【人】 住職 チグサ── 夜明け前 『慈厳寺』にて ── [外に一歩踏み出すと、銀に冷えた風と共に、宵っ張りの虫の声に包まれました。 東の空は僅かに白んではいても、天空にはまだ星々が息づいておられます。この頃はずいぶんと夜明けが遠くなったものです。 しかし、お寺の朝とは得てして早いもの。修行僧たちは起き出して、まだほの暗い寺に灯を灯し、朝餉前の作務に精を出しておられました。 あるいは掃除に。あるいは料理に。 広い境内をひと歩きし、僧の修行を見て回り、望ましくない行いを細かく指摘していくのが、私の朝のお勤めです。老いて節々が痛くなった体とともに、私は歩き回りました。] (8) 2022/11/04(Fri) 6:52:26 |