『ごめんください　気分を買いたいのですが』

会議後に見かけたルヴァを音もなく呼んだサダルは緊張していた
あなたの裾を引いてスケッチブックの文字で注文をしている

『他の人へ��嬉しい�≠�送りたくて　そんなことできますか？』

『お話は好きですか？』

会議から出て行く際若くも年老いてもない青年の声が響いたような気がしたがそこに音は存在していなかった

気がつけば小さなが一つだけポケットに入っている
その灯りはいつかどこかにいるサダルの元へと導くのだろう

サダルは燻る煙を眺め
スケッチブックではない別の紙をメレフに渡した

『払えるものならいくらでも　足りないのなら人生をかけて』

目の前にやってくる姿に後ずさりそうになりながら身を寄せれば訪れる灯火を目を細めて眺めた
何故か持っているスケッチブックを落としていたが
メレフに渡すのはすぐに処分ができそうな小さいメモだろう

『事件の犯人に会いたいんです』

渡して、そして　音もなく煙に少し噎せた

『被害に合う前に会いたい　それだけです』

誰かと出会いたいという願いはどのような価値か
少なくともわからないからかなんなのか　
文字から伝わるのは静かな決意だけだった

『あまり良くない言い方をした　相場もわからない』

拾ってもらったスケッチブックを手に持って恥ずかしそうにしながら秘密の会話は続いている
生娘と言われてもこんな経験は初めてなのだから仕方がなかったのだ

『叶うのならば　であったら死んでしまうかと思って　殺人鬼と安全になんて　事件を知りたくて』

言い訳のように文字を書いて消してメレフの言葉にまた瞳を瞬かせる

『奪われたかも　しれない　叶わなくても願いは秘密にしてください　会議にこんな気持ちで参加しているのを　知られたくないから』

『みんなが仲良くなれる羽根？　おまじないがかかっているの？』

この薬みたいに、と喉を痛めているサダルは包みを見せた

そして受け取ったときの慌てようと今の落ち着き方、なにか違和感を感じた
今すぐ飲めるのならば飲みたそうなほど喜んでいたその姿は
ブラキウムの落とし物の話にかき消されていたのだ

『聞こえた分はボードに書いた　すぐに見つかるよ　それでも見つかる頃には仲良くなってるといいね』

オッサンってこういうことかとサダルは思ったが声は音にならない

『星の魔法は支援妨害攻撃に何でも使えるんだ
　刺したり　ひかったり
　　　　　怒らない？』

サダルが特に反応したのは怒らないといわれてからだ
書く文字が止まり目を伏せながら開いても出てこない声をもどかしそうにして筆を進めていた

『怖くない　格好良くて憧れる　頼りがいがありそうで素敵だ』

包みは太ももに置き直し褒める言葉を連ねれば
シトゥラの前髪は気になるの首を傾げて見つめていた

サダルは館内を歩き回り手には大事そうに包みを持っていた

あなたを見かけるとすぐに近寄りスケッチブックを掲げた

『突然驚きましたか　声が出なくなってからこの魔法をよく使います　害はないので強ければ捨ててください』

その後に名簿やボードのまとめた書類を渡すだろう

『忙しそうにしていたので　何かあったら聞いてください
　なにか手伝うことができることがあれば欲しいのですけれど　ありますか？』

どうやら主に連絡をしたかったようだ

言われたとおりに一枚引いてから困ったように眉を下げた

『興味本位で来ているとおもわれたら　申し訳なくて
　犯人と話がしたいんだ』

それは解決のようでなにか
個人的な目的があるような言葉に聞こえた
会議円滑ももちろんだが、ひとり邪な考えだと思っているようだ

戦車の逆位置を見てザダルは首を傾げキファの言葉が続くのを待っている

『内緒』

風邪を疑う言葉にサダルは答えを与えた
寂しそうな顔をして包みを大切そうに抱えればブラキウムを安心させるように笑みを浮かべる

『落とし物が見つかるように　この声も治るよ
　ヘイズやルヘナには特に言わないで欲しい　声を心配してくれたんだ優しい子たちなんだよ』

『見つかって　身の危険がないといえるかな』

サダルはこういいたいのだ
「自分の身の安全なんてはなから考えていない
　会えたときは事件に巻き込まれる時になるだろう」と

『早いほうが　みんなが』

書く文字が止まってまたタロットをしばらく眺めた
当たっているとその表情が物語っている、わかりやすい性格のようだ

『これをよかったら』

手には小さなが渡されていた
その灯りは願えばどこかにいるサダルの元へと導くのだという

『声をかけることが　できなくなってしまったから
　道案内を星に頼んでいるんだ』

時間が空いたら会いに来てほしい、と改めて伝えるだろう

まだ良心的の範囲、と、少し恐る恐るお金を払う
利用は初めてだったらしい

『お礼をしたい子がいて　喜ぶものがわからなかったから　助かります』

その気分の信憑性より、気持ちを優先した
ルヴァの店を面白そうに信用して使うつもりのようだ
大切そうにどこにしまおうかと考え(インベントリーにしまうように)魔法で隠してしまったあとふとボードを見た

『気になったことってなに？　聞いても良ければ教えて欲しい』

信頼の証か、会議を混乱させたくないのか何度か豪華な飲み食いできそうなお金をメレフに渡す

『シータ事件が起きた痕をみたことがある　その事件を起こした犯人を捜している』

『記憶が曖昧でしっかり覚えてもいなくて　犯人がどんな姿か知らないけれど　もし犯人が1人じゃないなら事件の建物や人で心当たりがあるかもしれない』

『どうして殺したのかを聞きたい　法則があるのかを聞きたい
　何のために殺しているのかを聞きたい　見たあのときから心が囚われている　大好きだった舞台もなにもかも身に入らなくなってしまった』

『したいのか　この感情が怒りなのか　興味なのかもわからない　だから』

会いたい、と口を開けばこぼれた灰が紙にのって驚いて飛び跳ねた
いそいで払って大事にならなかったのをほっとひといきをつく
あたふたとしながら吸い殻を捨てて慣れない煙草を味わいつづけた

見直し、そこにあった文字を消した

『「」でした』



顔が赤くなるのをスケッチブックで隠して
ぺこぺこと謝るように頭を下げる

『情報がない中意見を出してくれるだけでもありがたい会議でした
　協力してくれようと　出席があるだけで　嬉しいんですよ　嫌な空気でないのならよかった』

冷めない頬を冷やしながらラサルハグの待てに首を傾げると
渡されたキャンディーをサダルは受け取った

『これはなんですか？』

『手を組むのは　いいよ　だけどキファの役に立てるかわからないし　自分はキファが思うような人間じゃ　　　　』

正義漢だとサダルに告げる少女を見て胸に小さな痛みを感じる
そんなに格好良くない、キファを利用するだけ利用するような人間かもしれないと信じてもらおうとは思わないのだと続けた

それでいてサダルはあなたの言葉を疑う脳もなければ性格でもない
ストンと落ちてきたそのはサダルを喜ばせるものだった

『ほんとうに？　キファは見つけてくれるの？


　』