人狼物語 三日月国


167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】

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視点:


【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ

少年が他者の名を呼ぶことは少ない。
客の名前なんかいちいち知りやしないし、それよりもずっと近しいあなたの名前さえ、碌に口にしやしない。
そういう習慣がついていないことがひとつ。
呼べば振り返らせてしまうと知ったことが、もうひとつ。
――それでも今、確かにあなたを呼んだ。

「メシだけじゃなくて」
「ヒトのことばっかじゃなくて、自分のことも愛してさ」
「ヒトからちゃんと愛されろって言ってんの」

あんたはそうできる場所にいるだろ――と。
呆れたような声音は、暗にそう告げている。
あなたのことをよく知りもしないくせ、子供らしい無責任さで。無鉄砲さで。
ウインナーをかじる。翠の視線があなたをちらと見上げる。

「……やっぱこっちと換える?」
(-36) beni 2022/08/24(Wed) 13:26:46

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 坑道の金糸雀 ビアンカ

あなたが止まれば、少年は一歩、前に出て。
その拍子につんと手が引かれ、振り返る。

「……そりゃそうだ」
「おれみたいなガキがいるにはさ、」

「――あんたはちょっと、キレイすぎる」

それは聞き飽きた賛辞だろう。
あなたはもっと美しい言葉をかけられてきただろう。
それでも、口の巧くない少年は、嘘のつけない少年は。
心からそう思って。
さざなみのようにかすかに、繋いだ手が揺れる。

狭い部屋の隅っこ。
毛布と本のある寝床。
きっと自由からは程遠く、けれど確かに、あたたかい場所。
――家へ帰ろう。

(-40) beni 2022/08/24(Wed) 14:09:27

【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 坑道の金糸雀 ビアンカ

「なんだよそれ」
「そういうのは、おれが言う方だろ」

かえるかえりたい場所をくれて、ありがとう」



少年はさみしさを知った。
(-41) beni 2022/08/24(Wed) 14:10:20
ヴェルデは、だから、やっぱり、幸せだったのだ。
(c17) beni 2022/08/24(Wed) 14:15:11

【秘】 いつかの夢 ヴェルデ → 坑道の金糸雀 ビアンカ


もしも、こんな状況でなかったら。
もしも、明日も明後日もその先も、未来があったなら。

少年はいつかのあなたが言った通りに、他の仕事ができるようになろうと努めただろう。
お節介焼きのだれかさんに借りを作って、真っ当な教育を受けようとしただろう。
過去より架せられた苦痛呪いを手放して、ほかの道へと目を向けただろう。
それは浅慮な子供らしい、想像力を欠いた夢。
困難を知らずに語られた無謀な言葉。

けれど確かに、自らの意思で。
呪縛でなく、義務でなく、強制でもなく。
十年後もこの手を、握っていたかった。



――――それは、ここにはなかった、もしもの話。

(-42) beni 2022/08/24(Wed) 14:15:49

【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ

「……そ」

あなたがそう言うのなら、少年にはこれ以上、重ねられる言葉はない。
口が巧くはないのだ。
それに何より、元よりそこにないものを欠けていると認識することはむずかしい。
少年自身だって、そうなのだ。
それでも今、差し出そうとしている気持ちなにかが届いたらと。
それは、ほんのささやかな我儘だ。

「無理に食べるのもかっこよくはないだろ」
「じゃあ、ええと――おれが」
「おれがほしいから、ちょうだい」
(-74) beni 2022/08/24(Wed) 19:47:59