242 『慰存』
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[このマンションに都合よく空き部屋が出来たのは
ただの偶然なんだと、信じ込んでいました。]
[
あなたがこのマンションに居るのは知っていました、
とは言えないので思ったほど驚いてないと思われたら
どうしよう、と不安は少しだけあったものの。
疑われていないならこの話を掘り下げることはせず。]
| [同じ名前のミステリー作家がいると聞いて 調べてみようと考えている姿を見て 少しだけ、引っかかりを感じたものの その場は話を誤魔化しておしまい。
話題を買えるようにバターサンドを差し出せば 快く受け取ってもらえて、ほっとしました。 挨拶に、と持ってきたお菓子は どうやら喜んでもらえたみたいです!]
(28) 2024/01/13(Sat) 10:54:35 |
| 私も紅茶が好きなんです! あっ……私でよければ、ぜひ…… [お茶でもしよう、と言われて それが社交辞令だとしても舞い上がってしまい 顔を赤くしつつも微笑んで見せるのです。 きっと葉山さんは優しいから 私なんかにもお茶しよう、なんて優しい言葉を 投げかけてくれるのでしょう。 丁寧なお礼には、 美味しく食べてもらえたならそれで十分ですよ、 なんて笑顔で返して。 その日の挨拶は終わりにしたのでした。] (29) 2024/01/13(Sat) 10:55:06 |
| [もし、葉山さんからお茶しようって お誘いがあったなら どんな予定があってもキャンセルして 時間を空けたでしょうけれど。
挨拶の時のやり取りは社交辞令だろうと思っていた私は 自分から何か行動をすることはありませんでした。]** (30) 2024/01/13(Sat) 10:55:38 |
***
[朝、いつも通り葉山さんが出る時間に合わせて
ゴミ捨てに向かっていたある日の事。
鍵を忘れてしまったのか
入れずに困っている葉山さんを見かけました。
ゴミ捨てに行く程度なら鍵をかけ忘れたかどうか
確認を忘れることもあるでしょうし
鍵を持っていないのに気づかなくても無理はありません。
生活を覗き見ている私は
しっかり者の葉山さんでも忘れることあるんだな、
なんて微笑ましい気持ちになったりもしたのですが。]
| この時間は管理人さんいないですもんね。 いいですよ、私もたまに忘れそうになりますし 気にしないでください。 >>25[困った時はお互い助け合いですよね。 鍵を掌に載せて差し出すのでした。] (31) 2024/01/13(Sat) 10:56:47 |
[本当に鍵を忘れて、締め出されて
オートロックを開けたいだけなら
別にわざわざ鍵を渡さずとも私が開けるだけでいい。
貸して、ではなく開けて欲しい、でいいはず。
貸した後、あれ?とは思いましたが
別に貸すのなんて一瞬の事ですし。
深く考えるのはやめてしまいました。
話しながらだったから意識は其方にそれてしまって。]
| [朝のほんの少しの時間、話したくて振ってみた話題。 鬱陶しいとか思われないかな、と心配していましたし 葉山さんが外食をしないというのなら そこで会話は終わるつもりでしたが。] 葉山さん、こんなお店に普段行くんですね。 お酒とかも飲むんだ…… あっ、このタコのから揚げ美味しそう…… [画面を見るために少しだけ距離を縮めて。 メニュー写真の一部を指さしつつ。 でも、一人で入る勇気はないな…なんて思うのでした。] (32) 2024/01/13(Sat) 10:58:41 |
| *** [……と言った感じで。私はお隣さんと何か揉めるとか トラブルに巻き込まれることもなく 平凡な大学生生活を送っていました。 セキュリティもしっかりしていて、 マンションの中層ともなれば 少し上を見上げて洗濯物を見てる人なんて いないだろうし、泥棒だって来られないだろうと ベランダに全ての洗濯物を干したりだとか。 窓をあけ放して外出することこそないものの 女の子の一人暮らしにしては 少々不用心だったかもしれませんね。] (33) 2024/01/13(Sat) 16:31:57 |
| [忙しい生活の合間を縫って、 SNSチェックや読書レビューも欠かしません。 そういえば最近はバタバタしていたせいで 読んだ本の感想や、読んでいる途中の感想を綴った 個人ブログを更新していませんでした。
こんなブログ、読んでる人なんでそうそういない。 ……と思っていたのですが。 本の名前で検索したときに引っかかるのか SNSにリンクを貼っているのが影響しているのか。 案外ブログの更新を待っている人がいるんです。
ただの感想でしかないから このブログを読む暇があったら本を読んで欲しい、と 私は思ってしまうのですが。]
(34) 2024/01/13(Sat) 16:32:14 |
[ある日の夜、私は葉山さんの生活を盗聴しながら、
私は葉山祐太郎のミステリー小説と
血腹妖の官能小説を見比べていました。
今日は葉山さん、帰りが遅かったな、
打ち合わせ長引いちゃったのかな。
時々思考が別方向に行くものの
何度も読んだ小説ですし、多少集中できていなくとも
中身は頭に入ってくるもので。
……セリフ回し、文章の区切り方、言葉の選び方。
改めて見比べると似ている気がします。]
[かの有名なミステリー作家、アガサ・クリスティは
ミステリー以外のジャンルを書くとき
別の名義を使っていましたし、
彼女は同一人物だという事を隠していました。
……もしかして。
引っかかる程度だったものが疑念へと変わり、
どうやったら確かめられるかなと暫し考えて。]
[SNSのDMにそんなメッセージを送りつけるのです。
無視される可能性が高い?
そんなことは分かっています。
別に返信が来なくたっていいんです。
私はメッセージを読んだ時のリアクションを
この目で見ることが出来るんですから。]
[リアクションを見ようと思って
ノートパソコンの画面を見ていても
葉山さんが何をしているのかはわかりません。
いえ、正確にいうと
パソコンで作業していることしかわからなくて。
のぞき見防止のフィルムさえなければ見られるのに。
でも、キーボードで入力しているように見えますし、
新作の執筆作業なのでしょうか。]
[いつもならそろそろ入浴の時間……だと思ったのですが。
作業に没頭しているのか
席を立つ様子がないのを確認すると
少々眠くなってきてしまった私は
欠伸をして、パソコンの画面はつけっぱなしにしたまま
ベッドに横になるのでした。]
[今日は眠気に負けてしまったけれど。
あなたが入浴するときも、
私、いつも想いながら見てるんですから。
あなたがどんな体つきをしているのかだって
私は、私だけは知っているんですよ。
他のミーハーなファンは絶対に知らない、知り得ない。
誰よりも知っているのは私ですし
誰より近いのも私。
私が一番。私が特別……そうですよね?]
[画面を見ながら、ルームウェアに手を入れて
あまり大きくない胸の先を弾いたり、
くるりと撫でて、刺激を与えては
小さく吐息を漏らす。
好きな人の入浴を覗きながら
自慰に耽る時間は普通よりも身体を昂らせて
手の動きは大胆になっていき。
下を脱ぎ捨ててしまえば、
とろとろに濡れた秘部をなぞっていく。
こんなことしてるなんて
万が一にでも知られてはいけないから
声だけは必死に抑えるものの
部屋に響く水音は誤魔化せず。
結局自分の手だけでは
物足りない身体になってしまったから
玩具まで使って絶頂を味わって
ようやく背徳の時間はおわり。]
[葉山さんと出来たらいいのに。
歪んだ欲を一人で発散させて、眠りにつくのが
私の最近のルーティンになっていました。]**
[欲しい情報が手に入った。もう、その鍵に用はない。]
***
[七海の略歴を書いていると、パソコンに通知が表示される。音が出ないため漏れることはないだろうが、通知を開くと、SNSでDMが届いていた。
その送り主は、前にもリクエスト送ってくれた人で、内容はかなり踏み込んだもの。
流石の葉山もそこまで辿られるとは思っておらず、一瞬目を見開いてしまう。
それからすぐにまたいつもの表情に戻るのだが、常に見張られている以上誤魔化すにも限界がある。]
[深夜、ある程度略歴がまとまると、ポケットから鍵を取り出す。事前に鍵屋に鍵の交換という名目で頼んでいた複製だ。
今は鍵の製造番号さえ手に入れてしまえば複製など容易な時代。
鉄壁の城と呼ぶべき最も安全な自宅は、一度踏み入れられた途端に最も危険な檻へと変わる。
こうして彼女の聖域に立ち入れるのだ。
あの時わざわざ間抜けなふりをして鍵を借りた甲斐があったというもの。]
[葉山はパソコンを閉じて部屋を出る。
事前に準備していた小型カメラと盗聴器は、作家としての収入の一部で買ったもので性能も申し分ない。
自宅のモニターとの連結だってもう完了している。あとは取り付ければ完了だ。
だがそれは彼女がいない時にでもやればいい。
それらではないある物を持って、向かう場所は当然七海の部屋。
いない時に設置すれば済む話なのに、わざわざ寝静まっているところに侵入するのは、目的が下準備に留まらないからだ。]
[本来なら入れないはずの城は、今日届いたこの鍵を使えば容易くその扉を開けてくれる。
電気を使う訳にはいかず部屋の中は薄暗いままのためどんな状況かは見えないが、彼女が“本物“なら部屋の中でなにをされていようとも驚きはしない。
相手に拒絶される奇行こそ、“本物“の証。
今となっては実力を示すかどうかにすぎないのだ。
鍵を差し込むと、葉山はゆっくりと部屋の中へ、侵入を果たしていく。]
[彼女は目を覚ましてしまうだろうか。
いや、どちらだって関係はない。
葉山がやることは決まっているのだから。]**
***
[顔を隠すこともせず部屋に入ると。
そ明かりが無いはずの部屋には一筋の光が見える、その正体はどうやらノートパソコンの電源ランプのようだが、音を立てないようにパソコンを開くと映っていたものに葉山は思わず息を飲む。
電気がつけっぱなしの部屋の映像。
まだ入られていない湯の張られた浴室、それも見覚えがあるものだ。
線と線はさらに結ばれ一本の道筋に成る。
七海が自分に対して何をやってきたのか、全てとは言わずとも察するのは容易。]
[ 滲み出る狂気が獲物を求める。
しかしただの血肉じゃ腹は満たされない。
必要なのは、熟成。
待て。一番美味くなるその時まで。]
[想像通り、否、想像以上だ。
彼女の好意は“本物“だ。だがしかし、足りない。
葉山は手に持っていた目隠しで眠る七海の目を覆うと、細い首に首輪を掛け、華奢な手には手枷をかける。
目覚めないように気をつけてはいるものの、途中で目が覚めてしまったとしても何も出来やしない。
七海の自由を奪い、その髪に口付けを捧げる。
檻の中の姫はあまりにも無防備で、顔を歪ませ狂ったような笑みを浮かべた狼は、静かにその身体を弄び始めた。]
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