【人】 落星 クロウリー[望みは叶えられた。彼に、許されたからだ。 奥底の意図を考えずいられないような優しさの中に 本物の機嫌の良さがあった、のだろうか。 今やその手に縋る以外の選択肢を失った幼い私が、 欲するままに命を続ける為には 悪魔の感情の在り方こそが第一となる予感がこの時既にしていた。 それは父と二人で生活した日々よりも、ずっと重大な意味を持って。] 「……インタリオ様」 [命じられたままに口にし、数度瞬きを早めた。 人の名前としては慣れない響きを持っている。 何もかもから見捨てられた夜闇で、彼と出会ってからの 一生分の人生の動きを激流として受け止めたような時間の中。 己の身体を蝕んでいたもののことも、既に頭にない子供では 悪魔なのだから当然なのかもしれない、と。この時は思うばかりで。] (91) 2022/05/24(Tue) 2:32:07 |