消えたくないよ
　　俺を忘れないで

　　俺を好きになって欲しかった
　　君に愛して欲しかった
　　宵稚の愛が、欲しかった

　

［　唇には柔らかい感触。
　　……どころか歯が当たるんじゃないかってくらいに
　　不器用な君の唇が触れて。

　　




　　　　　　　　　　　もう一回……したい



［　気が付けば声に出していた。　］

　

　　　　　　　　　　　ね、もう一回

　　　　　　　　　　　　　　　いい？




　

［　封じた言葉の鍵
　　キスで封印が解けるなんて
　　まるで御伽噺。

　　一度解き放たれた言葉は
　　無遠慮に俺の口から出てきたがっている。　］

　

　　好き
　　俺は宵稚が好きだよ　大好き

　　伝えたかった
　　ずっと、ずっと


　

　　　　　今だけは、離さないでほしい
　　　　　俺に……幸せを少しだけ頂戴


　
［　小さなわがままを言ってみた。　］**

　

　届いてたんだろ？>>D9
　それなら、ちゃんと傍で聞いてほしかった

　忘れるもんか
　音楽を忘れたって、海音の事は忘れなかった

　卒業式の前から。
　音楽を始めたときから、幼い時から。
　歌に全部込めていたのに。

>>0:42
　『　　』って　

[言葉なんかよりもずっと簡単に、
その身体くちびるは動いていた。


どれくらいの時間をかけて、とか、
全然わからなくて、声と同じくらい
勢い有り余るキスに、どれほど俺の感情は
乗せられたのだろう。

こわごわと離して、海音を見上げる。
そう、見上げたんだ。お前に近づくよう
這い上がろうとしていたから。]

　──…………。

[その、ささやかな「欲」を孕んだ声に、

　陶然として、上瞼を緩く、蕩けさせて。
　

今度は引き寄せられるように、
腫れ物に触れるような、口付けを、ひとつ。]

[ゆっくりと離れれば、こいつ
張り詰めた空気を一度壊しやがって。


顔に触れる手に自分の手を重ねて。
面紗の下に、その手を導く。

見えなくても、輪郭をなぞってもらえるように。]


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　………、


[「もう一回」と求められる度、
鼻を擦り、目まで捲れないよう布をずらして、
唇だけは――違いなく触れ合うように。

幾重にも「もう一回」を望まれたって、
何度だって、叶えた。俺が望んでいたんだ。]

　知ってた。



　知ってる。




　海音が、俺のこと、
　ずっと好きだって想ってくれてたこと。



　長かった。

　


　漸く、返せる。





　

　

　俺も、海音が好きだ。
　特別だ。

　俺は、幸せだよ。ずっと、幸せなんだ、海音。


　俺もお前に「幸せ」をやりたい。