【人】 警備員 ジュード── 夕方:北西の路地にて ── [深まる狂気と共に、夜の帳は降りて来る。 陽が落ちる前から暗かった路地は更に黒を増し、 足元に何が落ちているのかさえ不明瞭にしていた。 先刻墜落した娘の身体>>27は 彼女の飛び降りた家の家主らしい 壮年の男によって家の中へと連れ戻され。 血痕を残して、路地からは消えていた。 そうして一人と一つの帰った家からは、 ひっきりなしに厭らしい罵倒と なにかを打ち付けるような音、歪な喘ぎが響くから、 近くの木箱の山に頭から潜り込んでいる男は、 この場も落ち着ける場所ではないのだと理解する。 奇妙な情事の音の響く空間は平穏とは言い難く、 まして此処は路地の片隅。人が通る可能性がある限り、 安寧は簡単に崩れうるものだった。] (95) 2022/11/09(Wed) 10:31:46 |