人狼物語 三日月国

45 【R18】雲を泳ぐラッコ


【人】 アジダル



 [ 次に眼を開いた時、その部屋の中は
  静まり返ったダンスホールだった。

  熊を追いかけて辿り着いた森の奥、
  カスタネットを鳴らし合って踊り狂った彼らは
  やがて疲れ果てて朝露の中に伏せていた。

  しとどに濡れた黒衣より
  したたり落ちる温い赤滴。

  嗅ぎ慣れた硝煙の香りに眼を見開いて
  強烈な既視感に襲われて、

  背中を引いていた筈の重力が突然下に落ち、
  強烈な眩暈に額を押さえて踏鞴を踏んだ。


  ……その背中に声がかけられることを知っている気がする。
  揶揄いの主は自分と違って汚れの一つもなく、
  文句を言うはずだった唇を閉ざすしかないのだと、
  知っている、気がした。
  

──これは制圧の日だ。 
]

  
(23) 2020/09/30(Wed) 6:07:31