【人】 水の魔騎士 ユスターシューー放課後/1年の教室ーー 部活動にて学校に居残るのを許される時間もそろそろ終わり。 生徒たちはほとんどが帰宅の路に着いているはずだ。 教室の窓際に佇む彼女の姿を見つけた譲は怪訝そうに眉を潜める。 「ーー姫宮さん」 姫宮千秋は、譲が担任を勤める1-1の生徒だ。 前担任が腰痛悪化の為に入院したのが1ヶ月前、そこから引き継ぐ形になった。 まだ短い期間ではあり、譲は彼女をよく知っているとは言えない。 しかし普段、こんな物憂げな雰囲気を醸し出す生徒ではなかったような。 遅くまで学校に残っている理由はなんだろう。 何か悩みでもあるのだろうか。 ーー譲にとっては教師は、仮初めの姿だ。 しかし場に溶け込まず不自然な振る舞いをすれば正体や目的が露呈する可能性がある。 だから譲は本物の教師として、生徒たちに接している。 今譲の胸に去来しているのは、一人の生徒への純粋な心配であった。 (11) CDlemon 2023/10/12(Thu) 16:40:09 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュゆっくり歩みを進め、彼女に近付く。 教師とはいえ此方は男性だ。 近付きすぎない距離で立ち止まると彼女に柔らかな声で語り掛けた。 「なんだか急に冷えるように なりましたね。 こんな季節を冬隣、と言います。 秋が終わりを告げ、冬が すぐそこまで来ている、という意味です。 ーー寒くないですか?窓際。」 何故残っているのか?などをすぐ問い質すのは避ける。 彼女の部活は確か軽音楽部だったか。 しかしその活動のせいで遅くなったようでもなさそうだ。そうならば部活メンバーと一緒に居ても良かろうに。 窓の外、空は刻々濃い闇が広がっついく。* (12) CDlemon 2023/10/12(Thu) 16:43:51 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュこの世界には、魔法を扱える者は存在しない。 だから酷く物事は原始的であったりもするが、季節の移り変わりなどは美しいと譲は感じていた。 元の世界であれば焔を扱う魔術師が火を起こし寒さなど消し飛ばす。それは便利であるけれど趣はないのだ。 千秋の言葉に頷きながら、彼女が居残る理由についてどう訊ねるか考える。 と、その時ーー 譲は肌で感じ取った。魔力の波動を。誰が放ったものかまではわからないが、しかし間違いなく、この世界の人間ではないだろう。 眉を寄せる。 彼女はこの世界の人間、魔力を感じ得るはずはない。しかし、何故か彼女も屋上の方を見ていた。 勘が鋭いのだろうか。 そんな様子に気を取られ、譲の返事は一拍遅れる。 (22) CDlemon 2023/10/12(Thu) 21:18:55 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ 「ーーええ、そうです。 探し物ですか?良いですよ。 でも、余り遅くならない ように。」 屋上の様子が気になり、何を探しているのかなど訊ねる余裕はない。 ソワソワしながら、譲は踵を返す。 「私も見回りを続けますね。 姫宮さん、それでは。 また明日。」 クラスの生徒であるから、次に逢うのは明日のHRであろう。 譲は急いで教室を後にする。 歩きながら素早く変身を遂げた。 向かうのは勿論、屋上である。 もし敵であるならーー。 ふと、千秋を戦闘に巻き込んでしまわないだろうかと懸念する。 彼女が早く帰宅してくれることを祈りながら、譲は階段を掛け上がった。* (23) CDlemon 2023/10/12(Thu) 21:19:22 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ変身を遂げた譲ーーすなわち、ユスターシュが屋上に到着する。 扉を開け放つと、楽器を手にする髪の長い少女の姿を捉えた。 その背後には虚空が広がっている。 「自分から位置を 教えてくれるとは、親切だな? ついでに宝石の情報も 吐いてくれたら助かるんだが。」 見た目から、先日ユスターシュとベアトリスが捉えた魔法少女の仲間であろうと判断する。 ミュジーク王国の者か。 まだ二人の距離はかなりある。 ユスターシュは戦闘に備え身構えた。* (26) CDlemon 2023/10/12(Thu) 21:22:37 |