【人】 凍剣士 スピカ―幕間 つまらない話― 聞いたところでなんてことは無い、つまらない話ですよ。 [ある時、何故そこまで人に無関心なのかと問われて、言葉を返す。] 俺は元々孤児でしてね。 物心ついた時には、物盗りの真似事をして生きていたんですよ。 当然、そんなヤツが他人と堂々と関われるわけもなく、街の片隅に隠れて生きていました。 人と会話することすら、希でしたね。 ――そんな折です。 俺を引き取ってくれる、という人が現れました。 貧乏でちっぽけな教会の牧師でしてね、それなのに俺と似たような境遇の子供たちを大勢受け入れていたんです。 俺が冒険者を志したのはその頃からですね。 冒険そのものには大して興味はないんですが、身分に関係なく、腕さえ立つなら高額の報酬を受けることが出来る。 そうすれば、まだ教会にいる弟分たちを養うことが出来る。 牧師は最初受け取ろうとしませんでしたが、「子供たちを助ける一助にしてほしい」と言ったら、しぶしぶ受け取ってくれました。 俺が「報酬が減る」と言ってパーティを組まないのは、そういう事です。 全くと言うわけではありませんがね。 難しい依頼や、分割しても十分な報酬の場合はパーティを誘うこともある。 けれど、俺一人で十分なら俺一人の方がいいです。 (16) 2021/04/29(Thu) 0:43:21 |