人狼物語 三日月国


185 【半突発R-18】La Costa in inverno【飛び入り募集】

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:

全て表示


【人】 人造生物 ユスターシュ

[――…女は知らなかった。

あの夜、友人から贈られてきた香を焚いた後、自分の家を訪ねてきたのは、賢者ではなく彼女に懸想した青年たちだったことも。
あの時焚いていた香が、強い幻覚を齎すものだったことも。
その香を贈ってきた友人――賢者の親友だった男が、悪意を持って青年たちを女の家に誘い込んだことも。

愛する男と幸福な時を過ごしていた、そう信じていたのに、
実際には知らない内に見知らぬ男たちに身体を弄ばれていたのだと。
後にその事実を知ったとき、女は悲嘆にくれ…そして堕落の道を辿った。>>1:11

役者の道から遠のき、強い酒とあの夜のそれより更に強い薬に溺れた。
それを用いて、女は屋敷に連れ込んだ男娼と身体を重ねた。
薬に溺れ現実と幻覚の境を見失った女には、もはや自分と身体を重ねる男は全て、嘗て自分が愛した男の姿に見えていた。
否、男は全て同じ顔に見えてしまっていると言ってもいい。
あれから長い年月が経っているのに、女の中では今でも男の姿は変わらないまま。

そうして、壊れていった女は次第に影街へと追いやられていき。
今はもう影街の景色の一部と化している。]*
(44) 2022/11/30(Wed) 9:51:12
……言わずとも、
わかっていらっしゃるでしょうに。

[全身で、心さえもすべて。
貴方を待ち望んでいた。

女は幸せそうに微笑めば、背に回した腕で男を引き寄せるようにして、

欲しかったの。

と、囁くと同時に唇を重ねる。]

[興奮を貴方への希求にかえて
情欲を絡めるようにして、中で脈動する雄を締め付ける。

可愛い、ひと。
いとしいひと。

だからこそ総て喰らいたい。
喰らって、満ちて。そしてまた求めてしまう。
私がそうなのだから、きっと
貴方もそうでしょう?と無言の問いかけ。

見つめる瞳には貴方しか映らず。
その姿も、この胸を疼かせてやまない。

焦らされた私は、もう陥落寸前で。
溺れそうなのをじっと、たえて。]

……ひ、ぁ。
シメオン様、っ

[体が跳ねて。快楽に啼く声はただ甘い。
ゆっくりと引き抜かれ、押し込まれ。最奥に向かうときに
一際強く突かれたなら、
褥の上で女は、艶やかに乱れた姿を晒すだろう。

経験も、手管も男が上回り。
それを甘受する己は、貴方の手の中で鮮やかに咲き誇る

貴方を刻まれるたびに、私は貴方に溺れて
……自分だけでは嫌よ、と。
男に絡む艶肉は、甘やかに中を締め付けた

幾重にも重なる卑猥な音
陽光が寝台を照らすなかで、二人混じりあう

フェスが終わり、日常を取り戻した街の喧騒は
いまは遥か、遠くに*]

【人】 「怪人」 ファントム

ーーその魂は、いつも星のよく見える海岸に立ちつくしている。
その髪の色と同じ、青く星の瞬く夜空を見上げ続ける。

「しばらくだね。」

彼女と初めて会った時、彼女には記憶が無かった。
生前の自分に酷く嫌悪感を持つ魂は、そうなりやすい。
思い出したくもない、というものだ。

けれど、彼女はこうも言っていた。
『自分のことは覚えていないけれど、一つだけ心残りがある。
その為に、主の御許に昇らないのだ。』と。

「そんなまさか、と。
頭の片隅にも置いていなかったんだが、あとになって考えると、あまりにも君の話と重なる事が多くてね。
色々と調べたんだよ。」
(45) 2022/11/30(Wed) 14:15:40

【人】 「怪人」 ファントム

「君が自分の命より大切にしていたリリーは無事だ。
今は母の呪縛から解き放たれて、自由に舞い踊っている。
だから、君はもう神の御許で待っていてあげてほしい。

ーーーさぁ、行こうか。
ステラ。」
(46) 2022/11/30(Wed) 14:16:07

【人】 「怪人」 ファントム

ーーそれから、海岸に彼女はもう居ない。
きっと、あの夜空に昇って、大切な妹を見守るのだろう。
(47) 2022/11/30(Wed) 14:16:15
[男は溺れていた。
艶やかに乱れるその美しい姿に。
剛直に絡みつききつく締め付ける艶肉に。
快楽に啼く声も甘く、男を誘い煽る。

やがて動きは強く深いものに変わる。
それは男も既に限界寸前ということ。

快感の海に溺れながらただ只管に女を貪り喰らう。]

[叩きつける様に突き入れられる剛直。
手管などもはや用を為さず、あるのは女の奥に、もっと奥に、少しでも奥へ届けたいという本能だけ。

もっと味わいたいという欲と、早く女の中に吐き出したいという欲。
背反する二つの欲はしかし官能の強さによって後者が勝る。

我慢などできるはずもない、抗うなど一瞬だけのこと。]


 出すぞ…っ


[女の腰を掴んでより一層深く。
意識が飛びそうなほど快楽の強い波に攫われながら、男の精は女の最奥で一気に吐き出された。ビュルビュルと勢い強く胎の中を濃厚な子種がどっぷりと溜まっていった。*]

 

  ンぁ、あ、 ひ、ぅ……っ


[ 堪えようとして、抑えられない甘い声が零れ落ちる。
  激しく動こうとはしない穏やかな律動は、
  嫌でも中に収められた熱を感じ取ってしまうもので。
  抜けてしまいそうなほどに熱が引かれ、
  いかないで、というように胎はきゅうと収縮を繰り返す。

  気持ちいいところを擦られて、最奥を突かれる度に
  ぞくぞくと腰が震えた。
  初めては痛いものだと同業者が言っていたけれど
  ならどうして自分は、こんなに── ]

 

 

  ────── ふぁ、あ、あ っ!?


[ 抱き留められ、彼と肌が重なり合えば
  それは女の体が否応なしに動かされたということ。
  弾みで体内の熱が最奥をより強く押し上げて、
  視界がぱちぱちと光を散らした。

  重ねられた唇を受け入れ、
  舌が絡まり合うのをどうにか必死に追いながら
  薄桃の髪を乱れさせ、快楽に鳴いて。 ]


  ……〜〜〜〜っっ!


[ 何度目かの最奥への刺激と、吐き出された熱の感覚に
  目をぎゅうと閉じて、女も媚肉を一際強く震わせた。 ]

 

 

  ……ッは、 なか、…あつ、ぃ……


[ 額に落とされた口付けを、
  終わりの合図──だと受け取っては、息を吐く。
  中に出すのを許してしまったけれども
  一回だけなら大丈夫か、…と目を閉じようとして。
  再び熱が、明らかな意思を持って動き始める。 ]


  ぇ、や、……まって、
  すこしやすませて…………ッ


[ 今は無理だと首を振っても、どうにか腕を動かしても
  些細な抵抗にさえなりはしない。
  何の躊躇いもなく再び中へ注がれる彼の種を受け止め、
  快楽にはらはらと涙を流して。 ]

 

 

[ やがて啼くことも出来ない程に疲れ果て、
  胎に白濁がすっかり満ちてしまった頃。
  体を震わせながら、女はようやく意識を飛ばし
  シーツへその身を沈ませた。 ** ]


 

【人】 大富豪 シメオン

─ とある男の話 ─

[剣王シメオンの最も優れた能力スキルとは何か。
男と共に『北の勇者』と呼ばれた者たちは口を揃えてこう言う。

「瞬時に本質を見抜く力」

と。
敵の弱点を即座に見抜き、敵の意図を瞬時に判断する。
その力こそが剣王の持つ最たる能力、彼らはそれを『心眼』と呼んだ。

ラ・コスタへ移住してより、その力は『美』に対して向けられた。
才能豊かな、しかし伸び切れない眠れる『美』を見出しては、彼らの飛躍に必要なものを与え、世に送り出した。

端役で燻るダンサーはそれによってプリマバレリーナとなった。
場末で小銭を稼いでいた歌い手は大劇団のプリマドンナとなった。
路上で似顔絵を描いていた者は流行りの画家となり、土産物の工芸品を作っていた者は街を代表する工芸家として名を馳せた。

シメオンによって見出され『美』の担い手として有名になった者は数多い。]
(48) 2022/11/30(Wed) 17:07:08

【人】 大富豪 シメオン

[だが、男は余りにも『美』に偏っていた。
ただ一瞬の輝きのために破滅に追いやられた者もやはりら数多くいた。
『美』の頂点に立ち、名を残したからといって本人が幸せだったとは限らない。

その一人が女優のドナータだった。

賢者の求愛を受けた女は幸せの絶頂にあった。
だが、それは賢者の親友に乗っては『美』が失われようとしていると受け止められた。だから、男は手を回した。


 「幸せな結婚生活を続けるには必要なものがある」


男はそう言って女に流行りの歌を聞かせた。
女はそれを大層気に入って愛しい男にそれらを強請った。

男はそれを理解っていた。
賢者が男に何かを借りに来るとを。この街で賢者にはそれを頼める者が男しかいないのだから。]
(49) 2022/11/30(Wed) 17:07:56

【人】 大富豪 シメオン

[男は女の幸せを願っていた。
親友の幸せを願っていた。
ただ、それよりも男には譲れないものがあった。
そらだけのことで、それが全てだった。

ドナータは才能豊かな女優だった。
見目の美しさはもちろん、その演技は見るものを魅了した。
しかし、足りなかったのだ、男には女がもっと輝けることを、もっと美しくなることがわかっていた。

彼女に必要なもの。
男が見抜いたそれは『絶望感』だった。

ドナータの師は彼女を磨いた。
それが間違っていたわけではないが、彼女の『美』の本質は生まれの苦しさからくるものだった。あの頃には戻りたくないと、自分を磨くその想いこそが彼女の『美』の本質。
だが、幸せな日々を過ごす中でそれが曇っていくのを男は見過ごさなかった。見過ごせるわけがなかった。

そしてそれは見事に花開く。
悲劇的な別れ、体を汚され、愛する者を失ったその絶望がドナータをさらに美しく磨き上げた。]
(50) 2022/11/30(Wed) 17:08:51

【人】 大富豪 シメオン

[彼女は自分の幸せと引き換えに『美』の頂点に立った。
しかし、彼女の成功を知るとかつて彼女を弄び汚した男たちが再び女に近づいてきた。
男たちは当時のことをペラペラと女に聞かせた。
どれだけ楽しんだかということ、女もまた男たちに抱かれ快楽に悦んでいたということ、そして、女のもとへ向かわせた者の存在も。

その翌日、男たちの首は街の大通りに晒されていた。

人々は噂する。
彼らはドナータに手を出そうとして、彼女のパトロンが彼らを粛清したのだと。そのパトロンこそが賢者が去ってより彼女を庇護していた男、シメオン・ジョスイであった。

この街で知らない者はいない。
ジョスイの『美』に手を出してタダで済む訳がないことを。
故に、殺された男たちの親たちの辿った道は二つに一つだった。
黙して諦めるか、報復を画して返り討ちにあったか。]
(51) 2022/11/30(Wed) 17:09:56

【人】 大富豪 シメオン

[男はかつての親友に向けて呟いた。
 

 「甘いんだよお前は。
  敵は徹底して滅ぼさなければならない。
  俺たちは、北で身をもって知ったはずだ。」


結局、その出来事でシメオン・ジョスイが罪に問われることはなく、そのことがこの男にとっての伝説の一端となった。

そんな街の出来事を他所に、ドナータはただただ堕ちていき、男はそんな女を見て、その醜さに苦虫を噛み潰したような顔をしていたという。*]
(52) 2022/11/30(Wed) 17:12:22

【人】 「怪人」 ファントム

―全てが終わって―


すっかり脱力してしまった彼女の身体を、抱き留めていた腕から離して、ゆっくりとベッドへ横たえる。
――もし、今の彼女を見てこのまま行為を続ける事を考える者もいるのかもしれないが、生憎自分はそこまで貪欲になれるタイプではない。
そっと腰を抜いて、一通り彼女の衣服を整える。

「――彼女を頼んでもいいかな?
貴方になら、任せられる。」

屋敷で仕えている魂の1人へと、彼女を託した。
リリーは彼女を知らないが、彼女はリリーを知っている。
何せリリーはイルムヒルトの友人だ、彼女が邪険にするはずはない。
――リリーは、もしかしたら彼女にイルムヒルトの事を聞かれるかもしれないが。

「おやすみ、私の舞姫。」

再び、その額に口づけを落とす。
自由を得た彼女が、より美しい舞を魅せてくれる事を願いながら。*
(53) 2022/11/30(Wed) 19:23:06
男はリュディガーの言に瞼を瞑り、理解できぬことを把握すると瞼を開き男が齎す『美』に染まっていく肢体を眺めた。
ヒトにはそれぞれ『美』への感受性があり男とリュディガーの感受性は違うということだけは理解した。
即ち、俺の『美』もお前の『美』もALLOK.であり理解できないが否定する必要もないので両者共存という多様性を選択するが互いに平行線を辿って交わらないという意味でもある]


そうか、お前が良いならそれで良い。


[その言葉が全てである。
『美』に対する想いはヒトの数だけ存在する。
そんなことも挫けずに走り続けていたならば覚えなかったことだろう。

ずっと離れないようだが風呂やトイレはどうするのだろうか。
今尋ねても色良い返答が得られてしまいそうなので後日素面になった際に問いただすことにしよう]

……ふぅ、甘い声が増えてきたな。
深いのが欲しかったんだろう?
まったく……これは本能か。


[腰に絡みつけてくる脚、その太腿に触れると内側を擽るように指を這わせる。
膝から順に股まで触れた指先は秘芽を捉え親指で圧する。
同時に魔羅を胎の奥底へ押し当てると共に同種の振動を加えていった。
初めてなのだから秘芽の方が感じ易いだろうが同種の快楽を加えることで胎奥や蜜道でも快楽を感じてしまうように変えてしまう。

奥でイけるようになればどのような淫『美』な表情を見せてくれるのか。
男は『美』の行きつく先をリアルタイムで見つめながら、何度でもすきなだけくれるという言葉だけはそのまま受け取り、果ててしまうまで魔羅を大きく動かすことなく快楽を覚え込ませにかかった**]


おれ、も、お前が、いぃなら、いいよ……

[ 元より理解は求めていない。ただの自己満足とエゴである。何を投げても届かない事は、前提とした上で

ただ、隣に置いてくれれば、それでいい。

ずっと離れない、というのは「施術行為」が終わった後も翌日以降もここに通い詰めて、邪険にされようが気にせずいるつもりである、の意であった。

今後、また「施術行為」をするかは不明である。
他では満足出来ないだろうし、他の男とする気も無いけど。
]

お、おま、え、にしか、しないしっ……
……んっ…… ぁ、 ひゃ……

[ 指摘されると少し恥ずかしくなる。もっと恥ずかしい事はたくさん言ってるけど。

太腿から性器まで伝わされた快楽は、確実に己を蝕んでは幾度となく上へ果てるまで向かわされる。こんなの何度もされたらしんじゃいそう、だけど。スカリーにだったらいいか、も思ってしまう。

手遅れだ。]


……ほしい、よ……おまえの、ぜんぶ。



[この場で言っても睦言程度に捉えられるだろうから呟く。本当に文字通り、彼の全てが欲しいと請うてしかたないのだが、実現できるだけの身分ではあるものの強引に囲い込んだりはしたくないし男の自由意志は尊重したいのである。

おれがお前に向けてる感情が否定されない限りはずっと。]**

【人】 人造生物 ユスターシュ

―― 影街にて ――

[店主さんに礼を言って店を出た後、
夜も更けてより一層人気の絶えた影街の通りを歩いていたときだった。

不意に目の前を白い人影が通り過ぎていく。
ふらふらと彷徨うように歩みを進めるその女からは余りにも生気を感じなくて。一瞬、幽鬼の類かと思ってしまった。
ぼろぼろのショールやスカートから覗くやせ細った手足や
ぼさぼさの長い髪も相まっていっそう不気味に思えたけれど。

その姿以上に驚いたのは]


『―――Something old,something new,

   (なにかひとつ古いもの、なにかひとつ新しいもの)

 ―――Something borrowed,something blue,

   (なにかひとつ借りたもの、なにかひとつ青いもの)』


[その幽鬼のような女が口ずさむ歌に覚えがあったから。]
(54) 2022/11/30(Wed) 20:41:40

【人】 人造生物 ユスターシュ



――…待って!待ってください!!


[咄嗟に女に声をかける。
その声が聞こえたか、暗闇にぼぅと白く浮かぶ女の顔が
ゆっくりと此方を振り向いた。]


『…ユ……シュ……』

え…?

『ユスターシュ…!』


[名前を呼ぶのと同時に、女は此方に駆け寄って僕に縋りつく。そのやせ細った腕の何処にそんな力があるのかと思うくらい、強く強くしがみつかれて]
(55) 2022/11/30(Wed) 20:42:30

【人】 人造生物 ユスターシュ



『ごめんなさい…ごめんなさい……!!
ずっと謝りたかった、貴方に謝りたかった!!
愛してたのに!愛して、いたのに……!!』


[影街の暗夜の通りに、ただ女の啜り泣きが響く。
僕に縋りつきながら譫言のように綴られる声にはもはや正気の色はない。

ただ、悲嘆と悔恨が入り混じった泣き声に、僕は身動きが取れなくなってしまった。]


……貴方は…。


[こんなことって、あるんだろうか。

もしかしたら、と思うことはあった。
この街にくれば会えるかもしれないと。
会ってみたいと思うことは確かにあったけれど…でも、本当は怖かった。

主様を裏切り、陥れたという彼女に出会ってしまったら
あのときのような黒い気持ちに飲み込まれてしまいそうで恐ろしかった。
今度こそ、主様の望んだような生き物になってしまいそうで苦しかった。
だから、心のどこかで彼女や、彼のことを考えないようにしていた。]
(56) 2022/11/30(Wed) 20:43:37

【人】 人造生物 ユスターシュ

[だけど、目の前の女が僕を見て、主様の名前を呼んで。
そして、口にしたのは謝罪だった。
…訳が、わからなかった。

とはいえ、このままじっとしているわけにもいかなくて。
少し思案した後、しがみつく彼女をどうにか制して
影街近くの移住区にある安宿に滑り込む。

その安宿の主人と思しき老人は、ちらりと僕と女を一瞥した後、
手にしていた新聞に視線を戻して、一言呟いた]


『その女はやめとけ。
どの途長くは持たないし、面倒なことになるだけだ』


[どういうことかと問いかければ。
嘆息と共に老人は女の素性について教えてくれた。

女が嘗てはこの街一番の劇場の花形女優だったこと。
男絡みのトラブルがきっかけで酒と薬に溺れ、パトロンだった男からも見放されて影街にやってきたこと。
此処に流れてきたときには既に病に犯されていて、もう長くは持たないこと。それでも時々体調が良い時は昼夜問わず歌いながら辺りを徘徊しているのだ、と。]
(57) 2022/11/30(Wed) 20:44:11

【人】 人造生物 ユスターシュ

[結局、その夜は老人の宿に一泊させてもらうことになった。
そうして翌朝、老人に教えられた女の家へと向かう。

荒れ果てた小屋のようなその家には、藁を敷いたベッドの外には家具らしい家具も殆どなくて。これが、嘗てこの街一の花形と謳われた女性のものかと、なんとも言えない気持ちになる。

そっと彼女をベッドに寝かしつけたところで、ふとベッドの下に何か箱のようなものが隠されていることに気づく。
手を伸ばした先にあったのは、部屋に似つかわしくない上質な造りの、やや大きめの宝石箱。
ベッドで眠る彼女の顔をそっと一瞥してから、鍵のかけられていないそれを開けてみた。

…中に入れられていたのは、小さな銀貨と青い石の嵌められた白金の指輪。
美しい刺繍の施されたやや古い絹のハンカチ、銀と真珠のブレスレット。
少し無骨なピン留めと―――やや分厚めの封筒。
封筒の中に入っていたのは、束の間、正気を得たときに書かれたものだろう、女の絶望が綴られた手紙だった。>>50>>51]
(58) 2022/11/30(Wed) 20:46:55

【人】 人造生物 ユスターシュ

[手紙を読み終えたとき。
…確かに、悲しくはあったのだけど。
でも、それ以上に胸に去来したのは安堵だった。


――…よかった。
主様は裏切られていなかった。
一人ぼっちではなかった。
……主様の大事な人を、殺さなくて本当によかった。


主様たちに、思うところがないわけではない。
それでも、今はただ。
ベッドで寝息を立てる彼女に寄り添うことを選んだ。]
(59) 2022/11/30(Wed) 20:47:59

【人】 人造生物 ユスターシュ

[それから一週間。
僕は彼女の傍に寄り添った。

店主さんに貰ったお金を遣り繰りして、パンや生活に必要な品物を買い揃える。
それでも足りなければ主様の地下室から持ち出した宝石類を売りに出して。

部屋を掃除して、清潔なシーツをベッドに敷いて。
なんとか食べられるものを作って匙で掬っては彼女の口に運ぶ。

僕と出逢ってから、彼女は見る見るうちに弱っていった。
一度ベッドに寝かせて以降、彼女はベッドから起き上がれなくなっていた。
立ち上がることも、身体を起こすこともできないまま、ただ、ぼんやりと歌を唄って、主様の名前を呼んで何かを思い出したように微笑うだけ。

あの夜、主様と同じ顔を見て、謝罪を口にして。
そうして、心残りが消えて安堵してしまったのかもしれない。
…そう思うのは、僕の命も決して長くはないからか。



彼女と出会って、一週間経った日の午後。
彼女…ドナータは、自室のベッドの上で眠るように亡くなった。]
(60) 2022/11/30(Wed) 20:49:50