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【赤】 従業員 ルミ[ 彼の身体は、呆気なくやわらかなソファへ沈んだ。 起き上がらない様子を見て、「やっとだ」と小さく呟く。 そのまま足の怪我なんて無いように彼の上へ跨って、 顔を見下ろし、両頬に手を伸ばした。 ] " なんで "? どっちを聞きたいのかな。 身体が動かない理由? わたしがこんなことした理由? ……上手く喋れなくて怖いよねぇ。 でも大丈夫、わたし、お兄さんのことなんでも分かるよ [ わたしはキッチンのシュガーポットを指差した。 多少でも首が動かせるなら見えるだろうけれど、 見えなくても持ってきてあげるつもりはない。 ] (*11) 2024/05/07(Tue) 22:29:13 |
【赤】 従業員 ルミじゃーん! あれ、歌舞伎町で買えちゃう" 魔法のお薬 "だよ! ……あ。人体に害はないから大丈夫、安心してね。 わたしがお兄さんにそんなことするわけないもん だから、大人しくしてて。 ──────……悪いことを考えてたの、 わたしでごめんね? [ でも、と続けて口を開く。 彼の反応は視界に入れているけれど、 どんなものであれ、止める気はなかった。 指差すために離した手を再度彼の頬へ宛がう。 伝わる体温はあたたかい。 ] (*12) 2024/05/07(Tue) 22:30:06 |
【赤】 従業員 ルミでも、お兄さんが──、ッお兄さんが悪いんだよ。 待ってたのに。 あの公園で、あの場所で、ずっとずっとずっとずっと ずっと────待ってたのに。 わたし、友達じゃなかったの? どうして黙って消えていったの? 捨てたの? 逃げたの? ──そのまま忘れたの? わたしには嫌だって言った呼び方、 どうせ他の女には許したんでしょう!? ねえ、 わたしはずっと待ってたのに!! (*13) 2024/05/07(Tue) 22:30:33 |
【赤】 従業員 ルミ[ ぜえ、と肩が揺れる。 言いたいことだけ好きに言い散らかして。 言葉にするたびに、理性的な自分が叫んでいる。 ] ………………わかってるよ、わたしも お兄さんが公園に来続ける義務なんかない それでも、仕方ないで済ませられる恋でもないの、 [ 許してくれなくて良いよ。 最初から許されるなんて夢も見てないから。 頬を名残惜し気に数度撫ぜて、手を離す。 ] (*14) 2024/05/07(Tue) 22:31:19 |
【赤】 従業員 ルミ[ 彼の腰のベルトに指を伸ばし、かちゃ、と音を鳴らす。 どうすればいいかなんてもう知ってる。 だって、わたしも貴方も、子どもじゃないんだから。 肌と体温を重ねた夜くらいあるでしょう? ] ……ごめんね、お兄さん そうだ。前の彼女の顔でも浮かべててよ。 かわいい人だったね、──同僚だっけ? [ どうして今までの恋人たちが貴方から離れたか、 ──……わたしは全部知ってるよ。 バックルを外して、チャックを下ろす。 そうすれば瞬く間にズボンくらいは下ろせちゃうな。 触れた熱はきっと、大きくなるどころじゃないかもね* ] (*16) 2024/05/07(Tue) 22:31:43 |
【赤】 従業員 ルミ……あ、お兄さん、吐きそう? 気分悪いかな。大丈夫……じゃないよね。 大丈夫、殺したりしないから。 …………そんなことしないよ。 [ 流石の自分にも、殺人には躊躇いがある。 夜の街では当たり前のように殺傷沙汰が起きているが、 刃を他人に向けるほど壊れてはいないつもりだ。 ──薬を飲ませるのはどうなんだと言われてしまえば、 言い返す余地もないけれども。 時計の針は逆向きに回らない。 砂時計の落ちた砂は元には戻らない。 犯した罪も愚行も、消えやしないのに。 ] (*23) 2024/05/08(Wed) 0:00:24 |
【赤】 従業員 ルミ[ 一般的な話に興味はない。 そんな物差しで関係性の普遍を決められたくないから。 世間がなんだというのだろう。 だから仕方ないことだとでも解かれるのだろうか。 くだらない、くだらない、くだらない。 歳を重ねたから? 話も遊び方も合わなくなったから? それじゃあ××はどうすれば良かったの。 片方の都合で、もう片方をないがしろにするのが、 ────それが一般的な世界なのか。 まるで女の両親さながらではないか。 ] (*24) 2024/05/08(Wed) 0:01:00 |
【赤】 従業員 ルミ[ これは確かに、紛うことのない、恋だ。 楽しくて声を上げて笑ったのも。 美味しいものを分け合う幸せを知ったのも。 彼と同じ名前の生き物を覚えたのも。 明日が来るのが、初めて待ち遠しいと感じたのも。 あの日々が恋じゃなかったというのなら、 わたしは二度と本当の恋なんて知らなくていい。 ] (*25) 2024/05/08(Wed) 0:01:12 |
【秘】 従業員 ルミ → 会社員 雷恩お兄さん、あのね、これあげるっ いつもアイスとか半分こしてくれるけど ……ルミはなにもわたせないから…… これね、おはなのゆびわ! たんぽぽ、きれいに咲いてたの! [ あの時一度だけ渡した小さな指輪は、 きっと薬指なんかには入らないくらい大きくて 不格好で、きれいではなかったけれど。 受け取ってくれるといいな、と願って編んだ。 彼に何かを返したかった。 ──今はもう遠い純粋だった春のころ。 ] (-14) 2024/05/08(Wed) 0:01:24 |
【秘】 従業員 ルミ → 会社員 雷恩このまえねぇ、お兄さんのママがおしえてくれたよ お兄さんが言ってたどーぶつ! かっこいいのとおなじお名前なんだねぇ。 みんな、かっこいいからやきもちやいたのかな? ルミもひつじさんとかがよかったなー。 [ でもあんなに大きかったら遊べないから、 お兄さんがお兄さんで良かったーと笑った。 子ども特有の拙い言葉で好き勝手に喋っても、 怒られない環境が嬉しくて、鳥の様に囀って。 ] (-15) 2024/05/08(Wed) 0:02:15 |
【赤】 従業員 ルミ[ 言葉を交わす暇さえあったなら、 今何かが違ってくれていたのだろうか。 早々に話を切り上げてバイバイなんて、もう御免だ。 それならなにもかも封じてしまって ────加害者と被害者になるしかないのに。 ] もう! ひどい! ストーカー……むぅ、言われてみればそうかもね。 だって、お兄さんのこと、なんでも知りたいから ────大好きだから。 [ とはいえこれが犯罪だとは自分でも分かっている。 これは線引きだ。 わたしは加害者。 貴方はストーカーに好かれた可哀想な被害者で、 ────……。 ] (*26) 2024/05/08(Wed) 0:02:39 |
【赤】 従業員 ルミ[ 呟いて、目を閉じたお兄さんの顔を見つめる。 無理に開けさせることなんてしなかった。 それでいいと言ったのは自分なのに、 どうしようもなく胸が痛くて、唇を噛む。 でもここまで来れば戻れない。 優しい、牙のない肉食獣が、哀れな檻の中。 ] ────……嫌だよね。 だってこういうことは、好きな人とするんでしょう? お兄さんは、わたしのこと、嫌いだもんね? [ 呟いて、彼の芯へ布越しに触れる。 果たしてこんな状況下で反応するかも怪しいけれど 丁寧に、痛みなど与えないように、 やわく握って手で擦った。 ] (*28) 2024/05/08(Wed) 0:02:55 |
【赤】 従業員 ルミお兄さん、相変わらず優しいね。 無防備で。 悪い人の存在を人に説くのに、自分は無警戒で。 ────昔からずっと、優しいもんね、お兄さんは。 ごめんね。逆手に取るようなことしちゃって。 ……いくら謝っても無駄か。 うん、……頭のおかしいストーカーだと思っててよ。 [ 昔を懐かしむたびに、愛しさで手先が鈍るから。 わたしは布越しにカリ、と先端を甘く引っ掻いた。 そのままするりと下着を下げる。 悠長にしている時間もあまりない。 人体を害さないように、微量しか使えていないのだ。 じきに口の縺れが収まることから始まって、 四肢も動くようになってしまうはず。 そうなる前に、この執愛の蜘蛛の糸で彼を搦めて ──目的を成さねばならないから。** ] (*29) 2024/05/08(Wed) 0:03:04 |
【赤】 従業員 ルミ[ 恋にもっと理由は必要なのだろうか。 ただあの時わたしに優しくしてくれたから、 だから彼を好きになったでは足りないのか。 インプリンティングと言われればその通りで、 けれど女は確かに己の意思で恋をしている。 毒林檎からキスで目を覚ましてくれたから? 或いはガラスの靴を届けてくれたから? お姫様たちの恋だって、 始まりは皆思ったよりも大仰では無いのに ] (*36) 2024/05/08(Wed) 8:54:55 |
【赤】 従業員 ルミ[ 相手を傷付けないのが愛ならば 自分にはやっぱり人を愛する資格が無いのだ。 彼は今度は許してと甘えなかった。 過去すら容易く掘り起こすあの惨さはなく、 代わりに別の痛みが横たわっている。 ] (*37) 2024/05/08(Wed) 8:55:11 |
【赤】 従業員 ルミ………綺麗な思い出として忘れられるくらいなら 私みたいに、痛いってこと、覚えててよ ふふ、名前ばっかり呼んでどうしたの? ルミだよ。 …………嬉しいな 久しぶりに名前、いっぱい呼んでくれた。 [ 働き始めてからは源氏名でしか呼ばれず、 ルミという名前で呼ぶ存在もいなかった。 ひつじが良かった、と憧れた少女はそこにおらず いるのはボタンを掛け違えた亡霊だけ。 ──ああ、こんなことなら 正しく愛する方法を知っておけばよかった。 傷付け方なら、いくらだって分かるのに。 ] (*38) 2024/05/08(Wed) 8:55:26 |
【赤】 従業員 ルミ…………………雷恩お兄さん [ ライ、は他の人も呼んでいるから嫌だった。 けれど雷恩と呼ばれるのを厭われてしまえば 我儘だけで通せる呼び名でも無かった。 別れた理由なんてどんなものでも知っている ──そうなるように仕向けたんだから。 呼び方なんて小さいことに拘るのが不満だと そう言っていたのは何番目の女だったか。 わたしはただ、呼び出した場所で ブランドバッグを差し出してお願いしただけ。 ] (*39) 2024/05/08(Wed) 8:55:39 |
【赤】 従業員 ルミ[ 噛み締めるように名前を呟いた。 会話で意識を向けさせるためでも何でもない。 ただ、自分が呼びたいから、そう呼んだ。 再会した時は、幼い頃と違って 名前呼び自体を面と向かっては厭われず 表面上は許されたようにも聞こえたけれど ──自分ですらそれが本当に許されるなら 今までの、彼に近しい人たちは、? ] (*41) 2024/05/08(Wed) 8:56:06 |
【赤】 従業員 ルミ[ 私にとっての“らいおん”の響きは彼だけ。 そこに肉食獣の影なんてひとつもない。 彼だけ見つめて、彼だけを望んで、 なにもかも煮詰めた砂糖色の声。 まるでわたしはおとぎ話の魔女みたいだ。 甘く美味しく作り上げた死への道。 無警戒な存在に毒林檎を齧らせて、 最後には裁かれてしまう悪いひと。 ] (*42) 2024/05/08(Wed) 8:56:20 |
【赤】 従業員 ルミ[ 望まれない命は不幸だ。 今ですら正しく彼を愛せない自分ひとりで何が出来る。 命で縛り付ける気なんてない。 わたしの罪はわたしだけのもの。 ──アフターピル、って便利でしょう? ベッド横のデスクに幾つか予備を置いてある。 わたしは少しづつ兆し始めた熱に触れて、 嬉しさを隠しもせず顔を綻ばせた。 ] 好き、──大好きだよ、お兄さん [ 愛を囁かれても萎えちゃうだけかもね。 どうせ今夜限りの魔法の夜なら 喉すら焼けるような蜜も許してよ。 りんご飴、わたしとなら食べ切れるでしょう? ] (*43) 2024/05/08(Wed) 8:56:34 |
【赤】 従業員 ルミこれでもう、わたしを忘れないよね これでもう、綺麗な思い出として消えないよね ────なにかある度に痛む傷になって 忘れたくても忘れられないくらい、 痛くて熱い存在になれるよね? [ 本当にわたしが羊だったら、 本当に貴方が獅子だったら。 食べて貰って貴方の血肉になって そしたら、好きな人の一部として生きていけて ──なんてろくでもないたられば話。 ] (*44) 2024/05/08(Wed) 8:56:47 |
【赤】 従業員 ルミ[ 彼の熱芯をやさしく、柔く包み込む。 これは愛を交わす行為ではなくて、 わたしの一方通行で、彼を苦しめるだけ。 過度な愛撫も快楽も必要無い。 あくまで生理的反応で仕方なかった、って 彼が言い切れるように────なんて 加害者がせめてと与えるものなんか、 害を与えた時点で無意味か。 ] ……お兄さん、目、閉じててね [ 挿れる、だけなら不都合ないようになるまで 熱を甘く柔く触れて、擦って、刺激を与えれば わたしは彼の反応も見ずに己の下着をそっとズラした ] (*45) 2024/05/08(Wed) 8:57:02 |
【赤】 従業員 ルミ────ッ、 [ ろくに慣らしてもいない中へ熱を入れれば さすがに痛みが訪い、すこし眉を顰めた。 それでも人体とは不思議なもので 防衛本能で分泌される愛液が刺激を緩和し、 膣肉も広がって、熱を難なく飲み込んでいく。 ───これがわたしの、望んだ形。 欲しくて欲しくて仕方なかった熱も やっと手に入れた彼の傷も。 ] (*46) 2024/05/08(Wed) 8:57:28 |