旦手荷物に戻し、
水着へ着替えることに。人も寄ることもないだろうと、
近くの物陰で思い切って衣服に手をかける。
上着をしっかり、細腕で絞り、
肌に纏わりついて離れないシャツを、両手をクロスさせて無理矢理引っぺがした──ところで。
ふと、自分の両胸に手を当てる。
筋肉の僅かな硬さ。なだらかな、
未だ成長を感じさせるような感触。
まだ解消されてない違和感が一つだけある。
何かしっくりこないような。現実味の薄いような。
カメラによって切りとられた顔を、
勇気を出して、なんとか、見つめようとする。
(──ああ)
自分が、今まで自分のことを見つめられなかったから。
『今の自分』の外見を、他人に委ねてしまっているんだ。
少年が、段々と元の形へ戻っていく──。
| >>123 宵闇 「筋肉質だし、体の作りが独特らしいね。俺はあんまり扱ったことないけど……うわ」 ぶにゅぶにゅの体は種類によっては溶けたりもするし、力を入れて固くもなるらしい。 どんなもんかな、と覗き込もうとした顔を下から水しぶきが襲った。 ぱちぱちと瞬かせて、また海水を浴びた顔を拭う。 「……、やったな」 ひと呼吸ふた呼吸おいてから、反撃の狼煙があがった。 大きい手が同じようにばしゃ、と足元の水をかきあげてふっかける。 (124) 2021/08/14(Sat) 18:13:56 |
ゆったりとしたラッシュガードを着た。そしてもう一度「海だ〜〜〜!!!!」
反射的に腕をあげると、ナマコをキャ〜〜〜ッチ!!!
「油断も隙もないなあホント!」
ナマコさんが可哀想でしょ!(委員長)
「あ、茜ちゃん」
そして、透けてる様子に気付いたようで、
小走りで荷物を漁り、大き目のタオルを取り出してみせつつ、自分の胸元をとんとんと叩く。
「さっきも水かけまわってたでしょ、
一旦休憩にしようよ。両手のナマコは引き受けるから」
ほんのわずかに頬を染め顔を背けて、
気付いてくれ〜と気遣いをしてみて。
「こ〜らからかうんじゃありません」
だから見ないようにしてたんでしょ〜なんて言う。
ああ、そういう方法もあるんだ、とちょっとだけ感心したりして。
「茜ちゃんは着替えちゃんと……あるよね、茜ちゃんのことだもの。いや、安心した。
十年越しに女らしさを磨いたところを目の当たりにするとは思わなかったよ〜」
御山洗
「子供、のままの関係だったら?」
どういう意味だろう、と頭で思考を巡らせている間に水が飛びかけられる。
ぱちくりと目を瞬かせて見つめれば、覗くのは無防備な脇腹。いたずら心が芽生えてその腹に手を伸ばした。
「御山兄さん余所見してると危ないよ」
くすぐってみたい衝動が起きてしまったから。
遊んでみたくなったから。
そんな無邪気な理由でいつまでもここに要られたらどれほどいいか。
しばらくしてから皆の輪に戻ろうと声をかけた。
その時一体自分は誰を見ていて。
あなたは誰を見ていたのだろう。
「お兄さんも、溜まったものがあるなら海にでもなんでも吐き出してしまってください。
田舎に忘れ物をするのは、夕凪たちだ絵で十分です。
あと、風邪は引かないように!」
そう、笑って。
一歩海に向かって飛び込む構えを見せた。
| >>129 宵闇 いつも素直な大男は耳を貸そうと一旦止まった。 が、和解の姿勢を見せた途端に反撃を喰らい、思わず声を上げて笑った。 「っふ……はは、話す気ないだろ、翔」 つまり望まれているのは継戦なのだ。そう受け取ると、沖の方へと追いかけていく。 同じように深みに行くにつれて水も掬いやすくなって、巻き上がる量も多くなった。 まるで本当に子供に戻ったかのように、遠慮もなしに塩水を掛け合う。 (133) 2021/08/14(Sat) 19:12:30 |
| >>+39 夕凪 「わあっ」 面白いくらいに体をよじって突かれた箇所をさすった。 前髪を透かして白目が見えるくらい目を丸くして、なんで? みたいな目が夕凪を見ている。 それが悪戯心なのだろうと遅まきに理解すれば、仕方ないな、と姿勢を正す。 「うん、いこうか。なるべくたくさん、楽しんだほうがいいよね。 これだけみんなが集まることもきっとなかなかないだろうから」 今は忘れてしまおう、心中に抱えておいていくのは思い出だけでいい。 夏のにおいに吹かれながら、はしゃぐ声の中にまぎれていく。 (136) 2021/08/14(Sat) 19:40:52 |
卯波
「ああ〜次々女の子らしい単語。
メイク、……そっか、その年ごろくらいになるとするんだね」
何か思うことがあるのかうんうんと頷きながら。
大半は後輩がこんなに大人になって……という感情からくるものなのだろうが。
「俺は写真撮るひとだから、撮られる側の努力とかにも凄い興味があるんだよね。時間があったらちょっとだけでも教えてもらっちゃおうかな……俺がするわけじゃないんだけど」
| >>135 宵闇 海 「そりゃあ一応、」 水を掛けられれば掛け返し、それにまた掛け返されて。 ラリーのような水遊びが続く。 まだ少し優勢なぶん話を聞く余裕もあったのか、待てとされればぴたりと止まったのに。 「っ、翔!」 叫ぶような声。海辺は底面が急斜面になっていることもある。 海の中に頭を沈めて、手をつかもうと腕を伸ばす。 (139) 2021/08/14(Sat) 20:02:47 |
| >>138 添木/添木邸 「みんな、『子供はダメだ』『子供にはまだ早い』って言うもんだからさ。 大人はいいなあって……現実にはそんなとんでもなく良いもんじゃないけど。 そうだなあ、瑠夏や翔とも飲もうよって話はしたし。祭りのあとに時間とれるかな」 そのあとになったっていいけれど、折角大人になったのだから積もる話をしたくもある。 もしも場と時間が取れるのならそういうこともしたいと同意した。 きれいに畳まれた布団をその形のまま縁台のある方へ持っていって、 ありもので干してみた。そのままの形で家が残っていても、細かい道具は抜けてるかもしれないから。 「そうだよな、俺も……受け入れてもらえるか不安だったから――…… ……あ、うん。時間はあるしね」 添木は年も近いほうだから、御山洗が集落を去った理由が親の離縁であることは知っているかもしれない。 それに、ついていかなかった父親のほうがこの田舎に由縁のあるほうだ。 だから帰ってきた御山洗を迎えるものはいないはずだけど、 声を掛けられてそっちへ寄っていった。 (140) 2021/08/14(Sat) 20:20:14 |
| >>141 宵闇/海 「危な……頭打ったりしてないか、大丈夫? ごめん、よく周り見てなかった……」 引っ張り上げた体をちゃんと足のつくところに立たせて、怪我をしていないか検める。 意気消沈としてはしゃいで遊ぶ気力はすっかりなくなっているようだった。 (142) 2021/08/14(Sat) 20:28:35 |
| >>144 宵闇/海 脱いだ上半身はともかくとして、せっかく海に入って良いように履いてきたハーフパンツまで海水漬けだ。 選択する前に真水で塩を抜いたほうがいいのかな、とか考えながら目元を隠した前髪をかきあげた。 普段はほとんど気にしなくとも、濡れて束がくっつき合うと前が見えづらい。 「それならよかったけど……はしゃぎ過ぎるのも考えものだな、やっぱり」 過大に落ち込むのはやめたものの、すっかり気持ちは落ち着いてしまった。 まだまだ元気な学生たちの方を見て、ああいうふうにはいかないんだなと思い直す。 (145) 2021/08/14(Sat) 20:48:26 |
宵闇に笑顔を返したとき
思い出したのは
双子でみんなのことを思い出していた数年前。
『お兄ちゃんは忙しいんだから僕たちに構ってばかりいられないさ。
だけどとっても大事にしてくれてる、夕凪もわかっているだろ』
わかっているわ。優しくて真面目な人だもの。
『涼風? 何してんだろうなぁ、まだ僕たちみたいに文章を書いてればいいけど。
それか新しい夢見つけていたりしているかもな』
それもいいと思う、もう何年も経ったんだから。
『編笠元気かなぁ〜、あいつと話すの大好きなんだ、なんか面白い仕事についたりしないかな。みんなが思いつかないような』
どんなことを好きになったのかな、とても気になるね。
『青嵐はさぁ、落ち着きが出たのか気になるよな。夕凪もあの時のこと……え、もういいって?僕が変わりに聞いてやるよ』
何をしているのか、二人で想像して。
会える日を夢見て、一緒に笑った。
『モモチは背ぇ伸びたのかな、まだまだ成長期だろうけど流石に夕凪の服はもう嫌がる歳だろ』
まだまだ可愛いわよきっと。
私の服も入るんじゃないかな。
いつまでもいつまでも夢を見るように話は続いていた。
| (a86) 2021/08/14(Sat) 20:59:17 |
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