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【秘】 抑圧 フィウクス → 雷鳴 バット結局のところ、何かを与え、与えられるよりも。 ただ互いに適切な距離感が保たれていればそれでよかった。 フィウクスという気難し屋はそういう人間だった。 「……そうだろうな。」 子供は育てなきゃよそに悪く言われる。 あなたの口から出るには少し違和感のある言葉。 その理由を知らないなりに考えて、少しだけ眉を顰めた。 「この場所を出る頃には、 俺達は少なくとも子供とは言えない歳だ。 社会に出て、自立して、自分で自分の事に責任を持って そうやって生きていく事を求められ始める歳だ」 「どうすれば外で生きていけるのかなんて、 誰もろくに教えてくれやしないまま」 あからさまな口減らしをすれば角が立つけれど。 こうして確かに治療を試みて、善処して、それでも。 結果的に、社会に適合できなかったとしたら。 それは仕方のない事ということになるから。 仕方のない事ということに、なってしまうんだろう。 (-105) unforg00 2022/05/07(Sat) 22:51:52 |
【秘】 神経過敏 フィウクス → 雷鳴 バット「そんなのは、俺はお断りだ。」 生きていけもしないような苦痛と、 辛うじて生きてはいけるような苦痛と。 今はまだその何れかを選べる。今はまだ後者を選んでいたい。 「何れにしても俺は人混みの中では生きていけない。」 もしもこの場所から飛び立った先にあるものが、 その空気さえもが自分を苛むだけのものだとしたら。 それならここでできる事をしていた方が幾らかマシだと思う。 「だから俺はここに残る事になるんだろう。 来年も、その先も、ずっと。 いつかお前の事を見送るのか、 お前も同じようになるのかは定かじゃないが。」 ここを出て、当て所もなくたって、行ける所までは。 何処かを目指してみようと思えるなら、それで良いのだろう。 自分はそう思えなかった。ただそれだけの話だ。 (-106) unforg00 2022/05/07(Sat) 22:53:03 |
【秘】 ライアー イシュカ → 雷鳴 バット「…………そうかい」 落胆染みた溜息。ここまで言っても答えないという事は 余程話したくない事なのはさすがに教師の適性がない男でも察しが付く。 こっちに寄ってこないままの兎と貴方を交互に見て肩を竦めた。 「これだけ言っとく。 何でお前が飼育委員なのかは知らんし、 大人が決めた事なら僕にもどうこうできないから黙るけどさ」 「"あいつら"が可哀そうって思う事やってんなら、 ……思うようになったら?なのか?まあいいや、止めろよ。 行為でも委員でもどっちでもいいけど」 本当に逃がしてしまって言い淀んでいる可能性も否定できない。 けれど男は貴方についてそこまで詳細に知っている訳でもないから、もしも、の仮定の話でしか伝えられない。 「フィウクスといいさあ…… 何で別に好きでもないのに飼育委員やってんだ」 その分の鍵を僕に回してくれればいいのに、と。 その場にしゃがんでどうにもならない事に悪態を吐いていた。 (-107) poru 2022/05/07(Sat) 23:14:15 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス血の塩気を求めるように舌が動く。 日常から剥離した味を吸い上げる内に次第に、頭ははっきりとして。 ある時やっとはっとしたように目を上げた、けど。 「……」 貴方の手が優しかったから。これでいいのかな、なんて。 受け入れられたのかと状況を違えたまま、貴方の手を掴んで話さない。 退けられなかった口先はちると、自分でつけた傷に口づける。 どれだけ時間がたったのか。ごく短いものだったかもしれない。 肉食獣のそれのようにざらついた舌が、肉を削るかすかないやな感触。 この場所であれば些細なことかもしれないけれど、それでも。 手首を引き寄せる力をどうするかを決めるのは、貴方の自由だ。 (-169) redhaguki 2022/05/08(Sun) 18:17:59 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキまだ、昼の頃か。 眠たい目をしぱしぱとさせる様子はいつもどおり。 そればっかりは治療が行われたのだろう前後で変わることもなく、 成果が出たとは思えないような話。 午後の授業を控えてうとうとと準備をすすめるうちに、 投げかけれれた問いを受けてしばし考えた。 「……」「食べ」「……る」 粗熱のとれたそれを手に、ふかふかとつまむ。 手に余るもののようにつまみ上げたようすは、ちょっと不思議なものだ。 午後の授業までのおやつに、といった感じで持ち出せる形に包む。 まだほんのりあたたかな麺麭は香ばしい匂いを漂わせている。 「……」 投げかけられた問い。口を開いてから、また閉じた。 貴方の目を見て、自分が口にすべきことを考える。 教員としての貴方の、求める答えは。 「たぶん」「家に帰るよ」 もたもたとした授業の準備の中に、あたたかい麺麭は紛れていく。 午後の眠たい時間は、それぞれにすごすのだろう、そして。 (-170) redhaguki 2022/05/08(Sun) 18:28:32 |
【独】 雷鳴 バット気づけば、心の底からの言葉というのはあまり彼には差し出せなくなっていた。 昨今のやり取りから、模範的でない言葉は彼を傷つけるのだろうとわかってしまったから。 家に自分の居場所はない。だからここに連れられたのだ。 高い金を払ってでも、体裁を保って家から遠ざけさせたかったのだ。 実際、青年は"病気"を持っているのだから、間違った対応でもないのだけど。 食べられない麺麭を手に抱えて、目を細める。 鳥にでもあげればいいのだろうか、けれど。 それが誠実でないことは知っている。 けれども青年の身体は、植物の繊維をうまく受け付け消化することもできない。 不実を避けるのならば、受け取らなければよかったのだろうか。 とても、彼の行いを否定する気にはなれない。 彼は、かわいそうだから。 (-171) redhaguki 2022/05/08(Sun) 18:32:57 |
【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス貴方は、あと一年。自分は、あと三年。 それにも足らない期間を過ごして、この外へと羽ばたいていく。 ひょっとすればもっと長い時間を掛けてもらうことも出来るのかもしれないけれど、 ほとんどのケースにおいてそれは保証されるものでもない。 "実習生"になったなら、別の話かもしれないが。 「フィウクスは」「……」 「自分のことを決められて」「えらい、な」 声に混じったのは羨望だった。 青年には、貴方と同じことが出来るだけの頭もなければ、手立てもない。 そしてそれが無かったとしても踏み出せるだけの、精神もない。 実際に見上げるに値するかどうかなんてのは、他人がはかること。 青年にとっては少なくとも、貴方は眩しく感じる雄姿の者だ。 手渡すべき返答なんてものは、青年は持ってはいない。 少なくとも今、対等な答えを出せるほどには、未来なんてものは見えてもいなかった。 「もう」「僕も、食べ終えるから」 「あとはもう食べられない」「もの、ばかりだから」 「……また」「教室で」 残されたほとんど丸のままの麺麭、果実。 誰かに見られたりしたら、好き嫌いしないと怒られそうな残り物。 今日は勇気を出して、隠して持ち出したありふれた食料品。 仕方がないからそれらは破棄してしまう、或いは飼育小屋のものたちにでもあげよう。 幸い彼らが口にしても構わないもの、構わない量しかもちだしてはいない。 出て行きかけの貴方を止めるわけでもなく、これが今生の別れでもない。 また、すぐにでも顔を合わせることができる、……はずだ。 (-176) redhaguki 2022/05/08(Sun) 18:46:49 |
【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バットざりざりと肉が削れるような感覚がして身体が強張る。 頭の奥で痛みが警鐘を鳴らす。 まだ自分には生身の部分が残っているんだ、なんて当たり前で余計なことに思考を巡らせた。 一連の行動を経て、漸くあの夜の姿と青年が重なる。 それは戯れにじゃれついて小動物を害してしまう獣のように思えた。 「………、」 青年を拒むことはしたくなかったけれど、自分の指がどうにかなっては流石に困る。 それこそ噛み千切られて生身が無くなったら本末転倒だ。 頭に置いていた手を、少し顔の方にずらす。 額のあたりをぐい、と軽く押して離そうと試みた。 (-177) dome 2022/05/08(Sun) 19:01:45 |
【秘】 雷鳴 バット → ライアー イシュカ貴方が正しい立場でそうした言葉を向けているのだということは、 鈍い頭をした青年にもよくわかっていることのようだった。 痛む心臓を抑えるみたいに、思わず胸に手を当てる。 「……わかった」 「そう、しなくてもいい方法」 「大人が見つけるって」「言ってくれたから」 「もう、起こることはない、よ」 少なくとも貴方の憂慮すべき自体は、今後は起こることもない。 だから、大丈夫だ。だから、安心だ。 それを境に、飼育小屋からも足は遠のき、近づくことはないだろう。 逃げるように後ずさる足は、そのまま貴方の視界からも離れていった。 ひょっとしたなら、明日にでも。 貴方の願う通りに、鍵の行方は渡ってくるかもしれない。 (-178) redhaguki 2022/05/08(Sun) 19:06:01 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス鈍く動きの悪い頭は、ただ。 ひた隠しに抱えていたものが他に受け入れられたことが嬉しくて。 それが良くないことだと理解したのは、貴方の小さな手で押しのけられてから。 ぱっと顔をあげて口を離す。しばらく、様子を伺うように薄い色の目が貴方を見た。 「……」 「……ご」 「め、ん」 唇の皺には血が濃く滲み、啜った血と唾液が混ざったものが顎まで垂れていた。 自分がしたことに対してどんな言い訳を吐けばいいのか。 頭の回らないまま視線は消極的に下がっていって、うつむいた。 「戻って、いい……よ。 まだ僕は戻らないから、……森にはいかない、大丈夫」 共に歩いて帰るのは、こんなことをしてしまった後では厳しいだろうと。 指を押さえつける手はなく、貴方に縋りつくだけの指もなく。 いつでもあなたは、自分の好きな時に逃げられる状態だ。 (-180) redhaguki 2022/05/08(Sun) 19:14:30 |
【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット「………」 身動きが取れるようになったけれど、 視線を下げている姿が、 それこそ捨て置かれた子どものように見えてしまったから。 まずはポケットからハンカチを取り出して、血が垂れた口元を拭おうとする。 避けられなければ、お返しとばかりにぐしぐしと少し乱暴に拭かれるだろう。 この際汚れても良いかと割り切って。 それから折り畳んで、きれいな面を傷に当てて結んだ。 深刻な傷ではないと思うけれど、念の為。 手当が済めば立ち上がる。 でも一人で立ち去ることはせずに、あなたの腕をぐい、と引っ張った。 大きな身体は、自分の力だけでは動かせない。 青年の意思でついてきてもらわなければ。 『一緒に帰りましょう』 自由になった両手で、黒板にそう書いた。 (-184) dome 2022/05/08(Sun) 19:31:33 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス「……」 いいのか、と見上げる目。 貴方は声は出ないのだから、青年が黙ってしまうと何の音も交わせないまま。 ぱちぱちと、目を瞬くまま見上げる時間があった。 「いいの?」 何に関しての問いかというのは、なんともあやふやなままだ。 日のない内は十分に言葉も話せるだろうに、声に成ったのはそれだけ。 言葉を尽くさねばわからないことさえ、足りないままの小さな言葉。 惑うような沈黙が流れたのは、そう長い時間ではなかっただろう。 それでも焦れて、勿体ぶっているように感じられるには十分なもの。 立ち上がった貴方よりも視線の低い、しゃがんだ身体はようやっと、 ちらちらと辺りに振れる目をひとつに留めて、立ち上がった。 きゅ、と握った手は頼りなく、無事なほうの手を握りつぶしてしまうことのないように。 指の先をちょっとひっかけただけの、とてもささやかなもの。 「……」 「ラピスが、いい」 何が。なんてのはやっぱり、言葉足らずの飾り気のないもの、 貴方が手を引いてくれるなら、貴方の足に合わせて寮への道を歩く。 (-191) redhaguki 2022/05/08(Sun) 19:51:07 |
【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット言葉なく見つめ合う時間があって、短くない間そうしていた気がする。 「!」 やっと指先が引っ掛けられれば、随分上にあるのにどこか今は頼りなさそうな、所在ない表情を見上げて満足気に微笑んだ。 青年の言葉にははっきりとした頷きで返す。 音は紡がれなくとも、それでも少女の浮かべる感情はわかりやすい。 無口な二人は、時に思惑がすれ違うこともあるけれど。 今、一緒に帰ろうと歩む気持ちは同じだった。 『今度は』 『バットくんの手袋の話を聞かせてくださいね』 小さな歩幅に合わせてもらいながら、寮までの道を手を引いて歩き出す。 そうしてそこまで遠くない帰路を辿って、その日はそれぞれの部屋に戻ったことだろう。 (-197) dome 2022/05/08(Sun) 20:11:11 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス貴方の顔を見下ろせば逆光になってしまうのだろう。 たとえどんな恐ろしい表情をしていたとしても、 貴方には何も見えはしないのだろう。 だから、そう。そこにある表情が確かな慈しみだと、伝わっていたならいい。 指先がとても熱く感じるのは、血が流れるせいばかりではない。 「……うん」 移り変わった月光が照らす貴方の表情は、とても尊いものなのだろう。 少なくとも青年にとっては、そうだ。 言葉少なな懐いが何であるかというのは、今はわからなくとも。 どうか己が貴方を傷つけてしまわないように。 どうか貴方が己を見守っていてくれるように。 どうか同じ気持ちでありますように。 ふたつの足音は、また明日へと進んでいく。 (-205) redhaguki 2022/05/08(Sun) 20:41:14 |
【秘】 ライアー イシュカ → 雷鳴 バット「……ふうん。 そんな顔してるくらいならよかったのかね」 僕は絶対、自分の治療を良かったとは言わないけど。 そう付け加えて。 去る貴方を引き留めるなんてできる人間ではない。 小等部の子相手にすら当たり散らす人間だった。 一つだけ違ったのは、 彼の時とは違って、去る貴方の顔を見続けていた所。 鍵を得ても素直には喜べない所と合わせて。 大人に希望は抱くつもりはないから、 無責任な思考で"あなたの言葉"が叶えばいいなと、それだけを考えた。 (-212) poru 2022/05/08(Sun) 20:53:25 |
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