人狼物語 三日月国


87 【身内】時数えの田舎村【R18G】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


清和警部補 添木
百千鳥警部補 添木
涼風警部補 添木
添木警部補 添木
鬼走巡査部長 鬼走
花守警部補 添木
編笠警部補 添木
髪置警部補 添木

処刑対象:添木、結果:成功

柿の種子の飛来を確認(第5夜

[犠牲者リスト]
清和

決着:邪気の勝利




髪置は、全員好きだ。
(a0) 2021/08/16(Mon) 21:35:37

【人】 枠のなか 卯波

「ああ、夏祭りはやっぱり終わるから、
 綺麗な思い出になるんだなあ」

幾つかの喧騒が遠くに行ってしまう。
それでもまだ花火は上がるし、
盆踊りの楽器の音は続いているけれど。

確かに、夢が終わりへと近づいている。
ここで撮った写真は、現実に持ち帰れないのかなあ、
なんて思ったりして。
(0) 2021/08/16(Mon) 22:30:52
夜長は、歩いている。
(t0) 2021/08/16(Mon) 22:51:42

【人】 少年 編笠

それは明確な夢の終わりだ。
それを、ただひたすらに求めた者と
どうしてもそれを成したかった者と
自分が求めている事も忘れていた者。
そしてそれを叶えようとしてくれた誰かが離れるのを感じて。

歪に、だからあまりにも綺麗だったこの風景は。
――静かに、でも確かに、色と容を取り戻していく。

夢の終わりはいつだって突然だし。
それは夢を見る者にはどうすることもできない。

目を閉じて、空を仰ぐ。
自分が取り残されていた田舎の空が、そこにある。
(1) 2021/08/16(Mon) 23:27:49

【人】 少年 編笠

「………マジだったんだけどな」

紛れもなく、自分は本気で、
この田舎を永遠のものとしようとして、
そしてどうやら、志半ばで叶えることは出来なかったらしい。

同じ空の下にいる、
自分と同じくらい強い気持ちを持った誰かに、
ごめんな、力になれなくて、と謝った。

自分が産んだ綻びの正体くらい、分かっている。
俺が強く、強く願った夢の中で、
俺の大切な、本人を傷つけてでも欲しかった誰かの存在は、
俺の執着なんか飛び越えて、綺麗で、特別で――。

だから。籠の中に閉じ込めることが出来なかっただけだ。
その羽があまりに綺麗すぎて、
この空を飛ぶところを見たいと思ってしまったから。
見たいと思ってしまった俺の、負けなんだ。
(2) 2021/08/16(Mon) 23:28:22

【人】 少年 編笠

「………」

俺は、自転車を押していく。
押していた自転車はやがて速度を増し。
それに飛び乗る。
舗装されていない道に小刻みに跳ねながら、
ガチャガチャとチェーンを軋ませながら進み、
やがて立ち漕ぎになって、全力でペダルを回す。

時間がない。
時間がないんだ。

夕凪の姉さん。夕凪の姉さん……! 夕凪夕凪夕凪夕凪夕凪。
最後まで、最後の瞬間まで、この世界でやることを見つけた。
それはあんたのおかげで、あんたのせいだ。
必ず答える。必ず応える。必ず、夕凪の姉さんに、伝えに行く。
俺の口で、俺の言葉で。だからその前に。

――この夢の中で紡げる物を、全部紡いでから行く。
(3) 2021/08/16(Mon) 23:29:06

【人】 枠のなか 卯波


写真を一枚、一枚と選んでいく。
もし持ち帰れないのならせめて覚えていたくて。

そういえば晶兄に写真見せてもらってないな、
と今更思い出して、たははと笑う。

でもそれは、また会う日までとっておきたいかなと思う。

花火の下、四人で寂しさに揺れている写真、
海で晶兄と二人で飛び込んだ笑ってる写真、
集まったひとりひとりを撮っていった写真、
訪れてまず最初に撮った、田舎の風景写真。

これまでの数日の歩みが全部切り取られて、
お祭りに際して設置された机に並べられる。

「あーあ。これだけあったら、
 コンクール受賞とか間違いなしなのに」

皮肉げに笑った。
慈姑婆ちゃんの癖がうつったみたいだ。
(4) 2021/08/17(Tue) 0:02:08

【置】 明日へ進む 青嵐

目を閉じて、ゆっくりと開く。
自分の中の何かが薄れていくのを感じて、
同時に首を振って忘れようとしていた違和感の正体に気が付いた。

この村に、自分の居場所がない事も、
自分の家がないってことも
ましてや、あの時のまま、
自分の部屋が綺麗に整ってる訳が無いってことも
全部わかってた筈だったんだけどな。

―それでも、例え夢だとしても、
ただの夢なんかじゃない。
アイツといた思い出を、記憶を
夢で片付けたくはなかった。

ここのことは大好きだけど
俺は明日へ行くよ。
(L0) 2021/08/17(Tue) 0:47:42
公開: 2021/08/17(Tue) 1:00:00

【見】 天狼の子 夜長

【祭りの終わり、そのどこか】百千鳥
 

 歩いて、歩いて。
 

 やっぱり見つけるのは上手じゃなくて。
 

 花火が上がって、少しの間は足を止めて見上げていて。
 

 

 歩いて、歩いて。
 

 お別れですね、声が聞こえた。
 

 祭りもきっともう終わる。
 


「……モモチ?」

 下駄を鳴らして、先をゆく背中がさみしそうに見えて。
 

 借りたままのサンダルの足で追いかけた。
 
(@0) 2021/08/17(Tue) 0:55:41

【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

>>@0 夜長 【祭りの終わり】

 上がる花火を他人事のように眺めていた。

 線香花火はすぐに落としてしまうから
 今も昔もあまり好きではなかったな、なんて思いながら。

 通り過ぎて行く人達は『村のみんな』ではなくて、
 もう自分には縁のないものだった。
 
呼子鳥であれば違ったのだろうけど。


「和臣さん」

 からんと下駄を鳴らして振り返る。
 楽しい夢はもう終わり。
 覚めてしまえば、夢に見た光景は何処にも無い。
 そんな憂鬱が、表情を憂いを帯びたものにさせてしまう。

「どうしたの」
(5) 2021/08/17(Tue) 1:28:05

【置】 陽は落ちぬ 夕凪

 夜凪はとある日、一人暮らしを始めたいと言い出した。
 理由は――語られるのなら夜凪の口からだろう。

『アルバイトをしながら絵描きの道を目指す』
 あまりに無謀だと止められ、難しいもの。
 夕凪は夢を否定したかったわけではない。
 それよりも、離れることが寂しかったと、喧嘩をした。


 喧嘩をしたその日。

 不幸にも夕凪は交通事故にあい救急車で運ばれた。


 知らせを受けた夜凪は、顔を青ざめた。
 でも命を無事だと家族に教えて貰ったとき、
 安心したと同時に不安が襲ってきた。

 怪我は重傷でもなかったが、頭を強く打ったらしく。
 起きていられる時間がとても短いらしい。
 完治までまだ時間はかかると言われていて、
 家族が看病に向かう中。

 夜凪はずっと顔を合わせることが出来ていない。
(L1) 2021/08/17(Tue) 2:57:50
公開: 2021/08/17(Tue) 3:00:00

【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

 
 楽しい時間が枯れ落ちていく。

 この田舎を離れたって、呼子鳥が居なくたって
 自分は都会で生きていけないわけではない。むしろ逆だ。

 皆に会いたい、そんな細やかな願いすら叶わずに
 あの白い病室で、闘病の甲斐無く息を引き取った姉と違って。

 自分は皆で過ごしたこの村を離れても、呼子鳥が居なくとも
 一人でもただぼんやりと生きていけてしまうものだから。

 なら自分にとって呼子鳥の存在は、この村は
 もしかしたら、大して大切でもないものだったのではないかと
 なんだかそんなふうに思えてしまって、
 それが堪らなく嫌だった。

 そんな自分を隠す為に呼子鳥の真似をして、
 せめて呼子鳥の代わりであれるようにここに居た。

 そうして、姉の代わりに、姉の願いを叶えられたらよかった。
 
(6) 2021/08/17(Tue) 2:58:48

【人】 ごめんなさいを 百千鳥

 
 せめてあの時姉の願いを叶える事ができていれば。
 完治とまではいかずとも、寛解の可能性はあったのだろうか。

 そんな詮無い考えはあれから何度も脳裏を過ぎった。
 無意味とわかっていても、もしかしたらを考えてしまって。

 もしかしたら。
 そう、結局は、この夢も。
 もしかしたら、に縋りたかっただけなのかもしれない。

 もしかしたら、この夢をずっと続ける事ができて。
 もしかしたら、呼子鳥達も来てくれて。
 もしかしたら、みんなもそれを望んでいてくれるかもしれない。

 そして、全ては脆くも崩れ去った。

 本当は、少しだけ安心していた。
 皆は、本当はあまりこの田舎が好きではないのかもしれない。
 夢のような日々を過ごす中で、そんな思いが何処かにあって
 自分だけではないのだと思えたから。

 身勝手に振り回してしまった皆と、それから。
 同じ思いを持って、同じ我儘を通そうとしてくれた誰かへ。

 ごめんなさい。
 
(7) 2021/08/17(Tue) 3:01:08
百千鳥は、心の中で謝罪をして。
(a1) 2021/08/17(Tue) 3:01:36

百千鳥は、見ないふりはもう終わり。
(a2) 2021/08/17(Tue) 3:02:11

百千鳥は、夢を手放した。
(a3) 2021/08/17(Tue) 3:02:29

君ぞ来まさぬ 百千鳥は、メモを貼った。
(a4) 2021/08/17(Tue) 3:16:39

【置】 さよなら 御山洗

カチカチと、いつしか時計の針が進む音を克明に聞いた。
霧がかった道が晴れていくように、頭の中の夢が色を失って消えていく。
そうだ。俺には、帰るべき場所なんて無い。迎え入れる親族はない。
親父の実家がどうなっているのか、今の俺に分かる筈もない。
夢の中の居処ががらんどうのようなのは――会うべき人がいないからだ。

「……俺は。もう、帰る場所なんて無かったんだな」

最初は本当に只々、昔過ごした場所を懐かしむひとつの郷愁によるものだった。
少年期を過ごした場所は何よりも大切なもので、自分を作り上げた愛おしいものだった。
だけどもう少しで、その外で生きてきた時間に追い越されて塗りつぶされてしまう。
消えゆくまま、過ぎゆくままに。その前に、もう一度だけ帰ってみたかったな、と。
自分が置き去りにしてきたこの村というものに、会いたかったのだ。

でも。その輪郭を思い出すほどに、俺は別のものを蘇らせてしまった。
夢が終わったのにも関わらず、胸を焦がす思いと心を失ったような空隙が消えない。
ああ、そうだ。帰りたいという思いは過剰に増幅された不自然なものだったとしても。
長らく患ってきた恋は決して誰かに煽られたせいではない、ほんものだったから。
夢が終わりを迎えたって、時間が過ぎ去ったからって、目が覚めるように消えるわけじゃない。
(L2) 2021/08/17(Tue) 4:44:50
公開: 2021/08/17(Tue) 4:45:00

【置】 さよなら 御山洗

ふと、この痛みを負うことになったきっかけを瞼の裏の景色に思い出す。
十五年前。親父と母さんが喧嘩をして、三人で遊びに行く約束を反故にしてしまった。
両親は色絡みの揉めがあったわけではないが、生き方に無視できない隔たりがあった。
父は昔ながらの考えの人で、此処で働き母にもそれについてくることを望んだ。
母は先進的でそれに馴染めず、度々仕事の都合での不便を緩和しようと打診していた。
そうした話し合いが不定期にあることで、お互いへの不満が爆発することもよくあったのだ。
機嫌を悪くした二人に挟まれ、その日は外に遊びに行くことが出来ず閉じこもっていた。

そんな時。部屋の中で蹲って過ごしていた俺に、手を伸べたのが翔だったんだ。
こっそりと家の中に入ってきて、遊びに行こうと笑って。
思えば向こうからしてみれば、時間になっても来ないから迎えに来ただけだったのだろう。
大した意味もなければ勇気が必要なわけでもない、ほんの些細な行動だ。
けれども。それが、まだ子供だった俺には、何より喜ばしい救いだった。
自分に伸べられた手と同じくらい、こいつに与えられるものがあればいい、と。

それは独り善がりの思いでしかなくて、ただ子供ながらに抱いた望みでしかなくて。
そんなものが、どうしようもなく焦がれる想いになって、今の今まで心の中を占めている。
村を離れて、自分の人生を得て、恋人を持って、別れて、それでもまだ燻る熱が。
――少年期が終わろうとしている。
(L3) 2021/08/17(Tue) 5:03:57
公開: 2021/08/17(Tue) 5:05:00

【置】 さよなら 御山洗

カチカチと、いつしか時計の針が進む音を克明に聞いた。
水を吸った服をまとっているかのように重たい体をずるずると動かす。
夏の盛りにも関わらず、薄ら寒い感覚が背中をゆっくりと降りていった。
帰ってこなければ、この夢の中に呼ばれなければ、こんなに胸の苦しさを覚えずに済んだのに。
腫れた瞼から流れた涙が、皮膚を引きつらせてぴりぴりと痛み走る。

鉛のように重たい体を動かして浴衣に袖を通す。少し調整すれば見栄えに問題はないだろう。
薄灰色の浴衣は、まだひょろっとした子供だった頃に比べれば印象も変わって見えるのだろう。
十年。十年の時が過ぎ去って。
それはどんなに飾ってまばゆく見せたところで、思い出のものとは何もかもが違うのだ。
鏡の中に立った男は、山の中を走り回って三人だけの秘密を埋めた、あの頃の子供ではない。
終わらせなければ、夢の終りが訪れないのなら。
もう少しだけ見えない誰かに付き合えば、目が覚めてしまえるだろうか。
遠くに祭りの喧騒を聴いて、届かない手を思う。
(L4) 2021/08/17(Tue) 5:15:10
公開: 2021/08/17(Tue) 5:15:00
卯波は、皆の写真を撮った夢を、現実にする。
(a5) 2021/08/17(Tue) 10:27:25

卯波は、たった一人だけの。
(a6) 2021/08/17(Tue) 10:27:49

卯波は、あなた達の写真家だ。
(a7) 2021/08/17(Tue) 10:27:55

(a8) 2021/08/17(Tue) 10:38:45

陽は落ちぬ 夕凪は、メモを貼った。
(a9) 2021/08/17(Tue) 12:40:21

【見】 天狼の子 夜長

>>5 百千鳥 【祭りの終わり】

「かくれんぼではないが、
 鬼のようなことをしている気分でいる…?」

 どうしたのと問われれば、本人も若干首を捻りながらの答えが返ってくる。目的があるようなないような、誰とも言えない誰かを探している、ということを言いたそうなのはなんとなく分かったかもしれない。

「みんなの、ここがたのしいを見たくて。
 さみしくない人が、ひとりでも増えるといいと思って」
(@1) 2021/08/17(Tue) 17:14:26

【見】 天狼の子 夜長

>>5>>@1 百千鳥 【祭りの終わり】

「それとは別に、あなたに会いたくて」

 夜長は、夢から覚める前に百千鳥に会いたかった。

「昨日の、また明日をしに」

「遠くないいつかの、また今度をしに」

 ゆっくり、しっかり。訥々と言葉が置かれる。

「モモチは、この夢から覚めたらもう会いたくない人だろうか?」

「俺は、そうでないとうれしいです」
 
(@2) 2021/08/17(Tue) 17:15:09

【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

>>@1 >>@2 夜長

「会いたいよ、夢から覚めてもずっと」

 どこか憂鬱そうに笑う。
 それでもその言葉は本心からのものだった。

「…この夢は、ずっと楽しかったよ。
 だから続けていたかった。それこそ夢のような話でも。
 もう会いたくない人なんて一人だって居るわけない。でも」

「だからお別れが寂しいんだ。」

 楽しい時間はいつか終わってしまう。
 夢は覚めれば色褪せてしまう。
 そんな当たり前の事が嫌で仕方ない。

 嫌で仕方ないのに、過ぎた事になれば熱は冷めてしまう。
 愚かなくせしてまた明日、を愚直に信じる事もできやしない。
 そんな自分が何よりも嫌で仕方なかった。
(8) 2021/08/17(Tue) 18:55:32

【見】 天狼の子 夜長

>>8 百千鳥 【祭りの終わり】

 こっくり、頷いた。

「さみしいのは、俺も」

「この夢にいた人、みんなみんなで、こうして一緒に集まるという
 のは、とても難しかったと思う。夢でもなければ、本当に。
 特に俺は、ほとんどが話に聞いただけの人たちで」

「……ああ、モモチには今言っておきたいな。
 最初は俺も分かっていなかったが、
 俺は父さんでなく晴くんなんだ」

 雪子と和臣の息子の、小学2年生の晴臣。そう説明される。
 
「晴臣」と直接言えないので、少しややこしかったかもしれない。


「俺は、本当はここに来たことがない」

 夢から覚めたら、会いにいける人には直接会いに行きたいから。だからその時にか、もしくは雪子さん伝手に、この夢にいたのは和臣でなく晴臣だと伝えるつもりだった。

 けれど夜長は、百千鳥に対してはなんだか大人の皮を被っていたくなかった。いやそれよりも、晴臣として今話したかったが正しいだろう。
夜長本人も、それは自分の中で形になってはいないが。


「家族揃って来るのが一番だったと思うが、そうはなって
 いなくて。家族の中で誰かひとりだけというのなら、
 俺でなく雪子さんがいた方が良かっただろう」

「でも、俺がここに来たことを、母さんは喜んでくれる」
 
(@3) 2021/08/17(Tue) 20:46:23

【見】 天狼の子 夜長

>>8>>@3 百千鳥 【祭りの終わり】

「……言いたいことがまとまらないな」

 夢から覚めて、すぐには会いに行けないのを知っているから。だから今、目の前のさみしいをどうにかしたいのに。どうしたらいいのかわからない。夜長は知っていることしか知らない。

 聞いたことがないことは、知らないことだ。

「モモチは、こうしてお別れでさみしくなるくらいなら、
 はじめから夢を見なければよかったと思う人ですか?」

 だから聞いて、知っていることを増やしたい。まとまらない言葉からでも、何かこぼすことがあれば、そこから知れることがあるのと思っている。
あなたのことが知りたい、そう素直に思った。
(@4) 2021/08/17(Tue) 20:47:41

【人】 親友 編笠

砂利道を、上り坂を、道なき道を、下り坂を。
息を切らせてペダルを踏んで駆け回る。
居そうなところ、思いつく場所を片っ端から自転車で周り、
小一時間もしたところで、強烈な『違和感』に気づく。

流石に、思いつく場所は全部探し終えた。
――ここまで、どこにもアカネが居ないのはおかしい。

額から滴る汗を掌で拭いながら、
高く登る太陽を仰ぐ。汗が出るのに、喉が渇かない。
そうだ、都合のいい世界で、ここまで都合が悪いのは、
なんらかの作為があるはずだ。

考えろ。
考えろ、考えろ、どんなに探しても探しても、
アカネの元にたどり着けないことの意味を。

「っ、はぁ……はぁ……!」
(9) 2021/08/17(Tue) 21:00:04

【人】 親友 編笠

>>9
――すぐに思い至る。これしか考えられない。
この世界で自分たちに連れていかれた者は、
会いに行こうとしてもこちらからは
絶対に会いに行くことが出来ない。

その残酷なルールが、今は"俺にも適用されている"としたら。
俺がどんなに自転車を回しても、たどり着けない理由はそれだ。

世界が。田舎が。この村が。
『完遂する』ことが出来なかった俺を、拒絶し始めている。

自転車を持ち上げて向きを変える。
今まで漕いできた河川敷への道を、引き返す。
だったら、俺がやるべきはこれしかない。

向かうは――この村の"
村役場公民館
"だ。
(10) 2021/08/17(Tue) 21:05:33

【人】 親友 編笠

>>10
そこにたどり着くと、
――自転車を叩きつけるように置いて、
流石に全力で漕いで来たので膝に手をついて長く息を吐いた。

その俺の隣を――子どもの姿の――
"添木の旦那"と"清和の旦那"が追い抜いていく。
汗に塗れた顔で、その後ろをよろよろと追いかける。

子どもの添木の旦那が、公民館の番号錠に手を掛ける。
それは、この村での記憶の"残像"だ。

"この村のカギの番号、全部頭に入ってるんだ。"

嘘吐けよ。子どもの頃は、間違いなくそう思ってたけど、
どこに侵入するにも番号錠をすぐに開けてた姿を覚えている。
だから――添木の旦那が言ってたそれは、
案外誇張なしで本当だったのかもしれない。
それを証拠に、俺が教えてもらった番号に錠を合わせると、
"見事に鍵は開かなかった"。
……そうだった。俺たちが特に悪さをした大抵の施設の鍵は、
ある時期を境にドアの鍵を無意味なものにした添木の旦那のせいで
片っ端から取り換えられてたんだった。

本当、つくづく思い通りに行かせてくれねぇあの旦那!
(11) 2021/08/17(Tue) 21:09:33

【人】 親友 編笠

>>11
"ここに関しては覚えなくても大丈夫だ。こうすれば開くから"。

子どもの清和の旦那が、ドアの枠ごと上に持ち上げた状態で、
ドアの左下を蹴る。物理的に老朽化した鍵が跳ねて、
ガチャンと目の前でドアが開く。

俺もそれに倣い、ドア枠を持ち上げて同じ個所を蹴ると、
番号錠を無視してドアが開いた。
……ホンット。

「ただただ冒険の仲間に入れてほしかっただけのガキに、
 悪いことばっかり、教えてくれてんなっ……あの二人!
 おかげで、めちゃくちゃ助かったよこの野郎……!」

歯を剥いて、笑ってしまった。
こんなに愉快なのは生まれて初めてかもしれない。

俺たちが公民館に忍び込む理由だった『それ』の場所も、
もう俺にはわかっていた。
それは、"田舎"には絶対にあるものだ。
そしてそれは大人たちが用意に子供には触れられないように
普段は隠されているものだ。
でも俺は知っている。悪い年上のせいで、知っていた。

――俺は、
トランシーバー
をひっつかむと。
それを肩から下げながら公民館を出て、再び自転車に跨った。
(12) 2021/08/17(Tue) 21:14:26

【人】 編笠

>>4:-96

「――アカネ」

トランシーバーを口に当てたまま。
自転車が、境内に、勢いよく突っ込んでくる。
大きく天を仰ぎ、息を吐いた。

随分と、遠回りしたし、
遅れてしまったけど。


――俺も、お前が……大好きだ


ちゃんと今度は。
この言葉を伝えに行くよ。

トランシーバーの電源を。――静かに落とした。
(13) 2021/08/17(Tue) 21:51:59

【人】 未来へ 竹村茜

「……アキラ」

境内の裏、少女は懐かしい出来事を思い出すような 村に響く音を聞いていた。
あの頃は馬鹿な言葉を叫んではこっぴどく叱られたっけ。

「馬鹿だなあ、それじゃあ皆に聞かせてるみたいじゃん。
 男らしいってそういうことじゃないでしょ」

耳に届いた声は、夏の隙間を通り抜けて、さわやかな一陣の風のように頬を撫で。
少女は嬉しさと照れくさい気持ちで、胸がいっぱいになる。

(14) 2021/08/18(Wed) 17:01:00

【人】 未来へ 竹村茜

「……ありがと」


境内の裏から姿を見せた少女は、晴れやかに笑って。


「でも、その言葉……ちゃんと、会えた時にもう一度聞かせてよね。
 それで、皆の事探して―――今度こそ、"また会えたね"って言って、話をしよう。

 あたしも、手伝うから」

不器用で、こうするまで人に頼ることすらも出来なかった幼馴染に。
手を差し伸べて、笑う。

きっと見つけて、この手を取ってくれると信じられる。

また皆で。そして、貴方と一緒に未来を見たいから。
(15) 2021/08/18(Wed) 17:02:02
村の更新日が延長されました。

村の更新日が延長されました。

【人】 編笠

>>15 アカネ
少しだけ視線を逸らして、頬を掻いた。
卯波が踏み出し、アオが踏み出し、
アカネが目の前にいる。

「皆知ってるだろ、馬鹿なんだよ多分。
 だから、また馬鹿だなって笑ってほしいんだ。

 ……ここにいる俺は、
 村のどこにいたって聞こえる声しか出せなかったけど、
 世界のどこにいたって、また声を伝えようって思うから」

だからこれは、告白ではなく宣言だ。
今から何百回、何千回と繰り返し伝える言葉の、
覚えていないかもしれない最初の一回だ。

一番恥ずかしい思いをさせたら、
もしかしたら永遠に残るかもしれない。
その胸の高鳴りを抱いたまま、
いつか俺が来るのを待っていてほしい。
同じ空が続く、世界のどこかで。
(16) 2021/08/18(Wed) 21:35:15

【人】 編笠

>>15 アカネ
「ああ……任せろ。
 どこにいたって、どんな姿をしてたって。
 必ず見つけてやるから。
 自転車の後ろに乗せるから、皆に会いに行こう」

手を取る。差し伸べられた手を握ると。
そこには10年前に欲しかった温もりがあった。

「……ごめんな、アカネ。
 俺はお前を、
 卯波を、青嵐を。
 永遠に夢みたいな楽園にいさせてやりたかった。
 これは、掛け値なしに本当の気持ちだった。
 でも、どうやらそれは無理みたいだから――」

だから。

「――お前のいる"現実"を、
 夢みたいな場所にすることにした。
 今度は、諦めたりしねえから。
 ……アカネが味方なら、百人力だしな」
(17) 2021/08/18(Wed) 21:36:45

【人】 過去から 編笠

>>15 アカネ
ばあちゃんみたいに、全員を一気に集めるとかできないから。
だから俺は、一つずつ繋いでいく。
糸を編むように、繋げていく。
出来るかなんてわからない。何年かかるかもわからないし、
その間にほどけて行くものがあったとしても、それでも。
それが今の俺に出来る、精一杯の感謝と謝罪だ。

握ったアカネの手を引き、相手の背中を抱いて。
その耳元に頬を寄せ――。
……静かに、今度はアカネにしか聞こえない声で囁いた。

「――
だから"未来"で待っててくれ

 "10年前"から、一気に自転車ぶっ飛ばして。
 
必ずお前に「好きだ」って言いに行くから


だから今は、少しだけお別れだ。
青く、青く澄んだ空の下で。
伝えられなかった言葉を、静かに伝えた。

誰かが、微笑んでくれているのを感じながら。
(18) 2021/08/18(Wed) 21:40:07

【人】 未来へ 竹村茜

>>18 アキラ
あの頃触れなかった手は、ずっと大きくて温もりがあった。
夏の暑さとは別に、握った手が熱を持って存在を主張する。

「あたしだって、そうだったんだよ。
 婆ちゃんがいるこの夢にずっといたいって思ってた。
 そうあれば幸せだって信じてた。

 だけど、アキラの言う通りそれは叶わない 泡のような夢でさ」

それでも。

「"忘れてきたもの"が、あたしを―――皆を、前に向かせてくれたんだ。
 アキラや卯波、シュン達と未来に行きたい。
 そして、婆ちゃんに『あたしも負けないくらいオシャレになったよ』って報告したいから」

夢も叶えたよって。ずっと話せなかった分、目いっぱい。

(19) 2021/08/18(Wed) 23:53:14

【人】 未来へ 竹村茜

「……うん、うん。
 待ってるよ、皆より一足早く辿り着いたところに、あたしはいるから。

 だから、今度こそ―――
男らしいところ、ちゃんと見せてよね


くすぐったいような、耳元の声に頷いて。
そのまま、こつんと額をくっつける。密着した顔が、熱くて仕方ないけれど。
あの時のように、悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

それ以上は、"未来"までお預けだ。

大丈夫、もう10年待つ事はないんだから。
待ってるよ、同じ空の下で。
(20) 2021/08/18(Wed) 23:57:52
竹村茜は、未来で待っている。
(a10) 2021/08/19(Thu) 13:28:28

【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

>>@3 >>@4 夜長 【祭りの終わり】

「そうだね」

 夢を見せるなら、最後まで騙していてくれたらよかったのに。
 この夢も、この祭りも
 なまじ楽しいと思ってしまえるから、
 尚の事終わりが来る事の寂しさが募る。
 この夢の終わりを感じ始めてから、何度も思った事。

「うん、夢を見せ続けてくれないなら、初めから。
 皆には、きっとこの夢が終わっても会いに行けるよ。
 でも、僕が本当にこの場所で会いたかった人には
 夢から覚めたら、何処に行っても、もう会えないから。」

 思い出の中にしか居ない人には、思い出の中でしか会えない。
 見ないふりをしていた事実を改めて、喪失感が蘇って行く。
 どうにもならない想いを抱えて、それでもと言葉を継いだ。

「でも、この夢で
 皆と過ごした時間が楽しかったのは本当のこと。

 『みんな』と『この村で』会う事はもう叶わなくても
 僕が思っていたよりもずっと、
 皆は過去に縋り付く事無く"今"を生きていける人達でも
 僕はそれならそれで、どうとでも納得する事はできてしまうし
 呼子姉が皆を好きだった事も、無かった事にはならないから」
(21) 2021/08/19(Thu) 22:10:03

【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

>>@3 >>@4 夜長 【祭りの終わり】

「呼子姉もきっと
 僕が皆と、また昔みたいに遊んでいられた事
 よかったねって言ってくれるとは思うんだ」

「でも、だからやっぱり寂しくて。
 呼子姉と一緒に来て、一緒によかったねって笑いたかった。
 それはもう叶わない事だから、
 いつまでも考えたって仕方ないのにね」

 淋しげに笑って、晴臣へと片手の小指を差し出した。

 目の前に居る人が、和臣でなく晴臣だという事は
 夢の残滓がそうさせるのか、大して違和感も無く腑に落ちて。

「ね、晴臣くん。
 僕はきっと、それでもずっと同じ事を考え続けてしまうから
 また会いに来て、君達の居る"今"を大事にできるように。
 いつか遊びに連れ出しに来て、考える暇も無くなるように。
 …またいつか、約束してくれる?」
(22) 2021/08/19(Thu) 22:12:44

【置】 あの頃の 宵闇

──宵闇 翔『不発弾
<タイムカプセル>
』の主な中身

『一枚の写真』
10年前の三人が自分を中心に写っている。
卯波少年からもらった(宵闇談)ベストショット
背景は宵闇の家の前、今の田舎そのままだ。

『カセットテープ』
当時宵闇が文化祭のバンドでボーカルをやった
──という設定で歌っている流行りのロックな歌。
今聴けなくてよかったかもしれない。

『ノート一冊』
なにやら色々な言葉やらくがきが書きなぐってある。
村の人たちの名前、料理のレシピのようなもの。
いわゆる、混沌と化したポエムノートかもしれない。

『楽譜』
10年前、初めて自分で作詞作曲したもののようだ。

『薄っぺらい紙切れ』
"10年後の清和へ、お前はたぶん今彼女いないに5000円賭ける"

と書いてある。バカ。
(L5) 2021/08/20(Fri) 11:24:14
公開: 2021/08/20(Fri) 11:25:00

【置】 いつかの 御山洗

──御山洗 彰良『不発弾
<タイムカプセル>
』の主な中身
きっと二人の入れたものより、内容は少ないのだろう。

『一枚の写真』
三人が遊んでいる風景の写った写真。
村の大人に、もしかしたら鬼走かもしれない、撮ってもらった写真は、視点が高い。
思い思いのポーズをとっていて、薄い写真からでもそれぞれの性格が現れるようだった。

『MDプレイヤー』
ずっと昔に御山洗が使っていた。一枚のMDディスクがそのまま入っている。
好きな順番で録音された中には、清和や宵闇の勧めた曲が入っているのだろう。
"11' 夏"とラベリングがされている。

『フォトブック』
料理の写真と料理名や感想が乗っている。
清和の家でいただいたものや集落の外で外食した時のものばかり。
そんな機会は少なかったのか、後ろの方はページが余ってしまっている。

『押し花の栞』
ベゴニアの押し花がプラスチックに挟まれている。
(L6) 2021/08/20(Fri) 13:10:38
公開: 2021/08/20(Fri) 13:10:00

【人】 過去から 編笠

>>4:+55 凪
ああ。
そうか。

……そうだったのか。
ずっと疑問に思っていた。
この夢の世界が、俺の思っている通りの場所で。
慈姑のばあちゃんが関わっているとして。

俺の内心や本心までを踏襲しているのだとしたら。
この夢の中に、絶対に居なければならない人間が、
『一人だけここに居ない』のは何でかって、
ずっと考えていた。

最初から彼もそこに居て。
そして同時に、彼女も存在していたんだろう。

最初にここに閉じ込めようとした夕凪の姉さんの表情が
その意味が、全て繋がっていく――。
(23) 2021/08/20(Fri) 19:29:27

【人】 過去から 編笠

>>23 凪
――俺は、静かにその言葉に応える。

「……ああ。分かった、姉さん。
 それだけは、絶対に約束する。
 俺も自分の気持ちに、はっきりとケリをつける覚悟、
 姉さんのお陰で出来たから。

 お互い、どこまで覚えているか分からねえけど、
 だからこそ意味のある約束を、ここでしよう」

言いながら、目の前の誰かに、小指を差し出した。
それは意味のない約束だ。
ここから出たときに、夢から覚めた後に、
どれくらいそれを覚えているかは分からない。
ましてや本人でもなければ、今のままの姿とも限らない。

それでも、今ここに居る俺たちの間で約束をすることが、
必ず意味を持つ。
(24) 2021/08/20(Fri) 19:34:14

【人】 過去から 編笠

>>24 夕凪
「……俺が出来る限りの何もかもを引き連れて、
 必ず、会いに行く。夕凪の姉さんが思っているよりも、
 もっともっとすげえものを見せるために、
 ちゃんと自分の声を伝えに行く。

 ――今なら、
 自転車一個でどこまでも行けそうな気するんだ。

 夢のような言葉も、夢のような現実も、
 何もかも持って行くことを、ここで約束しよう」

だからこの"初恋"だけは、
もう少しだけ決着を先延ばしにしておく。
これは間違いなく、"本人同士"の問題なんだから
ちゃんと失恋なりなんなり、しにいかねえとな……。

「なあ、こっちからも一つだけお願いしていいか、
 ――『夕凪の姉さん』」

相手に、静かに尋ねる。
(25) 2021/08/20(Fri) 19:35:43
宵闇は、御山洗に口づけをした。
(a11) 2021/08/20(Fri) 20:02:26

御山洗は、宵闇を抱きしめた。
(a12) 2021/08/20(Fri) 20:35:42

【人】 陽は落ちぬ 夕凪

>>25 編笠

「……大げさ。
 それでも、夕凪は楽しみにしてる。
 怪我してこないでよ、…急ぎすぎないで。
 夕凪は、ただ。
 こんな約束ができただけで、十分なんだよ」

小指を絡めただけの意味のない約束。
少年はなにに固執していたのか、今になってわかったような気がした。

編笠の"夕凪たち"に対する気持ちが聞きたかったのだ。

夕凪として聞きたかったのか。
夜凪として聞きたかったのか。
今となっては混ざってしまって明確にするのは意味をなさないだろう。

一度でも任せてしまいたくなったこの気持ちも。
一度でも隣を夢見た形にならないこの気持ちも。

あなたへの気持ちが泡沫のように消えてしまうのかは、この約束さえあれば不安じゃない。

"なれなかったこの気持ち"は、成熟する前に夢が覚めていく。
(26) 2021/08/20(Fri) 20:50:23

【人】 陽は落ちぬ 夕凪

>>26 編笠へ

だから今この祭りの間だけは、
夕凪としてこの夏、ここにいる。

「お願いって、何?
 わざわざ改まって」

あなたの言葉を聞くために、ここにいる。


――ねぇ、淡い初恋を話してくれるのが楽しみよ。
大切な思い出が存在したことが嬉しくて仕方ない。
今も思ってくれていたことに胸がいっぱいで。
本当に来ていたら、その手を掴んで、水に飛び込んでいたでしょうね。
お魚さんは、逃げちゃうのかしら、捕まっちゃったのかしら。
夜凪なら、きっとそうしたわ。あなたのことが好きだから。
だから私も、言葉があふれる前に体が先に動いてしまいそうね。
(27) 2021/08/20(Fri) 21:05:45

【人】 過去から 編笠

>>27 夕凪
少年は照れたように頬を掻き。
そして真っすぐ青年の目をして、言った。

「……難しいことじゃないよ。
 ただ『夜凪の旦那に、伝言してくれねえかな』って。
 凄くシンプルな言葉なんだけどさ」

きっと多分。
この祭りに意味があるとするならば。
この形に意味があるとするならば。

――きっと、全部そのためにあったんだ。

「……同じなんだ、伝えたいこと。
 この言葉をそのまま伝えてくれ」
(28) 2021/08/20(Fri) 21:33:59

【人】 過去から 編笠

>>27 夕凪
「……俺じゃ。
 
夜凪の旦那の代わりにはなんねえかな?

 そう、伝えてほしい」

それは。
ここに存在して、
ここに存在しなかった、
もう一人の憧れに対しての言葉だ。

どんな理由があって、
どんな思いがあって、
こういう形になっていたのかは、分からない。

それでも、彼が夜凪の貌(かたち)で現れずに、
夕凪の姿(かたち)で現れたことに意味があるのなら。
きっと、俺も憧れを憧れのままで留めておくわけには、
それだけはいかなかった。
(29) 2021/08/20(Fri) 21:35:24

【人】 過去から 編笠

>>27 夕凪
ずっと、その器用に何かをこなす彼に憧れていた。
子どもだった俺たちは全員、その背中に背負われてきたはずだ。
普遍で、不動で、信頼できて、
何故かそれが絶対崩れないと信頼していた。
だから、誰も気づかなかった。
他の皆には夜凪の旦那がいても、
夜凪の旦那には、夜凪の旦那が居なかったことを。

弟分が、卯波が憧れを捨て去ったなら。
あいつのことを格好いいと思ってしまった俺が。
――じゃあいつまでも、
こんな気持ちを抱えてていいはずがない。
助けての言葉が言えない相手に、手を伸ばさずにいられない。

「……伝わんないかもしれないけど。
 ……全部勘違いかもしれないけど。
 俺は憧れていた『夜凪の旦那』になる覚悟が出来たから。
 だから、アンタにも必ず会いに行くよ。
 でも、一人じゃ何もできないから。
 ――たくさんの仲間を連れて」

そしたらきっと。
俺は、俺たちは――無敵だと。
そう信じさせてくれた親友がいるから。
(30) 2021/08/20(Fri) 21:37:16

【人】 夜を越えて 編笠

>>27 夕凪
たち

一人じゃ救えないかもしれない。
一人じゃ答えを出せないかもしれない。
人は、誰かを救うようには出来ていない。
何もかもを解決するなんて無理だ。

なあ、もう一人の俺。
もし会えたら言うよ。必ず探し出して伝えるよ
人の腕が二本しかないのは。
誰かの差し出した手を握り、誰かに手を差し伸べるためだって。

「……だから夕凪の姉さん。
 『
旦那も姉さんも待っててくれ
』って。
 そう伝えてくれねえかな。必ず、迎えに行くから。
 それが、俺のお願いだ」

少しは、これで惚れた相手の前で格好つくかなと、
少年だった顔で、自然な顔で笑って肩を竦めた。
(31) 2021/08/20(Fri) 21:39:34

【人】 陽は落ちぬ 夕凪

>>31 編笠

なれるに、決まってる。
最初から、許していた。
だから今、聞いたんだ。

こたえが、欲しくて。
聞いたんだ。

お前ならそばにいてくれるのかって。


「一人じゃ何もできないから。
 ――たくさんの仲間を連れて?」

思わず繰り返した。
僕がそこにいたからだ。

一人で進もうとすることは否定されてない。
一人になろうとすることを心配されたのだ。
ついてきてくれる友人がいること、片割れの言葉を思い出して。

再会の約束に、ああよかったって。
編笠のまわりに、みんなが見えた気がして、笑った。


夕凪たちはそこにいたんだ。
(32) 2021/08/20(Fri) 23:10:39

【人】 陽は落ちぬ 夕凪

>>32 編笠
たち


「『なんだか楽しみ、賑やかそうで。
  もちろん伝えてあげるわ。
  今の言葉、夕凪にはさっぱりわからないのに。
  夜凪がずっと聞きたかった言葉だってすごく思うの。
  男の子同士で伝わるものなんて、なんだか妬けちゃうな』」

伝わらないかもしれないけど。
全部勘違いかもしれないけど。


「『夢から覚めたら、―――』
 夕凪たちの物語も、これから紡がれていくんだから。
 私から夜凪たちに伝えることは、
 一生があれば、大抵のことは大丈夫ってこと


ここには凪いだ波しかなくて。
何一つ紡がれていなかったとしたら。
未来に繋がる"それ"さえ、あれば。
夕凪たちは二人でいくらでも待てるよ、だから。


「「待ってるね、編笠。
  夕凪たちはきっと、そう言うよ。双子だからわかるんだ」」

青い空に、朱い灯火に、黄色の太陽に、緑の山に。
忘れ物はもうしなくてすむように。
もし、なくしたものがあったなら。

一緒に探して、また、魚でも捕まえて帰りましょう。
思い出はいつだって、みんなが来るのを待っている。
(33) 2021/08/20(Fri) 23:20:57

【人】 夜を越えて 編笠

>>33 夕凪
「残念だけど夜凪の旦那との関係は、
 夜凪の旦那との関係だけなんだよ。
 同じように、夕凪の姉さんとの関係も、
 夕凪の姉さんとの間のものだけだけど。
 だから、俺にとっては……
 どっちだって欠けがたいもんなんだよ」

それは。
幼馴染三人の誰一人、
何一つ手放す勇気を持てなかったのと同じで。

今まで何かを支えてきた人が居るなら、
今度はそれになりたがったっていいはずだ。

どうせここが夢なんだとしたら。
夢みたいな話をしたって構わないだろう。
そしてその夢を現実にするために、
少しばかり頑張ってしまうのが男という生き物なんだ。
大切な誰かの夢を叶えてほしいから、
方法を迷わないのが、男なんだ。

そうだろう――夜凪の旦那。俺たちやっぱ、似てるかもな。
(34) 2021/08/21(Sat) 0:18:55

【人】 夜を越えて 編笠

>>33 夕凪
たち

「『夢から覚めたら、―――』
 今度はちゃんと、俺たちの話を紡ごう。
 ……10年待たせたんだ、もう少しだけ待ってくれよ。
 泣きながらでも、笑いながらでもいいから。
 ただその涙を拭ったり、一緒に笑えるように。
 必ず追いつくから」

だからもう少し、だけそこで待っててくれ 夜凪の旦那。
今度は、夕凪の姉さんに救われた俺が、救う番だから。

「じゃあ、ちょっと行ってくる。
 まあ、あんまり得意じゃない料理でも作って
 待っててくれるかい。
 ……ここでやらなきゃならねえことが、まだあってさ」
(35) 2021/08/21(Sat) 0:20:47

【人】 茜差す方へ 編笠

言いながら、自転車に跨った。
もう、後ろは振りむかない。
後ろに置いていくんじゃない、前に迎えに行くために。

だから、ここでは、さよならしなきゃな。

少年の残滓を置いていくようにして、
自転車のペダルに足を置いた。

「さあ、伝えてくるか。
 ――今度は、俺の番だ、アカネ」

世界の何処にいたって一番最初にはきっと、
お前を見つけてやる。何回でも。何十回でも。
そう思いながら、自転車に跨った。

お前のことが好きだと。
今どこにいても伝えにいってやるからな――。
(36) 2021/08/21(Sat) 0:23:11
夜長は、こくり、こくり。頷いて、百千鳥の言葉を聞いていた。しっかり、確かめるように。
(t1) 2021/08/21(Sat) 1:00:41

夜長は、差し出された小指を見て、少し申し訳なく思った。
(t2) 2021/08/21(Sat) 1:00:46

夜長は、小指を置いてけぼりにして言った。「考えても仕方のないことでも、考えてはいけないことではないです」
(t3) 2021/08/21(Sat) 1:00:59

【見】 天狼の子 夜長

【祭りの終わり】百千鳥 

「昔がよかった、こうだったらよかった。
 それは持ち続けていていい、モモチの持ち物だ」

 またいつかの約束をするのは嫌でなかった。むしろしたいことだったが、そうするよりも先に、言いたいことがあった。

「……なんだろう。砂が、経験や思い出の砂時計があって。
 白い砂が、落ちたら色が付くんです。

 生きていて、色砂が積もって、増えていって。

 その増えたもののことを考えることが増えるのは、当たり前だと
 俺は思う。良くない思い出一個だけをよけておくのも難しい。
 砂が落ちて積もる場所は、ひとつだけだから」

 雪子から聞く思い出話は、いい思い出だけではなかった。悪い思い出の全部が話されたわけでもないと夜長は思っている。それでも夜長は村が好きで、村に行きたかった。

「色砂はモモチの物だが、
 忘れたり、考えないようにしまってもいい。
 考えるとつらかったり、くるしかったりするから。
 時間を刻まない、時計みたいになっても良くて」

 鬼走から譲られた懐中時計も、もしかしたらつらいやくるしいが理由で止まってるのかもしれない。そんなことを考えたことがある。
 家族が欠けて、かなしくて、それでも変わらず時を刻み続けて。それはすごく無理をしている状態で。みんなが揃っていた時には、同じ様に落ちても"みんながいるから"平気だったかもしれない。でも、落ちた時にはたくさんくるしかったから。

 何もなく動き始めるとしたら、色んな奇跡が重なった時だろう。
(@5) 2021/08/21(Sat) 1:03:37
夜長は、ひとつ深呼吸をして。それから言った。「モモチ」
(t4) 2021/08/21(Sat) 1:04:13

【見】 天狼の子 夜長

【祭りの終わり】百千鳥 

「俺は会いに行きます、連れ出します」

「でも、考える暇がなくなるようにでなくて、
 モモチがモモチの持ち物を全部持って行けるようにが、
 俺の理由になるな」

 考える暇がなくなるように。自分が動くのはそのためにではない。少し突拍子のない例え話は、夜長本人としては繋がったものだった。

「そっちは、できるのがいつかもわからない、
 本当にいつかのことになってしまうが……それでも、」

 止まった時計が動くのは、奇跡が重なった時だけではない。

「あなたに会いに行く、またいつかの約束は今に出来る」
 
(@6) 2021/08/21(Sat) 1:05:26
夜長は、小指を絡めた。
(t5) 2021/08/21(Sat) 1:05:41

夜長は、何度でも約束し、何度でもそれを果たす。
(t6) 2021/08/21(Sat) 1:05:47

【置】 いつかの 清和

──清和 瑠夏『不発弾
<タイムカプセル>
』の主な中身

『一枚の写真』
中学生の頃の三人が写っている。
清和が思う、三人が最も"三人"だった頃の写真のようだ。

『オイルライター』
"火遊び"に使っていたもの。
"ワル"との決別のために過去に置いてきた。

『キーホルダー』
"相棒"であるバイクに付けていたもの。
懐かしいデザインのそれも、決別のために過去に置いてきた。

『手紙』
"10年後のカケルとアキラへ"と書かれた封筒に入っている。
(L7) 2021/08/21(Sat) 1:07:58
公開: 2021/08/21(Sat) 1:10:00

【置】 いつかの 清和

俺の親友たちへ。

お前らがこの手紙を読んでいるということは、
俺はそのタイムカプセルの回収に失敗したということなのだろう。
もしくは、何らかの事情でそちらに行けなくなってしまったのか。
ともあれ、先に手紙に辿り着いたお前らに向けて俺は筆を取っている。

何も言わずに出て行ってしまったこと、お前らは恨んでいるだろうか。
この手紙を書いているときから、そうすることは決めていた。
俺たちの田舎がなくなってしまう以上、誰かがしなければならない。
その役割をする悪者は、俺であるべきだろうと、カッコつけていた。

本当は、俺もお前らと離れるのは寂しいと思う。
だけど、お前らを守るためにはいつまでも田舎にはいられなかった。
俺は必ず警察官になると決めた。みんなを守れるようになるために。
ハーフだろうが、金髪だろうが、誰にも文句を言わせるつもりはない。

だから、お前らにもちゃんと夢を叶えて欲しいと願ってる。
俺は、お前らの音楽や料理が、みんなを笑顔にできるように、
この世界の平和と安全を守れるような人間になってやるから。

カケル、アキラ。
俺は、何処に行ってしまってもお前らの幸せをずっと願い続けてる。
お前らが幸せに笑って生きていてくれることが、俺の幸せだ。

だから、どうか笑ってやってくれ。
こんな手紙を残してやる、バカな清和瑠夏って男のことを。

お前らの親友より。
(L8) 2021/08/21(Sat) 1:18:05
公開: 2021/08/21(Sat) 1:30:00

【人】 夢のその先 百千鳥

>>@5 >>@6 夜長 【祭りの終わり】

 置いてけぼりになった小指に、一瞬だけ
 ああ、やっぱり皆は自分が思うほどには、なんて
 後ろ向きな考えが首を擡げて
 けれどそれはすぐに散り失せる事になった。

「……そうだね。

 砂が落ちて積もる場所は、一つだけ。
 そこには当然良くない思い出もあって、
 他のものと混ざり合っているから、よけておくのは難しい」

「だから、掬い取ってよそへやってしまうのも良くない。
 全部が混ざり合って、それでやっと今の僕があるから。
 たとえたった一掬いだけでも、それを失くしてしまったら
 きっとそれは、今の僕とは違う人になってしまうのかも」

 さんざん人に取り落とすな、なんて言っておいて
 その実、自身を省みる事もできていなかった。

 はは、と息を吐くようにも笑いを零す。
 夢を見るのに疲れてしまった今のそれは弱々しいものだけど
 決して、後ろ向きなものだけではない。

「…うん。
 それがいつになるかは僕にもわからない、それでもよければ
 いつか会いに来て、晴臣くん。
 それで会えたらその時は、もう一度"またいつか"を約束しよう」
(37) 2021/08/21(Sat) 4:55:09
百千鳥は、「ゆびきった。」
(a13) 2021/08/21(Sat) 4:55:59

【置】 涼風

拝啓

 ひぐらしの声を聞いて胸に寂寥感が芽生え始めて参りました。残暑厳しき折ですが、お変わりなくお過ごしでしょうか。

 手紙を書き始め、次で十通目になります。
 月日が経つのも早いものです。私の周りも、私の立場も、昔と比べると変わったものが随分増えました。
 それでも変わることのないものがあります。どれだけ経っても、決して色褪せないものたちが。

(中略)

 手紙は勿論書きますが、来年はようやく時間が取れそうですからきちんと貴方にお会いして挨拶をしようかと思います。
 それに、見せたいものもありますから。ようやく夢が形になったんです。

(中略)

 略儀ながら、書中をもちましてお見舞い申し上げます。

敬具 

  20××年 8月××日
涼風薫 
(L9) 2021/08/21(Sat) 14:40:39
公開: 2021/08/21(Sat) 14:45:00

【置】 涼風

 家か、或いは関係者に渡したのか。
 手触りのいい和紙の便箋がとある人宛に送られた。

『優くん元気?私だよ。涼風です。
 こうして手紙を君に送るなんて、昔を思い出してしまうね。

 久しぶりに話がしたいな。アイスでも食べてさ。ところで、おすすめのアイスとか知らない?折角だし一緒に買おうよ。お墓参りが終わった後にでも。

追伸
 なんとなく昔を思い出したからお墓参りも自転車で行きたくなっちゃった。まだ自転車はある?』

 ほっそりとした字で、ありとあらゆる無茶振りが書かれている。
 そんなマイペース極めた手紙を貴方が読み終えた頃──
(L10) 2021/08/21(Sat) 14:44:09
公開: 2021/08/21(Sat) 14:45:00

【置】 再点火 花守

>>添木
【乾杯】

おつかれさまヒサシ、ホントに警察になっちゃってまあ、よくがんばったな。

久しぶりに会って、あんたの家に行って、ご飯したり酒飲んだりして、"オトナ"になったくせに昔っから変わらない所もあって、楽しかった、でも、それが逆に寂しいやらでさ……

結局、言い出せなかったけど、私は『約束』守れなかったよ。
あんたと同じか、それ以上に努力してきたつもりだったけど、現実はいつも私に厳しくって、それでも次こそはって頑張ってきたけれど……あれから10年経って私は医学部にも入れず8浪だよ。

8年、『約束』も果たせず、"オトナ"にもなりきれないで停滞してた時間が8年間、親に呆れられて、毎日毎日生活費と学費を稼いで、隙間の時間で勉強した時間が8年間、振り返っても空虚しかないこの時間の重さ。
それに気が付いちゃったから、もうダメだって諦めてた。

だからだろうね、私がここにきたのは。
この村の大人たちはそんな好きじゃなかったけど、私の人生で一番充実してた青春が、確かに此処にあったから。
嘘つきは嘘を隠したまま、幻想の中のあの頃をもう一度望んで、あんたや私の事を知ってても知らなくても、良くしてくれた皆に会いたくて…………

でもさあ、会っちゃったら、やっぱ悔しかったわ。
昔っから『対等』だって思ってたあんたが成功して、私はそのままって、惨めで悔しかったわ。

だから待ってな、今度こそ果たせなかった『約束』を果たして、ついたウソを告白して、あんたは呆れるかな、それとも昔通りでいてくれるかな、ともかく──

──果しにいくよ。
(L11) 2021/08/21(Sat) 18:09:37
公開: 2021/08/21(Sat) 18:30:00

【置】 再点火 花守

>>清和
【約束】

『約束』、うん『約束』するよ、センパイ。
今度こそ、ウソをホントにする為の、私の人生を、この10年を。
いや、この人生が無駄じゃなかったと、私が私であると胸を張って言える様にする為に、もう一度『約束』する。

だから、貰ったメモにはしばらく頼らない、ここに連絡するのは私が合格した時だって決めた。
すぐ連絡できるかも知れないし、もしかしたらまた永く待たせちゃうかもしれないけど、これはケジメ。

そうしたら、よくやったって、褒めて。
きっとそれで、それまでの苦労が報われるから。

あと、合格したら、一緒に両親に会って欲しい、散々試験に落ちた私をみかねて、もう諦めたらと心配してくれてた二人。
意地っ張りで、見栄っ張りな私は、それに反発して喧嘩して、もう何年も会ってないから、今更顔を合わせるのが怖くて、謝りに行くのに、一人じゃちょっと難しいから、一緒に来て欲しい。

まだまだ、こんな歳になっても"コドモ"のままの私に、もう一度歩き出す勇気をありがとう。
それに報いれるように、今度こそ"オトナ"になった私をみせられるように頑張るから、きっと、必ず、いい知らせを届ける、だから私を信じて、見守ってて、いつか"コドモ"を──

──卒業できるように。
(L12) 2021/08/21(Sat) 18:11:07
公開: 2021/08/21(Sat) 18:30:00

【人】 再点火 花守

>>4:41
「ホント、こなくてもよかったな。
 甘い夢を見に来たのに、辛くて重ーい現実と向き合う勇気、貰っちゃう事になるなんて、思いもしなかった。

 あーあ、諦めようと思ってたのに、これじゃ仕方無いかね」

立ち上がって、土埃を払って、大きく伸びをする。

「それに……」

ハウリングするくらい目一杯の叫びがスピーカーからきこえる。
小さい方のアキラくんの、青春生放送。

「また集まるんだったら、顔向け出来るようにしとかないとね」

夏の終わりに産まれた彼女の誕生花はシロツメクサ。
この"花"に込められた言葉を、きっと彼女は"守り"果たすだろう。
(38) 2021/08/21(Sat) 18:12:08

【置】 あの頃の 宵闇

すこし古ぼけてかすんでいる楽譜、かろうじて読めるくらいの。
まだ音楽への知識が浅い時にはじめて創作したもの。

その曲のタイトルは『再会』

あの頃の少年が細い指でギターをかき鳴らす。
──ふわりと、頬を風が撫ぜた

前奏、それはそよ風のように優雅に
爽やかな空気の流れるはずんだ音
雲ひとつない青空広がるすっきりとした空。

──僕らは繋がっている
──きっと同じ空を見上げている

間奏、転調、雨が降ったように、ぽつりぽつりと。
しっとりとした、音が紡がれる。
それは恵みの雨、悲しみを流す清らかな水だ

──晴れた夕焼け空にカラスが鳴く
──帰ろう、僕らの道へ

後奏、夜が訪れるように
宵闇は光へと続くしずかな夜だ。

──朝は必ずやってくる
──それまでは安らかな夢を
(L13) 2021/08/21(Sat) 18:19:17
公開: 2021/08/21(Sat) 18:20:00

【置】 あの頃の 宵闇

 "未来"の宵闇 翔へ

 元気ですか? ちゃんとメシ食ってますか?
 彼女はできましたか? 夢は叶えましたか?

 俺は小さい頃、なんとなく母さんが喜んでくれるからって
 理由でピアノをやってたけど、今ではすごく楽しんでる。
 都会の音楽に触れられるようになったのはルカのおかげだし。
 俺もなにか夢を持ってみたいと思ったのはアキラのおかげだ。

 未来の俺はどうですか?
 もし、挫折してたりつまんねえなって思ってたら
 いっそ音楽なんてやめちまえばいいと思います。

 それもいやなら、一緒に入れた楽譜を見て思い出してくれ。
 これはアイツらには今はナイショだけど、曲をつくったんだ。
 練習もしたから今の俺は歌えるし、思い出すはずだ。
 まだうまくできないけど、未来の俺がアイツらと再会したら
 歌ってくれよな。絶対はずかしいと思うけど。
 
過去の宵闇 翔
(L14) 2021/08/21(Sat) 18:21:01
公開: 2021/08/21(Sat) 18:25:00
夜長は、
夢から覚めた後、モモチに会うのが少し照れくさいかもしれない。
(t7) 2021/08/21(Sat) 20:28:41

夜長は、早く大人になりたい。夢に来る前と、理由は変わった。
(t8) 2021/08/21(Sat) 20:28:52

夜長は、来年中にはお兄ちゃんになっています。
(t9) 2021/08/21(Sat) 20:29:41

【置】 夢のその先 百千鳥

 
「さようなら、慈姑さん。
 ずっとを望むくらいには、ここは良い夢だったよ。
 あなたにとってもそうであったらいいんだけど。
 ──待っててね、きっといつか、また皆で会いに行くから。」

 皆を見送る老婆に挨拶を終えて、
 爽やかな風の吹き抜けるあぜ道を歩く。

 夢から覚めたら、現実を生きていかなければならないから。
 だから夢と現の狭間、微睡の中にある今の内に
 これからの事を考えよう。

 皆を守る、"正義の味方"を守るのは誰?
 誰もなれないのなら、今は何にもなれない自分がそうなろう。

 いつも皆の背を追ってばかりのあの人は、
 今や自分も追われる側なのだといつ気付くだろう?

 物語を、夢を紡ぐ事を今尚捨てなかった人々に
 "みんな"の居る長閑な村を、物語の中に創ってもらうのもいい。

 水鉄砲の、最後の一発は"またいつか"のその時までとっておこう
 この村に来た時に、自身の慕う兄がそうしたように
 "再会の挨拶"を叩き付けてやるのだ。

 自分と同じように、抱えきれないほど多くを欲しがって
 同じ夢を見て、そしてこれからも同じ夢を見続ける
 大人になりきれなかった誰かさんに。
 
(L15) 2021/08/21(Sat) 20:40:29
公開: 2021/08/21(Sat) 20:50:00
天狼の子 夜長(匿名)は、メモを貼った。
2021/08/21(Sat) 20:42:58

【置】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

 
 わが門の 榎の実 もり食む 百千鳥
 千鳥は来れど 君ぞ来まさぬ
   ──作者未詳 『万葉集』 巻16-3872 雑歌

 我が家の門前の榎の実を啄みにくるたくさんの鳥たち、
 鳥は来るのですが、あなたは来てくださらないのですね。
 
(L16) 2021/08/21(Sat) 20:43:33
公開: 2021/08/21(Sat) 20:50:00

【人】 音楽家 宵闇

ここにずっといたら取り戻せそうだった心があった。
今の自分にはなくて、過去に置いてきてしまったものがあった。
思い出せそうだった、すこしだけ思い出した。

それは『好き』という、身近にあって大事もの。
この村で培ってきたものが、音楽が好きだった。

男はきっと、この夢の事を一曲にするだろう。

ひとりの老人が、皆が愛した村。

──時数えの田舎村。
(39) 2021/08/21(Sat) 20:55:31