【人】 風紀委員 普川 尚久>>47 >>48 >>a42 柏倉 「こんな所だから、こそだろ。 まさかキラキラ輝く場所で未来なんて俺達が語れるか? ちなみにお答えはその通り。偏差値なんて大した事ねぇよ。 礼すら伝えたい奴に伝えられないこの異能に比べりゃ、さ。 教育だったけど合わせるわ。薬学部で教員免許取るかぁ」 単調に繰り返される波の音は、癒しとは程遠い騒がしさを宿す。 灰の潮騒。その気取らなささが見える現実と被さる。重なる。 架空作品の様に、海と世界の広さを重ね、精神を持ち治す。 そんなのは俺達は無縁の気質だったから、 だからあの頃、ここに来た。何をしていたかと言うと── 「っと、 ……めずらし、 っめたッッ!!」 ズボンを捲って浸した足に容赦なく襲い掛かる海水の冷たさ。 あの頃と同じく、死ぬつもりなんてまるでないけれど、その沈むような暗く重い冷たさに足で触れて、全部バカバカしくなって、 “美しい”じゃなくて、“くだらない”と吐き捨て笑う。 何かが変わっても、結局その感性や海は変わらない。 停滞の海を見て諦観をしつつ歩みを止めないのも変わらない。 ただ、あの時と一つ違うとしたら。 ひたすら人に触れたがらないこの男が自ら触れることと、 何も言ってすらないのに、自ら手を引いてきたこと。 それに礼を言うのもおかしな話だから、重なりに力を込めた。 (49) 2021/11/10(Wed) 17:25:28 |