人狼物語 三日月国


29 【2IDソロル+ペア混合】交換日記【完全RP村】

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到着:軍医 ルーク

【人】 軍医 ルーク



 “天”の向こうには世界があるのだと、父は言った。
 誰が聞いても鼻で笑うような、そんな御伽噺を、
 まるで夢みる価値のある夢だと思わせるほどに、
 熱のこもった口調で。
 子どもに聞かせる与太話にしては、
 やけに真剣な眼差しで。

 あの酒飲みでくそったれなロクデナシの記憶は、
 いっそ脳にエタノールを流し込んで
 きれいさっぱり消毒してしまいたいけれど、
 生憎、手前はこれでも医者だから、
 それをしたらさすがに死ぬことくらいは知っている。

 それでも自分は医者だから、
 やろうと思えばやれるんじゃないかと、時折思う。

 けれど、もしそうしたとしても――…
 
 あのろくでなしの語った、天の上の与太話のことは、
 この躰の脳とは別の部位に、
 うっかり深く刻み込まれすぎてしまって、
 何を流し込んだところで、消えてくれはしないんだろう。

(6) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:03:50

【人】 軍医 ルーク


 だから時折、手を伸ばしてみる。
 当然のこと、天には届きやしない。
 けれど、もし、
 “十分に準備をして何か道具を使うなら、
  届くことも、触れることも、上っていくことも出来る”。
 天というのは、そういうものだ。

 ――何故なら、それはただの岩なのだから。

 さあ、その向こうには何がある?
 あのくそったれはなんていったと思う?

 
『どれだけ手を伸ばしたって、
  決して触れることが出来ないものがある』
のだと。
(7) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:05:14

【人】 軍医 ルーク

  ―― 
前線基地・外壁
 ――

[ 基地の周りをぐるりと取り囲み、
 高く高く張り巡らされた壁面の上に、
 一つの人影がある。

 針金のようなその人影は、
 爆風の一つも食らおうものなら吹き飛ばされそうに
 ひょろりと頼りなく、細い。

 全身真っ黒なローブに身を包み、
 “上”に向かって手を翳すような、そんな仕草をする。
 けれど、直ぐに手を下ろし、前方へと視線を延べて、
 壁面の上にただじぃっと佇んでいる。]

  
  さて、今日は何がお出ましかな?


[ 飄々と、淡々と――
 その声をどのように受け取るかは、分かれるところだろう。
 高揚しているようでもある、緊張しているようでもある、
 嫌悪しているようでも。
 感情の色の薄い紫の目は、あまりにも平坦すぎて、
 逆にある意味力が強い。
 互いに顔を見合わせてにらみ合ったなら、
 相手の方が気まずくなって目を逸らしてしまうような、
 そんな奇妙な平坦さだ。]
(8) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:07:03

【人】 軍医 ルーク

[ フードから覗くその容貌が男性のものに見えるか、
 女性のものに見えるか。
 男性にしては高く、女性にしては柔らかさが足りない声が
 果たしてどちらに聞こえるか。
 それもまた、人によって見方は分かれるようである。
 本人が『ルーク』と名乗るのを聞いて、
 大体の人間が、男か、と判断することになるようだった。


 誰もいない壁面の上、人影はフードを下ろす。
 長く豊かな橙の髪、青白い顔、
 そして頭の上には白い『耳』がある。
 
 ふわふわとした綿のような、削り取った氷の破片のような、
 真っ白で柔らかい、大きな狐耳。
 前方の音に集中して、時折ぴくぴくと動く。]
(9) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:08:31

【人】 軍医 ルーク

[ そうして、上を見上げる。
 見上げた上には当然のように、
『天』
がある。
 それは、硬い岩盤だ。
 この地区の『太陽』の明かりに燦燦と照らされた天蓋は、
 此処からははるかに高く、
 どれだけ手を伸ばしたって届きやしない。

 けれど、地区によっては『天』はここよりはるかに低く、
 地面から天へと壁面が続いている箇所もある。
 そういったところでは、『天』に上っていくことだって、
 そう難しいことじゃないだろう。

 ――より分かりやすい表現をするなら、そう、


  
この世界は“穴蔵”だ。



 穴蔵と言ったって、そんじょそこらの洞穴とはわけが違う。
 自分の視力では、ここからどれだけ目を凝らしても、
 地平壁は見えやしない。
 そして、『天』もまた、
 どこまでも広がる、無限にも等しい世界の蓋だ。]
(10) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:11:11

【人】 軍医 ルーク

[ 穴蔵の天井――『天』は、岩盤だった。
 それは絶対に、確かなことだ。
 けれど、ここ最近、ある
『異変』
が起こった。
 目を凝らし、その『異変』を見上げ――]


   『きゅー』

     ん?


[ 後ろから聞こえてきた鳴き声に、振り返る。
 そこにいたのは、小さい白黒の一匹の丸っこい鳥――
 いや、鳥というにはあまりにもころころふわふわとして、
 手足の短いナニカが一匹。
 そう、いわゆる“ペンギン”だ。
 体つきは成鳥のものより、やや雛に近い。
 そいつは人影に向けて、
 何かを訴えるようにきゅいきゅいと跳ねる]
(11) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:12:39

【人】 軍医 ルーク


  ああ、なんだ君か――
  なんだい? 
  君、こんなところにいたら、
  吹き飛ばされて落ちても知らないよ。
  他の連中と違って君は飛べないのだろう、
  この高さから落ちたら挽肉だ。
  わたしに調理しろと?
  悪いが、君の解剖にはいささかも興味が沸かない。
  いや、そもそも肉になるのかな…?
  ――っと、引っ張るな引っ張るな。


[ 嘴で咥えて必死に引っ張ろうとするそいつは、必死だ。
 何がしたいのか分からず、首を傾げる。
 折しもそのとき、基地内で再びサイレンが鳴った。
 現在の警戒レベルを知らせるその警報は、二音ずつ。
 基地内の平時よりは引き上げられているが、最大警戒ではない。]
(12) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:14:54

【人】 軍医 ルーク


  ほら、鳴ってるだろう、さっさと避難するといいよ。
  

[ 白黒のもふもふは、なぜわからぬ!? とばかりに
 短い手をぱたぱたと羽ばたかせる。
 この警戒レベルなら、恐らく戦闘部隊は通常の出撃態勢を
 取っているはず。
 つまり、総員出撃ではない、
 そこまで危険度は高くない通常の襲撃だ。
 ――とはいえ、それは相対的な比較の話。
 容易い襲撃など、これまで一度たりともなかったのだから。

 出撃した部隊もあれば、守りを固める者たちもいるだろう。
 そして、自分のような非戦闘員は、指揮官以外は、
 ほぼ全員が比較的堅牢な基地内の建物に避難しているはず。
 つまり、この鳥たちも、だ。

 言うことを聞かない白黒の鳥を、むんずと抱え上げる。
 これなら、爆風がここまで来ても飛ばされないだろう。]
(13) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:16:25

【人】 軍医 ルーク


  君、言語機能まで故障してないだろうね?
  本当に解剖されたくなかったら、
  もっと聞き分け良くなりなさい。


[ 鳥はあきらめたように、腕の中できゅー、と鳴いた。
 サイレンは、高く耳に触る、
 けれどもどこか無機質な音を立てて鳴り続ける。

 遥か下、基地の門が開き、兵士たちが出撃していく。
 此方からは向こうがよく見えるけれど、
 向こうからは此方の事なんて見えていないだろう、きっと。
 彼らは、これから戦いに行く。

 ――“天”を見上げる。
 いや、正確には、そこにある明らかなひとつの異変を。
 あまりにも高く遠い、世界の蓋。
 そこにぽっかりと開いた、
『大きな、黒い穴』


 穴の向こうは、何も見えない。
 目にしているだけで吸い込まれて行きそうな、
 そんな錯覚を覚えるほどの、
 あまりにも深く昏い、巨大な穴が、“天”に穿たれている。

 西側の外壁に据え付けられた砲台が、動く。
 数十の砲門が一斉に、穴の方角へと。
 けれども、それで『あれ』を斃しきれた試しなど、
 これまでどれだけあっただろう。]
(14) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:18:06

【人】 軍医 ルーク

[ 出撃部隊が配置につく。
 腕の中で、鳥が不安げな鳴き声をきゅう、と上げた。
 不安なら中で大人しくしていればいいだろうに――と、
 そう言いかけるけれど、もう遅い。
 
 風のない世界に、風が吹く。
 天に空いた黒穴から、『それ』が降って来る。
 目を凝らしてもこの距離からは細部は見えないが、
 そう、それは逆に――… 
 この距離からも視認できるほどの巨体だということだ。

 この世界に生きるどの生き物よりも遥かに巨大で、
 あるいは建造物と比したほうが早いかもしれない。

 “それ”は、咆哮を上げる。
 幾百もの獣の吼え声のような、
 金属をこすり合わせた叫びのような、ひどく不快な音だ。]
(15) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:19:26

【人】 軍医 ルーク

 


   
天の穴から、死が降りてくる。



                   *
(16) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:20:11
軍医 ルーク(匿名)は、メモを貼った。
zelkova 2020/05/15(Fri) 1:27:34

軍医 ルークは、メモを貼った。
(a1) zelkova 2020/05/15(Fri) 1:28:44

【人】 軍医 ルーク

   ――
“ルーク”
――

[ 東棟、医務室。
 その場所を訪れる者たちの間で囁かれている不文律がある。
 着任したての新兵に、真顔で告げる上官もいるらしい。
 曰く、『葬儀屋がいるときには近づくな』。
 軍医は一人ではない、
 ハズレを引きに行くことは避けろ、ということだ。

 軍医としては不名誉を通り越して致命的な呼称の原因は、
 先ずは身に纏う黒衣のせいでもあるし、
 枚挙に暇がない、ろくでもない噂の数々でもあるだろう。

 藪かというと、決してそうではない。
 むしろその逆、この基地に配属される前は、
 中央で将来を嘱望された研究者であり外科医だった。
 尤も当人、中央にいたころから
 多大に問題のある言動を乱発していたものだから、
 それでも将来を期待されているということは、
 マイナスを補って余りある力量
だけは

 持ち合わせていたわけである。

 さて、そのろくでもない噂の数々というのは、例えば―― ]
(17) zelkova 2020/05/15(Fri) 2:23:31

【人】 軍医 ルーク

[ 違法な研究に手を染めて中央を追放されたとか、
 夜な夜な何かを解剖している高笑いが響くとか、
 患者にひそかに非合法な薬物を投与して
 人体実験を行っているとか、
 出さなくても良い薬を実験のためにわざと飲ませているとか、
 満月の晩に医務室に入ったら生きては出られないとか、
 あのローブの下は自分で自分を改造しているのだとか、
 その結果表情筋も死滅しているのだとか、
 いや、患者の悲鳴を聞いたときにはにやりと笑うのだとか、
 滅多にフードを下ろさないのは
 頭の後ろにも口がある妖怪だからだとか、
 耳も尻尾も二目とみられない有様なのだとか、
 いっそ切り取ってしまったのだとか、
 実はとっくに生き物でもなんでもない義体なのだとか、
 あの顔が笑うのを見た者は呪い殺されるとか、
 医務室の鍵付き戸棚の中は決して開けてはいけない、
 この世界のありとあらゆる毒が収納されているのだとか、
 むしろあの中にあるのは爆発物の類であるとか、
 気分次第で麻酔なしで手術をされるのだとか、
 切られた傷口がそのうち開いて殺されるとか、
 手袋を脱いだ手には絶対に触られるな、
 研究中の細菌に感染するぞ、とか、
 中央にいる頃に確執のあった上官を毒殺しようとしたとか、
 逆に、実は中央からの監視官で、
 兵士たちに内偵のための処置を行っているのだとか、
 だから戸棚の中には内偵文書が収められているのだとか、
 基地内にいるぺんぎんたちを解剖する機会を狙っているとか、
 飲料水のタンクに実験のための毒を流し込んでいるのだと ]
(18) zelkova 2020/05/15(Fri) 2:24:17

【人】 軍医 ルーク

[ か――…

 最後辺りは大喜利の様相を呈していることも否めないが、
 兎も角、はみ出すほどに枚挙に暇がない、というわけだ。
 
 医務室は広い。
 一気に大量の怪我人が運び込まれてくることがあるからだ。
 その場でも相当の処置が出来るよう、設備も整っている。
 勤務は交代制だが、常に一人ないし二人は
 在室することになっている。
 
 そして、どれほど酷いうわさが流れていようと、
 あるいは流されていようと――
 患者は医者を選べない。
 部屋の中にいる黒い奴を見て引き返せるものは、
 時間に融通が利いて、それなりに余裕がある者だ。
 中には、止む無く治療を受けに来る者もいるだろう。]
(19) zelkova 2020/05/15(Fri) 2:25:21

【人】 軍医 ルーク

[ 本人、自分が何を言われていようと気にした様子もなく、
 粗末な木の椅子に腰掛け、微動だにせず医学書を読んでいる。
 時々瞬きを忘れているのに気づいて、瞬きをしたりもする。
 ごくたまに、何が面白いのか、頁を捲ってにやりと笑う。]


   あははは
 

[ 笑い声も妙に平坦だった。
  そのようなわけで、入って来た犬耳の新兵は、

 『失礼しましたー!!』

 と、蒼い顔で踵を返し、
 尻尾を(文字通りに)巻いて、ばたばたと逃げ出していった。
 其方にちらりと視線を遣っては、読書に戻る。

 概ねそれが、医務室の日常だ。]**
(20) zelkova 2020/05/15(Fri) 2:28:37
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a2) zelkova 2020/05/15(Fri) 2:31:19

【人】 軍医 ルーク


  ―― 
父親の話
 ――

[ 物心ついたころには家にはおらず、
 世界中彼方此方を旅してまわっていた研究者の父は、
 良く言えば夢追い人、
 一般的に言えば生活力皆無のロクデナシだった。
 気付けば自分も似たような道を歩んでいたのは、
 果たして奴の影響を受けたのかどうかは知らないが、
 片付けられもせずに積み上げられた本の中で育てば、
 まあ、自然の成り行きではあっただろう。

 ろくに連絡も寄越さなかったそいつが、
 死んだと聞かされたのは、暫く前――
 そう、あの大穴が出来たときのこと。
 穴の調査に赴いて調査拠点に留まっていた父は、
 そこから突如現れた『怪物』に殺害されたのだという。]
(53) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:19:46

【人】 軍医 ルーク

[ 当時の自分も、既に医術の道に踏み込んではいた。
 衝撃を受けるだろうと予測してか、
 遺体の状態について口ごもる父の同僚に、
 いいよ、見る、とだけ告げて安置所に赴いた。
 ぽつんと灯された裸の明かりが、薄暗い安置所を照らす。
 回収された部分だけが入っていた遺体袋は、
 人ひとりが入っているにしては、随分に小さかった。

 ――自分は、きっと平気だったに違いない。
 思い出される自身は、どうしてか、遠い後姿だけれど。]
(54) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:20:01

【人】 軍医 ルーク

[ その拠点に赴いていることは知っていた。
 居所を知らせる手紙なんて寄越しやしなかったけれど、
 父の知り合いが気を使って知らせてくれたのだ。
 まあ、一年か二年はそこに留まるのだろうと思っていた。
 研究のこととなれば寝食を忘れる破天荒のロクデナシは、
 調査拠点でもさぞ持て余されていたに違いない。
 いや、あれはあれで、案外人望もあったようだ。
 情に厚く、人には親身になるたちのようだったから。
 もし何か面白い結果でも得られようものなら、
 同僚や警備員を捕まえて、
 どんちゃん騒ぎの酒盛りでも始めたりだとか。
 ―― 今となっては、想像するのみだ。

 その調査拠点に残っていたものは、
 殆どが死んでしまったのだと聞く。
 早々に避難できたものは、何が起こったかは当然のこと、
 ろくに見てはいなかったようだ。
 少なくとも自分は、何が起こったか、
 何一つ知らされることはなかった。
 ただ、“怪物”が現れたのだと――それだけ。]
(59) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:29:19

【人】 軍医 ルーク

[ 残されたものは、多くはなかった。
 形見の遺品も礫の下に埋もれ、見つかってはいない。
 ただ、身に着けていたものがひとつ。
 白い狐耳の若い女性と、同じ耳の子供が写る写真。
 それだけが、奇跡のように傷一つなく残されていた。
 もう、随分と昔のものだ。

 ああ、そういえば、最近写真なんて撮っちゃいなかった。
 自分でも忘れていたようなそれを、
 そいつが肌身離さず持ち歩いていたのは、
 ひどく意外だった。]
(60) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:30:11

【人】 軍医 ルーク

[ いま、外壁に立ち、天に空いた大穴を見る。
 荒れ果てた地面を見る。

 そこに聊かの感慨もないと言ったら嘘になる。
 けれど、降下してくる怪物をただ真っ直ぐに見据える紫の、
 その奥底に冷たく煮えたぎるものは、
 一言に恨みや恐怖、好奇心と表すには足りない、
 ただまっしぐらに、炎のように燃え盛る、探求心。
 そして――…                 ]
(61) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:30:40

【人】 軍医 ルーク

 
  ―― 
飛べないぺんぎんの話
 ――

[ 基地にはたくさんのペンギンたちがいる。
 いわゆるお手伝い端末というやつで、
 小さな身体でてちてちと歩き回りながら、
 行き会う者たちに人懐っこく挨拶したり、
 業務の『おてつだい』をしたり、
 そこかしこに歩き回っている、白黒のもふい塊だ。

 ちなみに、奴らは一生懸命羽ばたけば飛べる。
 高いところのものを取るときだとか、驚いたときには、
 必死に羽根を動かして高所に飛び乗る姿が、時折見られる。

 大体似たような姿形だが、微妙に個体差はあるようで、
 活発なのもいればおっとりしたやつも、
 真面目なやつも、サボりがちなやつもいる。
 大体の者は彼らの見分けなんてつかないのだが、
 一部には分かっている者もいる。

 自分は後者だ。
 興味のあるなしの問題ではない。
 単に、特徴を見れば見わけがつくというだけだ。]
(62) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:31:38

【人】 軍医 ルーク

[ そのうちの一匹が医務室に担ぎ込まれたのは、
 着任から一週間ほど後のこと。
 どうやら他の連中とは動きが違って、
 手――というか羽根を痛めているのではないかと。]


   わたしは人間の医者なんだが。
   こいつは専門外だ――ばらして調べていいか?


[ 担ぎ込まれたぺんぎんは、じたばたと逃げようとしていた。
 それでもまあ、診るだけは、診た。
 どうやらどこかで強い衝撃を受けたらしく、
 まずは直せるような状態ではないようだった。

 こいつらはこれでも基地の備品扱いだから、
 上官への報告ついでに、言い置いた。
 変わったことがあったときには逐一報告するように、
 着任時に言われていたからだ。
 その時何やら難しい問題に頭を悩ませていたらしい上司は、
 持ち込まれたもふもふ案件に怒鳴り声を上げ、
 不良品ならすぐに捨ててしまえと厳命してきた。
 さー、いえっさー、と棒読みにして、その場を辞す。]
(63) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:32:26

【人】 軍医 ルーク

[ 鳥を小脇にふん捕まえたまま基地を行く。
 抱えられたぺんぎんの、きゅーきゅーという悲痛な叫び声と
 必死の羽ばたきは、
 すれ違った者たち皆の目に入ったことだろう。
 眉を顰める者や、止めようとする者も多かった。

 それがまた、着任早々着々と増え始めていた自分の噂に
 新たな一頁を加えることになったようだが、どうでもよい。
 そういえば、『葬儀屋』と呼ばれ始めたのは、
 ちょうどその頃だったような気もする。 ]
(64) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:34:40

【人】 軍医 ルーク

[ 焼却処分場にぺんぎんを連れ込んで、
 ごみの山の上に下ろしたときには、
 そいつはぷるぷると怯え切った様子で此方を見上げてきた。]


  さて、これでわたしは、君を捨てた。
  命令は完了した。


[ そうして、間をおかずにひょいとそいつを拾い上げ、
 さっさと焼却場を後にする。
 捨てられていたごみを拾ったところで、
 それは個人の勝手というものだ。
 人目のない廊下で、そいつを離す。]
(65) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:35:06

【人】 軍医 ルーク


  他の連中に紛れてしまえば、
  君に気付く上官はいないだろうさ。
  あとは好きにするといいよ。


[ かくして飛べないぺんぎんは、
 何事もなかったかのように基地内に帰還を遂げた――
 はず、だったのだが。
 何故かその日から、東棟の医務室に
 一匹のぺんぎんが入り浸ることとなる。
 人見知りが激しいようで、普段は物陰に隠れていて、
 患者が誰もいないときにはひょっこり顔を出し、
 医務室の主にてちてちと茶など運んできたりする。
 きっと場所が気に入ったのだろうと、放っておくことにした。
 (薬品の入っている棚には、その日のうちに鍵をかけた)

 来訪者があるときにそいつが姿を現すことがあったとしたら、
 それは例えば、余程気を許しただれかが訪れたときのこと。
 そういった相手がいるかどうかは――
 当のぺんぎんや、ぺんぎんと親しいであろう誰か次第。]**
(66) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:36:05
軍医 ルークは、メモを貼った。
(a8) zelkova 2020/05/15(Fri) 13:46:07

【独】 軍医 ルーク

/*

>>ぺんぎんは一匹じゃなくて一羽ですね…<<


次からなおそう…
(-18) zelkova 2020/05/15(Fri) 14:22:59

【独】 軍医 ルーク

/*
相方がもふもふの赤いロップイヤーの耳尻尾かわいすぎて突っ伏している。
うさぎ…うさもふのロップイヤー…(もふー
そして記憶喪失かあ、中の人は全力で構いに突撃しに行きたい好き。
しかしこちらのPCがこんなやつでほんとごめん、
耳尻尾は白くて最高にもふだよ!
(-19) zelkova 2020/05/15(Fri) 14:28:02

【人】 軍医 ルーク

  ―― 
前線基地・外壁上
 ――

[ 出撃した兵士達は散会し、各々の配置につく。
 中の一隊が、前方に突出している。
 あれは、穴から降りてくる怪物の降下位置近くに陣取る
 第一部隊だろう。
 武装に身を固めながら、
 その動きは気を抜けば見失いそうなほどに疾い。
 怪物を間近に相手取る超近接部隊には、
 身体能力に優れているものが多く配属されているのか、
 あるいは、余程よく統率が取れているのか。

 彼らを見下ろす顔に表情はない――はずだ。
 地上の動きに集中していたものだから、
 固唾を飲んで事情を見守る手の中の鳥が、
 不安げにちらりと此方を見上げたことには、
 一向に気付かなかった。]
(82) zelkova 2020/05/15(Fri) 22:25:32

【人】 軍医 ルーク

[ 天の大穴から、“それ”が降りてくる。
 否、“降りてくる”というよりは――
 落下だ、落ちてくる。
 あの距離から落下しては、生き物ならばひとたまりもない。
 けれど、それは、そう
 ――言葉通りの意味で、生き物ではないのだ。
 
 けたたましい吼え声が戦場を劈き、
 『それ』が地面に着地するのと、
 砲門が火を噴くのは同時だった。

 腹の底に響く砲撃音が、耳を聾する。
 矢継ぎ早に放たれた第一陣の砲撃は、
 怪物に、あるいはその周囲に着弾し、
 爆音が轟き、土煙が巻き上がる。

 前線の人影たちは、射線上にはいない。
 砲撃部隊も味方を撃つ様な無様はすまい――という、
 そう簡単な話ではない、
 近接部隊の彼らはあれほど突出し、
 見上げるほどに巨大な怪物と相対しながら、
 同時に、味方の動きを把握しているのだろう。]
(83) zelkova 2020/05/15(Fri) 22:26:15