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【秘】 朝日元親 → 朧げな遮光 守屋陽菜先輩の言葉に、ほんの一瞬呆気に取られて。 握り返された手に、熱が籠ったような気がした。 「………バカ言わないでください」 ────本当に、この人は。 そう思うのに、また微笑みを零していた。 「添い寝が許されるのは、子どものうちだけですよ。 それに、僕まで寝てしまって、手が離れたらもしもの時困るでしょう」 市販の異能抑制剤だから、効果が切れるまで長く見ても6時間程度か。 夕方の放送までには安全は確保されそうだけど、それまで僕は油断する気はない。 「……一緒には眠れませんけど、隣には居ますから。 それで勘弁してくれませんかね?」 軽く肩を竦めた僕は、繋いだ手ごと先輩の手を膝に載せる。 少し体をそちらに向ければ、先輩も眠りやすいだろう。 「だから、おやすみなさい。守屋先輩」 僕はまた微笑うと、努めて穏やかにそう言った。 添い寝なんて欲しがる、寂しがり屋の子どもにはそれくらいが丁度いい。 そう、自分に言い聞かせて。 (-25) oO832mk 2021/11/04(Thu) 22:11:15 |
【秘】 朝日元親 → 朧げな遮光 守屋陽菜先輩が眠りについた後。 それを確認した僕は溜息を零す。 「 ……そういう意味じゃないでしょう、子どもって 何処まで本気かわかりやしない。 僕は添い寝もしなければ、寝ている間に悪戯もしない。 ただ他にやることもないものだから、目を閉じて先輩の寝息を聞いていた。 それは久し振りに、とても穏やかな時間だったように思う。 この時間が今ここに存在しているだけで充分だ。 少しずつ嗅覚が戻る。 約束通り、夕方には先輩を起こすだろう。 聞こえた夕方の放送は、日常の香りを纏っていた。 (-44) oO832mk 2021/11/04(Thu) 23:32:46 |
【墓】 朝日元親「…………」 今日も僕は早朝から登校していた。 教室で本を読みながら、朝の放送を聞くと窓の外を見る。 「……」 気のせいか、騒がしい。 3日連続、身の回りで騒動があったんだから流石に何となく想像もつく。 嘆息した僕は、日常って儚いな……なんて柄にもないことを思っていた。 (+16) oO832mk 2021/11/04(Thu) 23:42:54 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優昼休みか、どこかの時間。 僕は数日前に訪れたきりのお昼寝スポットを訪れていた。 ここは静かだから、逃げてきたのかもしれない。 日常の儚さに、何だか嫌気が差していたから。 牛丸さんがいてもいなくても、構いはしなかった。 あの時彼女がそうしていたように、寝転んでいる。 流石に、眠れそうにはなかったけど。 (-49) oO832mk 2021/11/04(Thu) 23:46:05 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「……休み?」 2-Cを訪れた僕は、シオンの欠席を知ることになる。 別に大した用事はないけど。 折角だから連絡先でも交換しようと思った矢先だ。 あの日はそれを思いつく余裕もなかったから。 シオンの学友から、シオンが一人暮らしだと聞いた。 様子見でも、行くか。足を運ぶことにする。 放課後だかどこか、シオンの家を訪れた。 「朝日だけど」 インターホンを鳴らして、応答を待つ。 (-51) oO832mk 2021/11/05(Fri) 0:19:27 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「……………………」 病欠って聞いたんだけどな。 「ハイエナの、はやめてくれないかな。朝日だよ」 男物の制服を着てたし、こいつ男物しか持ってないのか? いやその前にその布はなんだ? いろいろと思うところはあったけど、全て脇に置いて僕は苦言を呈した。 「………何してるの?」 気になるから、聞きはするけど。 (-57) oO832mk 2021/11/05(Fri) 0:33:39 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「異能が変……? いや、ちょっと待って。こんなとこで寝ないで」 大丈夫?なんて気の利いた言葉が出ない辺り、僕の性格だと思う。 崩れ落ちそうなシオンを僕は支える。 ハイエナの前腕は、発達していて力がある。 「取り敢えず布団、運ぶから。 入るよ。いいね?」 (-62) oO832mk 2021/11/05(Fri) 0:43:29 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「…………」 薬。またか……。 ついそんな事を思ってしまったのも仕方がないと思う。 僕はここ数日、それで散々な目に遭いっぱなしだ。 猫背を丸めて肩を貸し、シオンを運ぶ。 発熱した腕に女性らしい柔らかさ。 だからどうということもない。僕の疎さは筋金入りだ。 「取り敢えず、寝て」 布団にシオンを運ぶとそう言って寝かしつける。 あの日と逆だ。 いや、発熱してる分、あの日の僕より酷くないか? 「訪ねたタイミングが本当にまずかったな……。 少し、待ってて。水道借りるよ」 許可が出ても出なくても、拒否されない限り僕はキッチンへ向かう。 ポケットから取り出したハンカチを濡らしてよく絞り、首でも頬でも冷やせとシオンの手に触れさせるだろう。 (-66) oO832mk 2021/11/05(Fri) 1:13:47 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「……牛丸さんか。また君の昼寝の邪魔するね」 目を開く。 前髪の下だから、閉じていたことすら分からなかっただろうけど。 「気に入ったよ。ここは静かだし。 休むのにも考え事するのにも、丁度良い」 だけどここは僕の縄張りというわけじゃない。 どちらかと言うと、牛丸さんの縄張りだ。 (-116) oO832mk 2021/11/05(Fri) 8:26:05 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「それこそ気にしないでいいのに。 昼寝に来たんなら、気にせず寝ていいよ」 転がったままも悪いかな。 体を起こして、そのまままた空を仰ぐ。 「そりゃあ、まあ。 折角の静かな場所だし。 あんまり人が来ると勿体ない」 チチ、とまた鳥が飛んでいく。 それを眺めた僕は、牛丸さんに視線を移した。 「……考え事、してたんだけどさ。 聞いていい? 牛丸さん、自分の異能は好き?」 (-119) oO832mk 2021/11/05(Fri) 9:58:22 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「僕の他にも誰か来た? よかったね。好かれてんだよ、あんた」 まあ良くないだろうけど。 親愛程度の感情で、満足するような奴とも思っていない。 「まあ、僕は例外かな。 流石に目の前で倒れられたら世話を焼かずに居られないだけで。 恩知らずにもなりたくはないしね」 枕元の袋に気付くと中を取り出した。 飲んだ方がいいよ、とはちみつレモンを見せる。 (-120) oO832mk 2021/11/05(Fri) 10:11:36 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「それは健気だね。 期待された分の成果くらいはお見せしたいとこだけど」 まあ、無理だろうな。 僕は特別面白い人間でもないし。 そんな事は自覚もしている。 「考えた事ないくらいが丁度いいのかもしれないけどね。 ……新薬の噂は、知ってる? あれ、噂だけじゃなくて本当に存在しててさ。 最近立て続けにそれ関連の暴走とかに巻き込まれてて。 ────中には自分から飲んだやつも居るんだよ。 バカげてるよね」 自分がそうとは言わなかった。 でも何よりもその言葉は、僕自身に向けられている。 僕が薬を飲んだことなんて、牛丸さんは知らないと思っている。 (-122) oO832mk 2021/11/05(Fri) 10:23:31 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「でも別に嫌われてるわけじゃないだろ。 僕だって、嫌いな奴が熱で寝込んでても────」 世話を焼かないと、言い張れるか? 「……前言撤回。相手によるな」 嘆息しながら、傾くペットボトルを見ていた。 「触れてなくても、見つめてなくても? ……困ったね。それは。 市販の異能抑制剤なら持ってはいるけど」 効くかどうか、と僕は肩を竦める。 色んな人の感情が流れ込んで、きっとシオンの頭の中は地獄の釜のようだろう。 僕の頭の中もいつもそんなもんだから、そう思った。 絶望も希望も諦観も不屈も癒しも痛みも、何もかも全て矛盾しながら僕の中にある。 だから僕は余程でないと表に感情は出さない。出せない。 そして激情なんかより、シオンの中の凪に安らぎを覚えた。 (-126) oO832mk 2021/11/05(Fri) 13:53:08 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「────見ての通り、五体満足してるよ。 怪我はないかな。少なくとも、体には」 頭や心はその限りじゃない。 でも僕は、自分のことを見て見ぬふりするのは得意だった。 傷つこうが苦しもうが、目を向けずに麻酔さえしてしまえば普段と同じだ。 「えらく心配してくれるけどさ。 ……もしかして、牛丸さん、 一昨日、グラウンドに居た? 」あの日のことは覚えてはいる。 ただ興奮状態にあった僕は、自分の周りの数名にしか意識を向けていなかった。 そうでなければ匂いででも気付けただろう。 あのすぐ側に、牛丸さんがいたことくらい。 獣にとって、そう気付くのは造作もないことだった。 (-127) oO832mk 2021/11/05(Fri) 14:03:42 |
【独】 朝日元親一定ラインのとこに基準線があって、その下でどれだけ混沌渦巻いて居ようと見て見ぬふりできる無頓着 ラインを超えたら突然キレた人みたいになる ここまでに超えたライン、 @勢喜暴走時 苛立ち A勢喜命令時 憎しみ B自分暴走時 興奮・嫌い・その他負の感情 C守屋暴走時 怒り D守屋保健室 安らぎ 今少し牛丸で安らぎ得られるかもしれんくらい (-128) oO832mk 2021/11/05(Fri) 14:20:50 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「……そう」 こればっかりは分からないな、と僕は静かに思う。 今共感でもしてもらえれば、その喜びでも分かるのだろうか。 ────分かっても、やっぱり理解出来る気はしなかった。 「でも、分かるよ。 自分の異能が少し違ってたら、って。 そう思うこと、あるよね」 (-157) oO832mk 2021/11/05(Fri) 19:40:11 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「不穏、かな。分からないんだよ。 かなしいかどうか。つらいかどうか。 そんな事考えるより、もっと建設的なことがあるような気さえして」 分からないから前を向く。 見て見ぬふりは意識的に行わずとも身についていた。 僕は、自分のことには酷く 無頓着 だ。「……そう。見てたの。 でも元気でよかったって思ってくれるんだ。 あれだけ人に迷惑かけ続けたのにね、僕」 見て見ぬふりは、ただ事実をありのまま受け止める。 「怖かったでしょ。 近寄らないのは正解だよ。 あの時は、他人を気遣う余裕なんてなかったから」 (-158) oO832mk 2021/11/05(Fri) 19:55:59 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「そりゃそうだね。 結局このクソ異能も僕の一部だし。 無い物ねだりしてないで、精々役立てる方法探すしかないんだと思うよ」 受け売りの言葉を、僕は告げる。 「──ああ、何だっけ。 そうだ、連絡先くらい交換しようと思ったんだっけ」 僕はスマートフォンを取り出す。 部活の連絡と、その他細々とした形でしか使われたことのないメッセージアプリを開いて。 「ついでに見舞いに来た感じ。 迷惑なら、別にいいけど」 (-163) oO832mk 2021/11/05(Fri) 20:42:17 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「……水没。 いや、今どき固定電話とかあるんだ……」 僕の実家はとうの昔に契約を解除していたように思う。 「そっちでもいいけどさ。 でもそれなら、スマホ修理したあとまた交換する方がいいな。それより……」 周囲を見回した。 ピッチャーで麦茶が溢れた後、あるだろうか。 目が覚めた時自分で片付けたのか、こいつ。災難だな……。 (-166) oO832mk 2021/11/05(Fri) 20:54:39 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「……御旗?ああ、仲良いんだっけ?」 よく知らないけど。 何せもともと人と関わるつもりがなかった。 異能がバレた今、その必要もないだけで。 スマホについてはよろしく、とだけ言った。 (-170) oO832mk 2021/11/05(Fri) 21:05:34 |
【秘】 朝日元親 → 俺 シオン・グレイヴズ「……?」 本当に要領を得ない。 まあいいか、と僕は思う。 あんまり関係ない事だし。 「ああ、それじゃあ。ゆっくり休めよ」 急に部屋に来た僕が言うことでもないけど。 まあ、薬の作用ということならそのうち落ち着くんだろう。 ────シオンにとって、それがいい事かはさておき。 そんな事を薄ぼんやりと思いながら、僕はシオンの家を離れていった。 (-172) oO832mk 2021/11/05(Fri) 21:21:03 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「……大事に、か」 嫌いな異能と共にある自分を大事にできる気は余りしない。 ずっとそうだったし、そう簡単に変えられる気もしないと思う。 それにそれ以上に、自分を押し殺して以外の生き方を僕は知らない。 自分のしたいこと、なんて言われても直ぐには思いつかないものだ。 「得られたものなんかないよ。 自棄になってもいい事なんかないな、とは思うけど。 ……って、思ってたんだけどな」 僕は短く息を吐くと、また空を見上げた。 同じ動物なら、鳥になれた方がずっと良かったのに。 「案外さ、僕が思う以上に人は異能で人のことを見ていないんだなって思った。 気味悪いとか、そんな風に思われるとばかり思ってたから」 死肉を漁るハイエナ。 そして、牛丸さんを怖がらせるくらいには、制御を手放すと危険な異能でもある。 それでも誰も、そのようにはしなかった。 異能を隠していてばかりでは、知ることのなかったことだ。 「それにこの異能だから出来ることもある。 クソ喰らえって思うけどね。 でも、使えるものは使ってやらないと」 「……って、ここ数日で。 思うことができるようには、なったかな」 (-180) oO832mk 2021/11/05(Fri) 21:59:08 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「好きなおやつ、ね。やってみてもいい、けと。 特にないんだよね。オススメとかある?」 何せ廃棄パンで食費を浮かせていた僕だ。 ちなみに浮かせた食費は何に使うかも分からない、雑多なジャンルのデザインの本に消えている。 「やっとわかるようになった、って感じかな。 わかる前と後じゃ、大違いだよ」 この異能のことは、好きにはなれない。 それは変わらない。 でも少しくらい、異能と僕が同一でないとは思うことができるようにはなったつもりだ。 「そう思うんなら牛丸さんも薬には気を付けてね。 僕はそう言われても自分で飲んだ馬鹿だけど。 ……どうやら今日も、何だか騒がしいみたいだから」 嘆息した僕は、空を見上げる。 ああいうのは、治験なんかに手を出さずに市販品になってから手を出すくらいで丁度いい気さえした。 青い空を雲が流れていく。 ぼんやりと見つめた僕は、囁かな声で一言だけ漏らした。 「 ……生きていたら、か 」その言葉に、見て見ぬふりの一番底、蓋をするように封じ込めた何かが疼いたような気がした。 (-193) oO832mk 2021/11/05(Fri) 23:14:41 |
【秘】 朝日元親 → 牛丸紗優「 そんなに驚くこと? 牛乳とカステラか……まあ、試してみるよ。 聞いといて試さないのも何だし」 釈然とはしないけど。 残り物、別に美味しくはないから味にこだわりはないんだよね。 「ああ、そう。 それはよかった。僕としては複雑だけどね。 まあ、暴れた甲斐も少しはあったのかな」 反面教師にされた僕は、昨日2回目を口にしたわけだけど。 カッとなると後先考えないんだよね。 「余計な責任なんて、負わない方がいいに決まってるしね」 それでも2回目については後悔していない。 そもそも牛丸さんは、そんなものが存在することだって知らないだろうけど。 「いい事、か。 ……あるといいけど。」 波風立たない平穏な生活が今の僕の望みだ。 それくらいには暫くのことで疲れきった自覚もある。 心休まる場所を見つけられた事は、そんな中でもかなりいい事に近かったけど。 「それなら、まあ。明日を楽しみに、していようかな」 (-205) oO832mk 2021/11/06(Sat) 0:20:33 |
朝日元親は、そう言うならね、と言ってほんの僅かに笑った。 (c31) oO832mk 2021/11/06(Sat) 0:21:44 |
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