【人】 警備員 ジュード[粘液に塗れた男の衣服や髪には 幸い、火が付く事はなかったが、 炙られ気化する毒は 青酸と泥炭の混じったような匂いを伴う。 それは致死的な気体ではないが、 頭痛や吐き気を誘引するには十分な毒素だろう。 ……どれだけ、状況を悪化させた後だろうか。 男はゆっくりと立ち上がり、 今度は走る事はなく、緩慢な足取りで 更に北を目指し始める。 何かを壊した子が、肉親に慰めを求めるように、 縋るもの、安心できるものをもとめて 『兄』を収めた水晶宮へと。*] (80) 2022/11/12(Sat) 23:58:15 |