【秘】 さよなら 御山洗 → 宵闇>>-27 ――まだ、祭りの終わりきらない頃。夢の覚めやらない頃。 少年たちのまばゆい夏が、未来に向けた約束を遂げた頃。 御山洗はまだ家にいて、縁台から花火を見上げていた。 ぱらぱらと降り注ぐ光の帯は夢の中でも美しいもので、きっと、誰かの思い出なのだろう。 こんな田舎で打ち上がるにしては数も多く規模も大きくて、きっと、こんなに裕福なら。 都市開発に負けず、この集落もいつかのままの形で残っていたのかも知れない。 空を彩る花火の音が、細かな音をかき消して。 誰かが訪れたのだということに、未だ気づけずにいた。 見上げる顔は色とりどりの花に照らされて、目に七色が映り込んでいる。 (-28) redhaguki 2021/08/19(Thu) 20:51:10 |