｢ああ、おやおや｣
廊下を掃き掃除していたシェルタンは、廊下にゴミが増えたのを見て、それを片付けただろう。

｢ううん、ごめんね。僕に心当たりはないかな。
けれどまあ、あれだけ君が貼り紙をしていたのだから……善意で、と言うことは無いのだろうね｣
ふむ、と思案。

｢そう問いかけると言うことは、君にも心当たりはないんだね？｣

｢もちろん。力になれるかはわからないが、もしも見つけたら教えよう。シェルタン・マタル・マフフーズは今、お姫様の騎士だからね｣
爪を噛むなとか、そういったことは介護用は絶対に言わない。

｢参考までに、君にとって"絶対にそんなことはしない"と信じられる人がいたら聞かせてくれる？｣
あらぬ疑いをかけたらかわいそうだから、と付け足して。

「交友関係の狭さは僕も人のこと言えないな。まあそれはいいとして。
教えてくれてありがとう、もしもなにかわかったら教えるけれど、期待はしないでおくれよ、お姫様。

それ以外に、なにか手伝えることがあったらいつでも言ってね」

ひょっとしたら温泉でかち合うかもしれないし、かち合わないかもしれない。そんな感じで、シェルタンは男湯で1人、のんびりしている。

「あれ、こっそり置いたのになあ、親切な誰かが教えてくれたのかな。その様子だと、彼は君のお気に召したようだね。
どうかかわいがってあげてね、彼も可愛がられるために生まれたんだから」

「おっとそうだった。まだ掃除の途中だった……可愛らしい姫様にうつつを抜かしてしまったなあ。

犯人探しは機会があれば探りを入れるぐらいにして……いつもどおり過ごそうかな。なんだかみんな、大変そうだけれど。
そうだな……掃除が終わったら、温泉があるらしいから、行ってのんびりしてこようか」

「“介護用”は人の心を埋めるためにできているものさ。

おや？　君もそうなのか。僕は“人”前ではないと屁理屈をこねるつもりでいるけれど。まあその話は良いとしよう。

我儘はいつだって待っているよ。きれいな場所をまた探しておかなければね」
いつものように笑って、あなたを見送るのだろう。