この曲はいつも自分たちが演奏している、看板曲のようなものだった。
なので歌い手が変わっても暗記した曲を弾くことは難しくなく、伴奏をつけ、曲の終わり。


終わった途端に大きな声を上げた。
それはそれは目を輝かせて。

「なんでそんなうまいの！？なんかやってたっしょ絶対！
すげ〜〜ハードル飛び越えちゃった！新メンバーにならない？
これくらいならポルクスも絶対文句言わないって！練習したらもっとヤバくなりそうだし！」

これはいつかどこかの時空！
あなたと鉢合わせ、目があったカストルが、

「……！」


急にテーマソングを作り、歌い始めた。不審者である。

「……！」
ごそごそ、とポケットから鈴のハンドベルを取り出す。

「そっか〜！シェルタンさんにはコレの音がぴったりかもしれないね！
ナイスアイデア！ありがとう！
もっかいこれありで演奏していい？いい感じのとこで鳴らしてほしいな〜」
鳴らしてくれないかなー、と鈴をそちらへ向ける。

「やっぱりかぁ！め〜〜っっちゃ、良い！」
全然待たない。

「も〜さ〜詳しいとか詳しくないとか関係ないって！
だってオレがこいつとどうやって出会ったと思う？間違えたんだよ、ギターと！
ちょっとデカくて低くていい音だ〜って思ったら、違う楽器！」
トントン、とギタロンを叩く。間違えられた方は一体どう思っていたのだろうか。

「だからさ〜……あっ分かった！上手いとかじゃなくて、め〜〜っちゃ好き！超好きなかんじだった！
これでどう！」

「いくよ〜ワン、ツー、シャーン！」
謎の掛け声まで生んでいる。


さっきより若干高めのキー！

返事は歌詞に乗せた。歌詞がポヤポヤになっていく。
そしてポヤポヤの歌詞のまま、終わった。

「……いいかんじにできた！」

「今さ〜、目が合った人のテーマソング作ってたとこなの！
まさか一発目からこんないい感じになるとはね……！ありがとう！」
不審者は犯行動機を語った。

「すっきり？してよかった！」
よかったかなぁ……

「あ〜、そっか！たしかに仮ってことにしとかないとさすがに怒られるかも〜……、
っていうか、イヤじゃないってことだよね！確認とってから、ってことはさ！よろしくボーカル候補〜絶対説得するから！」
わ〜！して握手しようとしたところであなたの手がファイルで塞がっていたので、抱きついてわ〜！する方向に切り替えた。
わ〜！背中バンバンバン！

「え〜〜結構断られることあるんだけどさ〜、素直に言ってよかった！」
何かかたいな、と変な感想のつぶやきとともに離れた。
というか背中に回り込んでつっついている。

「他の楽器っていうとなんだろ〜……なにかやってたのとかある？
やりたいのあったらオレも勉強するよ〜！曲作る時混ぜられなきゃダメだもんね〜」

「ノっておるですね」
口調がだめになった。

「喜んでもらえてよかった！ねぇ、次は誰の曲作ったらいいと思う？」
不審者様は不審者さんに次の犯行先を相談した。本当に行くつもりだ。カストルはチェーンメールの生まれ変わりなのかもしれない。

「あっ！ヌンキは2曲あるよ！」
なんで？

「……これがヌンキ登場のうた」



「これがヌンキありがとうのうた！いいでしょ！……3曲めはなにがいいかな？エンディング？」
本当にノってくれたらしい。ヌンキを終わらせてはいけない。

「……」
……ジャーン。


きっとと思ったことだろうが、たまたまヌンキとバーナードのテーマソングが存在しただけなのだ。ほんと。

「シェルタンは……センスがすごいかもしれない！」
テーマソング適正を見抜いていると言える。

「なかなかの自信じゃん！じゃあ考えちゃおうかなー、似合うやつ！
っていってもオレそんなにいろんな楽器詳しいってわけじゃないけど……」
知らないことはわりとすぐ知らないと言う方。

「ううん、なんかヘニャヘニャしてなくて面白いな〜って……へぇ！重くないの？」

「う〜ん……打楽器が足りない感じはする。何か見に行きたいよね〜、ボンゴ？」
ボンゴだけはないだろ。

「へぇ！面白そう！バーナード器用そうだもんな〜……そういうのオレでも使えるかな？」
何用なのかよくわかってないけど。

「非凡を名乗ってよくない？非凡なセンスだよ！」
喜んでもよろしい許可を出しました。

「そしたら、その二人も間違いないなさそうだね！
よ〜し、じゃあ早速鳴らしてくる！ありがと！
どうしようかな〜いや！どっちかだけなんて選べない！」
そして二人を探して走り出した。どっちもに、やる。それしかない。
鈴は置いて行っちゃった。

朝っぱらからあなたを呼ぶ声が聞こえるぞ！うるさい！

早朝！騒音！
あなたを探し歩く不審者がいる。こいつはスルーしてよい。