はい。　…私でよければ、喜んで。

　　　天鏡鉄道で車掌をしております
　　　トーマスと申します。
　　　此方こそ、…お招きありがとうございます



［掛けていただいたお言葉>>2:-26に
　吟味し選びながら音にする。

　悪く言えば、もどかしく
　良く言えば、落ち着いた印象を受ける
　そんな喋り方で。］
　

　
［業務中なら平常心を保てる筈の
　真っ直ぐな視線に
　照れの混じった笑みで応えつつ、］



　　　お久しぶり、ですね



［表情や仕草、佇まいなどに
　あの日の面影を探してしまう。


　自分は、ここ数年で
　髪に白いものが増えた程度で
　あとは特に何も変わっていないけれど、

　この御方は──……］
　

　


　　　え？　あぁ、ありがとうございます



［考え事をしていたせいと
　乗車賃はすでに頂戴しているのとで
　少し驚いてしまったが

　ほんわり温かさを感じる
　想いの籠もった贈り物>>2:-27が嬉しくて
　つい両手を伸ばし、喜々として受け取ってしまった。


　あの日見た
　好奇心に満ちた
　瞳の、煌めきのような形。>>0:47

　食べてしまうのが惜しいくらいに
　上手く焼けている。］
　

　
［…と、そこに投げかけられた質問。>>2:-27

　僅かに首を傾げ、
　考えてから提案する。］



　　　どうやら中に残っているようですね。
　　　一緒に、探しに行きますか？



［確か、六両目だった筈だ。

　想いの主に呼応して
　飛び出してくるかもしれないし。
　拗ねて隠れたまま…ということもあるが。


　もし万が一、見つからなくとも
　鋏で切った欠片の方は
　機関室で大切に保管しているから
　見せて差し上げることはできる。

　そちらはお返しすることは出来ないけれど…］＊
　

　


［バスケットに
　今いただいたばかりのケーキも一緒に
　そっと入れさせていただいて、
　準備が終われば、列車の中へ。>>-80

　迷うこと無く
　席を選んで座られる様子>>-81に

　　　（あぁ…、確かに
　　　　そこに座っていらっしゃいましたね）

　私の記憶も鮮やかに蘇ってくる。］



　　　　では、失礼して



［業務時間外の気楽さで
　勧められるまま、
　向かい合う座席に腰掛けた。］
　

　
［掌の間には
　受け取ったばかりの温かい紅茶のカップ。
　そこから立ち上る湯気越しに
　貴女の声に耳を傾ける。


　それは…

　車掌冥利に尽きる、
　じん、と胸が熱くなるようなお話で

　安易な言葉で返すのでは
　足りないような
　勿体ないような気がして
　
　ただ、
　柔らかい笑みを浮かべ
　静かに深く頷くことしか出来なかった。］
　

　
［だから、
　貴女からの問い>>-82には
　どう答えようかと少し悩んでしまった。

　記憶にあるのは、七年分。

　この姿ならば、もっと多くの時を
　過ごしていそうなものなのに
　その前には空虚な深淵があるのみで──…］



　　　ええと、そうですね…

　　　ご乗車いただいたお客様との時間は
　　　どれも大切にしています。
　　　お預かりしている
　　　気持ちも、とても特別なものなので…



［ゆっくり答えながら
　なんとなく求められているものとは
　違うような気がして、
　また少し、首を傾げて考える。］
　

　


　　　私にとって、と言うなら
　　　” 今 ”がその時間なのかもしれません。
　
　　　自分のために何かをしたのは
　　　初めてのことなので。

　　　のんびりと
　　　お茶やお話を愉しむこの時間は
　　　この先も私を和ませてくれるような気がします



［ひとこと、ひとこと
　噛みしめるように音にすれば
　今度はきちんと答えられた気がした。］
　

　
［口下手な私が
　こんなに自分のことを話してしまうなんて
　不思議な御方だと思いながら
　柔らかく見つめていると

　貴女の忘れ物が
　嬉しそうに戻って来ていた。>>84


　　　（…よかったですね）


　大切に握りしめてもらった
　気持ちの欠片に>>85
　そっと胸の裡で語りかける。

　この三年間、
　女王としての重圧にも負けず
　過ごされてきたからこその再会に
　目を細めずには居られなかった。］
　

［でも、もし…

　疲れてしまったり
　逃げ出したくなるようなことがあったら

　いや、嬉しくて
　飛び出したくなるような時でも］



　　　また、いつでもご乗車くださいね
　　　お待ちしています



［列車共々、
　大歓迎して駆けることだろう。］**