![]() | 【人】 XIV『節制』 シトラ[ 道を敷かれ 手を引かれてばかりだったわたしが 自分の足で一歩を踏み出すのには それこそ崖から飛び降りるくらいの、覚悟と勇気が必要で ] わ、わた、し [ けれど彼女はただじっと、わたしの わたし自身の導き出す答えを待ってくれていた。 目元の涙を袖で拭って、深く息を吸い込んだ。 高原のつめたい空気と、 枯草と花と獣のにおいが肺を満たした。 おずおずと、首を伸ばして 天を仰げばどこまでも高い青空。 雄大な山麓の頂上をかすかに覆う雪。 流れ落ちる滝と清流、点々と建てられた家々。 草を食むひつじたちの群れ。 わたしの、生まれた小さな村は たとえ悲しい想い出の方が多くても 言葉には言い表せないくらいに、美しくて ] (423) rinto 2022/12/13(Tue) 0:14:37 |