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【人】 従業員 ルミうん、元気だったよ。 雷恩お兄さんも元気そうでよかった。 送ってくれるのも嬉しい、ありがとう。 "偶然"会ったのがお兄さんで良かったぁ。 [ 仕組んだ必然の再会のもとで、わたしは笑った。 言い分を疑いもしないその善良さに付け入って、 わたしは今から運命を手にする。 二度と忘れられないくらいに痛烈で 一生他の女に移ろえない程の傷痕を残すの。 蜘蛛の糸にかかった蝶の末路、知ってるでしょう? ] (49) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 1:09:51 |
【秘】 従業員 ルミ → 会社員 雷恩[ どいつもこいつも都合よくわたしを消費していく。 短期間でわたしを捨てていく。 他のキャストに指名替えしたあの客も。 金が必要な時だけ呼び寄せてきたあのホストも。 自分は他の男とは違うと言って寄って来た男も。 その優しさや温もりに救われたことは一度もない。 わたしが掬われたのは、お兄さんにだけ。 小さな生き地獄以外の世界を見せてくれた。 ] (-6) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 1:10:12 |
【人】 従業員 ルミ……えっ。 お、おんぶ? い……いいの? 重い……かも、だけど……。 [ てっきり肩を貸すか、腕を掴ませるだとか。 そんな支えを考えていたけれど、 リュックを前で抱えた彼はおんぶをしてくれる気らしい。 しゃがんだ大きな背中に少し動揺して、 それからえい、と身を預ける。 ──今までの彼女にもこんなことをしたのかな。 "女"として見ていれば、おんぶは選ばないかも。 そんな想像と考えがぐるぐる巡って、 回る度に心がちくちくとささくれ立つ。 優しさに喜ぶ自分と、可能性に憤る自分の二律背反。 かさぶたに貴方の温もりという薬を塗る。 ] (50) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 1:10:25 |
【人】 従業員 ルミ実家、出たの。 あの公園がね、ベランダから見えるとこ住んでるんだ。 えっと、まずはこの道真っ直ぐ── [ 公園の近くというわけではない。 上層階からならベランダから遮蔽物なく見下ろせるのだ。 彼の実家からも近すぎない距離に家を借りている。 ここからならおんぶでも五分もかからないだろう。 人気の少ない道を、二人で進む。 ] (51) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 1:10:28 |
【人】 従業員 ルミ[ やがてマンションのエントランス前まで到着すれば、 彼の服をすこし引っ張って意識を向けさせる。 道中ではどんな話をしただろう。 近況報告か、あるいは昔話でも交わしたか。 いずれにせよ、わたしは「あのね」と話を切り出し ] せっかく久しぶりに会えたんだもん。 少し上がっていってほしいなって。 ……だめ、かなぁ? [ すこし弱々しい声音で、わたしは首を傾いだ。 再会をここで終わらせたくないと言うように、 ────或いは蟻地獄の入り口で手招くように。** ] (52) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 1:12:28 |
【人】 会社員 雷恩[いつからだったか、公園に一人でいる女の子を 見かけるようになった。 2歳上の兄が友達と遊ぶようになって、 自分はそれに混ぜて貰えなくなったから周囲を見る 習慣が出来たから気づいたのだろう。 自分よりも随分小さい――小学校入学前に見えた。 そんな小さな女の子が、保護者といるのでもなく 誰かと遊ぶでもなく、ただ、「居る」。] 『なーなー、アイス食う?』 [最初に話しかけたのは、兄と食べていた時の癖でつい買った 半分に割るタイプのアイスの片割れをあげた時。] 『知らない人にものもらっちゃいけないって 母さんには言われてるけど、俺があげるのはいいよね』 [相手の子にとって自分も「知らない人」なのに。] (53) Ellie 2024/05/06(Mon) 19:48:07 |
【人】 会社員 雷恩[どんなことを話していたか、すべては思い出せない。 ただ、ちょうど遊び相手がいなくて寂しかったから、 自分より小さい女の子に兄貴風を吹かせることで 気持ち好くなっていただけ。 優しさだったかと言われたら首を傾げてしまうが、 与えた側がどんな気持ちでいても、与えられた側が それを優しさと捉えるのなら、そう呼んでも差支えはないのだろう。] (54) Ellie 2024/05/06(Mon) 19:48:55 |
【人】 会社員 雷恩『雨じゃん!傘持ってねーの?!』 [日を重ねれば、彼女が家に帰れない事情があると 子ども心にもわかる。 雨が降った日も、そうではないかと公園に立ち寄って、 濡れている子を見て慌てたっけ。 家に帰ればなんて言えなかった。 強引に手を引いて同じ傘に入れた。 家に連れ帰って] 『母さーん!友達ずぶぬれ!!』 [どこの子かわからずとも、濡れた少女を放っておけない 優しさを持っている母親は、温かい風呂と牛乳を用意してくれた。] (55) Ellie 2024/05/06(Mon) 19:49:17 |
【人】 会社員 雷恩[経験していないことに関する危機感は薄い。 スマホを盗み見ようと思ったことはないし そうしようとした人とつきあったこともない。 指先の動きが数字を打刻する時、視線に気づくことはなかった。] あー、そうだよな、「お兄さん」って 呼ばれてたんだっけ……。 いま聞いたら恥ずいななんか……。 [むず痒い気分になるのは、あの日々以外自分が 「お兄さん」であった時がないからだ。 懐かしさに緩んだ頬が羞恥に染まり、 少しだけ強張る。 「昔の知り合いなんて、お兄さんしかいない」>>46 ああやはり、あの子は「ひとり」だったのか。 友達がいなかった理由は、大人になった今ならば 色々推測することは出来る。 よくここまで生きて来れたものだ。 物理的に守ってくれる相手に恵まれず、 心を護る為に呼べる相手にも恵まれず。] (57) Ellie 2024/05/06(Mon) 19:50:30 |
【人】 会社員 雷恩おーおー元気だよ。 本当、俺で良かったな? 人気のない道端で足挫いたって聞いたら 悪いこと考える奴もいるだろうからな。 [さて、「悪いこと」を考えているのはどちら?] (58) Ellie 2024/05/06(Mon) 19:51:29 |
【人】 会社員 雷恩飲み会の後に酔っ払いを担いだこともあるし、 落とさないから安心していーよ。 [どう見ても軽そうだが、社会人となった男は 女の子に「軽そう」と言うことがセクハラ案件になるという 人権教育研修も受けているので触れない。 女性の身体に触れること自体に対しては 彼女からの依頼ということで大目に見てほしい。] 遠慮して掴むのが弱かったら逆に危ないからな? しっかり捕まってろよ。 [予想通り軽い。 だが、速く動けばスカートが風に舞うかもしれないから 慎重に歩を進める。] (59) Ellie 2024/05/06(Mon) 19:52:15 |
【人】 会社員 雷恩……へえ。 この町は出なかったのか。 [実家を出られて良かったなという言葉は飲み込んだ。 彼女にとって実家は毒だったというのは 自分の推測に過ぎない。 ただ、実家を出られる「力」は得られたのだなと 何となく安堵の溜息を吐いた。] (60) Ellie 2024/05/06(Mon) 19:53:01 |
【人】 会社員 雷恩[マンションまでの道では、会話を途切れさせないように。 もし人とすれ違っても、このおんぶは双方合意の元と わかるようにのリスク回避。 ただ、愚かな男は、背負った軽い身体の中にある リスクには気づかずに、既に彼女が知っている 自分の個人情報を明かしていく。 好きなビールの銘柄、1歳の甥がいること、 実家に買っていくプリンは最寄り駅近くのケーキ屋。 そして着いた場所は、あの頃一人でいた少女の身なりを 思えば意外な程家賃が高そうな。 「カフェ」とはそんなに高給なのか、或いは] (61) Ellie 2024/05/06(Mon) 19:53:45 |
【人】 会社員 雷恩……誰かと住んでたりするんじゃないの? シングル向け物件じゃなさそう。 一人暮らしなら一人暮らしで、 昔の顔なじみだからって簡単に男を部屋に呼ぶのは 危ないよ。 俺が「その気」になったらどうすんの。 [彼女にとって自分はまだ10歳かもしれないが、 自分にとって今の彼女は、背中に当たる柔らかさを持つ「女性」だ。 無理矢理襲ったりはしないと誓って言えるが、 こんなに好意的な態度で来られると、 下心を持たないと言い切れない。] (62) Ellie 2024/05/06(Mon) 19:53:57 |
【人】 会社員 雷恩カフェで働いてるって言ってたよな? 今度、そこに客として行くよ。 どこにある何て店? [この機を据え膳としないだけの理性を見せて、 10歳の頃よりも上手くなった手つきで頭を撫でた。*] (63) Ellie 2024/05/06(Mon) 19:54:26 |
【人】 従業員 ルミえ、 [ 幼い頃の自分は、随分と話下手だったと思う。 家にいてもどこにいても誰かと会話することもなく、 常に下を向いて生きていたから。 だから最初に話しかけられた時も、目を瞬かせて 視線を落ち着きなくうろつかせた記憶がある。 差し出されたアイスの片割れ。 もう二度と元の形には戻れない、分かたれた半分。 ] ……あ、あり、がとう。 ぇと…… る、ルミはね、名前、ルミっていうの……! …………これで、しらないひとじゃなくなるかな……? [ 知らない人に、と彼が呟いたのを聞けば 殆ど反射で自分の名前を口にした。 ] (64) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 21:18:21 |
【人】 従業員 ルミ[ 初めて口にしたアイスは冷たくて、甘くって。 頭がすこし痛む感覚に目を瞠り、 自分より大きなお兄さんが教えてくれた 新しい世界に胸を弾ませた。 それがどんな切欠で生まれたものでも。 そこにどんな理由があったとしても。 わたしが優しいと思えば、それが正しい。 わたしが愛だと思いこめば、それが、 。 ] ( ともだち、 ) [ 家に帰れと言わない彼が好きだった。 びしょ濡れの子どもなんて厄介物件を連れ帰られても、 温かいお風呂と飲み物を用意してくれる彼の母が どうしようもなく羨ましくて、あたたかくて。 ] (65) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 21:18:25 |
【人】 従業員 ルミ……ありがとう、雷恩お兄さん! ともだちって言ってもらえたの、初めて。 あと、お兄さんのお母さんも…ありがとうございます。 めいわくかけて、ごめんなさい……。 [ けれど自分だって、幼いながらに理解していた。 いかにも訳アリと言った風情の子どもとはいえ、 よその家に甘え続けられはしないこと。 笑顔の下が、本当に笑顔とは限らないことも。 もっと、早く大きくなりたいな。 お兄さんの隣に立ってもおかしくないくらいに。 ひとりで自分の面倒をみられるように。 そうすれば、迷惑かけずに一緒にいられるよね? そうなれば、胸を張って好きって言えるかな。 ] (66) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 21:18:30 |
【人】 従業員 ルミねえ、お兄さん。 大きくなったら、もっといっしょにいてくれる? [ きっとそれは、ありふれた子どもの夢見事。 彼の優しさという薬を飲み 彼の温もりという蜜を呑み これが愛だと信じ込んだ幼い子どものよくある話。 ──現実はおとぎ話のように優しくないのに。 ] (67) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 21:18:33 |
【人】 従業員 ルミ[ 年を重ねるごとに二人は大人に近付いて、 日を追うごとにわたしたちの距離は離れていった。 制服を着るお兄さんに「かっこいいね!」と言っても、 公園で話そうとしても、逃げるように去ってしまう。 分かってた。 子どもを家に上げ続けることは出来ないって。 勝手に傷を癒して、勝手に消えていくひどいひと。 どうしてわたしから距離を置くのかすら教えてくれず、 厄介者みたいに話すら切り上げて。 ずっとずっと待ってたよ。 あの公園で、お兄さんが来てくれるのを。 わたし、そんなに簡単に消えてしまえる存在だった? ] (68) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 21:18:37 |
【人】 従業員 ルミそうかなぁ。恥ずかしい? じゃあ、雷恩さんって呼ぼうか? ……わたしが呼び慣れないかもだけど。 [ ああほら、また。 お兄さんだけがわたしとの日々を過去にしてる。 わたしが口にするまで、呼び方すら忘れてたの? 何もかもに心がささくれ立って血を流す。 恥ずかしそうに緩んだ頬すらわたしを刺激して、 声が震えないよう抑え込むのに必死だった。 顔が強張った理由は察せないけれど、 今この場で聞き出そうという気にはならない。 ] (69) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 21:18:42 |
【人】 従業員 ルミあはは。うん、そうだね。 悪いことを考える人もいるんだろうなぁ。 ……ほんと、会えて良かった。 [ だって、悪い人はわたしだから。 ] (70) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 21:18:47 |
【人】 従業員 ルミ[ 社会人が受けるような研修を受けていない女には、 セクハラ案件がどうこうといったことには無知だ。 彼の口から出る言葉たちが、 そういった配慮の元成り立っているのを知らない。 しっかり掴まってろ、という言葉に従って 彼の背中へ身体を預けた。 ] ……ふふ、あったかいね。 [ あの頃と変わらない温もりに頬を緩める。 それから、「町を出なかったのか」と呟く彼に 短く「うん」とだけ答えて。 吐かれた溜息に、ぴく、と肩が揺れた。 ──それがどんな色を孕んでいるか分からなくて。 ] (71) 鬼葉 2024/05/06(Mon) 21:18:54 |