人狼物語 三日月国


87 【身内】時数えの田舎村【R18G】

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視点:


【恋】 おかえり 御山洗

掴んだ手首は細くて、簡単に指が回った。沈んでいく景色は上下左右の区別もなく青い。
息をしようともがいたけれど、少しも苦しくはなかった。見えない水面が遠ざかるのがわかる。
喧騒もなにもかも遠くなって、口から吐き出した泡の音も聞こえないのに、呼び声はよく聴こえた。
名前を呼ばれる。ふわふわと舞う髪は、時々目元を覆ってくすぐったそうだった。
耳に届く音がやけにくすぐったくて、背筋がぞわぞわとする。
腕が回って、首の後ろで組まれた指が垂れ下がった。襟足をたどる指はなめらかだ。
返す名前を呼びたくて、声が出ない。喉につかえて、空気が出てこないようだった。
代わりに口から出る泡が、どんどんと水面にのぼっていく。
体は海の色の濃く黒い方へと沈んでいって、吸う酸素もないのに。
変だ、と感知するより早く、唇が頬骨に触れ、骨に添って、頬に触れる。
心臓に火がついたようにあつくて気が狂れてしまいそうだった。
どうして、とか疑念が湧くたびに、そわついた高揚に炙られて灼けてしまう。
触れたい。声が聞きたい。抱きしめて、引きずり下ろしてしまいたい。
どんなつもりで、何を思っているのか、問いただす時間さえ惜しい。
ガソリンに火を近づけたように耳の骨まで熱くなるのを感じる。
はだかの腕に応えるように腕を回して抱えてしまって、首筋に唇を寄せた。
大して気を使った食事もしていないんだろう首筋は骨が見てとれた。
ぬるいような涼しいような水の中で、互いの肌ばかりが熱を持っている。
辿って、手繰って、触れるたびに体の作りの違いを感じる。
細い体は力を加えたら隙間から風のように逃げてしまうんじゃないかって、怖い。
(?0) 2021/08/15(Sun) 0:48:22

【恋】 おかえり 御山洗

いつからだったんだろう。かつてはまだ三人でいることに違和感はなくて、だから、最初からではない。
でもいつしか三人でいても、自分は二人とは違うことはわかり始めていた。
境遇も。性格も。遊び方も。抱えている気持ちも。
いつか触れたいと思って、手をのばしたことはあった。
でもそれが届く前に呼ぶ声が聴こえて、それで指先はそれてしまった。
それで納得したように諦めきれてしまった。
俺はお前の隣りにいるわけじゃないから。お前は隣りに違うひとを置くから。
同じ位置に立っているわけじゃない。俺とお前は同じ世界にはいないから。

でも、なのに。ああ、だから、これはきっと夢だ。
都合のいい夢で。海の底に沈んでいくだけの悲哀だ。
どうせそれが実を結ぶことのない、つごうのいい願望だ。
だけど。紛い物は、同じ顔をして、同じ声で呼ぶんだ。
(?1) 2021/08/15(Sun) 0:55:31

【恋】 おかえり 御山洗

水の中に溶けていく感触はゆらゆらとして不安定で。
握りしめていなければそれが熱を持つ人間だとはわからないみたいだ。
体を構成するひとつひとつを辿って。指の節がしっかりしていること、
腕は細いけど楽器を扱うぶん案外しっかりとしていること、代わりに足の頼りないこと。
腹のなかにちゃんと臓器が入ってるのかあやしくて、触れると骨にあたること。
体の何もかもを腕の中に収めて掻き抱く。くすぐったそうに笑う声が耳に籠もる。
リフレインする響きだけで腹の内側がぞくぞくとして、耐えられないほど苦しい。
目隠しでパズルをしているみたいにあちこちに指を這わせて、まるで骨の継ぎ目を確かめるみたいだ。
名前を呼ばれる声は唄うように柔らかくて、ああ、でも、聴いたことのない声だ。
ならこれは望みなんだろうか。なら、きっと叶わないことなんだろう。
でも、こうして。手が届く。跳ねる声が、恥じるように笑う声が。
夢なんだろうか。欲望なんだろうか。ただ、俺が願っているだけなんだろうか。
そう紡いでほしいと、そう思っているだけなんだろうか。
熱っぽい目元も、束を外れて顔に落ちる髪の柔らかさも。はっきりとした白目も。
そんなものは知らない、見たことはない。そんな日は来ない。
そんな日は来ない。
そんな日は来ない。
わかっていても、望みが拍車を掛けてより鮮明になる。
触れられる感触も、熱っぽい吐息も。触れた時の湿潤も。
知らないものは全て俺が自分の中に作り出した偶像なのに。
そんなふうに優しく、微笑んでくれるのか。
どうか、許されたい。
許してもらえるんだろうか。
お前に、許されるんだろうか。
(?2) 2021/08/15(Sun) 1:09:04
御山洗は、怯えている。
(a0) 2021/08/15(Sun) 1:15:51

【人】 おかえり 御山洗

「……」

まだ昨日の内から気の晴れないまま。海の記憶が残ったまま。
幸いにして家の中に昔の浴衣はあって、幅は調整すれば着れそうだった。
着れそうだな、というところまで確認したのに、まだ袖は通していない。
蒸し暑く射す太陽を受けながら、玄関先の縁台に座ってぼんやりとしている。

みんなお祭りに行っている頃だから、ぼんやりとしているのを誰かに見られることはないだろう。
もう少し、あと少し。気分が晴れてから向かえばいいだけだ。
(15) 2021/08/15(Sun) 17:43:56

【人】 おかえり 御山洗

>>23 宵闇

「、えっ」

完全に虚を突かれたらしく素っ頓狂な声が上がった。首を動かしたのと相俟って声は振れる。
ぱちぱちと目を瞬かせて見上げて、逆光を受けているのが誰であるかを見た。
そういえばもうそんな時間で、昼間から出店も開き始めているのだ。

「え、あー……俺、まだ浴衣着てないから。
 ちょっと待ってて、いや、待たなくていいや、他の人呼んできてて大丈夫だから」

慌てたように立ち上がって家の中へと入っていく。
鍵どころか田舎らしい引き戸の扉も半開きのままだ。
(25) 2021/08/15(Sun) 19:04:30

【恋】 おかえり 御山洗

見上げた笑顔は太陽を背にしていて、黒髪の輪郭が光って浮いていて。
ああ、綺麗だなと思った。固まってしまわないうちに動けてよかった。
すぐに引っ込んでしまわなかったら、不自然にも程がある。
このまま出ていかなければ瑠夏なり誰なりを連れて祭りに行くだろう。
そうであってくれ。期待したくはない、何も。
どうせ振り払われるなら、手を差し伸べないでくれと。
願ったところで、何か得体のしれない運命が叶えてくれるわけじゃない。
(?3) 2021/08/15(Sun) 19:20:03

【人】 おかえり 御山洗

>>34 宵闇

『御山洗』は父方の姓だ。今はこの家には父親の方の家族が住んでいる。
祖父や祖母がどうなったかは御山洗は聞いていないけれど、少なくとも父親は生きている。
――はずだ。
家の中からはほかの誰の気配もなく、足音や生活感もなかった。
しんと静まり返っている家の中に、一体誰がいるというのだろう?
(36) 2021/08/15(Sun) 20:17:34

【人】 おかえり 御山洗

>>43 宵闇

蝉の声が雨のように注いで、時折吹く風が青草をぱたぱたと騒がせる。
それなりに時間が経ったのに、まだ玄関先にも縁側にも、顔を見せる様子はない。
誰か他に遊ぶ人間を見つけて、そっちへ興味を寄せてしまうほうが建設的かもしれない。
貴方は、宵闇は。御山洗が約束を破ったことはないと知っている。
(47) 2021/08/15(Sun) 22:05:46
御山洗は、恐れている。怯えている。……一体何に?
(a15) 2021/08/15(Sun) 22:14:45

【人】 おかえり 御山洗

>>50 宵闇

玄関に入り、部屋を探し。いつだったか上がった家はすぐに居場所もわかるだろう。
扉を開ける音、廊下を歩く音。それに気づくのは一歩遅れたらしい。
私室の扉を咄嗟に押さえようと思って立ち上がり踏み出したところで、
扉を開けた貴方と対面することになるのだろう。

「――」

言い訳も咄嗟に出てこない御山洗は、先と同じ格好だった。
これだけ時間を掛けても、まるで最初から出向く気がなかったかのように。
(55) 2021/08/16(Mon) 1:32:42

【人】 おかえり 御山洗

>>60 宵闇

「、ま、だ」

遅まきに言い訳を講じようとしたのだろう喉はつかえて言葉を吐き出せなかった。
隠し事、後ろめたいことをしていたのだということを少しも隠し立てしない、できない。
近づいてくる宵闇とは反対に、部屋の奥へとふらつくような足取りで下がっていく。
みるみる内に顔色をなくして、唇は震え指はこごえていた。
追い詰められた獣のように遅い足取りで、とうとう部屋の壁に背中がついた。
(64) 2021/08/16(Mon) 7:22:36

【人】 おかえり 御山洗

>>66 宵闇

「行く、つもりは……ないわけじゃ、ない、けど」

すぐ間近に見下ろした顔を見てまた怯えたように顎を引いた。これ以上逃げる場所がない。後ずさろうとした肘が壁にぶつかって擦れる。痛みを感じない。
夏の盛りだというのにやけに冷えて感じる空気が喉を凍りつかせていくばかりだ。

「俺は、別に。後からでも、みんなで、行けば、」

うまく言葉が出てこなかった。自分は何を言い訳したいのだろうか。何を申し訳なく思って、何に後ろめたさを感じているのか。思考がごちゃ混ぜになる。
怯えている。恐れている。全部が全部壊れそうな思いだ。
見下ろした目の中に鏡のように映り込んだ背の高い男の表情は、罪の重さに耐えられないような顔だ。

「来なければよかった、帰ってれば」

そのまま踵を返してどこかに行ってしまうことを願っていたのに。じっと黙り込んでいれば、そのまま別のところに行くだろうとそう思っていたのに。夢の中の景色と重なって息を呑む。苦しさで瞼の裏の景色が滲んできた。

「俺は、」

思い出を壊したくなかった。壊すのは自分自身だ。
思い出を汚したくなかった。忘れ去るままでいたかった。

「俺は、」

息ができないほど焼き付いた胸が、楽になろうと自白しかける。
ずっと隠していた罪悪は、紐解くつもりなんて一度もなかった。
10年も昔から。子供だった時分から。
どうして今、思い出してしまったのか、帰ってこなければよかった。

(68) 2021/08/16(Mon) 11:30:11
御山洗は、恐れている。怯えている。思い出を壊す自分自身の心に。
(a23) 2021/08/16(Mon) 11:31:03

【人】 おかえり 御山洗

>>66 宵闇










          
「お前のことが好きだったんだ」











(69) 2021/08/16(Mon) 11:31:32

【人】 さよなら 御山洗

>>66 宵闇

掠れるような声でそう吐き出して。伸ばしてたが肩を押して遠ざけた。
苦痛を堪えるように目を伏せる。焼けた髪の色より幾分濃い色の睫毛が視界を閉ざした。
首を横に振る。力は強かった。そのまま、腕を伸ばしても届かないくらいに距離を空ける。

「……ごめん。祭りには、一人で行ってくれ。
 瑠夏とか百千鳥とか、みんな待ってるだろ。
 俺は一緒に行かない。行けない。だから、一人で行ってくれ」

言うつもりはなかった。言うべきことではなかった。
ずっと、いつだったか、子供の自分が口を閉ざして隠していたものを、自分が壊してしまった。
御山洗は恐れていた、怯えていた。自分にとって大事な思い出を壊すこと。
御山洗はこの場所に帰ってくるまで思い出の中にしまっていられた、焦がれるほどそばに置かずにいられた。
なのに、帰ってきてしまったから。思い出のままにしておきたかった全てを掘り起こしてしまった。
口にすれば全てを終わらせてしまうのをわかっていた。
いつかの三人組ではいられなくなることを、わかっていた。

「……今までありがとう」

だから、これは、決別だ。
(70) 2021/08/16(Mon) 11:32:23

【人】 さよなら 御山洗

>>72 >>73 >>74 宵闇

「……ひどいやつだな、お前は……」

喉の奥からほとんどつっかえて出てこないような涙声が、ようやく震えながら音を成す。
なぜかだなんて。克明に思い出さずに済んだなら、この想いを風化できたからだ。
どうしてかだなんて。そんな気持ちを抱いたところで叶うわけが無いのを理解してるからだ。

目の前の彼が思うよりもずっと不届でみっともない願いを抱えて、
唄うような声もはしゃいでる声もとぼけたような声も、
長い前髪から覗く目もろくに体を作れるものを食べてないような細さも、
全部どうしようもなくこの手に掻き抱いてしまいたくて、そんなのは、お前には向けるべきじゃない。
"友達"だと言うのなら、こんな不自然な気持ちは最初から持つべきじゃなかったからだ。
抑えられないくらい好きな自分が、夢に見るくらいに好きな自分が、
自分では制御できない怪物になったようで、自分から思い出を守れないのが、恐ろしかったからだ。

宵闇の思いと御山洗の想いは全く違っていて、それはどちらも両立することは出来ない。

「俺は……」

首を横に振る。同じ思いを、抱けなかった。
ここにいたら、綺麗なまま額に入れてとっておきたかった大事なことを壊してしまう。
此処には居られない。いてはいけない。思い出に触れないまま、しまっておきたいと願う。
帰ってよかったと思う気持ちより、帰ってこなければよかったと後悔する愚か者は、
永劫の花園にはいられない――帰りたくないなどと、思えない。
このままでいることにも、ここままでいられないことにも、何もかも耐えられなかった。

(76) 2021/08/16(Mon) 20:14:32

【人】 さよなら 御山洗

>>72 >>73 >>74 宵闇

遠ざかる足音を聞いている。
そのうちに、力が抜けてずるずると落ちていくように壁に背を凭れて崩れ落ちた。
声を抑える。息を止める。言うことを聞いてくれない瞼を指で押さえて。
出ていく宵闇に、すすり泣く声が聴こえていないようにと、蹲って祈った。
蝉の声が遠く遠くに聴こえる。
(77) 2021/08/16(Mon) 20:14:40
御山洗は、恐れていた。怯えていた。今は、後悔ばかりが焼き付いている。
(a33) 2021/08/16(Mon) 20:56:40