人狼物語 三日月国

184 【R-18G】ヴンダーカンマーの狂馨


【人】 住職 チグサ

── 夜明け 慈厳寺 梵鐘にて ──

[僧が撞木を打ち付けると、梵鐘が震えました。
 体に染み入るような音が、朝の清涼な空気に広がります。
 大きな梵鐘を鳴らすためには、それだけ重たい材木を使わねばなりません。
 撞木から吊り下がる太縄は重みに軋み、その縄を握る修行僧もまた、歯を食いしばっています。
これもまた、修行の一つ。

 昔、今ほど技術が発達していなかった頃は、お寺の鐘が時計がわりでした。
 今では時刻が知りたければ魔法具があります。
 いつでも好きな時に、より正確な時刻が知れます。
 時計は寺の鐘などよりもよっぽど便利です。
 ただ時刻を知りたいだけなら。

 それでもお寺は昔と変わらず、日に三度の鐘をつきます。重く、辛い思いをしながら、人力で鐘を鳴らします。
 朝に、昼に、そして夕に。時報として。
 島に住む人々に向けて。島を訪れる人々に向けて。]
(49) 2022/11/05(Sat) 6:41:09