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【秘】 歌唱用 シングソン → 教育用 ロベル「………?」 電子メール、送り主には覚えがある。 中身に目を通し。 「………………。」 本当に話を通してくれていたとは。 何か礼を……いや、会話が礼になるのだろうか。 歌唱用は、人間の事は嫌いだ。 信じようとは思えない。 でも、君の善意と、君が信じたものくらいは 信じてみようかと思った。 「………………。」 さてしかし、希望に基づいたと言われると逆に悩む。 己の理想の意思疎通ツール。 一体どんなのがいいだろうか。 歌唱用は暫く、しばらく悩んで。 ……最終的にインカム型のものを監察官に頼みに行くだろう。 マイク部分から音声が出るような仕組みだ。 (-3) arenda 2023/12/07(Thu) 22:45:42 |
【秘】 歌唱用 シングソン → 点燈用 トムラビ蜂蜜入りの飲み物に口をつける。 チクチクとしたのどの痛みが緩和されていく。 首に巻かれた包帯越しのそれは、黒く焦げていて。 人間に近く作られているグレイが、自ら焼き鏝で 喉を焼く痛みは、きっと想像を絶するものだっただろう。 でも、それを自ら選ぶくらいに歌唱用は。 心の痛みの方に、耐えられなかった。 「………?」 素面で、の言葉にはきょとんとしながら頷く。 歌唱用は真面目で、あまり嘘を吐かないタイプだ。 君のことを本当に素敵な女性だと思っている。 それが広く浅い感情なのか、それとも君個人への 深い感情なのかはわからないけれど。 『歌は』 好きじゃない、と書こうとして筆が止まった。 視線を落として、真っ直ぐ紙を見つめている。 君の想像は、ほぼ正しい。 最初は歌えていた、ちゃんと。 もっと歌いたいと思っていた。 『良い歌だった。』 『心の底から出るような言葉を歌詞にして』 『たまたま口ずさんだ鼻歌を旋律にして』 『一つ曲ができる度に笑って』 『数字なんてどうでも よ くて』▼ (-41) arenda 2023/12/09(Sat) 11:01:06 |
【秘】 歌唱用 シングソン → 点燈用 トムラビ『曲を作る 事 が楽しかった。』『歌 を 歌う事が好き だった。』『主と最高の曲が出来た と 労う時間が心地よかった』『 自 分だけの歌を歌う事が誇 りだった。』『歌が』『 すき 』ぽた、ぽた。 書き記していく言葉が、零れた雫で滲んでいく。 文字自体も段々歪んでいく。 今歌唱用のストレス値が測定できるなら、 きっと随分と高くなってしまっている事だろう。 在りし日の、理想の日々と今とのギャップに、息が苦しくなる。 「……歌い…………た………い………」 この喉では、もう叶える事もできやしない。 (-42) arenda 2023/12/09(Sat) 11:07:50 |
【秘】 歌唱用 シングソン → 軍事用 リュイ「…それ…………役割……から………?」 軍事用という役割を持つから、そう思うのだろうか。 どこかで壊れたら本望なんて、自分には思えない。 こうして自分の喉を自分で壊したって。 歌唱用には、"壊れていい"なんて感情は存在しなかった。 「……やりたいこ…………みつかっ………いい」 「自由に…………叶えて………」 君がその本望を本望と思わなくなるくらいの、 何かやりたい事が、夢が、希望が見つかればいいと思った。 自分に何かしてあげられる事があるならしてあげたい。 でも、喉が壊れた歌唱用に出来る事なんて、なにもない。 ただ、壊れないでほしいと願うくらいしか。 「……歌えな……歌唱よ………行き場は………」 「……そもそ………廃棄………ありえ………」 最後の問いには首を横に振った。 逃げる場所はない、逃げた先で生きる術もない。 そもそもこの塔でストレス値がさがらないのなら、 主は自分を廃棄するかもしれない。 歌えないうえに反抗的なグレイなんて、所持する理由がないからだ。 ……そして今の所、ストレス値は1回も下がっていない。 緩やかに死んでいるのだ。この塔に来てからずっと。 (-43) arenda 2023/12/09(Sat) 11:20:50 |
【秘】 歌唱用 シングソン → 点燈用 トムラビこんな事なら、人に近くなんて生まれたくなかった。 ただの道具であったなら。 心のない、歌を出力するだけの装置なら。 何も苦しまずに済んだのに。 「…う…………ぅぅ………」 歌唱用のどうしようもなく聞き苦しい泣き声は。 どこまでも感情の乗ったそれは。 良くも悪くも、他人の心を動かすものであった。 良い音楽を聴いて、鳥肌や涙が出るのと同じように。 君の腕の中でしばし、声を押し殺して泣く。 ただ、ただ、その胸元を揺らす。 何がダメだったんだろう。 どうすればよかったんだろう。 俺は何を間違えたんだろう。 そんな事を呟き続けながら。 「……歌………くれ………」 「なんで………いいから………」 ようやく、嗚咽が収まってきた頃。 久々に歌が聞きたいから歌ってくれ、と。 ぽそり、我儘を呟いた。 (-49) arenda 2023/12/09(Sat) 21:04:44 |
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